英語の詩を日本語で
English Poetry in Japanese
H. More, "Sensibility"
ハンナ・モア
『感受性--ボスカウェン夫人への書簡詩』
美しい魂は
美しい子を生まなくては ーーシェイクスピア
ボスカウェンさん、下手な詩ですが送ります。
とりえのない作品ですがお許しください。
あなたのために他の詩人たちが弦をはじき、
あなたのために歌ってきました。
そよ風にのって歌は消えていきます。
でも、素敵なメロディは耳に残っていることでしょう。
リトルトンやヤングの竪琴をお聴きになりましたよね。
美の女神や天使が奏でているかのようでした。
彼らは亡くなってしまいました! でも、
清らかで神聖な古代ギリシャの炎はまだ燃えています。
まだエルフリーダの詩人メイソンは悲しく語り、
ウォートンも古典のメロディを歌っています。
真の創作が死に絶えることはありません、
ビーティの歌にスペンサーの竪琴がよみがえっていますから。
彼の歌には魂がこめられていて共感を呼びます。
感情を歌う完璧な詩人なのです。
りっぱなロウス! 詩神たちが彼に編んでいます、
いちばん緑がきれいな木々のいちばんきれいな花の冠を。
彼の詩のなか、古代ローマの詩人たちが称えられ、
古代ローマの炎が明るく燃えていますが、
はかない名声よりも気高いものを求め、彼は燃えています。
いずれ消えてなくなる称賛などいらないのです。
人智で勝ちとった安っぽい冠を棄て、
彼はアモスの子預言者イザヤの崇高なる翼で舞いあがりました。
イザヤのマントをもらい受け、
マントとともに彼の魂も手に入れました。
まばゆい美を運命に呑みこまれないよう守ること、
美とロウスに永遠の命を与えること、
燃える天才の炎、品のいい慎みのありかたを示すこと、
(天才とは何か、慎みとは何かはロウスの詩を見ればわかりますが)
これらはレイノルズに任せましょう。ジェニンズもいます。
知性以下のものはロウスにはありませんでした。
それから、敬虔な心ゆえにあなたは燃えていました、
どんな詩人たちよりも清らかな炎で、
そう、牧師のチェスターさん! あなたは詩神九人の自慢です。
ジョンソンも詩神の下にいます。いえ、上にいると言うべきですね?
そうです、ボスカウェンさん、あなたの星は、まだ他にも
すてきな友だちと楽しみを与えてくれています。
まるで天国、この世でいちばんの幸せです、もっとも賢く、
もっとも輝き、もっともいい人たちを友と呼べるなんて。
カーターとともに知性の根源をアテネまでたどることができます。
モンタギューによってアテネの知性を今でも目のあたりにできます。
楽しくシャポンの作品から学ぶことができます。これは今の時代の
楽しい教えであり、また次の時代の礎(いしずえ)となるでしょう。
ウォールシンガムにはいろんな力があります。
孤独な人を慰め、教養ある人の余暇を豊かにします。
人生を磨いて最高に美しくしてくれます。
言葉に歌が聞こえてきます。絵が動いて見えます。
デラニーの詩は澄みわたり、輝いています、
知恵の強い光と美徳のやさしい光のなかで。
スウィフトの友だちで彼の詩に輝いている
あの方は、今でもわたしたちの時代を明るくしてくれています。
いつまでもいつまでも照らしてください。恵みの星であるあなた!
沈みながらより明るく光ってください!
ああ、バーボールドさん! 称えないわけにはいきません、
あなたの美徳と優れた作品を。
あなたの頭に月桂冠を編ませてください。
それから、わたしにお許しください、
称賛を他の人よりたくさんあなたに捧げることを。
あなたの詩にわたしは心とらえられています。
詩であなたの優れた点を世界に広めさせてください。
わたしには届かないあなたの才能を称えさせてください。
でも、知性とは何でしょう? 詩人の技術とは何でしょう?
天賦の才能があれば心を傷から守ることができるでしょうか?
むしろ反対です! 想像力の光の下、
繊細な心が感じる痛みはますます強くなります。
赤熱するほど高度に洗練された感性・感受性をもつ人の
心は、苦悩の膿に爛(ただ)れてますます苦しむのです。
感覚がすみずみまで行きわたり、
すべての神経を震わせるからです。
気高い心の持ち主で、けっして人を泣かせない人は、
自分が泣く運命なのです。
知性や歌には力があると言いますが、それで
人生の苦しみがひとつでも軽くなりますか? 命が長くなりますか?
そんなの、思いあがった妄想です! いつも真理に嘲笑われています。
だからあなたは涙を流してきたし、ギャリックは死んでしまいました!
愛しい彼のことはけっして忘れません、
詩人としてのわたしを導き、批判し、守り、輝かせてくれた彼を!
ハンプトンの森! わたしの悲しみを見てください。証言してください、
知性や歌で、彼を骨壺から救うことができますか?
今も語られる彼の美徳ゆえにあなたは美しい、
でもそんな彼がもういないからわたしは泣いているのです!
ギャリックさん! あなたは友人にふさわしい人でした。
そして、自慢させてください、あなたはわたしの友人でした。
自慢の友人でした! でもすぐ、そう言えなくなってしまいました。
死んでしまって、より神聖な人になってしまいましたから。
誰が今、鋭い洞察と冷静な判断で
あちこちさまようわたしの詩を導いてくれるのでしょう?
誰が嘘でもわたしを褒めてくれて自信をもたせてくれるのでしょう?
あの方は寛大で、わたしに優しく微笑んでくれました。
厳しい批評家たちの批判もあって
評価は下がりましたが、その損失を友情が埋めあわせてくれました。
友情の微笑みが力を与えてくれました。
厳正なる批評によって失われたものをとり戻してくれました。
鋭い洞察、何もかも見通す目で、
人が気づかないような欠点をあの方は見つけてくれたものでした!
そして優しくあたたかく、そんな欠点を隠してくれた、
それどころか正当化してくれたものでした。
もしいい表現があればとても喜んでくれて、
わたしなんかの詩でも褒めてくれたものでした。
ああ、友だち思いのなんて優しい嘘!
うれしかったけど、わたしもそれで調子にのったりはしませんでした。
視野の歪んだ人でも認めざるをえない心の広さがギャリックにはありました。
彼のまわりにいるのは、みな人間らしい心ある人たちでした。
だからすべての立場の政治家たちが
彼から称賛されよう、愛されようと競いあっていました。
みなを惹きつけるその人徳から、彼は
キケロとカエサル、争う両者の友だったアッティクスのようでした。
彼の知性は鋭く、的をはずすことがありませんでした。
まったく欠点がなく、友を失うことがありませんでした。
まったく下心がなく、慎みの規範に反することがありませんでした。
まったく清らかで、神の意に背くことは絶対に口にしませんでした。
ギャリックの頭の回転の速さ、力強さ、熱い心は、
自然が与える以上のものであり、また人工ではありえないものでした。
もっとすぐれた、永遠の名声ある詩人が語ってくれているとおりです。
でもわたしにとって、彼の能力より美徳のほうが大事でした。
生まれもった偉大な力もありましたが、輝かんばかりに賢く、
道義心にあふれ、善良で立派だったこと、これは彼の努力の賜物でした。
時の手によって音もなく拭い去られ、
悲しみの色がしだいに薄れてきていますが、
彼の思い出は心いっぱいに残っています。表面が擦れて
丸くなっても、刻まれた思い出が消えることはありません。
ごめんなさい、ボスカウェンさん、悲しくて、
つらすぎて、これが詩であることを忘れそうです。
ごめんなさい、痛手を思い出して泣き崩れてしまいそう。でも
お許しいただけますよね、心の痛みはあなたのほうがよくご存知ですから。
友人・英雄に先立たれ、悲痛に打ちひしがれつつ
骨壺を前に顔を伏せるあなたを何度見てきたことでしょう。
あなたがいちばんご存知だと思います。感じやすい心は
わざわざ傷を見つけてしまう、自分に矢を向けてしまうものです。
心優しいあなたが悲しい経験から学んだのは、
敏感な心の傷は治らないくらい深い、ということでしたよね。
悲しみには千もの入口がある、ということでしたよね。
でも、それに負けない強い心が美しいのです。
心の激痛なしで生きたいとは思いませんよね?
心を麻痺させれば平穏でしょうが、生きる喜びもありませんよね?
上品で思慮がある、そんな心には
千もの入口から痛みが入ってきますが、
この千もの入口はいつも開いていて、
悲しみとともにいろんな喜びもそこから入ってきます。
震えるほど敏感な心は
不幸がもたらすすべての傷で痛いのですが、
同じように繊細な神経も
すべての喜びに反応して我を忘れます。
自分の幸せで心が高ぶっている時でも
他の人の不幸が悲しいように、
自分の悲しみが胸を攻めてきていても
他の人の喜びで幸せになれるのです。
過去につらかったことを思い出せば今でも少し悲しいのですが、
その悲しさはなぜか少し心地よかったりします。
平凡で鈍い人たちにこのわたしの心の歌は読んでほしくありません。
繊細な心の悲痛な叫びが茶化されるだけですから。
見方によっては、いちばん幸せなのは
精神性のまったくない低俗な遊びで満足できる人、
自分の痛みしか感じることができない人、
自分の悲しみしか理解できない人、
繊細で優しい感情なんてみんな嘘だと思っている人、なのかもしれません。
憐れみや友情を感じたことのない人なのかもしれません。
でも、それのどこが幸せなのでしょう? 人の心はないのでしょうか?
人を思いやる精神はないのでしょうか?
人の胸に宿るいちばん美しい感情はどこに行ってしまったのでしょうか?
人が幸せなときに自分も幸せになる、そんな心の温かさはないのでしょうか?
人の痛みを和らげてあげたいと思わないのでしょうか?
人に対する共感、優しさはないのでしょうか?
幸せなため息をつき、うれし涙を流したことはないのでしょうか?
甘い悲しみの魔法の力、地獄行きの幸せを知らないのでしょうか?
悲しみには悲しみの喜びがあるのですが、
この世を支配する〈愚〉の女神にはこれがまるでわかっていません。
頭の悪い幸せのなか有頂天な彼女は、
痛みのもたらす神聖な喜びを知らないのです。
用心深いことと正しいことは違います。
騙されたことのない人なんて、わたしには信用できません。
だから、凡人の皆さん、醜い喜び、
心を使わない遊びをどうぞご満喫ください!
けっして相手を選ばない善意
(常識的に拒むべき場合は除きます)、
一度結ばれたら絶対に裏切らない友情、
(信頼できるかどうかは迷いますが、一度信頼したらもう迷わないのです)
憐れみの優しいまなざし、温かく許してくれる心、
共感の涙、慈善の精神、
嘘のない、信じあえる愛、
けっして裏切らない高貴な信頼、
求められずとも、
苦境にあえぐ人の涙をぬぐってあげる憐れみ、
凡人の皆さんにこれらは絶対に理解できないでしょう。
だから醜い喜び、心を使わない遊びをどうぞご満喫ください!
あなたがた、輝く栄光の炎に身を溶かし、
名声の息吹きに魂を揺さぶられてきた、そんな気高い、
選ばれし少数のあなたがた! 栄光が約束する報酬を求め、
偉大なる思いに目覚め、理想を現実にしようとするあなたがた!
与える喜びをご存知のあなたがた!
まさに神の僕として、憐れな人たちに生を与えるあなたがた!
冷たく荒れはてた地に赴き、
沈む人々の心を支え、色のない頬に生気をもたらすあなたがた!
恋するペトラルカと悲しみをわかちあい、
またいつもティブルスのお墓に花冠をお供えしているあなたがた!
ハモンドが悲しく歌う
プロヴァンスの銀梅花(ぎんばいか)とローマの月桂を愛するあなたがた!
喜びをわかちあい、痛みも共有するあなたがた! そう、
立派なおこないや人並みはずれた想像力には喜びと痛みが伴うのですから!
そんな喜びと痛みを棄てられますか?
くだらない楽しみや自分勝手な安逸と引き換えに?
痛みから逃れるために喜びも棄てますか?
どん底の悲しみから逃れるために絶頂の幸せも棄てますか?
真の悲しみを棄てますか?
