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Fanshawe (tr.), "Of Beauty"

リチャード・ファンショー(訳)
「美しさ」
バプティスタ・ガリーニ『恋する羊飼い』より

美しさは利用しよう。それがまだあるうちに。
楽しみはつかみとろう。すぐにどこか消えてしまうから。
大地は冬の上着を投げ捨てて、
再びきれいな姿を見せる。
でも、人に冬がきたらもう終わり。
泣いても叫んでも、春は二度と来てくれない。
肌には畑のような線、毛は雪の白。
恋心はまた芽生えても、恋人はもう帰ってこない。

*****
Richard Fanshawe (tr.)
"Of Beauty"
From Baptista Guarini, Il Pastor Fido

Let us use it while we may
Snatch those joys that haste away!
Earth her winter coat may cast,
And renew her beauty past:
But, our winter come, in vain
We solicit spring again;
And when our furrows snow shall cover,
Love may return but never lover.

https://www.poemhunter.com/poem/of-beauty-2/

*****
カルペ・ディエム Carpe diem

*****
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Fanshawe (tr.), Horace, Ode 3.30

リチャード・ファンショー (1608-1666) (訳)
ホラティウス、オード 3.30

真鍮より長持ちし、偉そうな
王のピラミッドよりも高く聳(そび)え立つものを
わたしはつくりあげた。大嵐も、
塔を呑みこむ海も、
無限につづく日々も、
攻めたてる〈時〉も、わたしの詩を葬り去ることはない。
わたしが完全に死ぬことはない。
わたしは完全には墓に入らない。
後世の者はわたしの名を誇らしげに語るだろう、
ローマにおいてローマが滅んだとしても。
アウフィドウス川が王の如く、怒涛の如く流れる国で、
ダウヌスが治める
水の足りない田舎の国で、わたしは語り継がれるだろう、
小さな頭の泉から詩を
奔流のごとくあふれさせ、はじめて
ギリシャの竪琴(リラ)にあわせてローマの魂を歌った男、と。
わたしの仕事は称賛に値するはず。
さあ、さあ、詩神よ、月桂の冠をわたしに。

*****
Richard Fanshawe (tr.)
Horace, Ode 3.30

A Work out-lasting Brass, and higher
Then Regal Pyramid's proud Spire,
I have absolv'd. Which storming Winds,
The Sea that Turrets undermines,
Tract of innumerable daies,
Nor the rout of Times can raze.
Totally I shall not dye,
And much of me the Grave shall flye.
Posterity my name shall boast,
When Rome her self in Rome is lost.
Where like a King loud Aufid reigns,
Where Daunus (poor in Stream) complains
To neighb'ring Clowns: I shall be sed
The Man, that from an humble head
T'a Torrent swoln did first inspire
A Roman Soul in Grecian Lire.
I labour with deserved praise:
Crown, Crown Me (willing Muse) with Baies.

http://quod.lib.umich.edu/e/eebo/A86558.0001.001

*****
「詩のなかで名声は永遠に」という主題の起源のひとつ。

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Fanshawe, "His Majesties Proclamation in the Yeare 1630"

