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Smith, C, "The Glow Worm"

シャーロット・スミス
「蛍」

芳香を放つ夏の夜、
まだ新しい世界のなか、幸せな子は
蛾を追いかける。粉を散らして羽ばたく蛾。
ブルーベルを揺らす。きらめく露が滴る花。
知らないことばかりのこの子の目にふと入る、
輝く蛍。流れ星のように光っている、
草の川岸に。驚いて、嬉しそうに、大きな声で彼は言う、
「露の草に星がある! つかまえて帰る!」
こうして、寝る前に彼は露に濡れた花を摘み、
柔らかな花で光の贈りものを包む。
そして夢見る、妖精のランプでお部屋がきれい……
でも朝がきて、彼は愕然とする。
光の宝もの? 黒いゴミじゃん。
そう、輝く世界の幸せは続かない。冷たく色を失って、
吐き気をもよおす屑となる。

*****
Charlotte Smith (1749-1806)
"The Glow Worm"

WHEN, on some balmy breathing night of Spring,
The happy child, to whom the world is new,
Pursues the evening moth, of mealy wing,
Or from the heathbell beats the sparkling dew;
He sees before his inexperienc'd eyes,
The brilliant Glow Worm, like a meteor, shine
On the turf bank; --- amaz'd and pleas'd he cries
'Star of the dewy grass! --- I make thee mine!'.
Then, ere he sleep, collects 'the moisten'd' flow'r,
And bids soft leaves his glittering prize enfold,
And dreams that fairy lamps illume his bow'r:
Yet with the morning, shudders to behold
His lucid treasure, rayless as the dust;
So turn the world's bright joys, to cold and blank disgust.

https://www.eighteenthcenturypoetry.org/works/n22cs-w0580.shtml

*****
最後の行だけ12音節。訳は2行。

*****
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Pontano, "Tumulus Ioannis Ioviani Pontani"

ジョヴァンニ・ポンターノ
「ジョヴァンニ・ジョヴィアーノ・ポンターノの墓」

(旅人と〈名声〉が話をしている)

旅人
女神さま、どうしてお墓の番なんてしているんです?

〈名声〉
わたしたちの権利が
かかっていますから。

旅人
神さまたちにとっても、人の死後は気になるんですか?

〈名声〉
わたしにとって、それはいちばん重要なことです。

旅人
どうしてずっと羽をばたばたさせて
いるんですか?

〈名声〉
闇を追い払うためです。お墓がきれいに見えるように。

旅人
そのラッパは何ですか?どうして首にかかっているのですか?

〈名声〉
友として、これで亡骸に名声を
与えます。墓に来て、このラッパにあわせてわたしは歌うのです。

旅人
これは誰のお墓ですか?

〈名声〉
詩人です。知恵の女神ミネルウァみずから
灰のつぼを埋めにきました。
ここに眠っているのはジョヴィアーノ。緑の月桂の冠は、
女神たちが葉を選んでつくり、飾りました。
でも、彼の魂は昼間ここにはいません。気持ちよく散歩しています、
牧場を、どこか水の音がさらさら聞こえるところを、
妖精たちがいて、かわいいカリスもいるところを。歌で
金の糸が揺れ、静かな空気も一緒に響いていることでしょう。
夜になると、最高に輝く妻を彼は抱きしめ、妻も彼を優しく撫でます。
熱く燃えあがるのです。愛はまったく冷めていません。
死の闇のなかでも夫婦です。闇より強いのですから、愛の
まぶしい炎は。双子のような二つの光で愛はきらめくのです。

*****
Giovanni Pontano
"Tumulus Ioannis Ioviani Pontani"

Viator et Fama colloquuntur

Viator
Dic age, quid tumulos servas, dea?

Fama
Nostra tuemur
Iura.

Viator
Deos cinerum num quoque cura tenet?

Fama
Haec mihi prima quidem cura est.

Viator
Quid concutis alas
Usque?

Fama
fugo tenebras, quo vigeant tumuli.

Viator
Quid sibi quae collo pendet tuba?

Fama
Nomen amico
Dat cineri; ad tumulos hac ego gesta cano.

Viator
Dic agedum, manes cuius hi?

Fama
Vatis; at urnam
Officio posuit docta Minerva suo.
Hos tumulos Iovianus habet; quae serta virescunt,
Lecta suis manibus disposuere deae.
Sed manes ne quaere die: per amoena vagantur
Prata, sonat riguae sicubi murmur aquae;
Nymphae assunt, et adest dulcis Charis; aurea cantu
Fila movent; leni concinit aura sono.
Nocte illum complexa fovet nitidissima coniux;
Fervet, et a nulla parte refrixit amor;
Haec illi comes in tenebris, quas vincit amoris
Lucida fax: gemina luce coruscat amor.

http://www.poetiditalia.it/texts/PONTANO|tum2|062

*****
自分の墓碑銘を詩にするという、グレイの「エレジー」の
元ネタのひとつ。
https://blog.goo.ne.jp/gtgsh/e/3c9f43696ecd0e09f29f95bb807cd422

*****
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Roderick, "A Sonnet"

リチャード・ロデリック
「ソネット:ロペ・デ・ベガのスペイン詩の模倣、
『メナージュ語録』第4巻176ページより」

Wが思いつきで、ソネットを書け、と言い出した。
はじめてだ……ソネットだと!
14行もいるんだろ?
でも、OK、なんとか最初のかたまりをやっつけた。

でも、脚韻が半分も見つからない、
とか言ってたら、ふたつめのかたまりの真ん中。
4行を二回とか、冷静に考えたら、
最難関を越えたってことで、安堵の笑い。

ここまでなんとかうまく書けてる。
7x2行のうち、10行クリア。
がんばれ、俺! あと1行で3行セットひとつめフィニッシュ。

詩の女神さま、ありがとう、終わりが見えてきた。
ほら、もう13行、ちょびっとずつ、ちょびっとずつ。
おしまい! 14行だ。どこからでも数えてみな。

*****
Richard Roderick (bap. 1710, d. 1756)
"A Sonnet: Imitated from the Spanish of Lopez de Vega,
Menagiana, tom. IV, p. 176."

CAPRICIOUS W* a sonnet needs must have
I ne'er was so put to't before: --- a Sonnet!
Why, fourteen verses must be spent upon it;
'Tis good howe'er t' have conquer'd the first stave.
Yet I shall ne'er find rhymes enough by half,
Said I, and found myself i'th' midst o'the second.
If twice four verses were but fairly reckon'd,
I should turn back on th' hardest part and laugh.
Thus far with good success I think I've scribbled,
And of the twice seven lines have clean got o'er ten.
Courage! another 'll finish the first triplet.
Thanks to thee, Muse, my work begins to shorten.
There's thirteen lines got through driblet by driblet.
'Tis done! count how you will, I warr'nt there's fourteen.

https://www.eighteenthcenturypoetry.org/works/o5153-w0760.shtml#

*****
Elegant Extracts: Or, Useful and Entertaining Passages,
from the Best English Authors and Translations, vols. 5-6
p. 237では、Thomas Edwards作、W* はWrayとなっている。
https://books.google.co.jp/books?id=hgNLAAAAYAAJ

『メナージュ語録』はこれ。
Menagiana ou bons mots, rencontres agreables,
pensées judicieuses, et observations curieuses de
M. Menage (Amsterdam, 1716)
https://books.google.co.jp/books?id=kM4BSnC941MC
176ページにあるのはヴェガのソネット(とされる詩)の
フランス語訳。

*****
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Williams, HM, "Sonnet: To Hope"

ヘレン・マリア・ウィリアムズ
「ソネット:〈希望〉に」

〈希望〉に対して歌う詩をこのソネット集の最初におきました。訳あって、この詩は特別に気に入っています。最近パリにいた時にワーズワースさんが家に来てくれて、何年も前に読んだ、と言ってこの詩を暗唱してくれたのです。

ああ、わたしが好きなものに変身するのがいつも上手ね!
怖いものやつらいことは遠ざけてくれるし。
優しい〈希望〉さん! 明るい笑顔で追放して、
消えない悲しみ、心の痛みを。
声を聞かせて、性格のいい魔法使いさん!
言って、いつか楽しいことが花咲く、って。
輝く夢、大切な友だちの涙が、
不幸の陰を少し明るくしてくれる、追い払ってくれる、って。
でも、燃えるようにまぶしい光はいらない。
すてきな幻に目が奪われたことはあったけど……
でも! もう美しい嘘はいや! わたしの道に広げないで、
花たちを。きれいだから枯れるはずない、と思ってたのに。
もっと控えめな幻で十分、心から悩んでいるわたしには。
幸せなんていらない。ほしいのは安らぎ!

