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Campion, Elegia 12

トマス・キャンピオン
エレギア 12

鳥占いでものごとを決める人、獣内臓占いなしで何もできない人には
わかってない、日々はあっという間に過ぎ去っていくことが。
先延ばしは無意味。運の女神は怠け者など相手にしない。
人に何か与えても、またすぐそれをとりあげる。
メネラオスが目を離しているすきにパリスはヘレネを奪う。
奪う者の味方をするのが運の女神と愛の神。
ヘロと寝るのはみんなの憧れ。でもただひとり、
ウェヌスが味方したレアンドロスだけがつきあえる。
薄暗い明りの下、ヘロが会うのはレアンドロスだけ、
ウェヌスに仕える仕事の後に。
よくあること、しつこい祈りが無駄になったり、
手抜きの祈りが予想以上にかなったり。
恋人がほんの少し何気なく遅れたために、ティスベは
真っ逆さまに冥界へ。
百年続くはずのものが一日で奪われたり、
百年かけて手に入らないものが一日で手に入ったり。
朝に摘まれなかった薔薇は、夜にはもう枯れて、倒れて、
自分の棘に刺されている。
楽しいあいだに、できるうちに、今の時間を生きよう。先のことは
すべて不確かで、終わったことはもう変わらない。

*****
Thomas Campion
Elegia 12

Qui gerit auspiciis res et, nisi consulat exta,
nil agit, hic subitos nescit abire dies.
suspiciosa mora est, fortuna irridet inertes,
omnia praecipiti dans redimensque manu.
dum Menelaus abest, Helenen Priameius urget, 5
urgentique aderant numina Fors et Amor.
Herus aeque omnes voluere cubilia, solus
Laeander Cypria sed duce victor amat.
solus congreditur dubia sub luce puellam
defessam sacris anti ministeriis. 10
saepe opportune cadit importuna voluntas,
insperataque sors ad cita vota venit.
parva sed immemoris sponsi cunctatio Thisben
seque per umbrosum praecipitavit iter.
una dies aufert quod secula nulla resolvent, 15
secula quod dederint nulla, dat una dies.
mane rosas si non decerpis, vespere lapsas
aspiecies spinis succubuisse suis.
dum iuvat, et fas est, praesentibus utere; totum
incertum est quod erit; quid fuit, invalidum. 20

http://www.thelatinlibrary.com/campion/campion.elegies.shtml

*****
ホラティウス1.11系統。
Horace, Ode 1.11

*****
(メモ)
nom. Hero
gen. Herus
dat. Hero
acc. Hero
abl. Hero
voc. Hero
http://www.dicolatin.com/EN/LAK/0/HERO/index.htm

*****
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Campion, "De Mellea Lusus"

トマス・キャンピオン
「ハニーの歌」

きれいな薔薇の園のなか、薔薇よりきれいなぼくの好きな子が
木陰で熟したいちごを摘んでいる。
そこに愛の神がやってきた。最近あいつ、矢も矢の筒ももってない。
かわりに使うのは、口から火を噴く鉄の機械。
おとなしく見える粉に火をつけて弾をぶっ放す。
静かな粉、それが突然、雪みたいに真っ白な閃光を放つ。
たいしたガキだ! 知恵があるのはいいけど、やりすぎだろ、クピド!
目隠しはどうした? ちゃんと見て、
わざわざ狙って、弾丸を撃ちこむのか?
見てんだぞ、この茂みから。
ぼくに気づいてクピドは顔を赤くした。けれど、強がって
笑ってこう言った、「君、ぼくの兵士にならない?
報酬の金がいる?
なら、黄金よりきれいなあの子から5キスもらって。
ついでに、あの子がぼくたちの攻撃に降伏したら、
今度は君から5キス払ってあげて。」
「いやいや、100キスでも1000x100キスでも喜んで。
無駄づかいしろ、って言ってくれたほうがうれしいから。」
こうぼくが言うと、クピドは逃げていった。七色の羽がパタパタ。
クピドより上の神みたいに、ぼくたちはたがいにキス。
クピドの指揮下でつらい戦いをしてきたけど、
これからの戦いはすてきな夜の戦い。