リチャード・ファンショー
「オード--1630年、貴族に地元の邸宅に戻るよう
命じた国王陛下の布告発布の頃--」

今や世界のあらゆるところで戦争が起こっている。
復讐の女神エリニュエスたちがすべてを支配している。
あるいは復讐の炎が消えたばかりで、
嫌な煙と臭いが残っている。
オランダは長年のあいだ
キリスト教徒同士が戦う舞台であった。
が、今ほど激しい流血と狂乱が
演じられたことはない。
フランスは最近平和になったのに、
また内乱の太鼓が鳴り響いている。
古傷が閉じないうちから
新しい傷から血が流れる。
西の大グスタフは
神聖ローマ帝国の鷲の翼をへし折り、もぎとった。
彼ほど獰猛な王はこの地上に
存在しない。
彼は、失われたボヘミアを奪い返し、
傲慢な敵ティリーの非道に復讐し、
ドイツの大地に
スペイン軍の血を練りこんだ。
ポーランド軍はどうだ?
北国なのに兵士たちの血は沸騰している。
彼らを倒すべく怒り狂うロシアも
軍を立てる。
両軍、自信満々だ。かたや財力と、
戦いに欠かせない勇気を誇る。
かたや自慢は腕力だ。侵略してくるオスマン・トルコよりも
恐ろしいことをいつもしでかす。
トルコはトルコで、今、ペルシアの猛攻に耐えている。
イスラムという地獄が分裂して戦っている。
これがイスラムの
宗教改革なのか?
ただわたしたちの耕す島、
世界の外の世界とも呼ぶべきわたしたちの島だけが、
今の戦争から遠く離れて無傷である。過去の傷跡も
とっくに消えた。
この世でいちばん美しい、白き〈平和〉は、
永遠の安らぎを与えるかのように、
柔らかい羽を広げ、この地を
包む。
最高神ユピテルが父から支配権を奪ったとき、
たぶん彼は災い多きこの世から〈平和〉を追放し、
黄金の鎖で縛りつけたのだ、
この幸せな島に。
わたしたちの国は豊かな海に浮かび、
愛しあう小雉鳩(こきじばと)たちがあちこちで歌っている。
誰でも守ってくれる安全な場所、
そんな田舎の屋敷のような国。
だがわたしたちは、まるでそこに敵がいるかのように、
畑という戦場を農民たちに任せ、
いわば逃げてくる、
壁に守られた都市に。
妻も子も連れてくる。おしゃれな服も宝石も
みんなもってくる。今広まるそんな不幸を
王は断ち切ろうとしている。
とるに足らぬ
敵の攻撃・侵略など
気にせずともよい、
むしろ楽しめ、と言ってくださっている、
彼が実現してくださっている平和を。
うらやましいほどの余暇を満喫するよう、
王は貴族たちをそれぞれの土地に送り返す。
自分のためにではなく、むしろ貴族たちの
幸せを思って布告を出している。
言わば、この国の血と栄養が
根に集まり心臓を詰まらせていたが、
王はそれら命の源に国の各部に
広がるように命じているのだ。
これを歌って称えることなど、わたしの詩神の能力では無理だ。
愚かな時代だからどんな詩人にだって無理だ。
田舎の空気によって
清らかに酔っているのでなければ!
この布告の恩恵を受けて、各地の畑や
そこに蒔(ま)かれる種は、
かくも大いなる愛に対する礼として
ウェルギリウスのような大詩人を生むだろう。
テュティルスのような羊飼いが、わたしたちの国の
アウグストゥスを称えて美しく歌いつづけるだろう。
かわせみが巣をつくる凪(なぎ)のような平和を
もたらしてくれた王を称えて。
貴族たちは文句を言ってはいけない、
生まれ故郷に帰ることに。
帰れることは幸せなことだ。
誰が好んで
煙たい街で出世したいなどと思うだろうか。
地元の大地を耕すほうがずっといい。
自分の家の暖炉の脇に座って
輝く炎を眺めるほうがずっといい、
借金とりたちに絞めあげられることもなく、
つけに悩まされることもなく、
いい香りのする手、化粧した顔などという
罠にかかることもなく。
田舎では旱魃(かんばつ)で地面が割れたりする。
だから自由自在に涙を流せるあなたがた淑女のみなさんは、
大粒の涙の夕立を田舎で
降らせればいい。
星のようにまばゆく美しいあなたがた、
ここで熱く無駄に燃えていてはいけない。
さまよってないで自分の軌道に帰りなさい。
自分の空で輝きなさい。
国のあらゆる暗がりに
せめてひとつは宝石がなくてはいけない。
だからここに密集していないで
あちこちを照らしてあげなさい。
本当です、淑女のみなさん、
心地よい田舎の暮らしのなかにこそ、より健全な楽しみが、
本当の心の満足が、あるのです。
ちゃらちゃらした街の遊びのなかにはありません。
クピドも田舎では軽々しい恋の矢を放ちません。
純愛の矢を放つのです。
その矢についているのは欲情する雀の羽ではなく、
清らかな鳩の羽なのです。
田舎に行けば、ナイティンゲールの歌声が聞こえます。
(森のセイレンのような鳥で、しかも人を破滅させません。)
ナイティンゲールはとてもかわいい声で歌います、
強姦と殺人の歌を。
ひばりも歌っています。他の鳥の
合唱団もいます。それから
花々の共和国もあります、
田舎には。
百合が女王で、王は薔薇です。
撫子(なでしこ)が皇太子で、
チューリップという色とりどりの宮廷人がいます。
王家の赤ちゃんのようなつぼみもあって、
紫の菫(すみれ)は議員です。
その美しさは豪華な宮殿にも負けません。
偉そうに威張っている要人のお供の者たちよりも、
むしろはるかに立派です。
木を植えてもいいでしょう。あなたがたのこどもたちと
ともに育つのです。きれいな食卓の
テーブルになるでしょう。りっぱな実もなるでしょうから、
それを乾燥させてもいいでしょう。
ジュースにしてもおいしいですよ。
罪ではありません、
さくらんぼやあんずやすももの
甘い血に塗れても。