*****
Helen Maria Williams (1759-1827)
"Sonnet: To Hope"

I commence the Sonnets with that to HOPE, from a predilection in its favour, for which I have a proud reason: it is that of Mr. Wordsworth, who lately honoured me with his visits while at Paris, having repeated it to me from memory, after a lapse of many years.

O, EVER skilled to wear the form we love!
To bid the shapes of fear and grief depart;
Come, gentle Hope! with one gay smile remove
The lasting sadness of an aching heart.
Thy voice, benign Enchantress! let me hear;
Say that for me some pleasures yet shall bloom, ---
That Fancy's radiance, Friendship's precious tear,
Shall soften, or shall chase, misfortune's gloom.
But come not glowing in the dazzling ray,
Which once with dear illusions charm'd my eye, ---
O! strew no more, sweet flatterer! on my way
The flowers I fondly thought too bright to die;
Visions less fair will soothe my pensive breast,
That asks not happiness, but longs for rest!

https://www.eighteenthcenturypoetry.org/works/bhw18-w0180.shtml

*****
18世紀のソネット。アレゴリー。

*****
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Pontano, "De Venere"

ジョヴァンニ・ポンターノ
「ウェヌス」

大地の胸から息が漏れ、軽やかに空にのぼる。その息は、
やさしい夜の眠りのなか、涙の露になっておりてくる。
柔らかな肌の女の子、その体から広がるやさしい香り、
愛はそれを甘い心の安らぎに変える。
露は、牧場の草を撫でて濡らし、
安らぎの香りは、疲れた人たちの胸を痛みを和らげる。
大地の胸からの風、それで
休息の時が流れ、また涙も流れる。
恋する人の胸もそのように笑い、深いため息をつく。
同じ顔が笑い、泣く。
なぜ? どうして、そんな大地からでなく、水の泡、
荒れ狂う海からウェヌスは生まれた?
どうして、つらい片思いの人の胸はいつも波に揺れている?
どうして、揺れる思いは沸騰して、舟の端から端へ転がりまわる?

*****
Giovanni Pontano
"De Venere"

Evolat e gremio terrae levis halitus, illum
in rorem vertit noctis amica quies;
e facie tenerae lenis fluit aura puellae,
vertit eam in mentis dulce levamen Amor.
Illius aspersu mulcentur roscida prata,
huius at afflatus pectora fessa levat.
E gremio spirant telluris flabra, vicissim
quaeque quieta ferant tempora, quaeque mala;
quos risus, quae det suspiria pectus amantis,
ipsa eadem facies utraque signa dabit.
Cur non e terra, sed de spumantibus undis,
nata sed irato sit Cytherea mari?
Fluctuat an semper miseri quia pectus amantis,
aestuat et variis mens agitata modis?

https://la.wikisource.org/wiki/Eridanus
(適宜修正)

*****
(大意)
陸には安らぎと悲しみがあるのに、
海には悲しみと苦しみしかない。
美しい人に対する片思いはそんな海のよう。
美の女神ウェヌスが海に生まれたことの意味は、これ。

*****
片思い = 荒波に揺られる舟
(ローマ古典/ペトラルカ)

*****
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Willes, De Re Poetica

リチャード・ウィルズ
『詩について』
「詩に対する批判への回答」

何かを称える理由は、それが気高いから、あるいは役に立つから、である。が、詩は気高くないし、役にも立たない。むしろこのような言いかたは甘すぎる。詩は卑しく最低で有害だ。この卑しさの証明は以下のとおりである。

まず、詩の目的とは何か? 言わなくてもいい。わかっている。楽しみ、であろう。精神的な、そして感覚的な楽しみだ。この楽しみは、人だけでなく動物のものでもある。獣たちがオルペウスの歌の虜になった、という詩人たちの話を信じるのであれば。輝かしい技術である、人を動物のレベルに引き下げるとは!

2.
次に、詩は何を教えるものか考えよう。その内容は何か? ギリシャ、ローマ、その他の国の詩人の作品を読めばわかる。詩から学べるのは、まず呪われた人々、特に、鎌や車を発明したなどという理由で愚かな古代人が祭壇や神殿に祀ってきた者たちの所業である。本来称えられるべきは唯一の不死なる神であるのに。こうして詩人たちは、さまよい、争い、狩をし、宴をし、快楽に耽って乱れた暮らしを送る人々を描いてきた。そんな作品にどんな気高さがあるというのか? 人のどんな偉大さや尊厳が詩から学べると言うのか?

さらに言うが、古代人が神々とみなす存在を詩が描く時、つまり戦争、親殺し、その他数々の不敬で呪わしい恥ずべきおこないを描く時、これらは神々の定めとして、あるいは善への報い、悪への処罰とされている。老婦人、お婆さんの目から見たならただの愚行、嘲笑すべき馬鹿馬鹿しい内容であろうに。

3.
さて、神々から人に目を移してみよう。詩人は人についてどんなことを言っている? 神々について言ったこと以外に? 人を神々より優れた存在と描くことは不自然である。詩人は神々の恋愛を、淫行を、残虐行為を、罪を描いた。そしてこれら神々の悪行・不正を可能なかぎりもっとも正確に真似する者こそ最高の栄誉に値する、とした……。

4.
最高に気高い君主の姿は、ホメロスの描いたアキレウスに見られる。このアキレウスほど野蛮で獰猛な者はいない。賢い人とはどのようなものかはオデュッセウスを見ればわかる。彼以上の欺瞞・策略・嘘の達人はいない。最後につけ加えよう。詩人は王たちの権力と富が大好きで、いつも彼らの前でしっぽをふっている。

さて、ここから第二部だ。いかに詩が人を腐敗させるかについて書く。まず、詩人は若者にどのような疫病をもたらすのだろう? 詩人自身の、また他人の、抑えられない恋愛感情や性欲を描くことによって? そう、間違いなく詩人には悪影響がある。道徳を駄目にする。性欲や残虐行為や無意味な栄光や欺瞞について、上品で洗練された詩が書かれているから困る。言葉・内容ともに美しく、聞く者の耳に優しくふれ、心を完全に奪ってしまうのだ。まさに文章の魅力それだけで。これはどれほど有害なことか。生まれつき歪み腐っているわたしたちの欲望の対象、見たい、体がふらふらついていってしまう、考える前に衝動的に求めてしまう、そんなものごとが目の前に描かれるのだ。言葉で描かれなくてもこの内容自体に魅力があり、また内容がなくても言葉だけで魅惑的であるのなら、甘い毒入りの内容に甘い言葉のスパイスがふりかけられた時に何がおこるか、察するまでもないだろう。詩のリズムはそんな内容のためにあみ出されたのではないか? つまり、人がますます悪いことをしたくなるように? 確か、詩人たちは高ぶる歌を歌ったから、信心深く敬虔で神聖とされていた。神の幻を見ていると思われていた。少なくとも、オウィディウスはそう言っていた。

わたしたちのなかにいるのは神?
神に突き動かされてわたしたちは燃えている?
抵抗できないこの衝動、
これが聖なる、特別な、精神の源?