憂鬱な詩神の歌が聴こえなくなってもいいですか?
嫌ですよね? グレヴィルさん! 本当は嫌ですよね? あなたの歌は
涙の湖に浸っています。歌のなか魂が叫んでいます。
でも、そんな苦痛と苦悩が大事なんです。
平凡で平穏な暮らしがほしい、なんて言わないでください。
それから、優しいボスカウェンさん、涙が出てきますよね?
母にしかわからない幸せですよね?
本当にかわいい子たち、レヴェソン家に嫁いだフランシスさんと
ボーフォート公爵夫人となったエリザベスさんを見つめることは!
でも、ひとりひとりの子を待ち受けている危険を想像してみてください。
男の子なら勇敢であればあるほど、女の子ならかわいければかわいいほど、
幸せと危険が増していきます。
日々喜びとともに悲しみも増していきます。
喜びのはかなさはご存知ですよね。
ぎゅっと抱きしめると幸せの幻は壊れてしまいます。
人生の明るい太陽は曇ることもあります。
幸せな人ほど失うものも多いものです。
でも、美しいこどもたちから別れたいとは思いませんよね、
いつか来るかもしれない悲しみから心を守るために。
溺愛していた自慢の子たちを棄てたりできますか?
花開こうとしている二人の将来を見なくてもいい、などと思えますか?
目の前に開かれようとしている希望の未来と引き換えに
刺激のない平穏がほしいと思いますか?
あなたが心から祈ってきた二人の幸せより、
遠い将来のありそうもない危険のほうが重要ですか?
心配や恐れから逃れるためなら忘れ去ってもいいくらい、
二人の価値は低いのですか? あなたの愛は小さいのですか?
わたしは神々しい共感を称えます。
これにより、他人の困窮がわかちあえるのですから。
英雄のような正義の地位さえ怪しくなります。
原則ですら感情の力で流されます。
感情豊かな涙が自慢げにあふれれば、
厳しい真理、固い信仰、男らしい美徳だって逃げていきます。
愛しい感受性! まるで慰めてくれる神のよう!
こどもが生まれれば祝福を与えてくれます。
まるで守ってくれる妖精のように! 偽り、
見せかけの優しさとはまるで違います。
その不思議な力を鎖で縛ることはできません。
言葉ではあらわせません。そんなこと、無駄なのです。
美しい感受性! それは痛いほどの喜びです!
突然訪れる道徳、急にひらめく正義感です!
誰にも教わっていないのに知っている善、大事な大事な美徳の種です!
優しいおこないの源です!
誰にでも一目でわかる美しさ、輝く理性の夜明けの光、
だから思考が生まれる前に優しく照らしてくれます!
感受性を知らない人に言葉で説明しても無駄です。
知っている人にとって説明は無意味です。
雀の死が悲しいこと、とか、
我を忘れる(ふりをする)こと、とか、
オトウェイの劇を見て涙を流すこと、とか、
ジェーン・ショアが傷つき、死ぬのを見て気を失うこと、とか、
クレメンティナやクラリッサの不幸を見て
すぐに涙を流すこと、とか、そんな説明に意味はありません。
ごめんなさい! リチャードソンさん! そんなつもりじゃないんです。
あなたの描いたすばらしい場面を馬鹿にするわけじゃないんです。
もし美徳を愛する心の火がわたしのなかにあるのなら、
その火はあなたからいただいたものです。天使のように嘘のないあなたから!
静かな共感は何も言わずに手を差しのべます。
でもおしゃべりな感情は、こんなにあげる、と言いたがります。
どれほど心が傷つき血を流したか、つらそうに語り、
どれほど涙を流したか、嘘でも自慢します。
言葉は外面的なしるしにすぎません。心に宿る
美しい思いを指し示すのみです。
何かをあらわす表面的な記号であって、
その何かそのものではありません。ただの説明なのです。
思わず出る言葉も、優しい口調も、あたたかい涙も、
哀れみのまとうきれいな装いにすぎないのであって、
哀れみそのものではありません。ただ
内なる苦しみを服であらわしているだけです。
そして残念なことですが、そんな心のきれいな装い、
美しい記号も偽物だったりするのです。
哀れみの天使さま! どうして清らかなあなたの絵が
描かれたりするのでしょう? 質の悪い硬貨に?
悲しみに輝かんばかりの言葉でページを埋めつくす人がいます、
たとえば、怒り狂う銃弾に撃たれた鶸(ひわ)のかわいそうな話で。
今にも死にそうな子鹿を前に、
助けてあげられないつらさ・苦しさを美しい歌にする人がいます。
傷ついた動物のために悲しむ人がいます、
まるで死にゆく友や親や国を見ているかのように。
目をうるうるさせて天に昇るほどの喜びを見せびらかす人がいます、
蝶を蜘蛛の罠から助けたりして。
そんな悲しく美しい歌に皆の心が熱く燃えあがります。
心が張り裂けます。でも、それを歌う人が実は
誰もが果たすべき人生の義務を嘲り、怠り、
妻をいじめたり友を裏切ったりしているかもしれません。
敏感なのはつくり話の悲しみに対してだけかもしれません。
罪なき人を迫害し、恵まれない人を悲しませ、
そしてまったく平気だったりするかもしれません。
涙一滴寄付すれば充分、と思っていたりするのです。
トゥィードの優しい道徳家マッケンジーはそんな人ではありません。
彼の描く「感情の人」は本当に心ある人です。
ああ、天に昇っていく共感! 慈愛という天使!
心が天に捧げるおこないのほうが
気持ちのこめられた文章より大事。
スターンさん、優しいあなたの美しいお話よりも大事!
でも、行為が必須というわけではありません。
もしそうなら、天国に行けるのはお金持ちだけになってしまいます。
心からの願いや祈り、あるいは優しい一言だって
慈悲の証として記録してもらえます。
何かしてあげることができない、そんな人でも哀れみのため息をつく、
その真心が香の煙のように天国に届くのです。
人にはたいしたことなどできないもので、それどころか
この世の不幸の半分くらいは自分の弱さで招いています。
そんななか、いちばんの幸せは平穏な暮らしと心の安らぎです。
人を救うのは無理でも、人に喜んでもらえることなら誰にでもできます。
ですよね! だから意地悪な人には少し考え直してほしいのです、
不親切なおこないは、小さなことでも大きな罪なのだと。
大きな贈りものなんて、したくたってできません。
でも、悲しませるという罪を犯すことなら誰にだって避けられます。
うねる大波のようにあふれんばかりの富を人に与えたり、
幸せにしてあげたり健康にしてあげたり、
なんてことは、ちっぽけなわたしたちにはできません。でも、神は
すべての人に慰める力を与えてくれています。
優しく忍耐強い愛、
お世辞ではない本物のかけがえのない愛、
人の過ちを優しく許してあげる心、
意地悪を言いたくなってもぐっとこらえる我慢、
これらは神が与えてくれたのです、人が幸せに生きられるように。
そう、人に友を与えてくれたのです、不幸や不運に打ち勝つために。
ひとりで幸せ、なんて人はまずいません。
愛する人たちの幸せ、それが自分の幸せです。
優しく手を差しのべて
愛する人の心に刺さった棘をとってあげる、それは
相手の荒れた道をきれいにしてあげることであり、
また自分の道を薔薇で飾ることでもあるのです。
それとなく意地悪なことを言ったり、横目で睨んだり、
堂々と嘲笑したり、さりげなく突き放したり、
褒めながら馬鹿にしたり、冷たくあしらったり、
目の言葉でいじめたり--
いろんな器用ないじめかたがあります。そんな毒矢は
耳が気づかないうちに心に刺さります。
遠回しな言葉で心が殺されている、でも
まわりの人はその言葉の冷たさに気づかなかったりします。
ほんのわずかな軽蔑や嘲り、嫌われていなくても軽視・無視されること、
それは一回くらいなら平気でも、くり返されれば深い傷になります。
ほんの小さな悲しみだって、何千とつもれば
心を侵食します。平穏な日々を壊します。
強力な感情は善にも悪にも向かいます。
美徳にも悪徳にも力を貸します。
賢い人、善良な人だけのものではありません。
それは抑えられない心の炎、血に宿る力なのです。
いつもの道から逸れて感情が正しい方向に進む時、
知恵と理性の力が湧いてきます。
でもいけない道に導かれれば、感情は
強い悪をさらに強力に後押ししてしまいます。
そして噴き出します、制御できない欲望、
荒れ狂う激情、罪の炎となって。
でも美徳の錘(おもり)が心を支配したならば、
美しい感情ですべてが輝きはじめます。
道徳の陽の光で心を照らし、
温めます。空想を温めるような無駄なことはしません。
心は凍えて力なく横たわったままでしょう、
神々しい感情の火花で点火されないかぎり。
心の大地から美しい金の知性の原石を掘り出す、
硬く冷たいその塊を磨きあげ、
溶かし、命を与え、
そして天の言葉を刻印する、
不死なる精神に最高に美しい色を与える、
そうです! そのようなことが感受性にはできるのです!
まさにこの感受性こそ天の炎、光と温もりの源です。
感受性豊かな歌が、おこないが、わたしたちの心を奪います。
だから、もの思いに沈むグレイの歌を聴き、
わたしたちは進んで心を開くのです。
感受性にふれられて、心は感受性に燃えあがります、
ヘイリーが竪琴を手に美しいセリーナのことを歌った時のように。
感受性という宝は、たとえ見えないところに埋もれていても、
鋭い洞察があればはっきり見えます。だからこそ
ポートランドさんのお顔は我を忘れたかのように輝くのです、
心労にゆえに眠れない人たちを巨額の寄付で慰めながら。
セヴィニエ夫人の優しい手紙に命を与えているもの、それが感受性です。
第二の生に安らぎを与える天の恵み、それが感受性です。
否応なく魂をとらえて離さない魔法の力、それが感受性です。
ボスカウェンさん、あなたの魅力の半分はまさにあなたの感受性にあります。
ですが、今、あなたは恐れ、心配にとらわれています。
残された最後の子が恐ろしい戦争に挑もうとしているから、ですよね?
たくましい魂が
英雄として戦い、危険な栄光をつかもうとしているから、ですよね?
熱い魂が高みに昇ることを恐れているのですよね?
夫の記憶ゆえにあの子のことが心配なのですよね?
父譲りの勇敢さ、涙が出てきます、
英雄になってほしい、でもなってほしくない--つらいですね。
*****
Hannah More
"Sensibility: A Poetical Epistle to the Hon. Mrs. Boscawen"
Spirits are not finely touch'd
But to fine issues ---SHAKESPEARE
ACCEPT, BOSCAWEN! these unpolish'd lays,
Nor blame too much the verse you cannot praise.
For you far other Bards have wak'd the string;
Far other bards for you were wont to sing.
Yet on the gale their parting music steals,
Yet, your charm'd ear the lov'd impression feels.
You heard the lyres of Lyttleton and Young;
And this a Grace, and that a Seraph strung.
These are no more!—But not with these decline
The Attic chasteness, and the flame divine.
Still, Sad *Elfrida's Poet shall complain,
And either Warton breathe his classic strain.
Nor fear lest genuine poesy expire,
While tuneful Beattie wakes old Spenser's lyre.
His Sympathetic lay his soul reveals,
And paints the perfect Bard from what he feels.
Illustrious Lowth! for him the muses wove,
The fairest garland from their greenest grove.
Tho' Latian bards had gloried in his name,
When in full brightness burnt the Latian flame;
Yet, fir'd with nobler hopes than transient bays,
He scorn'd the meed of perishable praise;
Spurn'd the cheap wreathe by human science won,
Borne on the wing sublime of Amos' son:
He seiz'd his mantle as the prophet flew,
And with his mantle caught his spirit too.
To snatch bright beauty from devouring fate,
And bid it boast with him a deathless date;
To shew how genius fires, how taste restrains,
While what both are his pencil best explains,
Have we not Reynolds? Lives not Jenyns yet,
To prove his lowest title was a Wit?
Tho' purer flames thy hallow'd zeal inspire
Than e'er were kindled at the Muse's fire;
Thee, mitred Chester! all the Nine shall boast:
And is not Johnson theirs, himself an host?