*****
Richard Fanshawe
"An Ode vpon Occasion of His Majesties
Proclamation in the Yeare 1630, Commanding
the Gentry to Reside upon their Estates
in the Country"

Now warre is all the world about,
And every where Erynnis raignes,
Or else the Torch so late put out
The stench remaines.
Holland for many yeares hath beene
Of Christian tragedies the stage,
Yet seldome hath she play'd a Scene
Of bloudyer rage.
And France that was not long compos'd
With civill Drummes againe resounds,
And ere the old are fully clos'd
Receives new wounds.
The great Gustavus in the west
Plucks the Imperiall Eagles wing,
Than whom the earth did ne're invest
A fiercer King:
Revenging lost Bohemia,
And the proud wrongs which Tilly dud,
And tempereth the German clay
With Spanish bloud.
What should I tell of Polish Bands,
And the blouds boyling in the North?
Gainst whom the furied Russians
Their Troops bring forth.
Both confident: This in his purse,
And needy valour set on worke;
He in his Axe; which oft did worse
Th'invading Turke.
Who now sustaines a Persian storme:
There hell (that made it) suffers schisme.
This warre (forsooth) was to reforme
Mahumetisme.
Onely the Island which wee sowe,
(A world without the world) so farre
From present wounds, it cannot showe
An ancient skarre.
White Peace (the beautiful'st of things)
Seemes here her everlasting rest
To fix, and spreads her downy wings
Over the nest.
As when great Jove, usurping Reigne,
From the plagu'd world did her exile
And ty'd her with a golden chaine
To one blest Isle:
Which in a sea of plenty swamme
And Turtles sang on ev'ry bowgh,
A safe retreat to all that came
As ours is now.
Yet wee, as if some foe were here,
Leave the despised Fields to clownes,
And come to save our selves as 'twere
In walled Townes.
Hither we bring Wives, Babes, rich clothes
And Gemms; Till now my Soveraigne
The growing evill doth oppose:
Counting in vaine
His care preserves us from annoy
Of enemyes his Realmes to'invade,
Vnlesse hee force us to enjoy
The peace hee made.
To rowle themselves in envy'd leasure
He therefore sends the Landed Heyres,
Whilst hee proclaimes not his owne pleasure
So much as theirs.
The sapp and bloud o'th'land, which fled
Into the roote, and choackt the heart,
Are bid their quickning pow'r to spread
Through ev'ry part.
O, 'twas an act, not for my muse
To celebrate, nor the dull Age,
Vntill the country aire infuse
A purer rage!
And if the Fields as thankfull prove
For benefits receiv'd, as seed,
They will, to quite so great a love,
A Virgill breed;
A Tytirus, that shall not cease
Th' Augustus of our world to praise
