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Pope, An Essay on Man 4

アレグザンダー・ポウプ
『人間論』
書簡4

幸せ、これこそ我々の目標にして終着点!
善、快楽、安らぎ、満足、何と呼べばいい?
その何かを求めて人は永遠にため息をつく。
その何かのために生に耐え、また死を選ぶ。
手が届きそうなのに届かない。
見えなかったり二重に見えたり、馬鹿にとっても賢い人にも。
天国の種! この世に空から蒔かれたら
どんな人のところで育つ?
輝かしい将来のある宮廷人に花開く?
ダイアモンドとともに大地の奥で炎をあげる?
詩人の花冠に編みこまれている?
作物といっしょに畑で収穫できる?
幸せはどこに育つ? 育たない? 努力が実らない時、
それは人の耕しかたが悪いせい。土の質でなく。
本当の幸せが宿る場所というのはない。
幸せはどこにもなく、でもどこにでもある。
金で買えるほど安くはないのに、いつもただ。
王宮から逃げてあなたの家に住んでいる、なんてね、センジョンさん!

頭のいい人に訊く? ダメ、彼らは盲目だから。
世に尽くせと言う人がいて、隠遁しろと言う人がいる。
人によって幸せとは活動だったり、安逸だったり、
快楽のことだったり、満足のことだったり。
獣のように快楽に耽ってその快楽がつらくなる人がいて、
神々のように偉そうに美徳を無視する人がいる。
何も考えていない極端な人もいて、
ある時にはすべてを信じ、またある時にはすべてを疑う。

結局、幸せの定義を突き詰めれば
たぶんこうなるーー幸せとは幸せのこと。

変な人の意見は無視して自然に従うといい。
地位は関係ないし、知力を問わず誰にでもわかる。
幸せとは普通のことで、何も無茶することはない。
正しく考えればいい。それと善意があればいい。
確かにこの世は不公平、でも
みな等しく常識をもち、みな等しく安らげる。

思い出そう、すべての源である神の法則は
一部でなく全体に適用される。
つまり正しく言えば、幸せは
誰かひとりではなくみなのもの。
個人にとって嬉しいこと、それは
多かれ少なかれ誰にとっても嬉しい。
野蛮な盗賊にしろ、のぼせあがった暴君にしろ、
洞穴で暮らす隠者にしろ、ひとりで幸せな人はいない。
人が嫌い、人が憎い、そんなことを言う人だって、実は
認められたい、友達がひとりはほしい、と思っている。
人がどう感じる? どう思う? という考えを捨ててみる。
すると楽しみはみな病んで死ぬ。喜びもみな闇に沈む。
誰にでも幸せの分け前がある。欲張って人のを横取りする。
すると、自分の幸せがなぜか半減する。

序列が神の最初の法。明らかに
他より高位の人がいる。
他より豊かな人、賢い人もいる。でも、だからといって
他より幸せかといえば、常識的に見てそうじゃない。
むしろ神は不平等、
すべての人が等しく幸せならば。
それぞれみな不満があって幸せもあって、
人間いろいろ、みんないい。
与えられた条件や環境は大事じゃない。
幸せは臣下にとっても王にとっても同じ、
守られる者にとっても守る者にとっても同じ、
友にとっても友を見つける者にとっても同じ。
神はこの世のすべての人に
ひとつの魂、ひとつの幸せを吹きこんでいるのだから。
でも反論、幸運の贈りものをみな等しくもっているなら、
みな平等だったなら、どうして人は争う?
そう、それでもなお、すべての人は幸せになれる。
なぜなら神の与える幸せは目に見えないものだから。

運の女神の贈りものは不平等、
幸せといえる人とそうでない人がいる。
でも神の天秤は正確で、幸せでない人には希望を、
幸せな人には恐れを与えてバランスをとる。
今の幸・不幸、喜び・呪いは、
暗い・明るい未来の展望で相殺される。

土からできた人間は、
山に山を重ねて幸せな天に昇ろうとする。
でも天は、そんな無駄な努力を見て大いに笑い、
山を崩して愚か者たちを瓦礫に埋める。

理解しよう、人にとっての幸せ、
神と自然がちっぽけな人間に用意してくれているもの、
心にうれしく体に楽しいもの、それは
この三つーー健康、穏やかな暮らし、経済的安定。
でも、節度をもって生きなければ健康ではいられないし、
穏やかに暮らすには自分が穏やかでなければ。
運の女神の贈りものはいい人にも悪い人にも届く。
が、悪人に届くものは小さく、喜びも少ない。
考えてみよう、利益や楽しみに向かう
正しい道と悪い道、どちらが安全?
実現する・しないを問わず、悪と善で
馬鹿にされるのはどっち? 共感されるのはどっち?
成功した悪が得るものをひとつひとつ考えてみれば、
それはみな善が嘲り、ほしがらないものばかり。
可能なかぎり悪が幸せになったとしても、
絶対にこれは手に入らない。善として喜ばれることだけは。

真理や下界における神の計画が見えない人は考える、
悪は幸せのもと、善は不幸のもと、と。
偉大な神の意図を理解し、それに従わなければ
そもそも何が幸せがわからないし、当然幸せになれないのに。
善良に生きても幸せになれない、と馬鹿は言う、
誰にでもふりかかる不慮の不幸や事故を見て。
正しく立派に生きたフォークランド伯爵は早死にした。
神と見紛うテュレンヌも塵に臥して横たわる。
シドニーも戦闘に血を流した。
これは美徳のせい? 生は無意味ということ?
そう、この世でいちばん立派だったから、
ディグビーさん、あなたも葬られたのですか?
ならば美徳ゆえに息子が死に、同じように栄誉ある父が
存命だったりするのはどういうこと?
あの立派なマルセイユの主教が清らかに生きていたのはなぜ?
そこでは自然そのものが病み、死を運ぶ風が吹いていたのに?
なぜこれほど長く(人の生が長いと言えるなら)
天は貸し与えてくださった? 貧しい人々およびわたしに母を?

体の病、心の悪はどこから来る?
それは自然の機能不全から、あるいは迷子の意思からであって
神のせいじゃない。よくよく見れば、
小さな悪は大きな善の一部、
あるいは自然の気まぐれ、ちょっとした失敗。まれに、
少しのあいだだけ起こること。人がその気になるなら改善可能。
考えてもしかたがない、罪のないアベルがカインに
殺されるのを神が放っておいたのかのなぜか、とか、
立派な子が痛い目にあうのはなぜか、
淫らな父の病気のために、とか。
永遠の神はどこかの腰抜けの王とは違う。
お気に入りの家来のために法を曲げたりなんてしない。

燃えさかるエトナ山は、賢人が求めたら
噴火を止めてマグマを呼び戻したりする?
空や海が新しい動きかたを覚える?
いくら欠点がないからといって、べセル、君の気を静めるために?
高い山が重力を忘れてぐらぐら揺れる?
むしろ近づく君に引き寄せられて?
崩れ落ちそうな古い教会でも
チャートリスの首をぶら下げるためなら踏みとどまる?

でも確かに、悪人に優しいこの世で
満足するのは難しい。もっといい世界にできないか?
敬虔な人々の王国だったらいいのに。
でも、そんな人々がみな仲よくできる?
善人は神の特別なご加護を受けるべき、
とはいっても誰が善人と誰が決める?
ある人曰く、カルヴァンには神が宿っていた。
別の人曰く、いや彼は地獄の使いだった。
カルヴァンがもらっていたのは神の祝福なのか鞭なのか、
神はいるのかいないのか、結局誰にも決められない。
ある人を支える思想が別の人を砕くこともあり、
宗派がひとつだと天国に行けない人が出てきたりする。
特に優れた人たちでも考えかたはまちまちで、
あなたの美徳が褒められるとき、わたしの美徳は罰を食う。
見方によってはどんなものでも正しくなる。世界は
カエサルのためにあると同時にティトゥスのためにもあった。
どっちが幸せ? 国を鎖で縛った者?
いいことをせずに過ごした日にはため息をついた皇帝?

「でも、善をなしても金にならない、悪のほうが金になる」。
は? 金のためならいいことをする、だと?
悪人でも金はもらえる、仕事の報酬として。
ごろつきでも大地を耕せば金になる。
ごろつきでも海に出れば金になる。
馬鹿でも王のために戦えば、潜って何かとってこれば、金がもらえる。
美徳は戦闘や仕事とは関係ない。
目的が富ではなく心の満足なのだから。
さらに訊こうか、金が手に入ればそれでいい?
「いや、善の報酬に健康なからだと権力もほしい」。
では健康と権力、何ならその他この世のすべてがあればいい?
「無限の権力、政治家や王並みの権力でなければ嫌だ」。
待った、心的なものの報酬が社会的なものとはどういうこと?
なぜ人は神のように生きられない? なぜこの世は天国でない?
なんて考える人は絶対気づかない、
神から十分もらっていることに。もっともってるはず、とか考えて。
無限の神に無限に要求?
どんな人生だったら納得するの?

