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二十歳のエピグラムとソネット(FKS 2018)

二十歳のエピグラムとソネット
(フェリス、神奈川、成城、2018)

- 学生作品
- 若干(あるいは大きく)加筆修正あり

**********
1. (何があっても前を向け)

何があっても前を向け
人の意見にだまされるな
ほら、青信号だ

S. H.

*****
2. (就活生は)

就活生はスーツを着て、髪を黒くして
真面目に見えなくてはならない。
でも同じ外見のなかから本当にいい人を見つけられるの?

M. T.

*****
3. 恋とは

若いうちにたくさん恋をしたほうがいい
そういうけれど、いったいどうして?
悲しみが増えるだけ
しかも最後に選ぶのはひとつだけ

K. K.

*****
4. (あなたはいつも太陽みたいに)

あなたはいつも太陽みたいに光ってまぶしい
でも、あなたのおかげでわたしの影は黒く濃くなる
黒は光のなかではもっと黒

Y. T.

*****
5. (あれが嫌い、これが嫌い)

あれが嫌い、これが嫌い、
という人は好きじゃない、と言おうとした時、
自分も自分の好みにあわないものを
除こうとしていることに気づいて
何も言えなくなる

R. I.

*****
6. (わたしは誰に従えば)

わたしは誰に従えばいいのか
そもそも従うとはどういうことか
社会に従う、ルールに従う--
従わなければ悪、愚か、なのか
誰が誰に従わせて社会をつくっているのか
社会は何を望んでいるのか
誰も答えを知らないのではないか

F. H.

*****
7. 窓

この世界には無数の窓がある
通いなれたこの路にも
数え切れない窓

その窓の向こう、空き地が一瞬見えて
消える

それは名もなき墓標、思い出の死に場所
誰もが忘れ去った穴、虚無

時代の流れか、不況のせいか
あるいは運命か
ぽつり、ぽつりと窓に空き地が映る

戦慄して周りを見る、すると
誰もが手中の窓に空き地を見つめている

私も手元を覗く
暗い窓、見えては消える虚無、虚無、虚無……

T. K.

*****
8. (私の花壇に誰がいる?)

私の花壇に誰がいる?
私を育ててくれたサルビア
素直になれないブルーサルビア
優しい枯れかけのバーベナ

隣の花壇に誰がいる?
いつも明るいソノヒグサ
いつもまじめなクロサンドラ
いつも助けてくれるヤマボウシ

向かいの花壇には誰がいる?
怒りっぽいカーネーション
口の軽いキンギョソウ
いつも笑顔のゲッケイジュ

私はいったいどんな花?
私は私を見れないの

T. M.

*****
9. (ぼくはいつも目で追ってしまう)

ぼくはいつも目で追ってしまう
君が揺らすその髪を
君が見開くその目を
ぼくはいつも気にしてしまう

わたしはいつも気づいている
あなたがわたしを追うのを
あなたがわたしを好きなのを
わたしはいつも気にしてしまう

ぼくは知っている
離れすぎていて届かない

わたしは知っている
本当はいつも届いている

君は遠く輝く星
あなたはいつかのエーデルワイス

M. K.
(ペトラルカ型)

*****
10. 憂鬱

毎朝揺られる満員電車
憂鬱なほど遠い距離
むかつく世の中の不条理
どいつもこいつも偽善者
学校の長い授業時間
毎日行って帰って疲れる
疲れで心がどんどん枯れる
先生の無駄話マジでいらん