Yes:—still for you your gentle stars dispense
The charm of friendship, and the feast of sense.
Yours is the bliss, and Heav'n no dearer sends,
To call the wisest, brightest, best—your friends.
With Carter trace the wit to Athens known,
Or find in Montagu that wit our own.
Or, pleas'd, attend Chapone's instructive page;
Which charms her own, and forms the rising age.
Or boast in Walsingham the various pow'r,
To soothe the lonely, grace the letter'd hour;
To polish'd life its highest charm she gives,
Whose song is music, and whose canvass lives.
Delany shines, in worth serenely bright,
Wisdom's strong ray, and Virtue's milder light;
And she who bless'd the friend, and grac'd the page
Of Swift, still lends her lustre to our age:
Long, long protract thy light, O star benign!
Whose setting beams with added brightness shine!
O, much lov'd Barbauld! shall my heart refuse
Its tribute to thy Virtues and thy Muse?
While round thy brow the Poet's wreathe I twine,
This humble merit shall at least be mine,
In all thy praise to take a gen'rous part;
Thy laurels bind thee closer to my heart:
My verse thy merits to the world shall teach,
And love the genius it despairs to reach.
Yet, what is wit, and what the Poet's art?
Can Genius shield the vulnerable heart?
Ah, no! where bright imagination reigns,
The fine-wrought spirit feels acuter pains:
Where glow exalted sense, and taste refin'd,
There keener anguish rankles in the mind:
There feeling is diffus'd thro' ev'ry part,
Thrills in each nerve, and lives in all the heart:
And those, whose gen'rous souls each tear wou'd keep
From others eyes, are born themselves to weep.
Say, can the boasted pow'rs of wit and song,
Of life one pang remove, one hour prolong?
Presumptuous hope! which daily truth deride;
For you, alas! have wept—and Garrick dy'd!
Ne'er shall my heart his lov'd remembrance lose,
Guide, critic, guardian, glory of my muse!
Oh, shades of Hampton! witness as I mourn,
Cou'd wit or song elude his destin'd urn?
Tho' living virtue still your haunts endears,
Yet bury'd worth shall justify my tears!
Garrick! those pow'rs which form a friend were thine;
And let me add, with pride, that friend was mine:
With pride! at once the vain emotion's fled;
Far other thoughts are sacred to the dead.
Who now with spirit keen, yet judgment cool,
Th' unequal wand'rings of my muse shall rule?
Whose partial praise my worthless verse ensure?
For Candor smil'd, when Garrick wou'd endure.
If harsher critics were compell'd to blame,
I gain'd in friendship what I lost in fame;
And friendship's fost'ring smiles can well repay
What critic rigour justly takes away.
With keen acumen how his piercing eye
The fault, conceal'd from vulgar view, wou'd spy!
While with a gen'rous warmth he strove to hide,
Nay vindicate the fault his judgment spied.
So pleas'd, cou'd he detect a happy line,
That he wou'd fancy merit ev'n in mine.
Oh gen'rous error, when by friendship bred!
His praises flatter'd me, but not misled.
No narrow views cou'd bound his lib'ral mind;
His friend was man, his party human kind.
Agreed in this, opposing statesmen strove
Who most should gain his praise, or court his love.
His worth all hearts as to one centre drew;
Thus Tully's Atticus was Caesar's too.
His wit so keen, it never miss'd its end;
So blameless too, it never lost a friend;
So chaste, that Modesty ne'er learn'd to fear;
So pure, Religion might unwounded hear.
How his quick mind, strong pow'rs and ardent heart,
Impoverish'd nature, and exhausted art,
A brighter bard records *, a deathless muse!—
But I his talents in his virtues lose:
Great parts are Nature's gift; but that he shone
Wise, moral, good and virtuous—was his own.
Tho' Time his silent hand across has stole,
Soft'ning the tints of sorrow on the soul;
The deep impression long my heart shall fill,
And ev'ry mellow'd trace be perfect still.
Forgive, BOSCAWEN, if my sorrowing heart,
Intent on grief, forget the rules of art;
Forgive, if wounded recollection melt—
You best can pardon, who have oft'nest felt.
You, who for many a friend and hero mourn,
Who bend in anguish o'er the frequent urn;
You who have found how much the feeling heart
Shapes its own wound, and points itself the dart;
You, who from tender sad experience feel
The wounds such minds receive can never heal;
That grief a thousand entrances can find,
Where parts superior dignify the mind;
Wou'd you renounce the pangs these feelings give,
Secure in joyless apathy to live?
For tho' in souls, where taste and sense abound,
Pain thro' a thousand avenues can wound;
Yet the same avenues are open still,
To casual blessings as to casual ill.
Nor is the trembling temper more awake
To every wound which misery can make,
Than is the finely-fashion'd nerve alive
To every transport pleasure has to give.
For if, when home-felt joys the mind elate,
It mourns in secret for another's fate;
Yet when its own sad griefs invade the breast,
Abroad, in other blessings, see it blest!
Ev'n the soft sorrow of remember'd woe
A not unpleasing sadness may bestow.
Let not the vulgar read this pensive strain,
Their jests the tender anguish wou'd profane:
Yet these some deem the happiest of their kind,
Whose low enjoyments never reach'd the mind;
Who ne'er a pain but for themselves have known,
Nor ever felt a sorrow but their own;
Who call romantic every finer thought,
Conceiv'd by pity, or by friendship wrought.
Ah! wherefore happy? where's the kindred mind?
Where, the large soul that takes in human kind?
Where, the best passions of the mortal breast?
Where, the warm blessing when another's blest?
Where, the soft lenitives' of others pain,
The social sympathy, the sense humane,
The sigh of rapture, and the tear of joy,
Anguish that charms, and transports that destroy?
For tender Sorrow has her pleasures too;
Pleasures, which prosp'rous Dulness never knew.
She never knew, in all her coarser bliss,
The sacred rapture of a pain like this!
Nor think, the cautious only are the just;
Who never was deceiv'd I wou'd not trust.
Then take, ye happy vulgar! take your part
Of sordid joy, which never touch'd the heart.
Benevolence, which seldom stays to chuse,
Lest pausing Prudence teach her to refuse;
Friendship, which once determin'd, never swerves,
Weighs ere it trusts, but weighs not ere it serves;
And soft-ey'd Pity, and Forgiveness bland,
And melting Charity with open hand;
And artless Love, believing and believ'd,
And gen'rous Confidence which ne'er deceiv'd;
And Mercy stretching out, ere Want can speak,
To wipe the tear from pale Affliction's cheek;
These ye have never known!—then take your part
Of sordid joy, which never touch'd the heart.
Ye, who have melted in bright Glory's flame,
Or felt the spirit-stirring breath of fame!
Ye noble few! in whom her promis'd meed
Wakes the great thought, and makes the wish the deed!
Ye, who have tasted the delight to give,
And, GOD's own agents, bid the wretched live;
Who the chill haunts of Desolation seek,
Raise the sunk heart, and flush the fading cheek!
Ye, who with pensive Petrarch love to mourn,
Or weave fresh chaplets for Tibullus' urn.
Who cherish both in Hammond's plaintive lay,
The Provence myrtle, and the Roman bay!
Ye, who divide the joys and share the pains
Which merit feels, or Heav'n-born Fancy feigns;
Wou'd you renounce such joys, such pains as these,
For vulgar pleasures, or for selfish ease?
Wou'd you, to 'scape the pain the joy forego;
And miss the transport to avoid the woe?
Wou'd you the sense of real sorrow lose,
Or cease to wooe the melancholy Muse?
No, Greville*! no!—Thy song tho' steep'd in tears,
Tho' all thy soul in all thy strain appears;
Yet wou'dst thou all thy well-sung anguish chuse,
And all th' inglorious peace thou begg'st, refuse.
Or you, BOSCAWEN! when you fondly melt,
In raptures none but mothers ever felt;
And view enamour'd in your beauteous race,
All Leveson's sweetness, and and all Beaufort's grace!
Yet think what dangers each lov'd child may share,
The youth if valiant, and the maid if fair;
That perils multiply as blessings flow,
And constant sorrows on enjoyments grow:
You, who have felt how fugitive is joy,
That while we clasp the phantom we destroy;
That life's bright sun is dimm'd by clouded views,
And who have most to love have most to lose;
Yet from these fair possessions wou'd you part,
To shield from future pain your guarded heart?
Wou'd your fond mind renounce its tender boast,
Or wish their op'ning bloom of promise lost?
Yield the dear hopes, which break upon your view,
For all the quiet, Dulness ever knew?
Debase the objects of your tend'rest pray'r,
To save the dangers of a distant care?
Consent, to shun the anxious fears you prove;
They less should merit, or you less should love?
Yet, while I hail the Sympathy Divine,
Which makes, O man! the wants of others thine:
I mourn heroic JUSTICE, scarcely own'd,
And Principle for Sentiment dethron'd.
While Feeling boasts her ever-tearful eye,
Stern Truth, firm Faith, and manly Virtue fly.
Sweet SENSIBILITY! thou soothing pow'r,
Who shedd'st thy blessings on the natal hour,
Like fairy favours! Art can never seize,
Nor Affectation catch thy pow'r to please:
Thy subtle essence still eludes the chains
Of Definition, and defeats her pains.
Sweet Sensibility! thou keen delight!
Thou hasty moral, sudden sense of right!
Thou untaught goodness! Virtue's precious seed!
Thou sweet precursor of the gen'rous deed!
Beauty's quick relish! Reason's radiant morn,
Which dawns soft light before Reflection's born!
To those who know thee not, no words can paint!
And those who know thee, know all words are faint!
'Tis not to mourn because a sparrow dies;
To rave in artificial extasies:
'Tis not to melt in tender Otway's fires;
'Tis not to faint when injur'd Shore expires:
'Tis not because the ready eye o'erflows
At Clementina's, or Clarissa's woes.
Forgive, O RICHARDSON! nor think I mean,
With cold contempt, to blast thy peerless scene:
If some faint love of virtue glow in me,
Pure spirit! I first caught that flame from thee.
While soft Compassion silently relieves,
Loquacious Feeling hints how much she gives;
Laments how oft her wounded heart has bled,
And boasts of many a tear she never shed.
As words are but th' external marks, to tell
The fair ideas in the mind that dwell;
And only are of things the outward sign,
And not the things themselves, they but define;
So exclamations, tender tones, fond tears,
And all the graceful drapery Pity wears;
These are not Pity's self, they but express
Her inward sufferings by their pictur'd dress;
And these fair marks, reluctant I relate,
These lovely symbols may be counterfeit.
Celestial Pity! why must I deplore,
Thy sacred image stamp'd on basest ore?
There are, who fill with brilliant plaints the page,
If a poor linnet meet the gunner's rage:
There are who for a dying fawn display
The tend'rest anguish in the sweetest lay;
Who for a wounded animal deplore,
As if friend, parent, country were no more;
Who boast quick rapture trembling in their eye,
If from the spider's snare they save a fly;
Whose well-sung sorrows every breast inflame,
And break all hearts but his from whom they came,
Yet scorning life's dull duties to attend,
Will persecute a wife, or wrong a friend;
Alive to every woe by fiction dress'd;
The innocent he wrong'd, the wretch distress'd,
May plead in vain; their suff'rings come not near,
Or he relieves them cheaply with a tear.
Not so the tender moralist * of Tweed;
His Man of Feeling is a man indeed.
Oh, bless'd Compassion! Angel Charity!
More dear one genuine deed perform'd for thee,
Than all the periods feeling e'er can turn,
Than all thy soothing pages, polish'd STERNE!
Not that by deeds alone this love's exprest,
If so, the affluent only were the blest.
One silent wish, one pray'r, one soothing word,
The precious page of Mercy shall record;
One soul-felt sigh by pow'rless Pity giv'n,
Accepted incense! shall ascend to Heav'n.
Since trifles make the sum of human things,
And half our Mis'ry from our foibles springs;
Since life's best joys consist in peace and ease,
And few can save or serve, but all may please:
Oh! let th' ungentle spirit learn from hence,
A small unkindness is a great offence.
Large bounties to bestow we wish in vain;
But all may shun the guilt of giving pain.