In equall verse, author of peace
And Halcyon dayes.
Nor let the Gentry grudge to goe
Into those places whence they grew,
But thinke them blest they may doe so:
Who would pursue
The smoaky glory of the Towne,
That may goe till his native earth,
And by the shining fire sit downe
Of his owne hearth,
Free from the griping Scriveners bands,
And the more byting Mercers books;
Free from the bayt of oyled hands
And painted looks?
The country too ev'n chopps for raine:
You that exhale it by your power
Let the fat dropps fall downe againe
In a full showre.
And you bright beautyes of the time,
That waste your selves here in a blaze,
Fixe to your Orbe and proper clime
Your wandring rayes.
Let no darke corner of the land
Be unimbellisht with one Gemme,
And those which here too thick doe stand
Sprinkle on them.
Beleeve me Ladies you will finde
In that sweet life, more solid joyes,
More true contentment to the minde,
Than all Town-toyes.
Nor Cupid there lesse bloud doth spill,
But heads his shafts with chaster love,
Not feathered with a Sparrowes quill
But of a Dove.
There shall you heare the Nightingale
(The harmelesse Syren of the wood)
How prettily she tells a tale
Of rape and blood.
The lyrricke Larke, with all beside
Of natures feathered quire: and all
The Common-wealth of Flowres in'ts pride
Behold you shall.
The Lillie (Queene), the (Royall) Rose,
The Gillyflowre (Prince of the bloud),
The (Courtyer) Tulip (gay in clothes),
The (Regall) Budd,
The Vilet (purple Senatour),
How they doe mock the pompe of State,
And all that at the surly doore
Of great ones waite.
Plant Trees you may, and see them shoote
Vp with your Children, to be serv'd
To your cleane boards, and the fair'st Fruite
To be preserv'd:
And learne to use their severall gummes,
'Tis innocence in the sweet blood
Of Cherryes, Apricocks and Plummes
To be imbru'd.

Curiosity of Literature (1863)
https://books.google.co.jp/books?id=vkVTAAAAcAAJ
一部修正

*****
論理構成がゆるいのは、ピンダロス以来のオードの
特徴。誰かを称える ≒ 誰かに語りかけるという
形式もそう。

この詩の背景にあるのは、いわゆる三十年戦争
(1618‐48)。

後半の田舎賛美の背景にあるのはホラティウス、
ウェルギリウス、マルティアリスら古代ローマの
詩人たちの作品。

ナイティンゲールの一節は、テレウスとピロメラと
プロクネの話から。オウィディウスの『変身物語』
などを参照のこと。

*****
以下、雑感。詳しいことはよく知らない。
関心があればご探究を。

三十年戦争に関わろうとしなったジェイムズ1世は
実はかなりの名君ではないか? カトリックに対して
敵意を燃やす(一部の声の大きな)国民には不人気
であったが、彼の平和政策は正しかったのではないか。

-----
なぜ人は戦う?

誰でも、多かれ少なかれ攻撃性をもっているから。
攻撃するのが好きだから。
勝つ、人に勝る、という刺激は心地いいから。

そんな攻撃性をどこで解き放つ?
戦争? スポーツ? 遊び? 仕事? 学校? 恋愛?
社会に? 人に? 自分に?

-----
この詩にあるとおり、17世紀前半のイギリスでは
貴族たちがロンドンに集まってきており、ジェイムズ1世と
チャールズ1世は彼らを地元に戻そうとしていた。
(タイトルにある1630年の布告はチャールズのもの。)

かたや今の日本では、貴族どころか(?)多くの
ふつうの人々が都市部に集まってきている。
東北全体より東京の人口のほうが多いとか、
まさに異常。省庁移転の布告でも出す?