いやいや、プブリウス・ナソ、女の子のさらいかたを教えたり、女の子を破滅させて喜ぶ勝利の歌を歌う君には、むしろこう尋ねたいところだ。

君のなかにいるのは冥界の王?
闇の王に突き動かされて君は燃えている?
抵抗できないその衝動、
それこそ残虐な死の源?

ティブルスの歌もカトゥルスの11音節詩もプロペルティウスのエレギアもマルティアリスのエピグラムもホラティウスのオードも似たようなものである。あのような詩を書いたから、つまり、人の愚かな、価値のない、淫らな、罪深いふるまいを神々のものとして描いたから、ホラティウスやホメロスは天才の父と呼ばれたのか? むしろ、ごみのような嘘の父と呼んだほうがはるかに適切ではないか! 詩も詩人も、わたしたちにとってなんの役にも立ちはしない。そこにあるのは残虐行為と嘘と野心と淫らな欲望と恥だけである。

2.
だから、詩はごみ・くず、と言ったエラトステネスは正しかった。『パイドロス』でプラトン曰く、詩人が語るのはつくり話である。アリストテレスによれば、「詩人は嘘ばかり言う」。もしこのように詩がひとえに虚偽・嘘であるなら、そんなものをつくる才能に何の価値がある? 実際、プラトン・アリストテレスのような重要な著作家は、真実を語る詩人はもはや詩人の名に値しないと考えた。だから、創作ではなく実際にローマ人が戦った内乱を英雄詩にしたルカヌスは、いずれ詩人として扱われなくなるだろう。実際の農耕を指南する時のウェルギリウスもだ。詩の特権はつくり話の国でのみ有効である。その根拠は真理ではなく嘘なのだ。

3.
非常識で下卑た喜劇はどうか? 詩・つくり話を舞台にあげて客に見せる、つまり詩人が自分が嫌いな者たちを無礼な言葉でこきおろす--そんな厚顔無礼に対し、まず裕福な有力者たちが取締りを試みた。次に法がつくられた。他人を口汚く侮辱する詩を書くこと、他人の誹謗中傷を舞台にあげることが、禁じられたのである。これで諷刺喜劇が沈黙し、姿を変えることとなった。よりくだらないことが劇の主題となっていった。すなわち、恋愛、娼婦のかけひき、ポン引きの罵り、兵士たちの無礼・残虐などが、である。こういった内容が扱われるようになったので、劇場に人が押し寄せるようになった。こどもから大人までの女たち、職人、教養のない連中が、である。驚愕を禁じえないほど道徳は低下した。劇を見て、そのせりふを聞いて、恥ずかしい行為に耽る者が続出したのである。

4.
あえて言いたくはないが、恋する男たち--言いかえれば、恋愛感情や欲望を制御できない奴隷たち、とっとと地獄に堕ちてほしい奴ら--は、そんな劇をおおいに活用している。恋のかけひきに使えるからだ。詩は、欲望を満たす、恥ずかしい行為の数々を実現してくれる、そんなポン引きになり下がっているのである。みんな知っているであろう、楽しくいやらしいことがしたいなら、男は歌ったり、楽器を弾いたり、きれいな嘘を語ったりできたほうがいいのだ。これはなかなかすばらしいテクニックだから、親から子に伝えさせよう。教育して、訓練して、恥ずかしい人生を! いやはや、詩や劇ほど若者に悪影響を及ぼすものがあるだろうか?

5.
だから、プラトンは詩人や作家を彼の理想の国から追放した。彼らの作品は国家にとって有害なのだ。

6.
詩が善良であるなら、詩人も善人になるはずだ。が、いにしえの作家たちの生涯を見るといい。彼らはみなベロベロの酒浸りか恥知らずなクズ野郎か社会のルールをまるで知らない馬鹿、場合によってはただの狂人である。だから詩人の作品は酒くさい。もしくは浮気・姦淫ばかり語る。もし、何かの弾みで詩人が清らかなことを書いたとしたら、それは彼らの生きざまに完全に矛盾する。まったく、オウィディウスの言葉は最高の冗談だ。

書く話はいやらしくても生きかたはまじめ。

7.
最後にもうひとつ。デモクリトスらはこう言った、詩神にとり憑かれていないような詩人は詩人ではない。万歳! 正常な精神と共存しえない詩よ、永遠なれ! アウグストゥスがしたように、わたしたちも詩人を嫌おう。詩人に近寄らないようにしよう。彼は、恋の技を発明したオウィディウスを国から追い出した。追放して地の果てに閉じこめた。野蛮な者たちのなかでせいぜい苦境を詩に書いて嘆くがいい、と。そもそも詩を書いて捕まって追放されたのだから、それが当然の報いである。

これら、および類似する批判を、悪意ある者たちは詩という芸術に対してしつこく投げかける。教養のない者は、それをまったく正しいことと考える。若干の教養をもつ者は、まあそうかな、程度に考える。しかし真の知識をもつ賢い人から見れば、これらはまったく愚かな嘘である。上の議論はみな詩を理解せず不当に扱うものであり、知恵ある者の言うことではない。知恵があれば、詩それ自体を攻撃したりはしない。悪い詩人は避けるべき、と言うのみである。……しかし、詩に対する批判ひとつひとつに答えていこう。その議論はニ部門に分けられる。まず、詩が四点で下劣で卑しいということ、第二に、詩が七つの理由で害悪をもたらすということ。この最初の誹謗中傷は、詩の目的を考えれば容易に退けられるであろう。詩の目的は上に見たような身体的な快楽のみではなく、そこに道徳教育も含まれるからである。調和する詩の言葉は、共同体のなか自由に生きる者の精神を然るべき美徳に目覚めさせるのである。

(回答2)
第二の議論は、詩というよりも、キリスト教以外の宗教に対する非難である。つまり、すべての領土や国家の人々、すべての君主や皇帝、すべての知識人や賢者、実際、唯一の真の神を信じることを知らないすべての者が、非難されているのである。詩人たちだけではなく。詩人は、異教の神々の使いとして、全世界が栄誉に値するとした者たちを最高の言葉で称えているのみである。そんな盲目な詩人たちからわたしたちは学ぶ。彼らにならって、彼らの博識を汲んで、彼らの詩の規則や言葉の調和、そのリズムや形式をとり入れて、選び抜かれた彼らの言葉を用いて、よりふさわしいかたちで高く永遠なる神を称えることを。わたしたちは、非キリスト教徒より敬虔であるべきなのだから。

(回答3)
詩人たちは、犯罪など人の恥ずべき行為を歌う、とも批判されている。だが、それだけでもないだろう。恥ずべき行為のみでなく、彼らは神を恐れぬ恥ずかしい者たちが受ける罰をも歌っているからだ。プロメテウスの話を見てもいい。シシュポス、イクシオン、ベロスの子たちの話でもいい。同時に、詩人は正しい人々やその美徳、そして彼らが得た報酬をも称えてきた。さらに言うが、すべての詩人が悪人を称えているわけじゃない。ウェルギリウスは悪を歌わない。彼が歌ったのは人と戦争についてであり、敬虔なアエネアスの姿をわたしたちに描いてみせた。そんなウェルギリウスの詩ほど、清らかで優雅で気高いものはない。彼が身を落として軽薄な内容、例えばアエネアスとディドの恋などを扱ったとしても、その技術と慎みと威厳ゆえに、このうえなくすばらしいできばえである。アリストパネスの劇のなか、エウリピデスはアイスキュロスについて同じことを言っている。