To bless Mankind with tides of flowing wealth,
With pow'r to grace them, or to crown with health,
Our little lot denies; but Heav'n decrees
To all, the gift of minist'ring to ease.
The gentle offices of patient love,
Beyond all flatt'ry, and all price above;
The mild forbearance at another's fault,
The taunting word suppress'd as soon as thought;
On these Heav'n bade the bliss of life depend,
And crush'd ill fortune when he made a Friend.
A Solitary blessing few can find,
Our joys with those we love are intertwin'd;
And he, whose helpful tenderness removes
Th' obstructing thorn which wounds the breast he loves,
Smooths not another's rugged path alone,
But scatters roses to adorn his own.
The hint malevolent, the look oblique,
The obvious satire, or implied dislike;
The sneer equivocal, the harsh reply,
And all the cruel language of the eye;
The artful injury, whose venom'd dart,
Scarce wounds the hearing while it stabs the heart;
The guarded phrase whose meaning kills, yet told,
The list'ner wonders how you thought it cold;
Small slights, contempt, neglect unmix'd with hate,
Make up in number what they want in weight.
These, and a thousand griefs minute as these,
Corrode our comfort, and destroy our ease.
As this strong feeling tends to good or ill,
It gives fresh pow'r to vice or principle;
'Tis not peculiar to the wise and good;
'Tis passion's flame, the virtue of the blood.
But to divert it to its proper course,
There Wisdom's pow'r appears, there Reason's force;
If, ill-directed, it pursues the wrong,
It adds new strength to what before was strong;
Breaks out in wild irregular desires,
Disorder'd passions, and illicit fires.
But if the virtuous bias rule the soul,
This lovely feeling then adorns the whole;
Sheds its sweet sunshine on the moral part,
Nor wastes on fancy what shou'd warm the heart.
Cold and inert the mental pow'rs would lie,
Without this quick'ning spark of Deity.
To draw the rich materials from the mine,
To bid the mass of intellect refine;
To melt the firm, to animate the cold,
And Heav'n's own impress stamp on nature's gold;
To give immortal Mind its finest tone,
O SENSIBILITY! is all thy own.
THIS is th' etherial flame which lights and warms,
In song transports us, and in action charms.
'Tis this that makes the pensive strains of Gray*
Win to the open heart their easy way.
Makes the touch'd spirit glow with kindred fire,
When sweet Serena's† poet wakes the lyre.
'Tis this, though Nature's hidden treasures lie,
Bare to the keen inspection of her eye,
Makes Portland's face its brightest rapture wear,
When her large bounty smooths the bed of care.
'Tis this, that breathe's through Sevigne's sweet page,
That nameless grace which soothes a second age.
'Tis this whose charms the soul resistless seize,
And gives BOSCAWEN half her pow'r to please.
Yet, why those terrors? why that anxious care?
Since your last* hope the deathful war will dare?
Why dread that energy of soul which leads
To dang'rous glory by heroic deeds?
Why tremble lest this ardent soul aspire?—
You fear the son because you knew the sire.
Hereditary valour you deplore,
And dread, yet wish to find one hero more.
http://quod.lib.umich.edu/cgi/t/text/text-idx?c=evans;idno=N34141.0001.001
(Poems, 1785)
適宜修正済み
*****
キーワード:
感受性 sensibility
幸せな人 beatus ille
心の安らぎ ataraxia
賢い人 sapiens
無感情 apathy
美徳 virtue
自然
ホラティウス Horace
エピクロス Epicurus
ルクレティウス Lucretius
セネカ Seneca
ストア派 the Stoics
グロティウス Grotius
ホッブズ Hobbes
広教派 Latitude-men
(Augustine / Pelagius)
(Calvin / Arminius)
ケンブリッジ・プラトニスト Cambridge Platonists
シャフツベリー Third Earl of Shaftesbury
ヒューム Hume
アダム・スミス Adam Smith
cf.
Finch, "The Spleen"
Greville, "A Prayer for Indifference"
Yearsley, "To Indifference"
Smith, "At Middleton in Sussex"
*****
家柄(教養、職など)、宗教的敬虔さ、にかわる価値基準、
人の価値をはかる基準としての感受性。16世紀後半以降
封建的・貴族中心的な価値観が影響力を失い、また17世紀
(特に半ば)以降強すぎる宗教性の危険が周知されてきたなかで、
これらにかわるものとして描かれ、語られ、論じられるようになった。
生まれのいい人が偉いのか、神を畏れ敬う人が偉いのか、
それとも心の優しい人が偉いのか、という問題。
(心の優しい人が、といいつつ上の詩はなかなか排他的・
攻撃的で微妙。まだ18世紀的、ロマン派以前的。)
*****
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『感受性--ボスカウェン夫人への書簡詩』
美しい魂は
美しい子を生まなくては ーーシェイクスピア
ボスカウェンさん、下手な詩ですが送ります。
とりえのない作品ですがお許しください。
あなたのために他の詩人たちが弦をはじき、
あなたのために歌ってきました。
そよ風にのって歌は消えていきます。
でも、素敵なメロディは耳に残っていることでしょう。
リトルトンやヤングの竪琴をお聴きになりましたよね。
美の女神や天使が奏でているかのようでした。
彼らは亡くなってしまいました! でも、
清らかで神聖な古代ギリシャの炎はまだ燃えています。
まだエルフリーダの詩人メイソンは悲しく語り、
ウォートンも古典のメロディを歌っています。
真の創作が死に絶えることはありません、
ビーティの歌にスペンサーの竪琴がよみがえっていますから。
彼の歌には魂がこめられていて共感を呼びます。
感情を歌う完璧な詩人なのです。
りっぱなロウス! 詩神たちが彼に編んでいます、
いちばん緑がきれいな木々のいちばんきれいな花の冠を。
彼の詩のなか、古代ローマの詩人たちが称えられ、
古代ローマの炎が明るく燃えていますが、
はかない名声よりも気高いものを求め、彼は燃えています。
いずれ消えてなくなる称賛などいらないのです。
人智で勝ちとった安っぽい冠を棄て、
彼はアモスの子預言者イザヤの崇高なる翼で舞いあがりました。
イザヤのマントをもらい受け、
マントとともに彼の魂も手に入れました。
まばゆい美を運命に呑みこまれないよう守ること、
美とロウスに永遠の命を与えること、
燃える天才の炎、品のいい慎みのありかたを示すこと、
(天才とは何か、慎みとは何かはロウスの詩を見ればわかりますが)
これらはレイノルズに任せましょう。ジェニンズもいます。
知性以下のものはロウスにはありませんでした。
それから、敬虔な心ゆえにあなたは燃えていました、
どんな詩人たちよりも清らかな炎で、
そう、牧師のチェスターさん! あなたは詩神九人の自慢です。
ジョンソンも詩神の下にいます。いえ、上にいると言うべきですね?
そうです、ボスカウェンさん、あなたの星は、まだ他にも
すてきな友だちと楽しみを与えてくれています。
まるで天国、この世でいちばんの幸せです、もっとも賢く、
もっとも輝き、もっともいい人たちを友と呼べるなんて。
カーターとともに知性の根源をアテネまでたどることができます。
モンタギューによってアテネの知性を今でも目のあたりにできます。
楽しくシャポンの作品から学ぶことができます。これは今の時代の
楽しい教えであり、また次の時代の礎(いしずえ)となるでしょう。
ウォールシンガムにはいろんな力があります。
孤独な人を慰め、教養ある人の余暇を豊かにします。
人生を磨いて最高に美しくしてくれます。
言葉に歌が聞こえてきます。絵が動いて見えます。
デラニーの詩は澄みわたり、輝いています、
知恵の強い光と美徳のやさしい光のなかで。
スウィフトの友だちで彼の詩に輝いている
あの方は、今でもわたしたちの時代を明るくしてくれています。
いつまでもいつまでも照らしてください。恵みの星であるあなた!
沈みながらより明るく光ってください!
ああ、バーボールドさん! 称えないわけにはいきません、
あなたの美徳と優れた作品を。
あなたの頭に月桂冠を編ませてください。
それから、わたしにお許しください、
称賛を他の人よりたくさんあなたに捧げることを。
あなたの詩にわたしは心とらえられています。
詩であなたの優れた点を世界に広めさせてください。
わたしには届かないあなたの才能を称えさせてください。
でも、知性とは何でしょう? 詩人の技術とは何でしょう?
天賦の才能があれば心を傷から守ることができるでしょうか?
むしろ反対です! 想像力の光の下、
繊細な心が感じる痛みはますます強くなります。
赤熱するほど高度に洗練された感性・感受性をもつ人の
心は、苦悩の膿に爛(ただ)れてますます苦しむのです。
感覚がすみずみまで行きわたり、
すべての神経を震わせるからです。
気高い心の持ち主で、けっして人を泣かせない人は、
自分が泣く運命なのです。
知性や歌には力があると言いますが、それで
人生の苦しみがひとつでも軽くなりますか? 命が長くなりますか?
そんなの、思いあがった妄想です! いつも真理に嘲笑われています。
だからあなたは涙を流してきたし、ギャリックは死んでしまいました!
愛しい彼のことはけっして忘れません、
詩人としてのわたしを導き、批判し、守り、輝かせてくれた彼を!
ハンプトンの森! わたしの悲しみを見てください。証言してください、
知性や歌で、彼を骨壺から救うことができますか?
今も語られる彼の美徳ゆえにあなたは美しい、
でもそんな彼がもういないからわたしは泣いているのです!
ギャリックさん! あなたは友人にふさわしい人でした。
そして、自慢させてください、あなたはわたしの友人でした。
自慢の友人でした! でもすぐ、そう言えなくなってしまいました。
死んでしまって、より神聖な人になってしまいましたから。
誰が今、鋭い洞察と冷静な判断で
あちこちさまようわたしの詩を導いてくれるのでしょう?
誰が嘘でもわたしを褒めてくれて自信をもたせてくれるのでしょう?
あの方は寛大で、わたしに優しく微笑んでくれました。
厳しい批評家たちの批判もあって
評価は下がりましたが、その損失を友情が埋めあわせてくれました。
友情の微笑みが力を与えてくれました。
厳正なる批評によって失われたものをとり戻してくれました。
鋭い洞察、何もかも見通す目で、
人が気づかないような欠点をあの方は見つけてくれたものでした!
そして優しくあたたかく、そんな欠点を隠してくれた、
それどころか正当化してくれたものでした。
もしいい表現があればとても喜んでくれて、
わたしなんかの詩でも褒めてくれたものでした。
ああ、友だち思いのなんて優しい嘘!
うれしかったけど、わたしもそれで調子にのったりはしませんでした。
視野の歪んだ人でも認めざるをえない心の広さがギャリックにはありました。
彼のまわりにいるのは、みな人間らしい心ある人たちでした。
だからすべての立場の政治家たちが
彼から称賛されよう、愛されようと競いあっていました。
みなを惹きつけるその人徳から、彼は
キケロとカエサル、争う両者の友だったアッティクスのようでした。
彼の知性は鋭く、的をはずすことがありませんでした。
まったく欠点がなく、友を失うことがありませんでした。
まったく下心がなく、慎みの規範に反することがありませんでした。
まったく清らかで、神の意に背くことは絶対に口にしませんでした。
ギャリックの頭の回転の速さ、力強さ、熱い心は、
自然が与える以上のものであり、また人工ではありえないものでした。
もっとすぐれた、永遠の名声ある詩人が語ってくれているとおりです。
でもわたしにとって、彼の能力より美徳のほうが大事でした。
生まれもった偉大な力もありましたが、輝かんばかりに賢く、
道義心にあふれ、善良で立派だったこと、これは彼の努力の賜物でした。
時の手によって音もなく拭い去られ、
悲しみの色がしだいに薄れてきていますが、
彼の思い出は心いっぱいに残っています。表面が擦れて
丸くなっても、刻まれた思い出が消えることはありません。
ごめんなさい、ボスカウェンさん、悲しくて、
つらすぎて、これが詩であることを忘れそうです。
ごめんなさい、痛手を思い出して泣き崩れてしまいそう。でも
お許しいただけますよね、心の痛みはあなたのほうがよくご存知ですから。
友人・英雄に先立たれ、悲痛に打ちひしがれつつ
骨壺を前に顔を伏せるあなたを何度見てきたことでしょう。
あなたがいちばんご存知だと思います。感じやすい心は
わざわざ傷を見つけてしまう、自分に矢を向けてしまうものです。
心優しいあなたが悲しい経験から学んだのは、
敏感な心の傷は治らないくらい深い、ということでしたよね。
悲しみには千もの入口がある、ということでしたよね。
でも、それに負けない強い心が美しいのです。
心の激痛なしで生きたいとは思いませんよね?