ふつうの方法では手に入らないし壊れない
心のなかの静かな太陽、心に湧きあがる喜び、
そのようなものが美徳の報酬。これ以上のものがある?
謙遜の人には立派な馬車を与えるべき?
正義の人に他国の支配権を、真理の人に法の要職を、
人のために働く人にいちばんの慰め、つまり王位を与えるべき?
馬鹿な! 神からのご褒美が、
この世の狂った人間の欲しがる屑であるはずがない。
人にはこどもと大人がいる。で、
ボクちゃんはりんごのケーキがほちいでちゅか?
それか、新天地を求めてインドに行って
犬と酒と妻に囲まれて生きたいと思ってる?
そんな夢などくだらない、
ご馳走や帝国が神々しい精神にふさわしいわけがない。
そんな褒美は美徳にとって
嬉しくない、むしろ有害。
六十の人間もそういうもので堕落する、
二十一の時には聖人だったのに!
富ゆえに評価され信頼され、しかも
満足と喜びも得られる、というのは正しく立派な人だけ。
裁判官や議員は金で買収できるが、
評価や愛は金では買えない。
何と馬鹿な! 神は立派な人を愛さない、
人を愛し人に愛される人を愛さない、健康に、
疚しくない良心をもって生きている人を愛さない、とでも?
年収千ポンドの人でなければ?

名誉・不名誉に地位的条件はない。
やるべきことをやる、名誉とはそういうこと。
財産の多少と人柄はたいして比例しない。
襤褸(ぼろ)でも錦でも見せびらかしたい人はそうする。
エプロンをした靴修理だって、ガウンを着た牧師だって、
フードをかぶった修道士だって、冠をのせた王だって……
「王冠とフードって、大違いじゃないか」(と、ここで君)
いやいや、もっと大事なのは賢い人と愚かな人の違い。
修道士のようにふるまう王、
靴修理みたいに酔っぱらう牧師……
やはり徳ある人が偉い人、そうでなければみなごろつき。
他のこと、革とかプルネーラとかの素材の違いはどうでもいい。

称号を山のようにもらって勲章をたくさんぶら下げてみる、
王や王の愛人の側近になれるくらいに。
名家の直系だと自慢してみる、
ルクレティウス家のように代々伝わる血筋だと。
いや、親の価値が人の価値とするなら、
正しくて立派な親だけの話にしよう。
嫌になる、悪い先祖の血が
ノアの洪水以来代々受け継がれてきた、とか。
ごろつきの家は、嘘でもいいからみな新興。
この世の初めからずっと馬鹿とか、ありえない。
とにかく血は無意味で、能なしや腰抜けやおべっか野郎は
変わらない、ハワード家の血を全部注入しても。

偉大さについても考えよう。偉大とはどういうこと?
「英雄や賢人のことに決まっている」。
本当? 英雄はみな大差ない。あのマケドニア王から
あのスウェーデン王までだいたい頭おかしくて、
なしとげたことはこれくらい--全人類の敵を見つけること、
あるいは自分がそうなること。
いっさいふり返らずただ突き進む、
鼻より前は見えていないのに。
思慮ある人、賢い人もみな同じ。
ずるくて腰が重くて、そしてやたらと注意深い。
で、無防備な人が気を抜いていると襲いかかる。
つまり特に賢いわけではなく、他の人たちが弱いだけ。
確かに英雄は征服するし、賢人には騙す知恵がある。
が、そんな悪が偉大とはおかしな話。
賢く邪悪な人、勇敢にねじのはずれた人、
そういう人はむしろ馬鹿、むしろ悪党。
気高い方法で気高いことをなしとげる人、
挫折して追放されても投獄されても微笑んでいられる人、
アウレリウスのように国を治める人、ソクラテスのように
死ねる人、そういう人こそ真に偉大。

名声とは何? それは他人の言葉のなかの第二の生。
実体がないから生前でも自分ではどうにもできない。
噂も現実も秘密も、他人にとってはみな同じ。
これはキケロでも一般人でも同じこと。
当人からすれば、好評・悪評は
数人の敵・味方のなかだけの問題。他人のあいだで
話題になるのは、当人そのものではなくその人の影。
まだ生きているサボイのオイゲンも死んだカエサルも大差ない。
いつのどこの人でも、過去の人でも今の人でも大差ない。
活躍したのがルビコン川岸でもライン川でも同じこと。
文人だったらみな羽ペンの人、将軍なら軍服の人。その程度。
結局、正しく生きるすべての人が神の最高傑作で、
名声が残っているのはだいたい悪党、
正義の女神が墓からたたき起こした者たち。
忘却に埋もれていればいいのに
吊るされて、この世の半分くらいの人に毒を放つ。
真に値するもの以外、名声などみなうわべだけ。
頭でわかっても心には感じない。
自分のことがが好きと思える一時間のほうがはるかに大事、
馬鹿な観客に注目され、大騒ぎされる一生涯よりも。
追放されたマルケルスのほうが本当の意味で幸せだった、
元老院議員をぞろぞろ連れたカエサルよりも。

優れた能力をもっていてどんないいことがある?
賢いとはどういうこと? (賢いセンジョンさん、あなたには
おわかりでしょう。) 賢い人は人間がどれだけ無知か知っている。
他人の欠点を知っていて、自分の欠点も思い知っている。
仕事と学問において酷使され、でも
誰も助けてくれず、また評価もされない。
真理を説き、没落しそうな国を支える、それなのに
人は恐れ、助けない。そもそも理解できていない。
有能な人とはつらいもの! 高尚な生を送るがゆえに
ふつうの楽しみや安らぎが手に入らない。

この世で得られるものの価値をよく考えてみる。
きちんと引き算をして何が残るか考える。
これを手にすればあれが失われ、
あれを手にすればそれが失われる。
これらのためにもっと大事なものを棄てなくてはならない。
命を落としかねないし、平和な暮らしなどあきらめなくては。
もし、幸せの源とされるものがまだほしい気がするなら考えてみる、
実際にそれを手にした過去の人になりたい?
勲章がほしくて愚かなため息が出そうなら、
それを下げた日陰卿やビル卿がどれだけ立派か見るといい。
黄色いゴミ屑に生涯を捧げる?
あの鷲鼻野郎やその妻みたいに?
知性がほしい? 栄えあるベイコンを見ればいい、
もっとも賢く、そしてもっとも腐敗していた彼の生涯を。
甲高く名声響く人に憧れる?
クロムウェルとか? あんな永遠の名声に呪われたい?
どれとはいわず、幸せの素すべてがほしい?
歴史を学べば何もかも嫌になるはず。
富める人、名誉ある人、名声ある人、偉大な人--
幸せそうで幸せでなかったありとあらゆる人がそこにいるから。
王にとりたてられし人、女王の腕に抱かれし人、
まさにこれ幸せなり! 裏切りと破滅の道なり!
そこでどんな哀れな目を見る?
驕るヴェネツィアのように泥と海藻のなか立ちあがり、
罪と栄誉を積み重ねる。
英雄の道を駆けのぼり、人の道から転がり落ちる。
ヨーロッパ中で勝利の冠を手にしても、
それは血みどろ、または汚い金まみれ。
その後仕事に追われて体を壊すか、安逸に溺れて堕落するか、
あるいは略奪しすぎで評価を落とす。
それに富も無意味! 立派なことをして得ても、
輝かしくないこと、恥ずべきことに費やされるだけ。
こうしてどんな幸せな最期が待っている?
金目当ての寵臣、あるいはやかましい妻に
凱旋門と豪華な宮殿を乗っとられ、
壮麗な墓で眠っているのに眠れないほど悩まされる。
そう、真昼の輝きに騙されてはいけない!
昼があれば朝もあって夜もある。
膨れあがらんばかりの名声、それは
たんなる虚構、栄光と恥のおとぎ話。

だからこの真理を覚えておこう。大事なのはこれだけ。
「道徳的に正しい生きかたこそこの世の幸せ」。
正しく生きればいつも幸せ。
正しく生きれば悪・不幸に陥らない。
正しく生きれば然るべき報酬が得られる、つまり
人を幸せにし、自分も幸せになれる。
そんな結果が出れば最高の幸せ。
出なくても嫌な思いはしない。
幸せすぎて困ることなく、
日々つらければつらいほど逆に幸せは大きくなる。
迷惑なほど浮かれて馬鹿騒ぎしている人がいる。でも
そんな人より正しいことをして泣いている人のほうが幸せ。
いつでもどこでも誰に対してでも
正しいことはできる。そしてそれに飽きることはない。
ひとりでもつらい思いの人がいるかぎり有頂天になったりしない。
他人の幸せを見て僻んで拗ねたりしない。
この幸せには不足がない、不満がない。
もっと正しいことをしたい、と思うこと自体が幸せだから。