まあでも行くなら頑張らないと
高いお金も払ってるから
もっと気楽に考えて
学校とその後のバイト
行って得るものがあるから
もっと頑張る気分を上げて

Y. Y.
(ペトラルカ型)

*****
11. (空は心のよう)

空は心のよう
穏やかな日差し
涙のような雨
抑えられない怒りの雷
どうしようもない迷いと不安の雲
冷静に落ちついた雪
隠れたり堂々としたり、の月
光り輝く星

空は心のよう
空の色は場所によって違う
場所によって心も変わる

でも、空は世界にひとつだけ
世界に対していつも平等
わたしの心は平等ではない

K. N.

*****
12. 春に

春に思う
散り始めた桜道
暖かな風に包まれて
期待に胸を躍らせる
新しい仮面をつけて
初めて住むこの場所を
私は好きになれるだろうか

春に想う
満開に咲いた桜道
肌寒い風に包まれて
寂しさに思いを募らせる
馴染んだ仮面もあわなくて
今まで住んだこの場所を
私は好きと言えるだろうか

K. N.

*****
13. (寒い風が流れて葉が落ちる)

寒い風が流れて葉が落ちる
行き交う人の装いも冬
乾いた空気、雲ひとつない空
それを眺めて過去を振り返る
春夏秋の自分を顧みる
多くのことがあるにはあった、が
成し遂げたことは
何も思い浮かばない
これから再び来る季節
するべきことは数あれど
何かを成し遂げた自分の姿も浮かばない
おそらく何も達成できないのであろう
これから数十年続く生
実りあるものにできるのだろうか

Y. M.

*****
盗用・商用・悪用禁止。


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大山(雨降山) 201905

大山(雨降山)
201905









大正2年


その名のとおり雨と霧














江ノ島が見える





ずっきゅん……


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Lou Reed, "Perfect Day"

ルー・リード
「最高の一日」

まさに最高の一日
公園でサンガリアを飲んで
そうして暗くなったら
家に帰る

まさに最高の一日
動物園で動物に餌をあげて
そうして映画も見て
家に帰る

なんて最高な一日
幸せ、君と一緒にいて
なんて最高な一日
君から離れられない
君から離れられない

まさに最高の一日
悩みはみんな忘れて
週末は二人でお出かけ
本当に楽しい

まさに最高の一日
自分じゃないみたいだった
他の人になった気がした
誰かいい人になった気がした

なんて最高な一日
幸せ、君と一緒にいて
なんて最高な一日
君から離れられない
君から離れられない

これは君が撒いた種……
そして君が刈りとることになる……

これは君が撒いた種……
そして君が刈りとることになる……

*****
Lou Reed
"Perfect Day"

https://www.azlyrics.com/lyrics/loureed/perfectday.html
https://www.youtube.com/watch?v=9wxI4KK9ZYo (1972)
https://www.youtube.com/watch?v=CH2lvbdGkfM (2000)

*****
(大意)
恋人と健全に楽しい一日を過ごして
自分の暗い・悪い・健全じゃない面を忘れて
自分がいい人のような気がして
(結婚して)
でも、たぶんやがて
自分の暗い・悪い・健全じゃない面がやはり出てきて
相手を不幸にするだろう

*****
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嘘を楽しむ(エッセイ)

嘘を楽しむ

最近仕事でヤーコプ・ベーメ(Jakob Böhme [Boehme, Behmen], 1575-1624; 実際には「ボァーマ」と聞こえる)の著作に初めてふれた。ドイツの靴職人にして神秘思想家で、異端として攻撃されつつも人気を集め、イギリスでは1640-50年代に全作が翻訳されたようである。近年、アリエル・ヘサヨン(Ariel Hessayon)がウィンスタンリー、ランター(「暴言族」)およびクエイカー(「友の会」会員)らとの関連で研究を進めており、『ジェイコブ・ブァーマ入門』(Hessayon, ed. An Introduction to Jacob Boehme, 2014)のような本もある。(イギリス英語では「ブァーマ」と聞こえる。)

ミルトンとの関係では、1914年にすでに『ミルトンとヤーコプ・ベーメ』(M. L. Bailey, Milton and Jakob Boehme)なる研究書が出版されている。ボズウェルの『ミルトンの書斎』(J. C. Boswell, Milton's Library, 1975)で確認できるように、ミルトンはベーメの書を多数読んでいたらしい。神秘思想にもキリスト教の神秘的側面にも私は一切関心をもたないが、ミルトンが読んでいる、ケンブリッジ大の討論でヘンリー・モアの友人に擁護された(Charles Hotham, An Introduction to the Tevtonick Philosophie, 1650)、モアにも(批判含みながら)好意的に評価された、などというベーメは、やはり研究上無視できない。