*****
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Fanshawe (tr.), Horace, Ode 2.3

リチャード・ファンショー (訳)
ホラティウス、オード2巻3番

いつも同じ心の状態でいましょう。不運の
嵐に沈んだり、甘い
成功に酔わないようにしましょう。
だって、デリウスさん、あなたもいずれ死ぬのですから。
落ちこんでいても、
どこかの谷でのんびり寝転んでいても、結局、同じことです。
いつも楽しく生きましょう、
いちばんいいシェリー酒を飲みながら。
白いポプラと背の高い松が
いっしょに木陰をつくってくれるところ、
静かな小川がさらさら
曲がって流れるところで。
ワインと香水をもってこさせましょう。
あっという間に散っていく春の花をとってこさせましょう。
お金と若さがあって、そして〈運命〉の女神三姉妹が
まだ命の糸を切らないでいてくれるのですから。
買った家はいずれ手放さなくてはなりません。
金色のテヴェレ川の近くのお屋敷をです。
しかたありません。あなたが大事にしてきたものは、
みんなあなたの跡継ぎのものになります。
あなたがいにしえのイナコス王の子孫で
お金持ちでも、あるいは道端で
寝るような身分でも、結局同じことです。
〈死〉は誰にもえこひいきをしません。
みんな行き先は同じです。壺からくじを
最初に引いても最後に引いても
もらえるのは同じ切符です。それをもって
みんなこの世から永久に追放されるのです。

* * *
Richard Fanshawe (tr.)
Horace, Ode 2.3

Keep still an equal Minde, not sunk
With storms of adverse chance, not drunk
With sweet Prosperitie,
O Dellius that must die,
Whether thou live still Melancholy,
Or stretcht in a retired Valley;
Make all thy howers merry
With Bowls of choicest Sherry.
Where the white Poplar and tall Pine,
Their hospitable shadow joyne,
And a soft purling Brook,
With wrigling stream doth crook;
Bid hither Wines and Oyntments bring,
And the too short Sweets of the Spring,
Whilst Wealth and Youth combine,
And the Fates give thee Line.
Thou must forgoe thy purchas'd Seats,
Ev'n that which Golden Tiber wets,
Thou must; and a glad Heyre
Shall revel with thy Care.
If thou be Rich, born of the Race
Of Antient Inachus, or Base
Liest in the street; all's one;
Impartial Death spares none.
All go one way: shak'd is the Pot,
And first or last comes forth thy Lot,
The Pass, by which thou'rt sent
T'Eternall Banishment.

* * *
キーワード:
中庸 the golden mean
心の安らぎ ataraxia
カルペ・ディエム carpe diem
この世に対する侮蔑 contemptus mundi

* * *
英語テクストは Selected parts of Horace,
Prince of Lyricks (1652) から。

* * *
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Fanshawe (tr.), Horace, Ode 1.9

リチャード・ファンショー (1608-1666) (訳)
ホラティウス、オード 1巻9番

雪で砂糖づけのようになった丘が見えるだろう。
雪の重さに耐えられず、木々が苦しげにうめいている。
野原を小枝のように、あるいは血管のように
走る川も、凍って固まっている。
暖炉の炉棚に届くほど薪を積んで、
霜を溶かそう。大きなカップに、
さらに大きな水門から、
命のワインを注ぎこもう。
他のことはゼウスにまかせておこう。彼が
海の上、風たちの戦争をやめさせたときに、
糸杉は槍のような頭をふりまわすのをやめ、
老いた楡(にれ)の木のふるえも止まる。
明日のことを考えるのはやめよう。
本当に明日が来るかどうか、明日にならなければわからないのだから。
それから、若いのに、ダンスや
恋の楽しみを軽んじるのはやめよう。
年をとってイライラしがちになって、雪が降ったように頭の
髪が白くなるまでは、仮面劇やその他の舞台を逃してはいけない。
女の子がそっとささやく、
夜、約束した時間に--
隠れていて、
くすくす笑いながら出てくる--
ブレスレットか何かをとりあげてからかってみる、
恥ずかしげだけど積極的な子を--そんなことを、今、楽しもう。