これこそ神がすべての人に与えた唯一の幸せ。
感受性あれば誰でも感じ、思慮があれば誰にでもわかる。
資産あるがゆえに貧しい人、知識ゆえに盲目な人には
わからない。悪い人にはわからない。
特定の考えに固執しない人、私利私欲を追わない人、
神の定めた人の本質が洞察できる人は
見る、神の壮大な計画のなかこの世のすべてを結ぶ鎖、
天と地、人と神のつながりを。
そして知る--誰も幸せになれないと、
神の世界と人の世界、どちらも理解しないなら--
この二つの世界が出会うところ、人が神に昇り近づくところに、
人の魂がつくられた最初にして究極の目的がある、と--
信仰と法と道徳はすべて
神への愛、人への愛にはじまり、そしてそこに向かう、と。

人は次から次へと新しい希望を抱く。
目の前に開かれた希望に向かって心を開く。
そんな人が求める最後の最大のもの、それが神、信仰、
天国にいるかのように心満たされること。
だから人はこの世の幸せを求め、この世の幸せを
超える幸せを信じる。そう自然が定めている。
(ちなみに自然の恵みは動物などにとっても同じ、
すべてのものがほしいもの、必要なものを手に入れる。)
自然の恵みと定めは賢くて、人のいちばんの善とは
いちばんの幸せのこと。
光り輝く幸せを求める気持ちは、
他の人を助けたいという気持ちと同じ。

つまり自己愛とは他人への愛、神への愛。
隣人の幸せは自分の幸せ。いや、
心の大きさは無限だから、愛と幸せもこんなに小さいはずがない。
そう、敵への愛、敵の幸せも含めよう。
頭で考えること、日々の暮らし、心と体で感じること、
すべての基準を「思いやり」にしよう。
幸せ、それは優しくすること。少し優しければ少し幸せ、
このうえなく優しければこのうえなく幸せ。

神は人を愛し、ゆえにそれから個人を愛す。
逆に人の愛は自分や身近な誰かからすべての人へと向かう。
自分を愛す、すると心は善に目覚める。たとえば
水に小石が落ちて輪ができて、それが湖全体に広がる時のよう。
小石が落ちて輪がひとつ、
すぐにもうひとつ、さらにひとつと広がっていく。
愛もそう。友、親、近所の人へと広がって、
国中の、世界中の、すべての人へと向かっていく。
広く、もっと広く、心はどんどんあふれていき、
神のつくったこの世のすべてを愛するようになる。こうして
いたるところで大地は微笑む、無限の恵みをその手に抱き。
今、大地は天国のよう、天の胸に抱きしめられて。

わたしの友、守護神であるセンジョンさん、
詩人の師、詩の源であるあなた、教えてください。
詩神が歌ってきたように、人は低俗な感情を抱いたり、
輝かしい偉業をなしとげたりしますが、
自然の定める流転のなか、どうしたらあなたのように
挫折して美しく、勝利して控えめでいられるのでしょう?
どうしたら時節に従って
真剣に、楽しく、生き生きと、厳粛に、歌えるのでしょう?
正しく、熱く、豊かに、自然に、
論理的に、慎み深く、明るく、歌えるのでしょう?
時の川の流れにのり、あなたの船は走っていきます。
名声を集めてどんどん大きくなっていきます。
わたしの小舟も勝ち誇るあなたの隣にいていいですか?
追い風のおこぼれをもらってもいいですか?
今あなたの敵である政治家、英雄、王たちはいずれ死に、
やがてその子たちは父の誤りを恥じるでしょう。
そんな未来のいつか、この詩を読む人にはわかると思います。
あなたこそわたしの師であり友でした。
あなたがくれた指針により、わたしは哲学の詩、
空想ではなく心に響く詩を書くことができました。
自然の光を偽る嘘の鏡のような機知を棄て、人の傲慢と勘違いを正すため
語りました。この世にあるものはすべてそのままでいいのです。
正しい理性と道を誤る感情、どちらも神の計画どおりです。
自分を本当に愛することが他の人を愛することにつながります。
この世に幸せをもたらすのは善のみです。
最終的に、わたしたちにとって本当に必要なのは、
わたしたち自身について知ることなのです。

*****
Alexander Pope
An Essay on Man
Epistle 4

Oh, happiness, our being’s end and aim!
Good, pleasure, ease, content! whate’er thy name:
That something still which prompts the eternal sigh,
For which we bear to live, or dare to die,
Which still so near us, yet beyond us lies,
O’erlooked, seen double, by the fool, and wise.
Plant of celestial seed! if dropped below,
Say, in what mortal soil thou deign’st to grow?
Fair opening to some Court’s propitious shine,
Or deep with diamonds in the flaming mine?
Twined with the wreaths Parnassian laurels yield,
Or reaped in iron harvests of the field?
Where grows?—where grows it not? If vain our toil,
We ought to blame the culture, not the soil:
Fixed to no spot is happiness sincere,
'Tis nowhere to be found, or everywhere;
'Tis never to be bought, but always free,
And fled from monarchs, St. John! dwells with thee.

Ask of the learned the way? The learned are blind;
This bids to serve, and that to shun mankind;
Some place the bliss in action, some in ease,
Those call it pleasure, and contentment these;
Some, sunk to beasts, find pleasure end in pain;
Some, swelled to gods, confess even virtue vain;
Or indolent, to each extreme they fall,
To trust in everything, or doubt of all.

Who thus define it, say they more or less
Than this, that happiness is happiness?

Take Nature’s path, and mad opinions leave;
All states can reach it, and all heads conceive;
Obvious her goods, in no extreme they dwell;
There needs but thinking right, and meaning well;
And mourn our various portions as we please,
Equal is common sense, and common ease.

Remember, man, “the Universal Cause
Acts not by partial, but by general laws;”
And makes what happiness we justly call
Subsist not in the good of one, but all.
There’s not a blessing individuals find,
But some way leans and hearkens to the kind:
No bandit fierce, no tyrant mad with pride,
No caverned hermit, rests self-satisfied:
Who most to shun or hate mankind pretend,
Seek an admirer, or would fix a friend:
Abstract what others feel, what others think,
All pleasures sicken, and all glories sink:
Each has his share; and who would more obtain,
Shall find, the pleasure pays not half the pain.

Order is Heaven’s first law; and this confest,
Some are, and must be, greater than the rest,
More rich, more wise; but who infers from hence
That such are happier, shocks all common sense.
Heaven to mankind impartial we confess,
If all are equal in their happiness:
But mutual wants this happiness increase;
All Nature’s difference keeps all Nature’s peace.
Condition, circumstance is not the thing;
Bliss is the same in subject or in king,
In who obtain defence, or who defend,
In him who is, or him who finds a friend:
Heaven breathes through every member of the whole
One common blessing, as one common soul.
But fortune’s gifts if each alike possessed,
And each were equal, must not all contest?
If then to all men happiness was meant,
God in externals could not place content.

Fortune her gifts may variously dispose,
And these be happy called, unhappy those;
But Heaven’s just balance equal will appear,
While those are placed in hope, and these in fear:
Nor present good or ill, the joy or curse,
But future views of better or of worse.

Oh, sons of earth! attempt ye still to rise,
By mountains piled on mountains, to the skies,
Heaven still with laughter the vain toil surveys,
And buries madmen in the heaps they raise.

Know, all the good that individuals find,
Or God and Nature meant to mere mankind,
Reason’s whole pleasure, all the joys of sense,
Lie in three words, health, peace, and competence.
But health consists with temperance alone;
And peace, oh, virtue! peace is all thy own.
The good or bad the gifts of fortune gain;
But these less taste them, as they worse obtain.
Say, in pursuit of profit or delight,
Who risk the most, that take wrong means, or right;
Of vice or virtue, whether blessed or cursed,
Which meets contempt, or which compassion first?
Count all the advantage prosperous vice attains,
’Tis but what virtue flies from and disdains:
And grant the bad what happiness they would,
One they must want, which is, to pass for good.

Oh, blind to truth, and God’s whole scheme below,
Who fancy bliss to vice, to virtue woe!
Who sees and follows that great scheme the best,
Best knows the blessing, and will most be blest.
But fools the good alone unhappy call,
For ills or accidents that chance to all.
See Falkland dies, the virtuous and the just!
See god-like Turenne prostrate on the dust!
See Sidney bleeds amid the martial strife!
Was this their virtue, or contempt of life?
Say, was it virtue, more though Heaven ne’er gave,
Lamented Digby! sunk thee to the grave?
Tell me, if virtue made the son expire,
Why, full of days and honour, lives the sire?
Why drew Marseilles’ good bishop purer breath,
When Nature sickened, and each gale was death?
Or why so long (in life if long can be)
Lent Heaven a parent to the poor and me?

What makes all physical or moral ill?
There deviates Nature, and here wanders will.
God sends not ill; if rightly understood,
Or partial ill is universal good,
Or change admits, or Nature lets it fall;
Short, and but rare, till man improved it all.
We just as wisely might of Heaven complain
That righteous Abel was destroyed by Cain,
As that the virtuous son is ill at ease
When his lewd father gave the dire disease.
Think we, like some weak prince, the Eternal Cause
Prone for His favourites to reverse His laws?