心を麻痺させれば平穏でしょうが、生きる喜びもありませんよね?
上品で思慮がある、そんな心には
千もの入口から痛みが入ってきますが、
この千もの入口はいつも開いていて、
悲しみとともにいろんな喜びもそこから入ってきます。
震えるほど敏感な心は
不幸がもたらすすべての傷で痛いのですが、
同じように繊細な神経も
すべての喜びに反応して我を忘れます。
自分の幸せで心が高ぶっている時でも
他の人の不幸が悲しいように、
自分の悲しみが胸を攻めてきていても
他の人の喜びで幸せになれるのです。
過去につらかったことを思い出せば今でも少し悲しいのですが、
その悲しさはなぜか少し心地よかったりします。
平凡で鈍い人たちにこのわたしの心の歌は読んでほしくありません。
繊細な心の悲痛な叫びが茶化されるだけですから。
見方によっては、いちばん幸せなのは
精神性のまったくない低俗な遊びで満足できる人、
自分の痛みしか感じることができない人、
自分の悲しみしか理解できない人、
繊細で優しい感情なんてみんな嘘だと思っている人、なのかもしれません。
憐れみや友情を感じたことのない人なのかもしれません。
でも、それのどこが幸せなのでしょう? 人の心はないのでしょうか?
人を思いやる精神はないのでしょうか?
人の胸に宿るいちばん美しい感情はどこに行ってしまったのでしょうか?
人が幸せなときに自分も幸せになる、そんな心の温かさはないのでしょうか?
人の痛みを和らげてあげたいと思わないのでしょうか?
人に対する共感、優しさはないのでしょうか?
幸せなため息をつき、うれし涙を流したことはないのでしょうか?
甘い悲しみの魔法の力、地獄行きの幸せを知らないのでしょうか?
悲しみには悲しみの喜びがあるのですが、
この世を支配する〈愚〉の女神にはこれがまるでわかっていません。
頭の悪い幸せのなか有頂天な彼女は、
痛みのもたらす神聖な喜びを知らないのです。
用心深いことと正しいことは違います。
騙されたことのない人なんて、わたしには信用できません。
だから、凡人の皆さん、醜い喜び、
心を使わない遊びをどうぞご満喫ください!
けっして相手を選ばない善意
(常識的に拒むべき場合は除きます)、
一度結ばれたら絶対に裏切らない友情、
(信頼できるかどうかは迷いますが、一度信頼したらもう迷わないのです)
憐れみの優しいまなざし、温かく許してくれる心、
共感の涙、慈善の精神、
嘘のない、信じあえる愛、
けっして裏切らない高貴な信頼、
求められずとも、
苦境にあえぐ人の涙をぬぐってあげる憐れみ、
凡人の皆さんにこれらは絶対に理解できないでしょう。
だから醜い喜び、心を使わない遊びをどうぞご満喫ください!
あなたがた、輝く栄光の炎に身を溶かし、
名声の息吹きに魂を揺さぶられてきた、そんな気高い、
選ばれし少数のあなたがた! 栄光が約束する報酬を求め、
偉大なる思いに目覚め、理想を現実にしようとするあなたがた!
与える喜びをご存知のあなたがた!
まさに神の僕として、憐れな人たちに生を与えるあなたがた!
冷たく荒れはてた地に赴き、
沈む人々の心を支え、色のない頬に生気をもたらすあなたがた!
恋するペトラルカと悲しみをわかちあい、
またいつもティブルスのお墓に花冠をお供えしているあなたがた!
ハモンドが悲しく歌う
プロヴァンスの銀梅花(ぎんばいか)とローマの月桂を愛するあなたがた!
喜びをわかちあい、痛みも共有するあなたがた! そう、
立派なおこないや人並みはずれた想像力には喜びと痛みが伴うのですから!
そんな喜びと痛みを棄てられますか?
くだらない楽しみや自分勝手な安逸と引き換えに?
痛みから逃れるために喜びも棄てますか?
どん底の悲しみから逃れるために絶頂の幸せも棄てますか?
真の悲しみを棄てますか?
憂鬱な詩神の歌が聴こえなくなってもいいですか?
嫌ですよね? グレヴィルさん! 本当は嫌ですよね? あなたの歌は
涙の湖に浸っています。歌のなか魂が叫んでいます。
でも、そんな苦痛と苦悩が大事なんです。
平凡で平穏な暮らしがほしい、なんて言わないでください。
それから、優しいボスカウェンさん、涙が出てきますよね?
母にしかわからない幸せですよね?
本当にかわいい子たち、レヴェソン家に嫁いだフランシスさんと
ボーフォート公爵夫人となったエリザベスさんを見つめることは!
でも、ひとりひとりの子を待ち受けている危険を想像してみてください。
男の子なら勇敢であればあるほど、女の子ならかわいければかわいいほど、
幸せと危険が増していきます。
日々喜びとともに悲しみも増していきます。
喜びのはかなさはご存知ですよね。
ぎゅっと抱きしめると幸せの幻は壊れてしまいます。
人生の明るい太陽は曇ることもあります。
幸せな人ほど失うものも多いものです。
でも、美しいこどもたちから別れたいとは思いませんよね、
いつか来るかもしれない悲しみから心を守るために。
溺愛していた自慢の子たちを棄てたりできますか?
花開こうとしている二人の将来を見なくてもいい、などと思えますか?
目の前に開かれようとしている希望の未来と引き換えに
刺激のない平穏がほしいと思いますか?
あなたが心から祈ってきた二人の幸せより、
遠い将来のありそうもない危険のほうが重要ですか?
心配や恐れから逃れるためなら忘れ去ってもいいくらい、
二人の価値は低いのですか? あなたの愛は小さいのですか?
わたしは神々しい共感を称えます。
これにより、他人の困窮がわかちあえるのですから。
英雄のような正義の地位さえ怪しくなります。
原則ですら感情の力で流されます。
感情豊かな涙が自慢げにあふれれば、
厳しい真理、固い信仰、男らしい美徳だって逃げていきます。
愛しい感受性! まるで慰めてくれる神のよう!
こどもが生まれれば祝福を与えてくれます。
まるで守ってくれる妖精のように! 偽り、
見せかけの優しさとはまるで違います。
その不思議な力を鎖で縛ることはできません。
言葉ではあらわせません。そんなこと、無駄なのです。
美しい感受性! それは痛いほどの喜びです!
突然訪れる道徳、急にひらめく正義感です!
誰にも教わっていないのに知っている善、大事な大事な美徳の種です!
優しいおこないの源です!
誰にでも一目でわかる美しさ、輝く理性の夜明けの光、
だから思考が生まれる前に優しく照らしてくれます!
感受性を知らない人に言葉で説明しても無駄です。
知っている人にとって説明は無意味です。
雀の死が悲しいこと、とか、
我を忘れる(ふりをする)こと、とか、
オトウェイの劇を見て涙を流すこと、とか、
ジェーン・ショアが傷つき、死ぬのを見て気を失うこと、とか、
クレメンティナやクラリッサの不幸を見て
すぐに涙を流すこと、とか、そんな説明に意味はありません。
ごめんなさい! リチャードソンさん! そんなつもりじゃないんです。
あなたの描いたすばらしい場面を馬鹿にするわけじゃないんです。
もし美徳を愛する心の火がわたしのなかにあるのなら、
その火はあなたからいただいたものです。天使のように嘘のないあなたから!
静かな共感は何も言わずに手を差しのべます。
でもおしゃべりな感情は、こんなにあげる、と言いたがります。
どれほど心が傷つき血を流したか、つらそうに語り、
どれほど涙を流したか、嘘でも自慢します。
言葉は外面的なしるしにすぎません。心に宿る
美しい思いを指し示すのみです。
何かをあらわす表面的な記号であって、
その何かそのものではありません。ただの説明なのです。
思わず出る言葉も、優しい口調も、あたたかい涙も、
哀れみのまとうきれいな装いにすぎないのであって、
哀れみそのものではありません。ただ
内なる苦しみを服であらわしているだけです。
そして残念なことですが、そんな心のきれいな装い、
美しい記号も偽物だったりするのです。
哀れみの天使さま! どうして清らかなあなたの絵が
描かれたりするのでしょう? 質の悪い硬貨に?
悲しみに輝かんばかりの言葉でページを埋めつくす人がいます、
たとえば、怒り狂う銃弾に撃たれた鶸(ひわ)のかわいそうな話で。
今にも死にそうな子鹿を前に、
助けてあげられないつらさ・苦しさを美しい歌にする人がいます。
傷ついた動物のために悲しむ人がいます、
まるで死にゆく友や親や国を見ているかのように。
目をうるうるさせて天に昇るほどの喜びを見せびらかす人がいます、
蝶を蜘蛛の罠から助けたりして。
そんな悲しく美しい歌に皆の心が熱く燃えあがります。
心が張り裂けます。でも、それを歌う人が実は
誰もが果たすべき人生の義務を嘲り、怠り、
妻をいじめたり友を裏切ったりしているかもしれません。
敏感なのはつくり話の悲しみに対してだけかもしれません。
罪なき人を迫害し、恵まれない人を悲しませ、
そしてまったく平気だったりするかもしれません。
涙一滴寄付すれば充分、と思っていたりするのです。
トゥィードの優しい道徳家マッケンジーはそんな人ではありません。
彼の描く「感情の人」は本当に心ある人です。
ああ、天に昇っていく共感! 慈愛という天使!
心が天に捧げるおこないのほうが
気持ちのこめられた文章より大事。
スターンさん、優しいあなたの美しいお話よりも大事!
でも、行為が必須というわけではありません。
もしそうなら、天国に行けるのはお金持ちだけになってしまいます。
心からの願いや祈り、あるいは優しい一言だって
慈悲の証として記録してもらえます。
何かしてあげることができない、そんな人でも哀れみのため息をつく、
その真心が香の煙のように天国に届くのです。
人にはたいしたことなどできないもので、それどころか
この世の不幸の半分くらいは自分の弱さで招いています。
そんななか、いちばんの幸せは平穏な暮らしと心の安らぎです。
人を救うのは無理でも、人に喜んでもらえることなら誰にでもできます。
ですよね! だから意地悪な人には少し考え直してほしいのです、
不親切なおこないは、小さなことでも大きな罪なのだと。
大きな贈りものなんて、したくたってできません。
でも、悲しませるという罪を犯すことなら誰にだって避けられます。
うねる大波のようにあふれんばかりの富を人に与えたり、
幸せにしてあげたり健康にしてあげたり、
なんてことは、ちっぽけなわたしたちにはできません。でも、神は
すべての人に慰める力を与えてくれています。
優しく忍耐強い愛、
お世辞ではない本物のかけがえのない愛、
人の過ちを優しく許してあげる心、
意地悪を言いたくなってもぐっとこらえる我慢、
これらは神が与えてくれたのです、人が幸せに生きられるように。
そう、人に友を与えてくれたのです、不幸や不運に打ち勝つために。
ひとりで幸せ、なんて人はまずいません。
愛する人たちの幸せ、それが自分の幸せです。
優しく手を差しのべて
愛する人の心に刺さった棘をとってあげる、それは
相手の荒れた道をきれいにしてあげることであり、
また自分の道を薔薇で飾ることでもあるのです。
それとなく意地悪なことを言ったり、横目で睨んだり、
堂々と嘲笑したり、さりげなく突き放したり、
褒めながら馬鹿にしたり、冷たくあしらったり、
目の言葉でいじめたり--
いろんな器用ないじめかたがあります。そんな毒矢は
耳が気づかないうちに心に刺さります。
遠回しな言葉で心が殺されている、でも
まわりの人はその言葉の冷たさに気づかなかったりします。
ほんのわずかな軽蔑や嘲り、嫌われていなくても軽視・無視されること、
それは一回くらいなら平気でも、くり返されれば深い傷になります。
ほんの小さな悲しみだって、何千とつもれば
心を侵食します。平穏な日々を壊します。
強力な感情は善にも悪にも向かいます。
美徳にも悪徳にも力を貸します。
賢い人、善良な人だけのものではありません。
それは抑えられない心の炎、血に宿る力なのです。
いつもの道から逸れて感情が正しい方向に進む時、
知恵と理性の力が湧いてきます。
でもいけない道に導かれれば、感情は
強い悪をさらに強力に後押ししてしまいます。
そして噴き出します、制御できない欲望、
荒れ狂う激情、罪の炎となって。
でも美徳の錘(おもり)が心を支配したならば、
美しい感情ですべてが輝きはじめます。
道徳の陽の光で心を照らし、
温めます。空想を温めるような無駄なことはしません。
心は凍えて力なく横たわったままでしょう、
神々しい感情の火花で点火されないかぎり。
心の大地から美しい金の知性の原石を掘り出す、
硬く冷たいその塊を磨きあげ、
溶かし、命を与え、
そして天の言葉を刻印する、
不死なる精神に最高に美しい色を与える、
そうです! そのようなことが感受性にはできるのです!