*****
Thomas Campion
De Mellea Lusus

Pulchra roseta inter mea Mellea pulchrior illis
dum legit umbroso mollia fraga solo,
venit Amor, qui iam pharetra positisque sagittis
gestitat ignivomo ferra forata cavo.
pulvis agit sine voce pilas ubi concipit ignem, 5
et nivis in tacito pulvere candor inest.
audax o nimium puer! o versute Cupido!
tu ne ferebaris caecus? at ipse vides,
argutoque minax intendis acumine ferrum.
intueor, licet hac fronde latere velis. 10
erubuit deprensus Amor, risuque fugavit
mollitiem, et dixit "tu mihi miles eris.
si confirmandus de more poposceris aurum,
aurea virgo tibi haec oscula quinque dabit.
post illa ut nostris possit succedere castris, 15
aurea iam de te basia quinque feret."
"immo etiam de me centum, vel millia centum,
et placeas mage si prodigus esse velis."
dixi, aufugit Amor, pictasque reverberat alas,
nos veriti numen mutua labra damus. 20
gessimus acre dehinc ductore Cupidine bellum,
et reparat nova nos in nova bella dies.

http://www.intratext.com/IXT/LAT0680/_PF.HTM
一部修正

*****
最後から3行め、veriti numenのところをはじめ、
ラテン語が不明瞭・不正確なのでは。
1595年版のPoemataに収録されつつ
1619年のElegiarumから消えているのは、
そういうことかと。

ここに英語訳がある。
http://www.philological.bham.ac.uk/campion/elegies_trans.html#e15
(やや不満。おとなしそうな火薬が次の瞬間に
爆音とともに炸裂、という時間差のある逆説が
理解されていない。最後のbellaの二重の意味も
無視されている。)

*****
キャンピオンはイギリスで最初のラテン語エレギア詩人。

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Campion, ("Harden now thy tyred hart")

トマス・キャンピオン
(「まただ、心を石にしろ」)

まただ、心を石にしろ。怒れ。火打石より硬くなれ。
あの子の嘘泣きに騙されていつもの悲しみを忘れてはだめだ。
本当に幸せだった、あの子が優しくて浮気しなかった頃は。
ふたりでひとりだった。口も耳も心もひとつだった。
でもそんなきらきらの日々はもう終わり。二度と戻らない。
あの子の浮気を悲しむ以外、今、何ができる?

裏切り者の馬鹿女め、今後誰の肩に頭をのせるつもり?
誰に可愛く話しかける? 誰の耳に歌う?
きらきらした目を誰が褒めてくれる? 誰が喜んでキスしてくれる?
誰が毎日来て「君だけだ」とか言ってくれる?
そんなのは過去のこと。残念、もう終わったこと。
ぼくのことをいつも思い出すだろう、たぶん。

*****
Thomas Campion
("Harden now thy tyred hart")

Harden now thy tyred hart, with more then flinty rage;
Ne'er let her false teares henceforth thy constant griefe asswage.
Once true happy dayes thou saw'st when shee stood firme and kinde,
Both as one then liu'd and held one eare, one tongue, one minde:
But now those bright houres be fled, and neuer may returne;
What then remaines but her vntruths to mourne?

Silly Traytresse, who shall now thy carelesse tresses place?
Who thy pretty talke supply, whose eare thy musicke grace?
Who shall thy bright eyes admire? what lips triumph with thine?
Day by day who'll visit thee and say 'th'art onely mine'?
Such a time there was, God wot, but such shall neuer be:
Too oft, I feare, thou wilt remember me.

http://www.luminarium.org/renlit/hardennow.htm

*****
カトゥルス8番の翻案。

「君が年をとったら」のパターンでまとめているが、
原作はちょっと違う。棄てられた自分に対して、
男らしくあきらめろ、しっかりしろ、と言っている。

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Campion, ("Come, you pretty false-ey'd wanton")

トマス・キャンピオン
(「悪い目をしたいたずらなあなた」)
(『歌の本』2.18)

悪い目をしたいたずらなあなた、
そんなふうにずるく微笑むのはやめてください。
ぼくからうまく逃げるつもりですか?
あいまいな言葉でお茶を濁して?
そうはいきません。前もそうでした、
ぼくをふりはらって逃げていきました。
でも、今日はつかまえました。
羽を切って飛べなくしてしまいます。
息ができないほどキスします、
助けを求めて叫べないくらいに。

数えてみてください、星の数を、
降りそそぐ雹の数を、
テムズ川の柳の枝の数を、
ドーヴァ―の岸を呑みこんでいる砂の数を。
それよりたくさんのキスを雨のように注ぎます、
あなたの唇が疲れるくらいに。
過去最高の豊作のように
たくさんで、とても気持ちいい。
でも刈りとったらすぐに食べて消えてしまう--
貯めておけない恋の宝はそんなもの。