Shall burning Etna, if a sage requires,
Forget to thunder, and recall her fires?
On air or sea new motions be imprest,
Oh, blameless Bethel! to relieve thy breast?
When the loose mountain trembles from on high,
Shall gravitation cease, if you go by?
Or some old temple, nodding to its fall,
For Chartres’ head reserve the hanging wall?

But still this world (so fitted for the knave)
Contents us not. A better shall we have?
A kingdom of the just then let it be:
But first consider how those just agree.
The good must merit God’s peculiar care:
But who, but God, can tell us who they are?
One thinks on Calvin Heaven’s own spirit fell;
Another deems him instrument of hell;
If Calvin feel Heaven’s blessing, or its rod.
This cries there is, and that, there is no God.
What shocks one part will edify the rest,
Nor with one system can they all be blest.
The very best will variously incline,
And what rewards your virtue, punish mine.
Whatever is, is right. This world, ’tis true,
Was made for Cæsar—but for Titus too:
And which more blest? who chained his country, say,
Or he whose virtue sighed to lose a day?

“But sometimes virtue starves, while vice is fed.”
What then? Is the reward of virtue bread?
That, vice may merit, ’tis the price of toil;
The knave deserves it, when he tills the soil,
The knave deserves it, when he tempts the main,
Where folly fights for kings, or dives for gain.
The good man may be weak, be indolent;
Nor is his claim to plenty, but content.
But grant him riches, your demand is o’er?
“No—shall the good want health, the good want power?”
Add health, and power, and every earthly thing,
“Why bounded power? why private? why no king?”
Nay, why external for internal given?
Why is not man a god, and earth a heaven?
Who ask and reason thus, will scarce conceive
God gives enough, while He has more to give:
Immense the power, immense were the demand;
Say, at what part of nature will they stand?

What nothing earthly gives, or can destroy,
The soul’s calm sunshine, and the heartfelt joy,
Is virtue’s prize: A better would you fix?
Then give humility a coach and six,
Justice a conqueror’s sword, or truth a gown,
Or public spirit its great cure, a crown.
Weak, foolish man! will heaven reward us there
With the same trash mad mortals wish for here?
The boy and man an individual makes,
Yet sighest thou now for apples and for cakes?
Go, like the Indian, in another life
Expect thy dog, thy bottle, and thy wife:
As well as dream such trifles are assigned,
As toys and empires, for a God-like mind.
Rewards, that either would to virtue bring
No joy, or be destructive of the thing:
How oft by these at sixty are undone
The virtues of a saint at twenty-one!
To whom can riches give repute or trust,
Content, or pleasure, but the good and just?
Judges and senates have been bought for gold,
Esteem and love were never to be sold.
Oh, fool! to think God hates the worthy mind,
The lover and the love of human kind,
Whose life is healthful, and whose conscience clear,
Because he wants a thousand pounds a year.

Honour and shame from no condition rise;
Act well your part, there all the honour lies.
Fortune in men has some small difference made,
One flaunts in rags, one flutters in brocade;
The cobbler aproned, and the parson gowned,
The friar hooded, and the monarch crowned,
“What differ more (you cry) than crown and cowl?”
I’ll tell you, friend! a wise man and a fool.
You’ll find, if once the monarch acts the monk,
Or, cobbler-like, the parson will be drunk,
Worth makes the man, and want of it, the fellow;
The rest is all but leather or prunella.

Stuck o’er with titles and hung round with strings,
That thou mayest be by kings, or wh***s of kings.
Boast the pure blood of an illustrious race,
In quiet flow from Lucrece to Lucrece;
But by your fathers’ worth if yours you rate,
Count me those only who were good and great.
Go! if your ancient, but ignoble blood
Has crept through scoundrels ever since the flood,
Go! and pretend your family is young;
Nor own, your fathers have been fools so long.
What can ennoble sots, or slaves, or cowards?
Alas! not all the blood of all the Howards.

Look next on greatness; say where greatness lies?
“Where, but among the heroes and the wise?”
Heroes are much the same, the points agreed,
From Macedonia’s madman to the Swede;
The whole strange purpose of their lives, to find
Or make, an enemy of all mankind?
Not one looks backward, onward still he goes,
Yet ne’er looks forward farther than his nose.
No less alike the politic and wise;
All sly slow things, with circumspective eyes;
Men in their loose unguarded hours they take,
Not that themselves are wise, but others weak.
But grant that those can conquer, these can cheat;
’Tis phrase absurd to call a villain great:
Who wickedly is wise, or madly brave,
Is but the more a fool, the more a knave.
Who noble ends by noble means obtains,
Or failing, smiles in exile or in chains,
Like good Aurelius let him reign, or bleed
Like Socrates, that man is great indeed.

What’s fame? a fancied life in others’ breath,
A thing beyond us, even before our death.
Just what you hear, you have, and what’s unknown
The same (my Lord) if Tully’s, or your own.
All that we feel of it begins and ends
In the small circle of our foes or friends;
To all beside as much an empty shade
An Eugene living, as a Cæsar dead;
Alike or when, or where, they shone, or shine,
Or on the Rubicon, or on the Rhine.
A wit’s a feather, and a chief a rod;
An honest man’s the noblest work of God.
Fame but from death a villain’s name can save,
As justice tears his body from the grave;
When what the oblivion better were resigned,
Is hung on high, to poison half mankind.
All fame is foreign, but of true desert;
Plays round the head, but comes not to the heart:
One self-approving hour whole years outweighs
Of stupid starers, and of loud huzzas;
And more true joy Marcellus exiled feels,
Than Cæsar with a senate at his heels.

In parts superior what advantage lies?
Tell (for you can) what is it to be wise?
’Tis but to know how little can be known;
To see all others’ faults, and feel our own;
Condemned in business or in arts to drudge,
Without a second or without a judge;
Truths would you teach or save a sinking land,
All fear, none aid you, and few understand.
Painful pre-eminence! yourself to view
Above life’s weakness, and its comforts too.

Bring, then, these blessings to a strict account;
Make fair deductions; see to what they mount;
How much of other each is sure to cost;
How each for other oft is wholly lost;
How inconsistent greater goods with these;
How sometimes life is risked, and always ease;
Think, and if still the things thy envy call,
Say, would’st thou be the man to whom they fall?
To sigh for ribands if thou art so silly,
Mark how they grace Lord Umbra, or Sir Billy:
Is yellow dirt the passion of thy life?
Look but on Gripus, or on Gripus’ wife;
If parts allure thee, think how Bacon shined,
The wisest, brightest, meanest of mankind:
Or ravished with the whistling of a name,
See Cromwell; damned to everlasting fame!
If all, united, thy ambition call,
From ancient story learn to scorn them all.
There, in the rich, the honoured, famed, and great,
See the false scale of happiness complete!
In hearts of kings, or arms of queens who lay,
How happy! those to ruin, these betray.
Mark by what wretched steps their glory grows,
From dirt and seaweed as proud Venice rose;
In each how guilt and greatness equal ran,
And all that raised the hero, sunk the man:
Now Europe’s laurels on their brows behold,
But stained with blood, or ill exchanged for gold;
Then see them broke with toils or sunk with ease,
Or infamous for plundered provinces.
Oh, wealth ill-fated! which no act of fame
E’er taught to shine, or sanctified from shame;
What greater bliss attends their close of life?
Some greedy minion, or imperious wife.
The trophied arches, storeyed halls invade
And haunt their slumbers in the pompous shade.
Alas! not dazzled with their noontide ray,
Compute the morn and evening to the day;
The whole amount of that enormous fame,
A tale, that blends their glory with their shame;

Know, then, this truth (enough for man to know)
“Virtue alone is happiness below.”
The only point where human bliss stands still,
And tastes the good without the fall to ill;
Where only merit constant pay receives,
Is blest in what it takes, and what it gives;
The joy unequalled, if its end it gain,
And if it lose, attended with no pain;
Without satiety, though e’er so blessed,
And but more relished as the more distressed:
The broadest mirth unfeeling folly wears,
Less pleasing far than virtue’s very tears:
Good, from each object, from each place acquired
For ever exercised, yet never tired;
Never elated, while one man’s oppressed;
Never dejected while another’s blessed;
And where no wants, no wishes can remain,
Since but to wish more virtue, is to gain.

See the sole bliss Heaven could on all bestow!
Which who but feels can taste, but thinks can know:
Yet poor with fortune, and with learning blind,
The bad must miss; the good, untaught, will find;
Slave to no sect, who takes no private road,
But looks through Nature up to Nature’s God;
Pursues that chain which links the immense design,
Joins heaven and earth, and mortal and divine;
Sees, that no being any bliss can know,
But touches some above, and some below;
Learns, from this union of the rising whole,
The first, last purpose of the human soul;
And knows, where faith, law, morals, all began,
All end, in love of God, and love of man.