まさにこの感受性こそ天の炎、光と温もりの源です。
感受性豊かな歌が、おこないが、わたしたちの心を奪います。
だから、もの思いに沈むグレイの歌を聴き、
わたしたちは進んで心を開くのです。
感受性にふれられて、心は感受性に燃えあがります、
ヘイリーが竪琴を手に美しいセリーナのことを歌った時のように。
感受性という宝は、たとえ見えないところに埋もれていても、
鋭い洞察があればはっきり見えます。だからこそ
ポートランドさんのお顔は我を忘れたかのように輝くのです、
心労にゆえに眠れない人たちを巨額の寄付で慰めながら。
セヴィニエ夫人の優しい手紙に命を与えているもの、それが感受性です。
第二の生に安らぎを与える天の恵み、それが感受性です。
否応なく魂をとらえて離さない魔法の力、それが感受性です。
ボスカウェンさん、あなたの魅力の半分はまさにあなたの感受性にあります。
ですが、今、あなたは恐れ、心配にとらわれています。
残された最後の子が恐ろしい戦争に挑もうとしているから、ですよね?
たくましい魂が
英雄として戦い、危険な栄光をつかもうとしているから、ですよね?
熱い魂が高みに昇ることを恐れているのですよね?
夫の記憶ゆえにあの子のことが心配なのですよね?
父譲りの勇敢さ、涙が出てきます、
英雄になってほしい、でもなってほしくない--つらいですね。
*****
Hannah More
"Sensibility: A Poetical Epistle to the Hon. Mrs. Boscawen"
Spirits are not finely touch'd
But to fine issues ---SHAKESPEARE
ACCEPT, BOSCAWEN! these unpolish'd lays,
Nor blame too much the verse you cannot praise.
For you far other Bards have wak'd the string;
Far other bards for you were wont to sing.
Yet on the gale their parting music steals,
Yet, your charm'd ear the lov'd impression feels.
You heard the lyres of Lyttleton and Young;
And this a Grace, and that a Seraph strung.
These are no more!—But not with these decline
The Attic chasteness, and the flame divine.
Still, Sad *Elfrida's Poet shall complain,
And either Warton breathe his classic strain.
Nor fear lest genuine poesy expire,
While tuneful Beattie wakes old Spenser's lyre.
His Sympathetic lay his soul reveals,
And paints the perfect Bard from what he feels.
Illustrious Lowth! for him the muses wove,
The fairest garland from their greenest grove.
Tho' Latian bards had gloried in his name,
When in full brightness burnt the Latian flame;
Yet, fir'd with nobler hopes than transient bays,
He scorn'd the meed of perishable praise;
Spurn'd the cheap wreathe by human science won,
Borne on the wing sublime of Amos' son:
He seiz'd his mantle as the prophet flew,
And with his mantle caught his spirit too.
To snatch bright beauty from devouring fate,
And bid it boast with him a deathless date;
To shew how genius fires, how taste restrains,
While what both are his pencil best explains,
Have we not Reynolds? Lives not Jenyns yet,
To prove his lowest title was a Wit?
Tho' purer flames thy hallow'd zeal inspire
Than e'er were kindled at the Muse's fire;
Thee, mitred Chester! all the Nine shall boast:
And is not Johnson theirs, himself an host?
Yes:—still for you your gentle stars dispense
The charm of friendship, and the feast of sense.
Yours is the bliss, and Heav'n no dearer sends,
To call the wisest, brightest, best—your friends.
With Carter trace the wit to Athens known,
Or find in Montagu that wit our own.
Or, pleas'd, attend Chapone's instructive page;
Which charms her own, and forms the rising age.
Or boast in Walsingham the various pow'r,
To soothe the lonely, grace the letter'd hour;
To polish'd life its highest charm she gives,
Whose song is music, and whose canvass lives.
Delany shines, in worth serenely bright,
Wisdom's strong ray, and Virtue's milder light;
And she who bless'd the friend, and grac'd the page
Of Swift, still lends her lustre to our age:
Long, long protract thy light, O star benign!
Whose setting beams with added brightness shine!
O, much lov'd Barbauld! shall my heart refuse
Its tribute to thy Virtues and thy Muse?
While round thy brow the Poet's wreathe I twine,
This humble merit shall at least be mine,
In all thy praise to take a gen'rous part;
Thy laurels bind thee closer to my heart:
My verse thy merits to the world shall teach,
And love the genius it despairs to reach.
Yet, what is wit, and what the Poet's art?
Can Genius shield the vulnerable heart?
Ah, no! where bright imagination reigns,
The fine-wrought spirit feels acuter pains:
Where glow exalted sense, and taste refin'd,
There keener anguish rankles in the mind:
There feeling is diffus'd thro' ev'ry part,
Thrills in each nerve, and lives in all the heart:
And those, whose gen'rous souls each tear wou'd keep
From others eyes, are born themselves to weep.
Say, can the boasted pow'rs of wit and song,
Of life one pang remove, one hour prolong?
Presumptuous hope! which daily truth deride;
For you, alas! have wept—and Garrick dy'd!
Ne'er shall my heart his lov'd remembrance lose,
Guide, critic, guardian, glory of my muse!
Oh, shades of Hampton! witness as I mourn,
Cou'd wit or song elude his destin'd urn?
Tho' living virtue still your haunts endears,
Yet bury'd worth shall justify my tears!
Garrick! those pow'rs which form a friend were thine;
And let me add, with pride, that friend was mine:
With pride! at once the vain emotion's fled;
Far other thoughts are sacred to the dead.
Who now with spirit keen, yet judgment cool,
Th' unequal wand'rings of my muse shall rule?
Whose partial praise my worthless verse ensure?
For Candor smil'd, when Garrick wou'd endure.
If harsher critics were compell'd to blame,
I gain'd in friendship what I lost in fame;
And friendship's fost'ring smiles can well repay
What critic rigour justly takes away.
With keen acumen how his piercing eye
The fault, conceal'd from vulgar view, wou'd spy!
While with a gen'rous warmth he strove to hide,
Nay vindicate the fault his judgment spied.
So pleas'd, cou'd he detect a happy line,
That he wou'd fancy merit ev'n in mine.
Oh gen'rous error, when by friendship bred!
His praises flatter'd me, but not misled.
No narrow views cou'd bound his lib'ral mind;
His friend was man, his party human kind.
Agreed in this, opposing statesmen strove
Who most should gain his praise, or court his love.
His worth all hearts as to one centre drew;
Thus Tully's Atticus was Caesar's too.
His wit so keen, it never miss'd its end;
So blameless too, it never lost a friend;
So chaste, that Modesty ne'er learn'd to fear;
So pure, Religion might unwounded hear.
How his quick mind, strong pow'rs and ardent heart,
Impoverish'd nature, and exhausted art,
A brighter bard records *, a deathless muse!—
But I his talents in his virtues lose:
Great parts are Nature's gift; but that he shone
Wise, moral, good and virtuous—was his own.
Tho' Time his silent hand across has stole,
Soft'ning the tints of sorrow on the soul;
The deep impression long my heart shall fill,
And ev'ry mellow'd trace be perfect still.
Forgive, BOSCAWEN, if my sorrowing heart,
Intent on grief, forget the rules of art;
Forgive, if wounded recollection melt—
You best can pardon, who have oft'nest felt.
You, who for many a friend and hero mourn,
Who bend in anguish o'er the frequent urn;
You who have found how much the feeling heart
Shapes its own wound, and points itself the dart;
You, who from tender sad experience feel
The wounds such minds receive can never heal;
That grief a thousand entrances can find,
Where parts superior dignify the mind;
Wou'd you renounce the pangs these feelings give,
Secure in joyless apathy to live?
For tho' in souls, where taste and sense abound,
Pain thro' a thousand avenues can wound;
Yet the same avenues are open still,
To casual blessings as to casual ill.
Nor is the trembling temper more awake
To every wound which misery can make,
Than is the finely-fashion'd nerve alive
To every transport pleasure has to give.
For if, when home-felt joys the mind elate,
It mourns in secret for another's fate;
Yet when its own sad griefs invade the breast,
Abroad, in other blessings, see it blest!
Ev'n the soft sorrow of remember'd woe
A not unpleasing sadness may bestow.
Let not the vulgar read this pensive strain,
Their jests the tender anguish wou'd profane:
Yet these some deem the happiest of their kind,
Whose low enjoyments never reach'd the mind;
Who ne'er a pain but for themselves have known,
Nor ever felt a sorrow but their own;
Who call romantic every finer thought,
Conceiv'd by pity, or by friendship wrought.
Ah! wherefore happy? where's the kindred mind?
Where, the large soul that takes in human kind?
Where, the best passions of the mortal breast?
Where, the warm blessing when another's blest?
Where, the soft lenitives' of others pain,
The social sympathy, the sense humane,
The sigh of rapture, and the tear of joy,
Anguish that charms, and transports that destroy?
For tender Sorrow has her pleasures too;
Pleasures, which prosp'rous Dulness never knew.
She never knew, in all her coarser bliss,
The sacred rapture of a pain like this!
Nor think, the cautious only are the just;
Who never was deceiv'd I wou'd not trust.
Then take, ye happy vulgar! take your part
Of sordid joy, which never touch'd the heart.
Benevolence, which seldom stays to chuse,
Lest pausing Prudence teach her to refuse;
Friendship, which once determin'd, never swerves,
Weighs ere it trusts, but weighs not ere it serves;
And soft-ey'd Pity, and Forgiveness bland,
And melting Charity with open hand;
And artless Love, believing and believ'd,
And gen'rous Confidence which ne'er deceiv'd;
And Mercy stretching out, ere Want can speak,
To wipe the tear from pale Affliction's cheek;
These ye have never known!—then take your part
Of sordid joy, which never touch'd the heart.
Ye, who have melted in bright Glory's flame,
Or felt the spirit-stirring breath of fame!
Ye noble few! in whom her promis'd meed
Wakes the great thought, and makes the wish the deed!
Ye, who have tasted the delight to give,
And, GOD's own agents, bid the wretched live;
Who the chill haunts of Desolation seek,
Raise the sunk heart, and flush the fading cheek!
Ye, who with pensive Petrarch love to mourn,
Or weave fresh chaplets for Tibullus' urn.
Who cherish both in Hammond's plaintive lay,
The Provence myrtle, and the Roman bay!
Ye, who divide the joys and share the pains
Which merit feels, or Heav'n-born Fancy feigns;
Wou'd you renounce such joys, such pains as these,
For vulgar pleasures, or for selfish ease?
Wou'd you, to 'scape the pain the joy forego;
And miss the transport to avoid the woe?
Wou'd you the sense of real sorrow lose,
Or cease to wooe the melancholy Muse?
No, Greville*! no!—Thy song tho' steep'd in tears,
Tho' all thy soul in all thy strain appears;
Yet wou'dst thou all thy well-sung anguish chuse,
And all th' inglorious peace thou begg'st, refuse.
