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Watson, Hekatompathia 5

トマス・ワトソン
『愛の歌100』 5番

今のぼくの気持ちが愛でないなら、愛って何だろう?
今のぼくの気持ちが愛だとしても、愛って何だろう?
愛が幸せなものなら、どうしてみんな傷つくのだろう?
愛が悪いものなら、どうして誰もそれを悪く言わないのだろう?
自分から望んで愛に燃えているなら、どうして悲しいのだろう?
意に反して愛するほど愛が強いなら、悲しんで何が変わるのだろう?

ああ、生きながらの死、甘く、楽しい不幸--
心が抵抗しても、愛の力にはかなわない。
後ずさりして、気持ちをおさえても、
愛さずにはいられないから、悲しんでもしかたがない。
愛の奴隷になっている人には
このことわざがふさわしいーー「自業自得」。

こうしてあちこちから吹く風に飛ばされて、
ぼくは小さな舟で危険な海を渡っている。
知恵ではなく勘違いという荷物ばかりを積んで、
港から遠くに流されて、ぼくは漂う。
不安の波にゆれ、どんな助けを求めていいかもわからず、
ぼくは夏に凍え、冬の炎に燃える。

* * *
Thomas Watson
Hekatompathia 5

If't be not love I feel, what is it then?
If love it be, what kind a thing is love?
If good, how chance he hurts so many men?
If bad, how haps that none his hurts disprove?
If willingly I burn, how chance I wail?
If gainst my will, what sorrow will avail?

O livesome death, O sweet and pleasant ill,
Against my mind how can thy might prevail?
If I bend back, and but refrain my will,
If I consent, I do not well to wail;
{And touching him, whom will hath made a slave,
The Proverb say'th of old, Self do, self have.}

Thus being toss'd with winds of sundry sort
Through dang'rous Seas but in a slender Boat,
With error stuff'd, and driv'n beside the port,
Where void of wisdom's freight it lies afloat.
I wave in doubt what help I shall require,
In Summer freeze, in winter burn like fire.

* * *
ペトラルカのソネット132の翻案。
Chaucer, "Canticus Troili" と同じ。

それに、さらにペトラルカ189番を混ぜこんでいる。
Wyatt, ("My galley chargèd with forgetfulness")
を参照。

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.elizabethanauthors.org/hek005.htm

* * *
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Watson, Hekatompathia 54

トマス・ワトソン
『愛の歌100』 54番

ぼくはとても幸せでした。先ほど
あのひとといっしょにいて、五感がみな満たされていたのですから。
心のこもったキスで口が幸せでした。
音楽のような声を聞き、耳が幸せでした。
麝香(じゃこう)のような息の香りで、鼻が幸せでした。
つつしみが許す範囲であのひとにさわって、手が幸せでした。

そして、何がぼくの目を奪ったか、言いましょうか。
それは、タホ川の砂金のような金色のあのひとの巻き毛です。
それから、象牙のように白くなめらかなあのひとの顔です。
そこでは〈自信〉と〈威厳〉と〈はにかみ〉が手をとりあってました。
それから目です。片目は平和を、もう片目は戦争を告げていました。
ウェヌスが片目を、マルスがもう片目を支配していたのです。

それから、ぼくは見ました、あのひとの高い鷲鼻、白みがかった赤い頬、
オリエントの真珠のような歯、美しいほほえみ、
くぼみのあるあご、透きとおった光のような胸、
ティートーノスに心奪われた夜明けの女神のような手・・・・・・
この世でこれほどのよろこびを味わったのは、ぼくだけでしょう、
五感すべてがそれぞれ満たされていたのですから。

* * *
Thomas Watson
Hekatompathia 54

What happy hour was that I lately past
With her, in whom I fed my senses all?
With one sure sealed kiss I pleas'd my taste;
Mine ears with words, which seemed Musical;
My smelling with her breath, like Civet sweet;
My touch in place where modesty thought meet,

But shall I say, what objects held mine eye?
Her curled Locks of Gold, like Tagus' sands;
Her Forehead smooth and white as Ivory,
Where Glory, State and Bashfulness held hands;
Her Eyes, one making Peace, the other Wars;
By Venus one, the other rul'd by Mars;

Her Eagle's Nose; her Scarlet Cheeks half white;
Her Teeth of Orient Pearl; her gracious smile;
Her dimpled Chin; her Breast as clear as light;
Her Hand like hers who Tithon did beguile.
For worldly joys who might compare with me,
While thus I fed each sense in his degree?

* * *
Ronsard, ("Pein moi, Janet, pein moi je te supplie")
の翻案(とのこと)。ブラゾン(同系統の比喩の羅列)の詩。

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.elizabethanauthors.org/hek005.htm

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