(回答4)
アキレウスは野蛮人、オデュッセウスは嘘つきであるが、その分だけホメロスはさらにおもしろいと言うべきだ。彼らの長所だけでなく、ちゃんと短所も描いているのだから。逆に、多くの弁論家やたいていの歴史家は、君主たちの偉業を語りつつその罪には目をつむってきた。だから詩人たちが人の悪を作品で明確に非難してきたことについて、わたしたちはどう考えるべきだろう? 悪に仕える者たちは、ホラティウス、ユウェナリス、ペルシウスら諷刺詩人たちにさんざん咎められてきたではないか? カトゥルスはその11音節の詩で、ユリウス・カエサルに永遠に消えぬ汚名の焼き印を入れたではないか? 恥ずかしげもなく彼がマムラと戯れるところを描いたのだから。わたしたちの祖先や君主や王や将軍や皇帝や教皇たちは、みなアレティノのような詩人を恐れてきたではないか? そう、だから詩人たちが君主や皇帝の悪を許さないことは明らかである。許さないどころか、見逃さず、堂々ときつい言葉を浴びせるのだ。もちろん、弁論家や著作家と同様、詩人も誰かを称える時には、天に届くほどその人をもちあげるのではあるが。

次に、詩を攻撃する者は、詩が疫病のようなもので危険だと言う。しかし、もしそうなら、なぜアリストテレスは考えたのか、若きアレクサンドロス大王に美徳を教えるにはホメロスを読ませるのがいちばんよい、と。彼はホメロスから、正しく幸せな、そして君主にふさわしい生きかたに関するすべてのことを余すところなく学んだのだ。なぜエジプト王プトレマイオスはあれほどの代償を払ってまで喜劇作家メナンドロスを雇ったのか? なぜマケドニアのアルケラオスはエウリピデスに、マエケナスはホラティウスに、あれほどの賛辞を贈ったのか? なぜキケロはカトゥルスやアルキアスやカエリウスをあれほど好んだのか? ウェルギリウスはアウグストゥスの前で、ソポクレスはアテナイの人々の前で、アイスキュロスはシュラクサイのヒエロンに、作品を読みあげて、そしてあれほど高く称賛されたのはなぜか? さらに言うが、ルクルスでさえカエキリウスの喜劇を見たのだ。だが考えよう、どうしてここまで詩人が敵視されるのか? 恋愛を歌うからだ。淫らな詩人はクビだ。で? 淫らでない詩人もいるだろう? そのとおり。ウェルギリウスは清らか、アイスキュロスも清らか、他にもいる。しかし、ほとんどの詩人の作品は猥褻だろう? いや、それでも、すべての詩がそういうわけではない。淫らな本はみんな捨てればいい。理性に従うなら、そうすることが道徳的に正しいはずだし、キリスト教においても求められる。

だからウェルギリウスを読もう。彼は大丈夫だ。ホラティウスも読もう。だが、悪いところは飛ばさなくては。マルティアリスを読もう。去勢されたアウゲリウス版で。オウィディウスの『祭暦』、『悲しみ』、『黒海からの手紙』もいいだろう。だが、彼自身がこう言って断罪した他の作品は駄目だ。

青く若かった頃にもてあそんだ
くだらない作品は嫌いだ。罪深いと思う、今更ながら!

カトゥルスの詩やテレンティウスの喜劇を若者に対してあえて薦めることはできない。が、学校の先生には、彼らの作品から美しいラテン語の文体・表現の模範を探して生徒たちに示すよう強く促したい。ティブルスからはわかりやすい文章の書きかたを学ばせよう。彼は他の誰より楽しく、繊細で、簡潔で、美しい詩を書く。それに何より、彼の詩は自然だ。異質な魅力があるからプロペルティウスも使えるだろう。彼はティブルスより骨太で、正確で、そしてていねいな作品を書いている。これらの詩人は小さい頃から、つまり性欲が芽生える前から、読ませるべきだ。カトゥルス自身も言っていたように、敬虔な詩人は純潔でなければならない。他に評価すべき詩人たちはあまりいない。ルカヌスやセネカは一見輝かしく見えるが、スペイン人の彼らがもたらしたのは大袈裟に誇張された文体にすぎない。それがかの国の国民性である。その影響で詩は、飾りのない、いわば正しい、自然の模倣から離れてしまった。(アテネから離れて生きた者たちの詩と同じ道をたどったということだ。) 彼らの作品には、ローマの言葉本来の美しさがないのである。

確認しよう。ここにあげた者の作品には確かに淫らなところがあるが、もし少しでもいやらしいところがある本をすべて捨てなければならないなら、歴史家の年代記にはみなさよなら、である。自然に関する哲学者の議論も、医学の論文も、教会法の一部も、認められないことになる。聖書中の掟も家系の話も、ソロモンの歌も駄目だ。

(回答2)
つくり話をするのが詩人であるなら、ルカヌスは詩人と言えない? ホメロスのように二つめの点から答えよう。詩人の仕事は、存在しないものをつくり出すことだけではない。存在するものを模倣することもそこに含まれる。加えて言えば、詩人が話をつくるのは悪いことじゃない。数学者が存在しない多くの円を空に見ても恥ずかしくないのと同じだ。それに実際、数学者はいつも質料をもたないかたちを扱う。何らかの大きさをもつものにはすべて質料があるはずなのに。それから、どんなものであれ詩人のつくり話は、何がためになるか、あるいはならないかを教えるためのものである。例えば、オルペウスの歌を聴けば木も感動する。言いかえれば、詩は田舎の無知な人をも楽しませることができる。アクタイオンは鹿に変身させられて犬に食い殺される。すなわち、金銭感覚のない金持ちがお気に入りをたくさん抱えれば、その富はあっという間になくなる。こんな例をひとつひとつあげていっても、しかたがないだろう。

(回答3)
劇や諷刺や他の詩に見られる上記のような大胆さは、人を悪に誘うためのものではない。むしろ、悪を思いとどまらせるためのものである。だからこそ淫らなものも非難に値するものも、みなあくまで虚構ととらえられてきた。また、ある詩人の淫らさのために詩人すべてが責められるのはおかしい。もうひとつ言えば、諷刺や暴言は弁論家の文章のなかにもあるはずだ。

(回答4)
だから批判に答えて主張しよう。詩は悪のしもべではない。悪い詩人は詩を濫用するかもしれないが、それは、(実際よくあるように)道からはずれた哲学者が弁証法を、不誠実な修辞家が雄弁術を、濫用してきたのと同じことである。キケロが言うように、そのような者たちに自由に語る機会を与えても弁論家になどなれやしない。それは、たんに狂人に武器を与えるようなものである。さらに別のかたちで言うが、悪い目的のために多くの曲が用いられてきたからといって、音楽も廃止しなくてはならないだろうか?