そんな次第で、以下、ケンブリッジの討論でとりあげられた『神の本質の三原理』(A Description of the Three Principles of the Divine Essence, 1648)におけるアダムとイヴの描写を紹介する。アダム両性具有説をとるベーメだが、その議論が予想外に面白い。曰く、アダムのなかの現世的・肉体的要素が男性・青年であり、神が彼に吹きこんだ霊的要素が女性・純潔な処女である。そしてこの両者が対話する。青年――「君はぼくの花嫁、ぼくの楽園、ぼくの花冠。君の楽園のなかにぼくを入れて。……君に気持ちよく愛されたい」。処女――「確かにあなたはわたしの夫、でもあなたはわたしをきれいにしてくれない。真珠のほうがあなたより大事。……わたしの庭に来て。友だちとして仲よくしましょう。……でも真珠はあげない。あなたは闇で、真珠は光と輝きだから……」(108)。

これを見て思うのは、『失楽園』のアダムとイヴの場面にどこか似ているということ、それから、神秘思想と言われるのに「神秘」的でないということ。『失楽園』のアダムとイヴの話と同様、ベーメの議論も物語、楽しめる虚構のように見える。神秘の書というより今の映画、ドラマ、アニメ、マンガに近い。この感覚はどこから来るのだろう? 以下、私の考察である。

科学が高度に発達した現代に生きる私たちは、日々すべてのものについて「事実か、虚構か」を問いつつ生きている。そして、無害なものであれば虚構を楽しむ心の余裕をもっている。(最近の社会を見ると、そうでもなさそうだが。) おそらくベーメは今、そんな無害な虚構である。が、17世紀のイギリス、あるいはヨーロッパでは違った。当時の人々は、科学的に正誤を問えない諸議論について「正統か、非正統か」を問い、そして後者を排斥することで共有すべき世界観をつくり、保っていた。神秘という点では正統なキリスト教教義も異端思想も同じはずだが、非正統で異端的な神秘は危険とされた。それが当時のベーメなのであろう。

同時に、彼が少なからぬ好評・支持を集めたことは、彼の異端的神秘あるいは虚構(?)を楽しめる人、正統・非正統の対立を超える思考・感性をもつ人もいた、ということなのだろう。ミルトンのように。

*****
所属学会会報のために書いた文章。

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"The Star-Spangled Banner"

「星きらめく旗」

おおお! 夜明けの最初の光に見えるか?
夕暮れの最後の薄明かりにわたしたちが見たものが?
そう、厳しい戦いのなか、太い縞模様と輝く星の旗を
わたしたちは見た。城壁の上、あれは美しく風に流れていた。
夜になっても、ミサイルの赤くまぶしい炎、空で爆発する爆弾の光で
わかっていた、あの旗はまだそこにある、と。
だから、教えてくれ! 星きらめく旗はまだなびいているか?
自由な者の国の上に? 勇気ある者の故郷に?

*****
"The Star-Spangled Banner "

O! say can you see by the dawn's early light,
What so proudly we hailed at the twilight's last gleaming,
Whose broad stripes and bright stars through the perilous fight,
O'er the ramparts we watch'd, were so gallantly streaming?
And the Rockets' red glare, the Bombs bursting in air,
Gave proof through the night that our Flag was still there;
O! say does that star-spangled Banner yet wave,
O'er the Land of the free and the home of the brave?

https://en.wikisource.org/wiki/Defence_of_Fort_McHenry_(broadside)

*****
内容に特に関心はないが、何かの参考までに。

1812年戦争中、昼の戦いに耐え(アメリカの旗が立っていて)、
夜の戦いにも耐えていた(旗がまだ立っていた)、そんな
アメリカのある要塞が、朝になってもまだ攻め落とされずに
耐えているだろうか(まだ旗は立っているか)? という歌。

*****
私見だが、詩としても、曲の点でも、
日本の国歌のほうが美しいと思う。
「君」が誰か云々という議論以前の話として。

戦いにおける勝利ではなく人の幸せを祈るあの詩、
安易な同調や盛りあがりを拒むあの曲。

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