* * *
Richard Fanshawe (tr.)
Horace, Ode 1.9

Thou seest the Hills candied with Snow
Which groaning Woods scarce undergo,
And a stiff Ice those Veins
Congeals which Branch the Plains.
Dissolve the Frost with Logs pil'd up
To th' Mantle-Tree; let the great Cup
Out of a larger Sluice
Pour the reviving Juice.
Trust Iove with other things; when he
The fighting Winds takes up at Sea,
Nor speared Cypress shakes,
Nor aged Elm-Tree quakes.
Upon to Morrow reckon not,
Then if it comes 'tis clearly got:
Nor being young despise
Or Dancings, or Loves Joyes.
Till testy Age gray Hairs shall snow
Upon thy Head, lose Mask, nor Show:
Soft whispers now delight
At a set hour by Night:
And Maids that gigle to discover
Where they are hidden to a Lover;
And Bracelets or some toy
Snatcht from the willing Coy.

* * *
英語テクストは、The poems of Horace consisting
of odes, satyres, and epistles (1666) より。

* * *
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Fanshawe (tr.), Martial, Epigram 10.47

リチャード・ファンショー (1608-1666) (訳)
マルティアリス、エピグラム 10巻47番

(よき友、マルティアリス君へ)
人生を楽しくしてくれるのは、以下のもの。
相続した土地と家、自分で得たものではなく--
耕したら実る畑、いつも火のともっている暖炉--
街にはほとんど行かず、裁判沙汰などいっさい避けること--
対等で、ずっと仲のいい友人--
健康なからだ、落ちついた心--
朝までぐっすり眠れること--
ものごとを単純に考える賢さ、質素な食事--
酒に酔わない夜、それでもゆっくりできる、という--
しっかりした、でも口うるさくない妻--
体の強さ、畑で働く者たちとは違う清潔さ--
自分以外の者にはなりたくない、という気持ち--
死を望まず、かつ恐れないこと。

* * *
Richard Fanshawe (tr.)
Martial, Epigram 10.47

The things that make a life to please,
(Sweetest Martial), they are these:
Estate inherited, not got:
A thankful field, hearth always hot:
City seldom, law-suits never:
Equal friends, agreeing forever:
Health of body, peace of mind:
Sleeps that till the morning bind:
Wise simplicity, plain fare:
Not drunken nights, yet loos'd from care:
A sober, not a sullen spouse:
Clean strength, not such as his that plows;
Wish only what thou art, to be;
Death neither wish, nor fear to see.

* * *
17世紀にもっとも英語訳された古典詩のひとつ。
Pope, "Ode on Solitude" 参照。)

* * *
ファンショーは政治家・軍人で文筆家。チャールズ一世、
および二世に仕えた。

1650年に爵位を与えられて貴族に。この詩の
最後から3行目に、明らかにそういう視点が見られる。
(この箇所は、マルティアリスのオリジナルにはない。
たとえば、ベン・ジョンソンの訳にもない。)

(上から3行目の内容は、オリジナルにもある。)

* * *
ラテン語オリジナルと、その直接的な英語訳は
次のページに。

http://blogs.dickinson.edu/
latin-poetry-podcast/2012/09/25/
wish-to-be-what-you-are-martial-
epigrams-10-47/

作中の "Martial" は、友人(いとこ?)。
同じ名前でまぎらわしい。

* * *
英語テクストは、A Handbook for Latin Clubs (1916) より。
https://archive.org/details/ahandbookforlat00paxsgoog

* * *
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