For Him alone, hope leads from goal to goal,
And opens still, and opens on his soul!
Till lengthened on to faith, and unconfined,
It pours the bliss that fills up all the mind
He sees, why Nature plants in man alone
Hope of known bliss, and faith in bliss unknown:
(Nature, whose dictates to no other kind
Are given in vain, but what they seek they find)
Wise is her present; she connects in this
His greatest virtue with his greatest bliss;
At once his own bright prospect to be blest,
And strongest motive to assist the rest.

Self-love thus pushed to social, to divine,
Gives thee to make thy neighbour’s blessing thine.
Is this too little for the boundless heart?
Extend it, let thy enemies have part:
Grasp the whole worlds of reason, life, and sense,
In one close system of benevolence:
Happier as kinder, in whate’er degree,
And height of bliss but height of charity.

God loves from whole to parts: but human soul
Must rise from individual to the whole.
Self-love but serves the virtuous mind to wake,
As the small pebble stirs the peaceful lake!
The centre moved, a circle straight succeeds,
Another still, and still another spreads;
Friend, parent, neighbour, first it will embrace;
His country next; and next all human race;
Wide and more wide, the o’erflowings of the mind
Take every creature in, of every kind;
Earth smiles around, with boundless bounty blest,
And Heaven beholds its image in his breast.

Come, then, my friend! my genius! come along;
Oh, master of the poet, and the song!
And while the muse now stoops, or now ascends,
To man’s low passions, or their glorious ends,
Teach me, like thee, in various nature wise,
To fall with dignity, with temper rise;
Formed by thy converse, happily to steer
From grave to gay, from lively to severe;
Correct with spirit, eloquent with ease,
Intent to reason, or polite to please.
Oh! while along the stream of time thy name
Expanded flies, and gathers all its fame,
Say, shall my little bark attendant sail,
Pursue the triumph, and partake the gale?
When statesmen, heroes, kings, in dust repose,
Whose sons shall blush their fathers were thy foes,
Shall then this verse to future age pretend
Thou wert my guide, philosopher, and friend?
That urged by thee, I turned the tuneful art
From sounds to things, from fancy to the heart;
From wit’s false mirror held up Nature’s light;
Showed erring pride, whatever is, is right;
That reason, passion, answer one great aim;
That true self-love and social are the same;
That virtue only makes our bliss below;
And all our knowledge is, ourselves to know.

http://www.gutenberg.org/ebooks/2428

*****
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From Pope, An Essay on Man 1

アレグザンダー・ポウプ
『人間論』 手紙 1 より

思いあがった人間よ、おまえは理性が
どうしてそんな弱く、足りなく、そして愚かなのか問う。
だが、このさらなる難問をまず考えたらどうだ、
理性が今よりもっと弱く、足りなく、愚かでないのはなぜだろう?
母なる大地に聞いてみればいい、どうして樫の木は
その下の草よりも大きく強いのか?
銀色の野原のような夜空に聞いて見ればいい、
どうして木星の衛星は木星より小さいのか?
(35-42)

炎のように爆走する自分を人間が制御したり、
気がのらないのに無理やり走れと言われる理由が傲慢な馬にわかるなら、
どうして土を耕さなくてはならないのか、どうして殺されたり、
エジプトで神として崇められたりしているのかが愚かな牛にわかるなら、
同じように傲慢で愚かな人間にもわかるだろう、
自分の行為・感情・存在の意味や目的が。
どうして何かをしたり、苦しんだり、
邪魔されたり、無理やりさせられたりするのか、
どうして奴隷のような気分になったり、
神のような気分になったりするのか、が。
(61-68, 67-68は各二行)

〈傲慢〉は常に幸せな上をめざす。
人間は天使に、天使は神に、なりたがる。
神になろうとして、天使たちは堕落した。
天使になろうとして、アダムとイヴは神に背いた。
ものごとのありかたをひっくり返そうとすることは、
永遠なる神の定めに対する罪である。
(125-30)

空の星は何のために輝く?
大地は誰のためにある? 〈傲慢〉は答える、「わたしのためだ。
親切な自然がものを育てるのはわたしのため。
草を育て、花を咲かせるのはわたしのため。
毎年、ぶどうを育て、薔薇を咲かせ、
おいしい果実や果汁、いい香りを届けてくれるのもわたしのため。
地面の下に宝が山ほどあるのも、
泉からおいしい水が吹き出してくるのも、みんなわたしのため。
海はわたしを運ぶために流れ、太陽はわたしを照らすために昇る。
大地がわたしの椅子で、空がわたしのテントだ」。
だが、自然は恵み深いだけではないのでは?
燃える太陽から疫病が降ってきたり、
地震や嵐にのみこまれて
町がひとつの墓と化したり、国が地中に消えたりもするのだから。
すると答える、「全能の神は
個々ではなく、全体を見ておられる。だから天災のような
少々の例外もある。神がつくったいいものが変わることもある。
そもそも神以外のものはみな完璧ではない」。だったら人間はどうか?
人間の幸せが神の最大の目的で、
ときどき自然が道からはずれる、というが、人間も同じではないか?
幸せな人にも定期的に
晴れの日と雨の日がある。人の心も同じはず。
永遠の春、永遠の晴天なんてありえない。
人がいつも穏やかで、落ちついていて、かしこい、なんてことも無理。
疫病や地震が神の想定内だとしたら、
では、災いをもたらしたあのチェーザレ・ボルジアやカティリナもそうではないか?
稲妻を生み、大波を立たせ、
嵐に翼を与える神こそが、
カエサルの胸に熱い野望を注ぎこんだのではないか?
若きアレクサンドロス大王を解き放ち、人々を虐げさせたのではないか?
人の理性・思考は傲慢、まさに傲慢そのもの。
自然と道徳、同じように考えるべきで、
自然の誤りだけを責め、人の誤りを責めないのはおかしい。
本当に正しく考えるなら、どちらも受けいれるべき。
おそらく、自然のものすべてが穏やかで、
人もみんないつもりっぱだったらいい、と思うだろう。
陸や海に風がなければいい、
心に波風が立たないほうがいい、と思うだろう。
だが、元素がぶつかりあって自然界のすべてが生まれ、
いろんな感情があってこそ人は生きられる。
この世のはじまり以来、
自然のなかでも人間のなかでも、このしくみはいつも同じ。
(131-72)

人間の望みは何? 人は高く上に舞いあがり、
天使並み、むしろそれ以上になりたがる。
あるいは落ちこんで、牛の力や
熊の毛皮がないことを悲しんだりする。
神のつくったものすべてが人のためにあるのなら、
そのすべての力をもっていてもしかたないと思うのだが?
すべてに対して自然は、甘やかさない程度に親切で、
すべてのものにしかるべきからだ、しかるべき力を与えている。
何か不足があるように見えても、たいてい
速さとか力とか、何か補うものがある。
みなちょうどよく力を与えられていて、
加えるべきものも、さし引くべきものもない。
獣も虫も、みなそれぞれなりに幸せなのだから、
人間にだけ神がいじわるなんてことはない。
理性をもつはずの人間だけが、すべてを与えられていないから
すべてが気に入らない、なんて言っていていいものか?
(173-88)

人間にとって幸せとは、(傲慢だったらわからないだろうが、)
人の限界を超えることをしたり考えたりしないこと。
からだについても、魂についても、
人の本質や現状を超える力を求めないこと。
どうして人の目は顕微鏡のようでない?
答えはかんたん--蠅じゃないから。
微細なものが見えても何の役に立つ?
ダニでも調べる? 天を見るかわりに?
触覚もそう。もし震えるくらいにからだじゅうが敏感だったら、
毛穴ひとつひとつが拷問のように痛くて困るだけでは?
脳が薔薇の香りに貫かれて
死んでしまうだけでは?
もし何でも雷のように大きく響いたり、
星たちの奏でる音楽が耳をつんざいたりしたら、
思わず祈ってしまうはず、神さま、
西風のささやきや川の流れが聞こえる程度でよかったんです、と。
結局、神の定めは常にかしこく、正しい。
人に与えるべきものを与え、それ以外は与えていないのだから。
(189-206)

* * *
Alexander Pope
From An Essay on Man 1

Presumptuous Man! the reason wouldst thou find,
Why form'd so weak, so little, and so blind?
First, if thou canst, the harder reason guess,
Why form'd no weaker, blinder, and no less?
Ask of thy mother earth, why oaks are made
Taller or stronger than the weeds they shade? 40
Or ask of yonder argent fields above,
Why Jove's satellites are less than Jove?
(35-42)

When the proud steed shall know why Man restrains
His fiery course, or drives him o'er the plains;
When the dull ox, why now he breaks the clod,
Is now a victim, and now Egypt's god:[87]
Then shall man's pride and dulness comprehend
His actions', passions', being's use and end;
Why doing, suffering, check'd, impell'd; and why
This hour a slave, the next a deity.
(61-68)

Pride still is aiming at the blest abodes,
Men would be angels, angels would be gods.
Aspiring to be gods, if angels fell,
Aspiring to be angels, men rebel:
And who but wishes to invert the laws
Of ORDER, sins against the Eternal Cause. 130
(125-30)