(回答5)
プラトン自身も同じ箇所で説明している。彼はたんに詩人であれば誰でも追放、と言っているのではない。悪い詩人は追放、と言っているのである。

(回答6)
いかがわしい酔っ払い詩人は確かにいるが、それが何だというのか? 淫らであること、酒に溺れること、これらは詩人の、というより、全人類の悪癖である。それで軽薄なタイプの詩人はこれらを詩に描く。すると、趣味の腐った者たちが喜ぶのだ。カトゥルスが11音節の詩で言うように、

詩は面白くない、美しくない、
官能的でいやらしくないならば。

しかし、だからといってすべての詩人を淫乱、ワイン浸りとみなすのは、まったく無礼な話だ。

(回答7)
狂乱・神にとり憑かれた状態には四種類あると言っていいだろう。そのうちの二つは批判されることがあるが、残りの二つはよいこととされる。プラトン曰く、四つの名は、それぞれ、妄想狂乱、恋愛狂乱、幻視狂乱、詩的狂乱である。最初のものは酔っ払いのそれだ。酔っておかしくなった時に彼らはふだん見えないものを見る。恋する者の荒れ狂う感情が二つめのものである。プラトン曰く、「愛の神、などよく言うが、実際それはつらいもの、震えるほど恐ろしいものである」。三つめの狂乱は文字どおり幻視者の、四つめは詩人の、それである。デモクリトス曰く、詩人はとり憑かれて我を忘れているというより、むしろ心を集中しすぎてみずからの描く感情に入りこみすぎている。それで狂乱興奮の状態に陥っているように見えるだけ、神の霊感を受けて頭と心があちこちに行ってしまっているように見えるだけである。これは私たちにもよくあることだ。何かを真剣に考えている時など、無我夢中になって我を忘れているものだから。だからアリストテレスも、哲学者はとり憑かれていると言った。デモクリトス曰く、この「狂乱」の状態に陥らなければ、偉大な詩人にはなれない。

オウィディウスについていえば、彼がスキュティアに追放されたのは詩人だったからではない。彼が淫らだったから、あるいはむしろ、彼自身がよく不満げに語っていたように、『恋の技法』ゆえにではなく、何かカエサルがしていた卑しい行為を見てしまったからである。

なぜわたしはあれを見てしまった? なぜ目に罪を犯させた?
なぜ愚かにもあの過ちを知ってしまったのか?

詩という芸術、詩人の作品については、もうこれくらいで十分であろう。以下は、註そのものである。それを見れば、わたしの詩の意味がわかるであろう。

*****
Richard Willes
De Re Poetica (1573)
Tr. A. D. S. Fowler

原文はラテン語。その英語訳から日本語へ。

*****
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Robinson, Sappho and Phaon 5: Condemns its Power

メアリー・ロビンソン (1756/58?-1800)
『サッポーとパオン』
5. 恋の力を呪う

ああ、どうして最強の理性でも恋には敵わない?
どうして恋する人の目には、もっと気高いものが映らない?
詩人の歌を守る名声、あんなに大切だった名声でさえ、
もうどうでもよくなる。運命って、ひどい。
馬鹿な人は破滅、恋の魔力にとらわれて、
短く楽しい夏の日々を無駄にして、
知恵の道からはずれてさまよって、
心の棘の荒地にひとり住む。
あの聖なる教会で幸せに生きる人、
清らかさを祀る教会で、
悲しみの恐れも知らず、悪意も知らず、
心静かに、変な望みをまったく抱かず生きる人は、
軽い気持ちで花咲く楽しい罠の道に行かないほうがいい。
甘い毒の鎖で心が縛られてしまうから。

*****
Mary Robinson
Sappho and Phaon
5. Condemns its Power

Oh how can love exulting reason quell?
How fades each nobler passion from his gaze—
E'en fame, that cherishes the poet's lays,
That fame ill-fated Sappho loved so well?
Lost is the wretch, who in his fatal spell
Wastes the short summer of delicious days,
And from the tranquil path of wisdom strays
In passion's thorny wild forlorn to dwell.
Oh ye who in that sacred temple smile
Where holy innocence resides enshrined,
Who fear not sorrow, and who know not guile
(Each thought composed, and every wish resigned),
Tempt not the path where pleasure's flowery wile
In sweet, but poisonous, fetters holds the mind.

https://www.poetrynook.com/poem/sappho-and-phaon-5-condemns-its-power
http://content.cdlib.org/view?docId=kt929016dt;NAAN=13030(1796)

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Robinson, Sappho and Phaon 3: The Bower of Pleasure

メアリー・ロビンソン
『サッポーとパオン』
3. 快楽の木陰

下を見れば谷。枝がからみあい、
燃えあがる松明(たいまつ)のような真昼の光も届かない。
いたずらっぽいファウヌス、えくぼのクピドたちが手招きする
快楽の木陰、その向こうの広場。
静かなフルートの音のなか、すみれのベッドに寝ころがる
美しい人。まるで魔法、目が離せない。
気高く、やさしいその姿……夜の女王、
銀の鎧のディアナでも敵わない!
鳥たちの幸せの歌、軽やかな西風ゼピュロスは大地に口づけ、
ヒュアキントスの花の神々しい香りをかすめとる。
透きとおるきらきらの泉の数々、
そこから流れる小川の鈴の音、競いあって咲く花たち!
クピドたちが笑い、胸の血を洗い流すところ。
恋の暴君が死に絶えて、りっぱなお墓に眠るところ!

*****
Mary Robinson
Sappho and Phaon
3. The Bower of Pleasure

Turn to yon vale beneath, whose tangled shade
Excludes the blazing torch of noonday light:
Where sportive fawns and dimpled loves invite,
The bower of pleasure opens to the glade.
Lulled by soft flutes, on leaves of violets laid,
There witching beauty greets the ravished sight,
More gentle than the arbitress of night
In all her silvery panoply arrayed!
The birds breathe bliss, light zephyrs kiss the ground
Stealing the hyacinth's divine perfume;
While from pellucid fountains glittering round,
Small tinkling rills bid rival flowerets bloom!
Here, laughing cupids bathe the bosom's wound;
There, tyrant passion finds a glorious tomb!

https://www.poetrynook.com/poem/sappho-and-phaon-3-bower-pleasure
http://content.cdlib.org/view?docId=kt929016dt;NAAN=13030(1796)

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Robinson, Sappho and Phaon 2: The Temple of Chastity

メアリー・ロビンソン
『サッポーとパオン』
2. 純潔の教会

高い岩の上に、空と同じくらい古い
教会がある。死なない神々が建てた、
純潔の女神の教会。枯れない天の花が
氷柱(つらら)にからみつき、立ち昇る。
その花のあいだには、きらめくインドの真珠!
空を貫く黄金の三日月の塔がいくつも、
透明な雲のヴェールの向こうに。微笑む〈時〉たちの
はためく羽、そこから降る天の喜び!
真っ白な大理石の階段、そのあちこちを飾る
死なない薔薇。棘の武装のなか
登っていくと、祭壇が見える。床は氷、
はねつけられた男たちの涙の石がちりばめられている。
巫女たちは、女神を称えてひざまずく。
愛の神は、折れた矢をもって、ひとり寂しく立ち去る。

*****
Mary Robinson
Sappho and Phaon
2. The Temple of Chastity

High on a rock, coëval with the skies,
A temple stands, reared by immortal powers
To chastity divine! Ambrosial flowers,
Twining round icicles, in columns rise,
Mingling with pendent gems of orient dyes!
Piercing the air, a golden crescent towers,
Veiled by transparent clouds; while smiling Hours
Shake from their varying wings—celestial joys!
The steps of spotless marble, scattered o'er
With deathless roses, armed with many a thorn,
Lead to the altar. On the frozen floor,
Studded with tear-drops petrified by scorn,
Pale vestals kneel the goddess to adore,
While Love, his arrows broke, retires forlorn.