今、誰にも聞かれない真夜中で、
みんな寝ていたら、
ここが砂漠で
誰も見ていなかったら、
欲望のまま、したい放題させていただきます。
君が叫んでも、ぼくは余裕で笑います。
もしいけないことをしてしまったら、
それは恋のせい。
ぼくはあなたの召使いになりたいのです。
あなたを新しい聖人として崇めたいのです。

*****
Thomas Campion
("Come, you pretty false-ey'd wanton")
Books of Airs 2.18

Come, you pretty false-ey'd wanton,
Leaue your crafty smiling:
Thinke you to escape me now
With slipp'ry words beguiling?
No; you mockt me th'other day;
When you got loose, you fled away;
But, since I haue caught you now,
Ile clip your wings for flying:
Smothring kisses fast Ile heape,
And keepe you so from crying.

Sooner may you count the starres,
And number hayle down pouring,
Tell the Osiers of the Temmes,
Or Goodwins Sands deuouring,
Then the thicke-showr'd kisses here
Which now thy tyred lips must beare.
Such a haruest neuer was,
So rich and full of pleasure,
But 'tis spent as soone as reapt,
So trustlesse is loues treasure.

Would it were dumb midnight now,
When all the world lyes sleeping:
Would this place some Desert were,
Which no man hath in keeping.
My desires should then be safe,
And when you cry'd then would I laugh:
But if ought might breed offence,
Loue onely should be blamed :
I would liue your seruant still,
And you my Saint vnnamed.

http://www.luminarium.org/renlit/comepretty.htm

*****
カトゥルス 7 と 48 の翻案。

16-17世紀イギリスにおいてカトゥルスがもっていた
意味は、上のように翻訳・翻案された詩よりも、
そうされなかった詩から推しはかるべき。

全訳が18世紀末までつくられなかったのは、
それどころか当初ほんの一握りの詩しか訳され
なかったのは、カトゥルスの詩がしばしば
猥雑だから。

*****
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Campion, ("My sweetest Lesbia, let vs liue and loue”)

トマス・キャンピオン
(「いちばんかわいいレズビア、生きて愛しあおう」)

いちばんかわいいレズビア、生きて愛しあおう。
りっぱな人たちはぼくらのことを責めるけど、
気にしたら負けだから。空の明かり、大きな星たちは
西に沈んで、そしてまたすぐに生き返る。
でも、命の小さな明かりが沈んだら、
ぼくたち、永遠の夜を寝てすごすことになってしまう。

もし、みんながぼくのように愛のなかに生きたなら、
剣や鎧が血に染まることなんてない。
寝てて太鼓やラッパでたたき起こされる、なんてこともない。
愛の戦いだったら話は別だけど。
命の明かりを無駄にするなんて、ただの馬鹿。
わざわざ痛い思いして、永遠の眠りを求めるなんて。

いずれ死んでぼくの人生が終わる、ってとき、
棺桶のまわりに友だちが集まってきて悲しむのはいやだな。
むしろ、たくさんの恋人たちにおしゃれしてきてほしい。
そして楽しく遊んで、幸せなぼくが入る墓をにぎやかにしてほしい。
そして、ね、レズビア、君がぼくの小さな命の明かりを消すんだ。
そして、ぼくの永遠の夜を愛の冠で飾ってほしいんだ。

* * *
Thomas Campion
(“My sweetest Lesbia, let vs liue and loue”)

My sweetest Lesbia, let vs liue and loue,
And though the sager sort our deedes reproue,
Let vs not way them: heau'ns great lampes doe diue
Into their west, and straight againe reuiue,
But soone as once set is our little light,
Then must we sleepe one euer-during night.

If all would lead their liues in loue like mee,
Then bloudie swords and armour should not be,
No drum nor trumpet peaceful sleepes should moue,
Vnles alar'me came from the campe of loue:
But fooles do liue, and wast their little light,
And seeke with paine their euer-during night.

When timely death my life and fortune ends,
Let not my hearse be vext with mourning friends,
But let all louers rich in triumph come,
And with sweet pastimes grace my happie tombe;
And Lesbia close vp thou my little light,
And crown with loue my euer-during night.

* * *
カトゥルス5番の翻案。元は同じ詩であるJonson,
"To Celia" ("Come, my Celia, let us prove") とは
まったく別のオチとなっていることに注目。

このCampionの作品は、まだペトラルカ的な純愛の
枠のなかで書かれている。死ぬのが愛されている女性
(ラウラ、ベアトリーチェなど)ではなく詩人である、
という点がおそらく新機軸。

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.luminarium.org/renlit/lesbia.htm

* * *
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