Ask for what end the heavenly bodies shine,
Earth for whose use? Pride answers, ''Tis for mine:
For me kind Nature wakes her genial power,
Suckles each herb, and spreads out every flower;
Annual for me the grape, the rose renew,
The juice nectareous, and the balmy dew;
For me, the mine a thousand treasures brings;
For me, health gushes from a thousand springs;
Seas roll to waft me, suns to light me rise;
My footstool earth, my canopy the skies.' 140
But errs not Nature from this gracious end,
From burning suns when livid deaths descend,
When earthquakes swallow, or when tempests sweep
Towns to one grave, whole nations to the deep?
'No' 'tis replied, 'the first Almighty Cause
Acts not by partial, but by general laws;
Th' exceptions few; some change, since all began:
And what created perfect?'―Why then Man?
If the great end be human happiness,
Then Nature deviates; and can Man do less? 150
As much that end a constant course requires
Of showers and sunshine, as of Man's desires;
As much eternal springs and cloudless skies,
As men for ever temperate, calm, and wise.
If plagues or earthquakes break not Heaven's design,
Why then a Borgia, or a Catiline?
Who knows but He, whose hand the lightning forms,
Who heaves old Ocean, and who wings the storms,
Pours fierce ambition in a Caesar's mind,
Or turns young Ammon loose to scourge mankind? 150
From pride, from pride, our very reasoning springs;
Account for moral, as for natural things:
Why charge we Heaven in those, in these acquit?
In both, to reason right, is to submit.
Better for us, perhaps, it might appear,
Were there all harmony, all virtue here;
That never air or ocean felt the wind,
That never passion discomposed the mind.
But all subsists by elemental strife;
And passions are the elements of life. 170
The general order, since the whole began,
Is kept in Nature, and is kept in Man.
(131-72)

What would this Man? Now upward will he soar,
And, little less than angel, would be more;
Now looking downwards, just as grieved appears
To want the strength of bulls, the fur of bears.
Made for his use all creatures if he call,
Say, what their use, had he the powers of all?
Nature to these, without profusion, kind,
The proper organs, proper powers assign'd; 180
Each seeming want compensated, of course,
Here with degrees of swiftness, there of force;
All in exact proportion to the state;
Nothing to add, and nothing to abate.
Each beast, each insect, happy in its own:
Is Heaven unkind to Man, and Man alone?
Shall he alone, whom rational we call,
Be pleased with nothing, if not bless'd with all?
(173-88)

The bliss of Man (could pride that blessing find)
Is not to act or think beyond mankind; 190
No powers of body or of soul to share,
But what his nature and his state can bear.
Why has not Man a microscopic eye?
For this plain reason, Man is not a fly.
Say, what the use, were finer optics given,
T'inspect a mite, not comprehend the heaven?
Or touch, if tremblingly alive all o'er,
To smart and agonise at every pore?
Or, quick effluvia darting through the brain,
Die of a rose in aromatic pain? 200
If nature thunder'd in his opening ears,
And stunn'd him with the music of the spheres,
How would he wish that Heaven had left him still
The whispering zephyr, and the purling rill?
Who finds not Providence all good and wise,
Alike in what it gives, and what denies?
(189-206)

* * *
……というようなことが書かれたキリスト教社会を
中心に、ここ3-4世紀ほどのあいだ科学技術が
進歩・発達してきた。

特にこの20-30年ほどの発展は凄まじく、今の
「社会のあらゆる活動は……高度に発達した技術や
社会制度の下でのみ成り立ちうるものとなっている」。
2007年度の科学技術白書(文科省)より。
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/
hpaa200701/004.htm

そんななかで感じるのは、今の我々はある種の
万能感に溺れていないか、ということ。実際には
不可能な理想だけを見て社会を設計・運営して
しないか、建前が肥大化していないか、ということ。

また逆に、本音の部分も、サブカルチャーとして
肥大化してきていないか。(ほとんど「サブ」とは
言えないほどに。)

もうひとつ感じるのは、人間や社会という
最終的には予測不可能なものも、数式や機械と
同じように予測・制御可能である、と
思いこんでいないか、ということ。度を越して。

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.gutenberg.org/ebooks/9413

* * *
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From Pope (tr.), The Iliad of Homer (Achilles Chasing Hector)

アレグザンダー・ポウプ (訳)
『ホメロスのイリアス』 22: 167-210

俺たちは友だちじゃない。おしゃべりするために樫の
木陰にやって来たわけではないし、いっしょに旅をしたいわけでもない。
静かに仲よく語りあう、なんて季節でもない、
夕暮れ時に散歩する恋人たちのように。
俺たちは戦うために来たんだ。誰が死に、
誰が勝つか、そんなことは天が決めればいい--
こう考えながら、神とも見まごう姿でアキレウスは近づいてきた。
威圧的な彼の兜の羽飾りが、足どりにあわせ、うなづくように揺れている。
手には父ペーレウスの槍。それは今、この父より強いアキレウスに握られて
きらめき、震える光を大地に投げかける。
胸の鎧も光を放ち、まさにまばゆいばかり。
まるでゼウスの稲妻か、のぼる朝日であるかのように。
そんなアキレウスを見てヘクトールは、並ならぬ恐怖に襲われる。
神に撃たれたかのように、彼は怯み、後ずさりし、飛ぶように逃げる。
門を出て、城壁を後にする。
アキレウスは、風に羽が生えたかのような速さで追いかける。
それはまるで、息絶え絶えな鳩を鷹が追うときのよう。
(鷹とは、海のように青い空をもっとも速く駆ける鳥。)
今、まさに獲物をつかむ、いざつかまん、というとき、
鷹は、さらに速度を上げて、空の道を斜めに横切る。
くちばしを広げて甲高い叫び声をあげ、
鉤爪の狙いを定め、羽ばたく鳩に一気に襲いかかる。
まさにそのように、アキレウスはまっしぐらに追い、ヘクトールは逃げてひた走る。
かたや攻めの狂気に身をまかせ、かたや恐れに駆りたてられ。
今、ふたりは城壁まわりを走る、
高い見張り塔が大地を見わたす下を。
今、ふたりは、いちじくの木々が広く影を投げかけるところを走る、
道にそって円を描きつつ、そして土煙でさらに大きな円を描きつつ。
次にふたりは、スカマンデル川の源を飛びこえる、
あのふたつの泉が大地を引き裂いてほとばしり出ているところを。
熱いほうの泉は、焦げつく裂け目から立ちのぼる、
空に向かって蒸気を吐き出しつつ。
もうひとつの泉は、緑の土手にあふれ出す。夏の暑さのなかでも
水晶のように透明で、そして冬の雪のように冷たく。
泉から吹き出す水は、それぞれつやつやの
大理石の水槽に注がれる。
今ではギリシャ人を恐れて表に出ないトロイアの女たちだが、
かつて平和だった頃には、そこできれいな着物を洗ったものだった。
その脇をふたりは通る。ひとりは追いかけ、ひとりは逃げる。
強い者が逃げている、より強い者に追われて。
その速さの凄まじいこと--つまらぬ褒賞をめぐる競技ではないからだ。
これは、ありふれたいけにえの獣をめぐる争いではない。
ふだんの競争とは違う--
その褒賞とは他でもない、偉大なるヘクトールの命なのだ。

* * *
Alexander Pope (tr.)
The Iliad of Homer, 22: 167-210

We greet not here, as Man conversing Man
Met at an Oak, or journeying o'er a Plain;
No Season now for calm familiar Talk,
Like Youths and Maidens in an Evening Walk: 170
War is our Business; but to whom is giv'n
To die or triumph, that, determine Heav'n!
Thus pond'ring, like a God the Greek drew nigh;
His dreadful Plumage nodded from on high;
The Pelian Jav'lin, in his better Hand,
Shot trembling Rays that glitter'd o'er the Land;
And on his Breast the beamy Splendors shone
Like Jove's own Lightning, or the rising Sun.
As Hector sees, unusual Terrors rise,
Struck by some God, he fears, recedes, and flies. 180
He leaves the Gates, he leaves the Walls behind;
Achilles follows like the winged Wind.
Thus at the panting Dove a Falcon flies,
(The swiftest Racer of the liquid Skies)
Just when he holds or thinks he holds his Prey,
Obliquely wheeling thro' th' aerial Way;
With open Beak and shrilling Cries he springs,
And aims his Claws, and shoots upon his Wings:
No less fore-right the rapid Chace they held,
One urg'd by Fury, one by Fear impell'd; 190
Now circling round the Walls their Course maintain,
Where the high Watch-tow'r overlooks the Plain;
Now where the Fig-trees spread their Umbrage broad,
(A wider Compass) smoak along the Road.
Next by Scamander's double Source they bound,
Where two fam'd Fountains burst the parted Ground;
This hot thro' scorching Clefts is seen to rise,
With Exhalations steaming to the Skies;
That the green Banks in Summer's Heat o'erflows,
Like Crystal clear, and cold as Winter-Snows. 200
Each gushing Fount a marble Cistern fills,
Whose polish'd Bed receives the falling Rills;
Where Trojan Dames, (e'er yet alarm'd by Greece,)
Wash'd their fair Garments in the Days of Peace.
By these they past, one chasing, one in Flight,
(The Mighty fled, pursu'd by stronger Might)
Swift was the Course; No vulgar Prize they play,
No vulgar Victim must reward the Day,
(Such as in Races crown the speedy Strife)
The Prize contended was great Hector's Life. 210