Or you, BOSCAWEN! when you fondly melt,
In raptures none but mothers ever felt;
And view enamour'd in your beauteous race,
All Leveson's sweetness, and and all Beaufort's grace!
Yet think what dangers each lov'd child may share,
The youth if valiant, and the maid if fair;
That perils multiply as blessings flow,
And constant sorrows on enjoyments grow:
You, who have felt how fugitive is joy,
That while we clasp the phantom we destroy;
That life's bright sun is dimm'd by clouded views,
And who have most to love have most to lose;
Yet from these fair possessions wou'd you part,
To shield from future pain your guarded heart?
Wou'd your fond mind renounce its tender boast,
Or wish their op'ning bloom of promise lost?
Yield the dear hopes, which break upon your view,
For all the quiet, Dulness ever knew?
Debase the objects of your tend'rest pray'r,
To save the dangers of a distant care?
Consent, to shun the anxious fears you prove;
They less should merit, or you less should love?
Yet, while I hail the Sympathy Divine,
Which makes, O man! the wants of others thine:
I mourn heroic JUSTICE, scarcely own'd,
And Principle for Sentiment dethron'd.
While Feeling boasts her ever-tearful eye,
Stern Truth, firm Faith, and manly Virtue fly.
Sweet SENSIBILITY! thou soothing pow'r,
Who shedd'st thy blessings on the natal hour,
Like fairy favours! Art can never seize,
Nor Affectation catch thy pow'r to please:
Thy subtle essence still eludes the chains
Of Definition, and defeats her pains.
Sweet Sensibility! thou keen delight!
Thou hasty moral, sudden sense of right!
Thou untaught goodness! Virtue's precious seed!
Thou sweet precursor of the gen'rous deed!
Beauty's quick relish! Reason's radiant morn,
Which dawns soft light before Reflection's born!
To those who know thee not, no words can paint!
And those who know thee, know all words are faint!
'Tis not to mourn because a sparrow dies;
To rave in artificial extasies:
'Tis not to melt in tender Otway's fires;
'Tis not to faint when injur'd Shore expires:
'Tis not because the ready eye o'erflows
At Clementina's, or Clarissa's woes.
Forgive, O RICHARDSON! nor think I mean,
With cold contempt, to blast thy peerless scene:
If some faint love of virtue glow in me,
Pure spirit! I first caught that flame from thee.
While soft Compassion silently relieves,
Loquacious Feeling hints how much she gives;
Laments how oft her wounded heart has bled,
And boasts of many a tear she never shed.
As words are but th' external marks, to tell
The fair ideas in the mind that dwell;
And only are of things the outward sign,
And not the things themselves, they but define;
So exclamations, tender tones, fond tears,
And all the graceful drapery Pity wears;
These are not Pity's self, they but express
Her inward sufferings by their pictur'd dress;
And these fair marks, reluctant I relate,
These lovely symbols may be counterfeit.
Celestial Pity! why must I deplore,
Thy sacred image stamp'd on basest ore?
There are, who fill with brilliant plaints the page,
If a poor linnet meet the gunner's rage:
There are who for a dying fawn display
The tend'rest anguish in the sweetest lay;
Who for a wounded animal deplore,
As if friend, parent, country were no more;
Who boast quick rapture trembling in their eye,
If from the spider's snare they save a fly;
Whose well-sung sorrows every breast inflame,
And break all hearts but his from whom they came,
Yet scorning life's dull duties to attend,
Will persecute a wife, or wrong a friend;
Alive to every woe by fiction dress'd;
The innocent he wrong'd, the wretch distress'd,
May plead in vain; their suff'rings come not near,
Or he relieves them cheaply with a tear.
Not so the tender moralist * of Tweed;
His Man of Feeling is a man indeed.
Oh, bless'd Compassion! Angel Charity!
More dear one genuine deed perform'd for thee,
Than all the periods feeling e'er can turn,
Than all thy soothing pages, polish'd STERNE!
Not that by deeds alone this love's exprest,
If so, the affluent only were the blest.
One silent wish, one pray'r, one soothing word,
The precious page of Mercy shall record;
One soul-felt sigh by pow'rless Pity giv'n,
Accepted incense! shall ascend to Heav'n.
Since trifles make the sum of human things,
And half our Mis'ry from our foibles springs;
Since life's best joys consist in peace and ease,
And few can save or serve, but all may please:
Oh! let th' ungentle spirit learn from hence,
A small unkindness is a great offence.
Large bounties to bestow we wish in vain;
But all may shun the guilt of giving pain.
To bless Mankind with tides of flowing wealth,
With pow'r to grace them, or to crown with health,
Our little lot denies; but Heav'n decrees
To all, the gift of minist'ring to ease.
The gentle offices of patient love,
Beyond all flatt'ry, and all price above;
The mild forbearance at another's fault,
The taunting word suppress'd as soon as thought;
On these Heav'n bade the bliss of life depend,
And crush'd ill fortune when he made a Friend.
A Solitary blessing few can find,
Our joys with those we love are intertwin'd;
And he, whose helpful tenderness removes
Th' obstructing thorn which wounds the breast he loves,
Smooths not another's rugged path alone,
But scatters roses to adorn his own.
The hint malevolent, the look oblique,
The obvious satire, or implied dislike;
The sneer equivocal, the harsh reply,
And all the cruel language of the eye;
The artful injury, whose venom'd dart,
Scarce wounds the hearing while it stabs the heart;
The guarded phrase whose meaning kills, yet told,
The list'ner wonders how you thought it cold;
Small slights, contempt, neglect unmix'd with hate,
Make up in number what they want in weight.
These, and a thousand griefs minute as these,
Corrode our comfort, and destroy our ease.
As this strong feeling tends to good or ill,
It gives fresh pow'r to vice or principle;
'Tis not peculiar to the wise and good;
'Tis passion's flame, the virtue of the blood.
But to divert it to its proper course,
There Wisdom's pow'r appears, there Reason's force;
If, ill-directed, it pursues the wrong,
It adds new strength to what before was strong;
Breaks out in wild irregular desires,
Disorder'd passions, and illicit fires.
But if the virtuous bias rule the soul,
This lovely feeling then adorns the whole;
Sheds its sweet sunshine on the moral part,
Nor wastes on fancy what shou'd warm the heart.
Cold and inert the mental pow'rs would lie,
Without this quick'ning spark of Deity.
To draw the rich materials from the mine,
To bid the mass of intellect refine;
To melt the firm, to animate the cold,
And Heav'n's own impress stamp on nature's gold;
To give immortal Mind its finest tone,
O SENSIBILITY! is all thy own.
THIS is th' etherial flame which lights and warms,
In song transports us, and in action charms.
'Tis this that makes the pensive strains of Gray*
Win to the open heart their easy way.
Makes the touch'd spirit glow with kindred fire,
When sweet Serena's† poet wakes the lyre.
'Tis this, though Nature's hidden treasures lie,
Bare to the keen inspection of her eye,
Makes Portland's face its brightest rapture wear,
When her large bounty smooths the bed of care.
'Tis this, that breathe's through Sevigne's sweet page,
That nameless grace which soothes a second age.
'Tis this whose charms the soul resistless seize,
And gives BOSCAWEN half her pow'r to please.
Yet, why those terrors? why that anxious care?
Since your last* hope the deathful war will dare?
Why dread that energy of soul which leads
To dang'rous glory by heroic deeds?
Why tremble lest this ardent soul aspire?—
You fear the son because you knew the sire.
Hereditary valour you deplore,
And dread, yet wish to find one hero more.
http://quod.lib.umich.edu/cgi/t/text/text-idx?c=evans;idno=N34141.0001.001
(Poems, 1785)
適宜修正済み
*****
キーワード:
感受性 sensibility
幸せな人 beatus ille
心の安らぎ ataraxia
賢い人 sapiens
無感情 apathy
美徳 virtue
自然
ホラティウス Horace
エピクロス Epicurus
ルクレティウス Lucretius
セネカ Seneca
ストア派 the Stoics
グロティウス Grotius
ホッブズ Hobbes
広教派 Latitude-men
(Augustine / Pelagius)
(Calvin / Arminius)
ケンブリッジ・プラトニスト Cambridge Platonists
シャフツベリー Third Earl of Shaftesbury
ヒューム Hume
アダム・スミス Adam Smith
cf.
Finch, "The Spleen"
Greville, "A Prayer for Indifference"
Yearsley, "To Indifference"
Smith, "At Middleton in Sussex"
*****
家柄(教養、職など)、宗教的敬虔さ、にかわる価値基準、
人の価値をはかる基準としての感受性。16世紀後半以降
封建的・貴族中心的な価値観が影響力を失い、また17世紀
(特に半ば)以降強すぎる宗教性の危険が周知されてきたなかで、
これらにかわるものとして描かれ、語られ、論じられるようになった。
生まれのいい人が偉いのか、神を畏れ敬う人が偉いのか、
それとも心の優しい人が偉いのか、という問題。
(心の優しい人が、といいつつ上の詩はなかなか排他的・
攻撃的で微妙。まだ18世紀的、ロマン派以前的。)
*****
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。
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かまいません。
商用、盗用、悪用などはないようお願いします。
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Blake, "The Human Abstract"
ウィリアム・ブレイク
「人間とは」
〈哀れみ〉は存在しないはず、
わたしたちが誰かを貧困に陥れないかぎり。
〈慈悲〉も存在しないはず、
誰もがわたしたちのように幸せなら。
互いに対する恐怖が〈平和〉をもたらす、
が、そのうちみんなわがままになる。
こうして〈冷酷〉が罠を編んで広げる、
ていねいに餌をつけて。
〈冷酷〉は神を畏れて涙を流し、
大地を濡らす。
するとその足の下に
〈謙遜〉が根づく。
すぐに〈秘儀〉の暗い枝と葉が
広がる、〈冷酷〉の頭の上に。
そして芋虫や蠅が
〈秘儀〉を食べて育つ。
〈冷酷〉の木には〈嘘〉の実がなる、
赤くておいしい実が。
やがて大きな鴉(からす)が巣をつくる、
葉のいちばん茂った暗いところに。
大地と海の神々が
この世にこの木を探したが、
見つけることができなかった。
人の頭のなかに育つ木だから。
*****
Willaim Blake
"The Human Abstract"
Pity would be no more
If we did not make somebody poor,
And Mercy no more could be
If all were as happy as we.
And mutual fear brings Peace,
Till the selfish loves increase;
Then Cruelty knits a snare,
And spreads his baits with care.
He sits down with his holy fears,
And waters the ground with tears;
Then Humility takes its root
Underneath his foot.
Soon spreads the dismal shade
Of Mystery over his head,
And the caterpillar and fly
Feed on the Mystery.
And it bears the fruit of Deceit,
Ruddy and sweet to eat,
And the raven his nest has made
In its thickest shade.
The gods of the earth and sea
Sought through nature to find this tree,
But their search was all in vain:
There grows one in the human Brain.
http://www.gutenberg.org/ebooks/1934
*****
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「人間とは」
〈哀れみ〉は存在しないはず、
わたしたちが誰かを貧困に陥れないかぎり。
〈慈悲〉も存在しないはず、
誰もがわたしたちのように幸せなら。
互いに対する恐怖が〈平和〉をもたらす、
が、そのうちみんなわがままになる。
こうして〈冷酷〉が罠を編んで広げる、
ていねいに餌をつけて。
〈冷酷〉は神を畏れて涙を流し、
大地を濡らす。
するとその足の下に
〈謙遜〉が根づく。
すぐに〈秘儀〉の暗い枝と葉が
広がる、〈冷酷〉の頭の上に。
そして芋虫や蠅が
〈秘儀〉を食べて育つ。
〈冷酷〉の木には〈嘘〉の実がなる、
赤くておいしい実が。
やがて大きな鴉(からす)が巣をつくる、
葉のいちばん茂った暗いところに。
大地と海の神々が
この世にこの木を探したが、
見つけることができなかった。
人の頭のなかに育つ木だから。
*****
Willaim Blake
"The Human Abstract"
Pity would be no more
If we did not make somebody poor,
And Mercy no more could be
If all were as happy as we.
And mutual fear brings Peace,
Till the selfish loves increase;
Then Cruelty knits a snare,
And spreads his baits with care.