https://www.poetrynook.com/poem/sappho-and-phaon-2-temple-chastity
http://content.cdlib.org/view?docId=kt929016dt;NAAN=13030(1796)

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(私の)ラテン語の学びかた

(私の)ラテン語の学びかた

1.
読みたい原文を用意する。最初は英語訳・日本語訳などがあるものがいい。原文テクストは、メモを入れられるように拡大コピーをしておく(A4 --> A3)。

2.
辞書を用意する。私が使っているのはこれら--
- Cassell's Latin Dictionary:語彙数に不満
- 『古典ラテン語辞典』(大学書林):巻末の活用表が親切
- Sidwell, Reading Medieval Latin
- Stelten, Dictionary of Ecclesiastical Latin
- Charlton T. Lewis, and Charles Short, eds., A Latin Dictionary
http://www.perseus.tufts.edu/hopper/text.jsp?doc=Perseus:text:1999.04.0059
- J. E. Riddle, ed., A Complete Latin-English Dictionary:これが使える
https://books.google.co.jp/books/?id=D5rj4TQnbE4C&redir_esc=y

3.
教本を用意する。私が使っているのはこれら--
- 山下『しっかり学ぶ初級ラテン語』
- 樋口・藤井『詳解ラテン文法』(の付録の語尾変化表のみ)
- 逸見『ラテン語のはなし』(教本ではなく雑談集のようなもの)

4.
教本を少しずつ読む。その際、さまざまな語尾変化・活用を少しずつノートに写す。(このノートと辞書を見れば原文が読めるように。)

私のように暗記が嫌いな人は、語尾変化・活用を暗記しようとはしないこと。上の教本には「暗記しなければ話にならない」というようなことが書かれているが、すべて無視。暗記はまったく楽しくない。自由意思を奪われたかのような絶望的な気分になる。最終的にラテン語が嫌いになる。学ぶ気が失せる。自信をなくす。苦労ばかりで得られるものがあるようには思われない。まさに時間の無駄・人生の浪費。……などと、心がすさんで罵詈雑言しか出てこなくなる。

5.
4の作業と同時進行で、原文を少しずつ読む。具体的な作業は以下のとおり。

(1)教本とノートと辞書を頼りにして、各語の性数格や法相態など(の可能性)をすべてメモする。
(2)本文とメモ(と、これらだけで理解できなければ英語訳・日本語訳も)を参照しながら、各語の性数格・法相態などを確定し、自分なりの訳文をつくる。

上のとおり、少しずつ教本を読み、少しずつノートをつくりながら原文を読むので、当然、性数格や法相態などまだまったくわからない語が少なからず出てくる。そういう時には、これを使う--
https://en.wiktionary.org/wiki/Wiktionary:Main_Page
https://ja.wiktionary.org
(記載もれもあるが便利)

こうして読んでいると、不思議なことに、自分でも気づかぬうちに、特に努力もしていないのに、語尾変化や活用を自分が覚えはじめていることに気づく。これらの規則性・合理性が何となく見えてきはじめる。世の中うまくできていて、多少なりくり返していることは、それなりに自然と身についていったりする、ということだ。(思えば、日本語もそうやって身につけてきたはず。)

この、気がついたら覚えてた、というラッキーな学習量を増やすために、英語訳・日本語訳を見るのはできるだけ我慢する。またwiktionaryにも頼らないようにする。(するとだんだんこれらが不要になってくる。)

*****
以上、誰かの何かの参考になれば。


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Sannazaro, "Ad Ninam"

ヤコポ・サンナザロ
「ニーナに」
(エピグラム1.6)

お願い、ニーナ、600回、
ぼくにキスして、お願い。
女の子がパパにするようなのじゃなくって、
妹が兄にするようなのでもなくって、
求めてくる夫に花嫁がするように、キスして。
女の子が若い彼氏にするように、キスして。
長い時間、キスしていたい。
気持ちいいのがすぐに消えたら嫌だから。
何も言わない大理石や、絵に描いた
女神の顔にキスしてもうれしくない。
君の舌をぜんぶぼくの
ぬれた唇で包みこんで、
そして、ちゅーって吸いたい。ついでに、ちょっと
噛んだりしたい。小さな鳩みたいに
くちびるをやさしく突っつきあって遊びたい。
かわいいうめき声が聞きたい。
そういうのが楽しくて、ヒュブラ名物の
蜂蜜とか、シキュラ名産のさとうきびの蜜とかよりずっと甘い。
そうしてる時だけ、神さまたちが食べたり飲んだりする
アンブロジアやネクタルみたいに甘い汁があふれ出す。
そういうものがぼくの手に入って、そしてついでに君が
胸をさわらせてくれるなら、
誰だって思うだろ? そんなぼくにとっては大資産も
黄金も王位も、コイン一枚くらいの価値しかない、って。
そうなったら、もういらない、
アウロラやウェヌスといっしょに過ごす幸せな夜も、
もっと幸せな、若さの女神ヘベといっしょの寝室も。
別にいい、ヘベがヘラクレスと離婚してきても。
相手にしない、ぼくにずっとついてきてお願いしてきても、
ぼくに永遠の若さを約束してくれたとしても。

*****
Jacopo Sannazaro
"Ad Ninam"
(Epigramme 1.6)

Sexcentas Nina da, precor, roganti
Sed tantum mihi basiationes;
Non quas dent bene filiae parenti;
Nec quas dent bene fratribus sorores
Sed quaes nupta rogata det marito
Et quaes det iuueni puella charo.
Iuuat me mora longa basiorum;
Ne me tam cito deserat uoluptas.
Nolo marmora muta, nolo pictos
Dearum Nina basiare uultus:
Sed totam cupio tenere linguam,
Insertam humidulis meis labellis;
Hanc & sugere; morsiunculasque
Molles adijcere; & columborum
In morem, teneros inire lusus
Ac blandum simul excitare murmur.
Haec sunt suauia dulciora melle
Hyblaeo, & Siculae liquore cannae.
Haec sola ambrosiaque, nectarisque
Succos fundere, sola habere possunt.
Quae si contigerint mihi, tuisque
Admouere sinas manum papillis,
Quis tunc diuitias, quis aurum et omneis
Assis me putet aestimare reges?
Iam non maluerim mihi beatas
Aurorae, Venerisque habere nocteis:
Non Hebes thalamos beatiores
Non, si deserat haec suum maritum
Non si me roget usququaque, non si
Aeternam mihi spondeat iuuentam.