* * *
英語テクストはAlexander Pope (tr.), The Iliad of Homer より。
http://quod.lib.umich.edu/e/ecco/004836009.0001.006

* * *
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From Pope, Eloisa to Abelard

アレグザンダー・ポウプ
『アベラードへ、エロイーザより』 より

梗概:
アベラールとエロイーザは、十二世紀の人物である。
彼は当時もっとも学識ある男性であり、また彼女は
もっとも美しい女性であった。しかし、何よりよく
知られているのは、ふたりの恋愛が不幸なかたちで
終わったことである。一連の不幸と苦悩ののち、
ふたりはそれぞれ異なる修道院に入り、残された
日々を神に捧げた。こうして別れてから何年もたった
ある日、アベラードが友人に宛てた手紙がエロイーズの
手にわたった。そこに記されていたのは、彼のつらい
物語・・・・・・これがエロイーザのうちにかつての愛しい
気持ちを呼びさまし、彼女は、よく知られた多くの
手紙を書かずにはいられなかった。(以下は、
そこからの抜粋である。) これらの手紙は、
わたしたちにまざまざと見せつける。
信仰と人の本質のあいだに、また美徳と恋愛の
あいだに、どのような対立・せめぎあいがあるかを。

* * *
神聖な修道院、その深い孤独のなか、
清らかな〈思索〉が宿る。
〈憂鬱〉が支配者で、いつも物思いに沈んでいる。
わたしは神に仕える身--でも、どうして血が騒ぐの?
ここに逃げてきたのに、どうしてわたしの思いはさまよい出ようとするの?
どうして心が、忘れてた熱い気持ちを思い出すの?
ちがう、ちがうわ、わたし、まだ愛してる--アベラードからのこの手紙、
名前のところにキスせずにはいられない。
(1-8)

呪われた、でも愛しい名前! 秘密にしておかなくちゃ。
聖なる沈黙で封印されたわたしの口から出てはダメ。
心に隠すの、絶対にばれないように。
神の姿を、愛しいあの人の姿に重ねておくの。
この手で書いちゃダメ、あの人の名前--ああ、
もう書いちゃった--涙で消さなくちゃ!
泣いても、祈っても、エロイーザはもうダメ、
心がいうことを手が書いてしまう。
(9-16)

ひどい壁! 暗く囲んで閉じこめてる、
悔い改めた嘆きの人たち、みずから苦しみに耐える人たちを。
かたくて痛い石の床! みんながひざまずいて、もうすりへってる。
あたりのほら穴は、とげとげのいばらでいっぱい。
この神殿! 色のない目をした女の子たちが寝ないでお祈りしてて、
石で彫った聖人たちが、かわいそうに、って涙を流してる!
石の聖人みたいにわたしももう動けないし、もう話すこともない、
でも、わたし、まだ石じゃない。
わたしの全部が神のものじゃない、アベラードがいるんだもの。
恋する自然な気持ちがまだ反逆してる、心を半分占領してる。
お祈りしても、断食してもダメ、熱い血はおさえられない。
涙だって嘘。ずっと泣いてきたけど、悔い改めの涙なんて、みんな嘘泣き。
(17-28)

あなたの燃える想いを受けいれても、わたし、全然やましくなかった。
〈友情〉の姿を借りて〈恋〉はやってきたから。
わたし、あなたを天使のように思ってた。
一点のしみもない美しい精神が、人になってあらわれたんだ、と。
あなたのやさしい目、見てるだけで心が癒された。
晴れた空のように、やさしく輝いていて。
わたしは無邪気に見つめてた。あなたの歌に空も聴き入ってた。
聖なる真理も、あなたが語ればもっと正しくなってた。
あなたの唇から出てきた言葉に従わないなんて無理。
だからわたし、すぐに思った、好きになっても罪じゃない、って。
からだが求めるままに気持ちいいことに耽っていって、
好きな人が天使じゃ困る、って思ってた。
聖人の幸せとか、そんな異次元もよくわからなかった。
聖人なんて幸せに見えなかった。天国よりあなたのほうが大事だったから。
(59-72)

結婚しよう、っていわれて、私、よくこういってた、
恋の掟以外の法律なんて、みんな呪われちゃえ!
恋は空気のように自由なはず。人がつくった絆なんて見たら、
すぐに羽を広げて、どこかパタパタ飛んでいってしまう。
富やら名誉やらは結婚したご婦人にどうぞ。
ほめられるように生きて、清らかな名声でも残せばいい。
でも、本当の恋に対してこんな話は失礼。
名声、富、名誉なんて、恋とはまったく関係ないもの!
これはあの妬む神さまの仕返し。わたしたちが神さまの聖なる炎を軽んじたから、
無駄なことで燃えて面倒なことになってるだけなの。
それでバカな人たちは苦労してる、
恋のなかに恋以外のものを求めてばかりで。
もし世界を支配する偉い人がわたしを好きっていってひざまずいてくれても、
わたし、王の座とか、世界とか、そんなのみんなどうでもいい。
カエサルのお妃になんてなりたくない、
絶対に嫌。わたしは好きな人の恋人になって、愛されて尽くされたいの。
もし、恋人よりもっと自由で、もっと愛される存在が
あったとしたら、わたし、あなたのそれになる!
ああもう、なんて幸せなの! 魂が惹きつけあって、
愛が自由で、人の本質として認められて、そして掟になっていて!
すべて満たされていて、ふたりがそれぞれ相手のものになっていて、
空っぽで痛い心のすき間なんて全然なくって!
口に出さなくても、ふたりの想いは通じあう。
心から、相手への熱い願いが湧き出てくる。
ほんと天国! この世に天国があるなら・・・・・・
そう、アベラードとわたし、昔はその天国にいたのに・・・・・・。
(73-98)

ああ、でも今は違う! 急にあんなひどいことになるなんて!
あの人は裸で倒れていた、血を流しながら。
わたしはどこにいたの? わたしが話せば、抵抗すれば、
剣で戦えば、あんなひどい命令も実行されなかったはず。
やめて! 人でなし! 血を流すようなことしないで!
わたしたちの罪なんてよくあることでしょ? ふつうの罰でいいはずじゃない?
もうダメ、恥ずかしくて、腹立たしくって、これ以上は書けない。
涙と、燃えるように赤い顔から、あとのことは察して。
(99-106)

あの日のこと、あなたは忘れられる? あの神聖な日、
わたしたちがいけにえとして祭壇の前に捧げられたあの日のこと。
覚えてるでしょ? どれだけ涙が流れたか。
まだ若くて、心もからだも熱いのに、わたしは世界にさよならした。
尼僧のヴェールをかぶって、それがわたしの冷たい唇にふれたとき、
聖櫃がみんな震えて見えた、ランプの火もかすんで見えた。
神さまだって、わたしの心をとらえた、なんて信じてなかったはず。
聖人さまの像だって、みんな、わたしの誓いの言葉を聞いてびっくりしてた。
そうよ、こわくっておそれ多い祭壇に向かって歩きながら、
わたし、十字架のイエス様なんて見てなかった。わたしにはあなたしか見えなかった。
神さまのお恵みなんていらなかったし、信じる気持ちもなかった。わたしは
愛のためだけに生きてた。あなたと愛しあえなかったら、わたしの人生は終わりなの。
ねえ、来て! わたしをやさしく見て。何か話して。この苦しみを癒して。
それだけなら、まだできるはず。
わたしをやさしく胸に抱いて。
おいしい毒みたいな視線でわたしをじっと見て。
息が切れそうなくらいキスさせて。抱きしめてギュッてして。
できることはみんなして。あとのことは夢で見るから・・・・・・
もう、ダメダメ! あなたはわたしに他の喜びを求めることを教えてくれなくちゃ。
わたしの歪んだ目に、あなた以外の美しいものを見せて。
光り輝く天国をわたしの目の前一面に見せて。
わたしの魂に、アベラールじゃなくって神さまを愛するように教えて。
(107-128)

* * *
Alexander Pope
From Eloisa to Abelard

The Argument:
Abelard and Eloisa flourished in the
twelfth century; they were two of the
most distinguished persons of their
age in learning and beauty, but for
nothing more famous than for their
unfortunate passion. After a long course
of calamities they retired each to a
several convent, and consecrated the
remainder of their days to religion.
It was many years after this separation,
that a letter of Abelard's to a friend,
which contained the history of his
misfortune, fell into the hands of Eloisa.
This awakening all her tenderness,
occasioned those celebrated letters
(out of which the following is partly
extracted) which give so lively a picture
of the struggles of grace and nature,
virtue and passion.