He sits down with his holy fears,
And waters the ground with tears;
Then Humility takes its root
Underneath his foot.
Soon spreads the dismal shade
Of Mystery over his head,
And the caterpillar and fly
Feed on the Mystery.
And it bears the fruit of Deceit,
Ruddy and sweet to eat,
And the raven his nest has made
In its thickest shade.
The gods of the earth and sea
Sought through nature to find this tree,
But their search was all in vain:
There grows one in the human Brain.
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From Shakespeare, Venus and Adonis
ウィリアム・シェイクスピア
『ウェヌスとアドニス』より
真っ赤な顔の太陽神アポロンが去ってしまって
夜明けの女神アウロラが泣いている、まさにそんなとき、
薔薇色の頬の少年アドニスは馬に乗って狩りに行く。
彼は狩りが好き。恋愛にはまるで興味がない。
ウェヌスはそんな彼が好きで好きでしかたがない。だから全速力で
走ってきて、そして大胆に、こう口説きはじめる。
「あなた、あたしよりずっときれい。
野原でいちばんきれいな花。比類なき存在。
あなたを見ればニンフも自分が恥ずかしくなる。人間を超えてる。
鳩より白くて薔薇より赤い。
あなたの母の〈自然〉もこういってる、
あなたが死ぬときがこの世の終わり、って。」
「ね、お願い、奇跡みたいなあなた、馬から降りて。
高ぶる馬を止めて、頭を鞍に結んで。
お願いを聞いてくれたら、ご褒美として
蜂蜜みたいに甘い秘密をたくさん教えてあげる。
こっち来てすわって。蛇とかいないから平気。
ね、すわって。たくさんキスして息を止めてあげる。」
「大丈夫、飽きさせたりしないから。
逆よ。キスすればするほど、唇が飢えてくる。したことないような
いろんなキスをしてあげる。熱いのとか、くらくらするのとか、
短いのを十回連続とか、二十回分の長いのを一回とか。
夏の一日なんて、一時間みたいにあっという間。
楽しく遊んで無駄に過ごしましょ。」
こういってウェヌスはアドニスの手をつかむ。
彼の手は汗ばんでいた。汗とは命と力の証。
欲望に打ち震えつつ彼女はいう--この汗は魔法の水、
人体がつくる最高の薬、女神の病気だって治してくれる……。
こうして我を忘れ、欲望のなすがままに彼女は
思い切ってアドニスを馬から引きずりおろす。
若くて鼻息荒い馬の手綱の下から片腕を入れ、
もう片腕で美少年を抱きかかえる。
アドニスは顔を赤らめてご機嫌ななめ。まるで興味ない。
鉛のように心が重く、遊ぶ気なんてまるでなし。
ウェヌスは赤く燃えあがる。炎のなか赤熱する石炭のよう。
アドニスも赤い。でもそれは恥ずかしいから。心は凍っている。
ウェヌスは鋲つきの手綱をごつごつの枝に
器用に結ぶ。そう、恋はとてもせっかちだから!
こうして馬を木につなぎ、さあ今度は
馬に乗ってた子をあたしにつなぐ番!
ウェヌスはアドニスを押し倒す。本当は自分がされたいように。
彼のからだを制圧する。心までは無理だけど。
あっという間にアドニスは引き降ろされ、隣同士、
ふたりは横になっていた。
ウェヌスは彼の頬を撫でる。彼は嫌がる。
もう、やめ……ん!!! アドニスの口をキスでふさいで
ウェヌスはささやく。興奮して、とぎれとぎれに。
怒るんだったら……もう口……離してあげない……。
アドニスは恥ずかしくて顔に火がつきそう。ウェヌスは涙を注いで
その炎を消す。処女みたいでかわいい子……。
次に彼女はため息の嵐と金の髪から
送る風で彼の頬を乾かす。
彼はいう、今度は何? やめ……
またキスで言葉が殺された。
断食でギリギリまで飢えた鷲は
獲物の羽と肉と骨を突っつきまくり、
からだを揺らしながらすごい勢いで貪り食う。お腹いっぱいに
なるまで、または全部平らげてしまうまで止まらない。
ウェヌスも同じ。彼女はアドニスの額と頬と口をキスで貪る。
順番にキスしていって、終わったらまた最初から。
嫌々幸せな気分になって、でも心は抵抗したまま
横たわり、アドニスはウェヌスの顔に息をはあはあ浴びせる。
彼女はその蒸気をまた獲物のように貪る。
ああ、これは天の潤いの贈りもの……恵みの香り……
あたしの頬の花園に
あなたの息のシャワーで露が降りてくる……素敵ね。
あらま! まるで網にとらえられてからまった鳥のように
アドニスもウェヌスの腕にとらえられてからまっている。
恥ずかしくて恐くて嫌で、だから彼は怒っている。
もともと美少年なのに怒っていてますます美少年。
もともと大きな川に雨が降り、
水が岸からあふれるのと同じ?
(つづく)
*****
William Shakespeare
From Venus and Adonis
EVEN as the sun with purple-colour'd face
Had ta'en his last leave of the weeping morn,
Rose-cheek'd Adonis hied him to the chase;
Hunting he lov'd, but love he laugh'd to scorn; 4
Sick-thoughted Venus makes amain unto him,
And like a bold-fac'd suitor 'gins to woo him.
'Thrice fairer than myself,' thus she began,
'The field's chief flower, sweet above compare, 8
Stain to all nymphs, more lovely than a man,
More white and red than doves or roses are;
Nature that made thee, with herself at strife,
Saith that the world hath ending with thy life. 12
'Vouchsafe, thou wonder, to alight thy steed,
And rein his proud head to the saddle-bow;
If thou wilt deign this favour, for thy meed
A thousand honey secrets shalt thou know: 16
Here come and sit, where never serpent hisses;
And being set, I'll smother thee with kisses:
'And yet not cloy thy lips with loath'd satiety,
But rather famish them amid their plenty, 20
Making them red and pale with fresh variety;
Ten kisses short as one, one long as twenty:
A summer's day will seem an hour but short,
Being wasted in such time-beguiling sport.' 24
With this she seizeth on his sweating palm,
The precedent of pith and livelihood,
And, trembling in her passion, calls it balm,
Earth's sovereign salve to do a goddess good: 28
Being so enrag'd, desire doth lend her force
Courageously to pluck him from his horse.
http://www.gutenberg.org/ebooks/1045
*****
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。
ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。
商用、盗用、悪用などはないようお願いします。
『ウェヌスとアドニス』より
真っ赤な顔の太陽神アポロンが去ってしまって
夜明けの女神アウロラが泣いている、まさにそんなとき、
薔薇色の頬の少年アドニスは馬に乗って狩りに行く。
彼は狩りが好き。恋愛にはまるで興味がない。
ウェヌスはそんな彼が好きで好きでしかたがない。だから全速力で
走ってきて、そして大胆に、こう口説きはじめる。
「あなた、あたしよりずっときれい。
野原でいちばんきれいな花。比類なき存在。
あなたを見ればニンフも自分が恥ずかしくなる。人間を超えてる。
鳩より白くて薔薇より赤い。
あなたの母の〈自然〉もこういってる、
あなたが死ぬときがこの世の終わり、って。」
「ね、お願い、奇跡みたいなあなた、馬から降りて。
高ぶる馬を止めて、頭を鞍に結んで。
お願いを聞いてくれたら、ご褒美として
蜂蜜みたいに甘い秘密をたくさん教えてあげる。
こっち来てすわって。蛇とかいないから平気。
ね、すわって。たくさんキスして息を止めてあげる。」
「大丈夫、飽きさせたりしないから。
逆よ。キスすればするほど、唇が飢えてくる。したことないような
いろんなキスをしてあげる。熱いのとか、くらくらするのとか、
短いのを十回連続とか、二十回分の長いのを一回とか。
夏の一日なんて、一時間みたいにあっという間。
楽しく遊んで無駄に過ごしましょ。」
こういってウェヌスはアドニスの手をつかむ。
彼の手は汗ばんでいた。汗とは命と力の証。
欲望に打ち震えつつ彼女はいう--この汗は魔法の水、
人体がつくる最高の薬、女神の病気だって治してくれる……。
こうして我を忘れ、欲望のなすがままに彼女は
思い切ってアドニスを馬から引きずりおろす。
若くて鼻息荒い馬の手綱の下から片腕を入れ、
もう片腕で美少年を抱きかかえる。
アドニスは顔を赤らめてご機嫌ななめ。まるで興味ない。
鉛のように心が重く、遊ぶ気なんてまるでなし。
ウェヌスは赤く燃えあがる。炎のなか赤熱する石炭のよう。
アドニスも赤い。でもそれは恥ずかしいから。心は凍っている。
ウェヌスは鋲つきの手綱をごつごつの枝に
器用に結ぶ。そう、恋はとてもせっかちだから!
こうして馬を木につなぎ、さあ今度は
馬に乗ってた子をあたしにつなぐ番!
ウェヌスはアドニスを押し倒す。本当は自分がされたいように。
彼のからだを制圧する。心までは無理だけど。
あっという間にアドニスは引き降ろされ、隣同士、
ふたりは横になっていた。
ウェヌスは彼の頬を撫でる。彼は嫌がる。
もう、やめ……ん!!! アドニスの口をキスでふさいで
ウェヌスはささやく。興奮して、とぎれとぎれに。
怒るんだったら……もう口……離してあげない……。
アドニスは恥ずかしくて顔に火がつきそう。ウェヌスは涙を注いで
その炎を消す。処女みたいでかわいい子……。
次に彼女はため息の嵐と金の髪から
送る風で彼の頬を乾かす。
彼はいう、今度は何? やめ……
またキスで言葉が殺された。
断食でギリギリまで飢えた鷲は
獲物の羽と肉と骨を突っつきまくり、
からだを揺らしながらすごい勢いで貪り食う。お腹いっぱいに
なるまで、または全部平らげてしまうまで止まらない。
ウェヌスも同じ。彼女はアドニスの額と頬と口をキスで貪る。
順番にキスしていって、終わったらまた最初から。
嫌々幸せな気分になって、でも心は抵抗したまま
横たわり、アドニスはウェヌスの顔に息をはあはあ浴びせる。
彼女はその蒸気をまた獲物のように貪る。
ああ、これは天の潤いの贈りもの……恵みの香り……
あたしの頬の花園に
あなたの息のシャワーで露が降りてくる……素敵ね。
あらま! まるで網にとらえられてからまった鳥のように
アドニスもウェヌスの腕にとらえられてからまっている。
恥ずかしくて恐くて嫌で、だから彼は怒っている。
もともと美少年なのに怒っていてますます美少年。
もともと大きな川に雨が降り、
水が岸からあふれるのと同じ?
(つづく)
*****
William Shakespeare
From Venus and Adonis
EVEN as the sun with purple-colour'd face
Had ta'en his last leave of the weeping morn,
Rose-cheek'd Adonis hied him to the chase;
Hunting he lov'd, but love he laugh'd to scorn; 4
Sick-thoughted Venus makes amain unto him,
And like a bold-fac'd suitor 'gins to woo him.
'Thrice fairer than myself,' thus she began,
'The field's chief flower, sweet above compare, 8
Stain to all nymphs, more lovely than a man,
More white and red than doves or roses are;
Nature that made thee, with herself at strife,
Saith that the world hath ending with thy life. 12
'Vouchsafe, thou wonder, to alight thy steed,
And rein his proud head to the saddle-bow;
If thou wilt deign this favour, for thy meed
A thousand honey secrets shalt thou know: 16
Here come and sit, where never serpent hisses;
And being set, I'll smother thee with kisses:
'And yet not cloy thy lips with loath'd satiety,
But rather famish them amid their plenty, 20
Making them red and pale with fresh variety;
Ten kisses short as one, one long as twenty:
A summer's day will seem an hour but short,
Being wasted in such time-beguiling sport.' 24
With this she seizeth on his sweating palm,
The precedent of pith and livelihood,
And, trembling in her passion, calls it balm,
Earth's sovereign salve to do a goddess good: 28
Being so enrag'd, desire doth lend her force
Courageously to pluck him from his horse.
http://www.gutenberg.org/ebooks/1045
*****
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。
ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。
商用、盗用、悪用などはないようお願いします。
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