https://pointofdew.com/2013/01/13/cant-get-you-out-of-my-head-11/

*****
カトゥルスからセクンドゥスへの中継点。
Catullus
Secundus

*****
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Sannazaro, Elegia Tertia

ヤコポ・サンナザロ
「エレギア 3:恋人に」

どんな女の人があらわれても、ぼくのいちばん好きな人は変わらない。
たとえウェヌスが空と星の世界を棄ててこの世に降りてきても。
君が最初に火をつけた。だいぶ昔、こどものぼくに。
君が最後に火をつける。年をとって震える未来のぼくに。
ぼくと君を結んだのは神々で、
死ぬまでぼくたちは別れない。
もし君が死んでぼくが残されたならば
(そんな予感、神々が風に吹き飛ばしてくれますように)
ぼくはお墓に眠る君の骨に捧げよう、
悲しみのなか、お香と薄めていないワインを、この手で。
君の霊の聖なる守護者、君のお墓の司祭になって、
リラをの悲しい音にあわせて悲しい歌を歌おう。
君の骨壺を抱きしめよう。誰もぼくを引き離せやしない。そして
そのまま、ぼくは君の灰に最後のキスをしながら死ぬ。
でも、もし運命が許してくれるなら、ぼくが死にたい。
かたちのいい君の手でぼくのまぶたを閉じてほしい。
愛しい君の顔をじっと見て、
魂が抜ける最後の最後までぼくは君に語りかけ、そして死ぬ。
君はたまらなくなって、ぼくの魂を墓から呼び戻そうとする。
ぼくの小さな骨を集めて胸に抱いて
泣いて、長い髪をお墓の前でかきむしって、
そしてぼくの名を叫ぶ。死にそうなくらいに嘆き悲しみながら。
その後、ぼくの灰、というかまだ赤い燠の状態のぼくを悼みつつ、
灰色の百合と真っ赤な薔薇を捧げてくれたらうれしい。
そのまま悲しい日々、悲しい夜を過ごしていってくれたら
うれしい。新しい恋人はつくらないで。
いつもぼくのことを思い出して、頭が白くなるまで浮気しないで。
愛しい手が震えるようになっても、お墓に立派な捧げものをもってきて。
そうしてぼくを大事にしてくれるなら、
血に飢えたラケシスに命の糸を無理やり切られてもかまわない!
死んでもアラブの新しい酒が飲みたい、とか、
燃えて灰になった体にアッシリアの香水を、とか、そんなこと言わない。
お供えものが噂になんてならなくていい。
星に届くような大理石の塔なんていらない。
ただ、悲しむ君の声をずっと聴いていたい。
君の涙で濡れた花冠を飾ってほしい。
その頃、ぼくはレテの川岸あたりを散歩してる。
死後の世界の日の光は鈍くて、昼か夜かわからない。でも、
香り軽やかなシナモンや神々の使うアンブロジアの緑の森があって、
そして、レテの水を浴びれば幸せになれる。
ぼくは夢のように甘い過去の暮らしを語りながら、
たくさんもらった贈りものを、楽園で歌い踊る人たちに見せびらかそう。
そして、幸せな人たちのなか、いちばんの幸せ者として、
ぼくは広い楽園じゅうに響く拍手喝采を受けるんだ。
そして、取り巻きのひとりが浮かれて楽しそうに、咲いたばかりの
花をあたりにまき散らし、それから、ぼくに花冠をくれるんだ。
ついでに彼は、一途な恋人たちを称えて、
そして、君の純愛について他の者たちにも話すんだ。
……でも、初々しい若葉のように、まだこれから楽しい時間がくるんだし、
神々の定める運命もぼくらが抱きしめあうことを許してくれてるから、
ベッドで悪いことして、いっしょに甘く楽しもう。
ほら、〈死〉の仲間の腰の曲がった〈老い〉が追いかけてくるよ。
美しくない顔のしわと人生の終わりもね。
やわらかいベッドで遊んだり、もうできなくなくなるよ。
だから、今のうちに思う存分抱きしめあおう。両腕で、首をぎゅ、って。
いつか思いもよらない時に最期がきて、ふたりを引き離してしまうから。
神さまたち、ぼくの固い思いがこの先何年も変わらないようにしてください。
白く輝く羽のクピドに、ぼくの思いを実現させてください。

*****
Sannazaro
"Elegia Tertia: Ad Amicam"
("Nulla meos poterit mulier praevertere sensus")

https://archive.org/details/bub_gb_GWnlWlL1408C/page/n169/mode/2up
(pp. 104-7)

*****
カルペ・ディエム carpe diem
エレゲイア elegeia
ティブルス Tibullus
プロペルティウス Propertius

*****
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Robinson, Sappho and Phaon 1

メアリー・ロビンソン (1756/7/8? -1800)
『サッポーとパオン』
1. 序

天の恵みを受けている人は、最高に
幸せ。空想の炎に燃えて。
魔法の指で詩の女神のリラを弾いて、
いろんなリズムで歌う。豊かに、清らかに!
心を歌で彩って、
不滅の名誉に向かって舞いあがる。
下品な欲望の呪文に足を引っぱられることなく、
体を汚すことなく、卑しい喜びに実を落とすことなく。
そう、聖なる〈詩〉は、神のように
人の不幸を和らげてくれる。
感情に引き裂かれ、叶わぬ恋に心蝕まれ、
記憶に拷問され、狂気に駆られる、そんな時、
〈詩〉はつれて行ってくれる、楽園の木陰に。
死にそうな魂に少しだけ見せてくれる、天の国を。

*****
Mary Robinson
Sappho and Phaon
1. Sonnet Introductory

Favoured by Heaven are those, ordained to taste
The bliss supreme that kindles fancy's fire;
Whose magic fingers sweep the muse's lyre
In varying cadence, eloquently chaste!
Well may the mind, with tuneful numbers graced,
To fame's immortal attributes aspire,
Above the treacherous spells of low desire
That wound the sense, by vulgar joys debased.
For thou, blest Poesy, with godlike powers
To calm the miseries of man, wert given;
When passion rends, and hopeless love devours,
By memory goaded and by frenzy driven,
'Tis thine to guide him midst Elysian bowers
And show his fainting soul—a glimpse of Heaven.

https://www.poetrynook.com/poem/sappho-and-phaon-1-sonnet-introductory
http://content.cdlib.org/view?docId=kt929016dt;NAAN=13030(1796)

*****
(大意)
片思いでつらい時に物語をつくると、少しだけ幸せになれるかも。

*****
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Robinson, "Ode to Rapture"

メアリー・ロビンソン
「オード:恍惚」

自然の女神は、澄んだ空の色で
人の美しい本質を描いた!
心を奪い、誘い、
掻き立て、静めるすべてのものを正確に。
抑えられない数々の感情を筆でなぞる、すると
不思議、それらの姿が見えるようになった!
〈愛〉、〈哀れみ〉、〈希望〉……ひとつひとつ彼女は描く、
まさにその真の姿を!
その時、〈恍惚〉が矢のように視界を横切り、
女神の胸は赤く熱く燃える。……何、この新しい、荒々しい、喜びは!

呆然とする女神……思考が奪われてしまって、
どう感じていいか、どうしていいか、わからない!
でも、とっさに手にとる、魔法の筆を、色あざやかな、
最高に輝く虹色の光に浸して。
彼女はなぞる、赤らんだ頬を! 火花を放つ目を!
高く脈打つ、雪のような胸を!
その力の抜けた姿……
意識が飛んでいる! 無防備で、恥ずかしげで、熱い!
混乱していて、かわいい……しかもそれが自分でわかってない……
その姿を前に、女神自身、気が遠くなる。
筆を握る手が震える、もう描けない、
描けないけど……わかる! この感じがわかるのは自然の女神だけ!

わたしが描いたこれは何……自分でも驚きながら
自然の女神は語りかける、その美しい幻に!
高鳴る鼓動! 震える口からもれるため息!
思考の止まった、憧れるような目!
「空が生んだもののなかでいちばんきれいなあなた、
すぐに人の世界に飛んで行って、
穏やかさとやさしさに包まれて!
人の気持ちがわかる人、思いやりのある人の胸を癒してあげて!
あなたの魔法で高ぶらせ、震わせて、教えてあげて、
地上であっても、ひと時の天国が実現するの!」

女神は我を忘れてこう言った。が、そのあいだ、すでに
輝く幻はしだいにかすれていき、
雲の向こうでうっすら光る彗星のように、
はかなく消えた。美しすぎるものは長続きできないのだから!

*****
Mary Robinson
"Ode to Rapture"

NATURE, with colours heavenly pure,
Her proudest attributes display'd!
ALL that could fascinate, allure,
Inspire, or soothe, her skill essay'd:
She trac'd the PASSIONS, at command,
Each yielded to her potent hand!
LOVE---PITY---HOPE---by turns she drew,
To each she found HER PENCIL TRUE!
'Till RAPTURE, darting o'er her sight,
Inspir'd her glowing breast with NEW and fierce DELIGHT!

NATURE, astonish'd at those charms,
Which fill'd her soul with wild alarms!
Then seiz'd her magic pencil, gay,
Dipt in the Rainbow's brightest ray:
She trac'd the BLUSH! the sparkling EYE!
The snowy BOSOM, beating high!
Yet, o'er the languid Form,
Extatic! tender! timid! warm!
A sweet CONFUSION seem'd to steal---
SUCH as NATURE'S pencil, faint,
Trembling try'd, but could not paint;
Yet, SUCH AS SHE ALONE could FEEL!

Now, wond'ring, at the work she made,
She thus address'd the beauteous shade!
With throbbing pulses, quiv'ring sighs,
And fond, adoring eyes!
"Fairest off'spring of the sky!
Swift to MORTAL regions fly,
Go, in all thy softness drest,
Soothe, the sensate, yielding breast!
And show, thy magic thrill was giv'n,
To prove on EARTH, a transient HEAV'N!"

As NATURE spoke, half madd'ning at the view,
The glowing PHANTOM fainter grew!
Till, like a meteor, glimm'ring thro' a shade,
TOO EXQUISITE TO LAST! the FLEETING FORM DECAY'D!

http://spenserians.cath.vt.edu/TextRecord.php?action=GET&textsid=38653

*****
キーワード:
感受性 sensibility

*****
感受性の主題と女性の性感覚を結合させた超実験作。
雑誌The Oracle上に偽名(Laura Maria)で発表。
ラウラとマリア……で、この詩……。

*****
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Robinson, "The Linnet's Petition"

メアリー・ロビンソン
「ひわからお願い」

I
ある日、ステラはすわっていた、
銀梅花(ぎんばいか)の木の陰に。
すると、小鳥が悲しげに
話しかけてきた、考えごとをしてたステラに。

II
りっぱなかごのなか、
羽と声のきれいな鳥は、
歌にのせて、こう
率直に訴えてきた。

III
「ああ! かわいそうなぼく、不幸なぼく、
閉じこめられたぼくを自由にして。
そうしてくれたら、あなたもずっと安らかで
自由でいられるようにしてあげる。」

IV
「心から祈ってる。つつしんで
お願い、哀れに思って。
かわいそうなぼくにやさしくして。
ぼくの命を助けて。」

V
「ああ! どうしてぼくはここに閉じこめられているの?
ああ! どうしてこんな運命なの?
悪いことなんて何もしていない。
生きていても、悲しくて痛いだけなんて。」

VI
「ほかの鳥はいいな、
楽しそうに自由に歌えて。
いちばん身分の低い鳥でも、
ぼくよりずっと幸せ。」

VII
「神さまがくれた楽しい自由が
ぼくにはない、ひどすぎる!
何もしていないのに閉じこめられて、
死刑囚みたい、もう泣きたい。」

VIII
「夜明けの女神さまの銀の光が
朝を告げる時、
きらきらの露が地面で光ったり、
いばらの花を飾ったりする時、」

IX
「ぼく以外の鳥は
恋鳥に会いに出かけてたけど、
いつもぼくはのどを震わせて歌ってた、
君に喜んでもらうため。」

X
「毎日朝がくると、窓の下で、
銀梅花の木陰で、
がんばってた、歌を聴いてもらおうと、
力いっぱい。」

XI
「ねえ! この飾られたかごは何なの?
ぼくは何のために生きてるの?
閉じこめられて、つらい思いして、
自由を奪われて。」

XII
「ぼくがいちばん好きなんだよね、
鳥全部のなかで。
ねえ、ステラ、でもちょっと考えて。ぼく、つらい。
かわいそう、って思わない?」

XIII
「ここでこんな風に絶望するしかなくて、
なんの慰めもない。
これが運命だったら死ぬしかない、
なんの楽しみもないから。」

XIV
「ぼくは誰も傷つけないから、誰かから
傷つけられたことがない。意地悪されたこともない。
ぼくがこの世で望むのは、
君の邪魔をしないことだけ。」

XV
「だから不幸な運命のぼくをかわいそうと思って。
この檻から自由にして。
君がぼくを見て、そして感じなくてもすむように、
安らぎと自由を失う、ってどういうことなのか。」

XVI
ひわの心が伝わり、ステラは
やさしい気持ちになった。
すぐに彼に返してあげたい、
望みどおりの自由を。

XVII
やさしく彼女はかごを開けた、
共感、かわいそうに思う気持ちから。
心が通う喜びを
気高いステラの胸は感じた。

XVIII
はためく鳥をつかまえた時、
彼女はふしぎな興奮を覚えた。
でも、はるかに大きな幸せが待っていた、
その鳥を自由にした時に。

*****
Mary Robinson
"The Linnet's Petition"

I
As Stella sat the other day,
Beneath a myrtle shade,
A tender bird in plaintive notes,
Address'd the pensive maid.

II
Upon a bough in gaudy cage,
The feather'd warbler hung,
And in melodious accents thus,
His fond petition sung.

III
"Ah! pity my unhappy fate,
"And set a captive free,
"So may you never feel the loss,
"Of peace, or liberty."

IV
"With ardent pray'r and humble voice,
"Your mercy now I crave,
"Your kind compassion and regard,
"My tender life to save."

V
"Ah! wherefore am I here confin'd,
"Ah! why does fate ordain,
"A life so innocent as mine,
"Should end in grief and pain."

VI
"I envy every little bird,
"That warbles gay and free,
"The meanest of the feather'd race,
"Is happier far than me."

VII
"Sweet liberty by heaven sent,
"From me, alas! is torn,
"And here without a cause confin'd,
"A captive doom'd I mourn."

VIII
"When bright Aurora's silver rays,
"Proclaim the rising morn,
"And glitt'ring dew drops shine around,
"Or gild the flow'ring thorn,"

IX
"When every bird except myself,
"Went forth his mate to see,
"I always tun'd my downy throat,
"To please, and gladden thee."

X
"Beneath thy window each new day,
"And in the myrtle bow'r,
"I strove to charm thy list'ning ear,
"With all my little pow'r."

XI
"Ah! what avails this gaudy cage,
"Or what is life to me,
"If thus confin'd, if thus distress'd,
"And robb'd of liberty."

XII
"I who the greatest fav'rite was
"Of all the feather'd race,
"Think, Stella think, the pain I feel,
"And pity my sad case."

XIII
"While here condemn'd to sure despair,
"What comfort have I left,
"Or how can I this fate survive,
"Of every joy bereft."

XIV
"My harmless life was ever free,
"From mischief and from ill,
"My only wish on earth to prove,
"Obedient, to your will."

XV
"Then pity my unhappy fate,
"And set a captive free,
"So may you never feel the loss,
"Of peace, or liberty."

XVI
On Stella's breast compassion soon,
Each tender feeling wrought,
Resolv'd to give him back with speed,
That freedom which he sought.

XVII
With friendly hand she ope'd the cage,
By kindred pity mov'd,
And sympathetic joys divine,
Her gentle bosom prov'd.

XVIII
When first she caught the flutt'ring thing,
She felt strange extasy,
But never knew so great a bliss,
As when she set him free.

https://www.eighteenthcenturypoetry.org/works/pro75-w0060.shtml
一部修正(スタンザ8-9で時制が混乱)

*****
キーワード:
共感 sympathy, compassion
感受性 sensitibity

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共感の適用範囲を動物にまで拡大。

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