* * *
In these deep solitudes and awful cells,
Where heav'nly-pensive contemplation dwells,
And ever-musing melancholy reigns;
What means this tumult in a vestal's veins?
Why rove my thoughts beyond this last retreat?
Why feels my heart its long-forgotten heat?
Yet, yet I love!--From Abelard it came,
And Eloisa yet must kiss the name.
(1-8)

Dear fatal name! rest ever unreveal'd,
Nor pass these lips in holy silence seal'd.
Hide it, my heart, within that close disguise,
Where mix'd with God's, his lov'd idea lies:
O write it not, my hand--the name appears
Already written--wash it out, my tears!
In vain lost Eloisa weeps and prays,
Her heart still dictates, and her hand obeys.
(9-16)

Relentless walls! whose darksome round contains
Repentant sighs, and voluntary pains:
Ye rugged rocks! which holy knees have worn;
Ye grots and caverns shagg'd with horrid thorn!
Shrines! where their vigils pale-ey'd virgins keep,
And pitying saints, whose statues learn to weep!
Though cold like you, unmov'd, and silent grown,
I have not yet forgot myself to stone.
All is not Heav'n's while Abelard has part,
Still rebel nature holds out half my heart;
Nor pray'rs nor fasts its stubborn pulse restrain,
Nor tears, for ages, taught to flow in vain.
(17-28)

Thou know'st how guiltless first I met thy flame,
When Love approach'd me under Friendship's name;
My fancy form'd thee of angelic kind,
Some emanation of th' all-beauteous Mind.
Those smiling eyes, attemp'ring ev'ry day,
Shone sweetly lambent with celestial day.
Guiltless I gaz'd; heav'n listen'd while you sung;
And truths divine came mended from that tongue.
From lips like those what precept fail'd to move?
Too soon they taught me 'twas no sin to love.
Back through the paths of pleasing sense I ran,
Nor wish'd an Angel whom I lov'd a Man.
Dim and remote the joys of saints I see;
Nor envy them, that heav'n I lose for thee.
(59-72)

How oft, when press'd to marriage, have I said,
Curse on all laws but those which love has made!
Love, free as air, at sight of human ties,
Spreads his light wings, and in a moment flies,
Let wealth, let honour, wait the wedded dame,
August her deed, and sacred be her fame;
Before true passion all those views remove,
Fame, wealth, and honour! what are you to Love?
The jealous God, when we profane his fires,
Those restless passions in revenge inspires;
And bids them make mistaken mortals groan,
Who seek in love for aught but love alone.
Should at my feet the world's great master fall,
Himself, his throne, his world, I'd scorn 'em all:
Not Caesar's empress would I deign to prove;
No, make me mistress to the man I love;
If there be yet another name more free,
More fond than mistress, make me that to thee!
Oh happy state! when souls each other draw,
When love is liberty, and nature, law:
All then is full, possessing, and possess'd,
No craving void left aching in the breast:
Ev'n thought meets thought, ere from the lips it part,
And each warm wish springs mutual from the heart.
This sure is bliss (if bliss on earth there be)
And once the lot of Abelard and me.
(73-98)

Alas, how chang'd! what sudden horrors rise!
A naked lover bound and bleeding lies!
Where, where was Eloise? her voice, her hand,
Her poniard, had oppos'd the dire command.
Barbarian, stay! that bloody stroke restrain;
The crime was common, common be the pain.
I can no more; by shame, by rage suppress'd,
Let tears, and burning blushes speak the rest.
(99-106)

Canst thou forget that sad, that solemn day,
When victims at yon altar's foot we lay?
Canst thou forget what tears that moment fell,
When, warm in youth, I bade the world farewell?
As with cold lips I kiss'd the sacred veil,
The shrines all trembl'd, and the lamps grew pale:
Heav'n scarce believ'd the conquest it survey'd,
And saints with wonder heard the vows I made.
Yet then, to those dread altars as I drew,
Not on the Cross my eyes were fix'd, but you:
Not grace, or zeal, love only was my call,
And if I lose thy love, I lose my all.
Come! with thy looks, thy words, relieve my woe;
Those still at least are left thee to bestow.
Still on that breast enamour'd let me lie,
Still drink delicious poison from thy eye,
Pant on thy lip, and to thy heart be press'd;
Give all thou canst--and let me dream the rest.
Ah no! instruct me other joys to prize,
With other beauties charm my partial eyes,
Full in my view set all the bright abode,
And make my soul quit Abelard for God.
(107-128)

* * *
梗概は散文。適当なところで改行。

「ふたりの恋愛が不幸なかたちで終わった」(梗概)
「血を流す」(99-106) などというのは、エロイーザの
親族がアベラードを去勢したことをさす。

通常の表記(フランス語読み)は、「アベラール」と
「エロイーズ」。

* * *
英語テクストは、次のURLのもの。

(梗概)
http://books.google.co.jp/books?id=nCohAAAAMAAJ

(詩)
https://tspace.library.utoronto.ca/html/1807/4350/poem1630.html

* * *
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From Rowe (tr), Lucan's Pharsalia

ニコラス・ロウ (1674-1718) (訳)
『ルカヌスのパルサリア』 より

だが、カエサルの偉大さ、彼の強さは、過去の
栄光、はるか昔の偉業などではない。
それはかつての名声ではなく、
いにしえの記録・年代記でもない。
彼の強さの源は、とどまることなき、閉じこめられることなき、戦いへの意志。
どれほど勝っても満たされぬ、尽きることを知らぬ、戦いへの欲望。
屈することを知らぬ戦士がもつ、恥に対する恐れ。
下手な戦いのみを恥じる心。
めざすもののため、彼は猛々しく戦う。とどまることなどけっしてない、
討伐・征服が彼を駆りたてるならば。
抵抗にあえば、おつりがくるほど戦力をつぎこみ、
惜しみなく剣に血を塗りつける。
有利な状況は最大限に生かし、どんな不利でも有利に変える、
運と神々を最大限に利用して、だ。
狙いを阻む者は何者であろうと、打ち倒し、
死んだ敵、荒れはてた敵地を見て、満足そうにほほえむ。

* * *
Nicholas Rowe (tr.)
From Lucan's Pharsalia

But Caesar's greatness, and his strength, was more
Than past renown and antiquated power;
'T was not the fame of what he once had been,
Or tales in old records and annals seen;
But 'twas a valour, restless, unconfin'd,
Which no success could sate, nor limits bind;
'T was shame, a soldier's shame untaught to'yield,
That blush'd for nothing but an ill-fought field;
Fierce in his hopes he was, nor knew to stay,
Where vengeance or ambition led the way;
Still prodigal of war whene'er withstood,
Nor spar'd to stain the guilty sword with blood;
Urging advantage, he improv'd all odds,
And made the most of fortune and the gods;
Pleas'd to o'erturn whate'er withheld his prize,
And saw the ruin with rejoicing eyes.

* * *
英語テクストは、The Works of the English Poets,
from Chaucer to Cowper, vol. 20 より。
http://books.google.co.jp/books?id=VOYUAAAAYAAJ

* * *
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From Pope, Moral Essays, Epistle I

アレグザンダー・ポウプ (1699-1744)
『道徳論』
「書簡I--コバム卿サー・リチャード・テンプルへ--」より

行動が、常に人格をあらわすわけではない。やさしいことを
する人が、だからといってやさしいとはかぎらない。
もしかしたら、生活が潤っているから心が潤っているだけかも。
もしかしたら、たまたま南から風が吹いてきただけかも。
人目にふれず生きたいと思う人も、だからといって控えめとはかぎらない。
傲慢だから、すぐれた人と会うのを避けるために、そうしているだけだったり。
勇敢に戦う人も、だからといって勇敢とはかぎらない。
もっとも卑しい、奴隷のような人と同様、勇敢な人でも死を恐れている。
かしこく、論理的に考え、論じる人も、だからといって本当にかしこいとはかぎらない。
彼の自慢は、論理的思考にあって、行動にはないのだから。
(61-70)

同じ人でも、いろんな場面で見てみよう--元気なとき、痛風で苦しんでいるとき、
ひとりのとき、人といるとき--落ちつく場所にいるとき、いないとき--
朝、仕事をしているとき、夜、賭けごとをしているとき--
キツネ狩りに夢中なとき、難しい議論をしているとき--
町で酔っぱらっているとき、舞踏会で品よくふるまっているとき--
国会議員候補になる前はいいことばかりいっていて、議員になったら嘘ばかりで。
カティウスはいつも道徳的で、まじめで、
悪党を許す奴は悪党の次に悪い、などと考える--
が、ディナーについては話は別で、こういうに決まっている、
鹿肉を出さない聖人よりも、それを出すゴロツキのほうがいい、と。
(130-39)

常に変わらぬものは神と自然だけ。人の判断力は、
逃げる獲物を追いかける矢のように、あっちに飛び、こっちに飛ぶ。
まるで渡り鳥! 来たかと思ったら、すぐどこかに行ってしまう。
たぶん、はるか月のかなたに。それか、地面の奥深く。
(154-57)

人のふるまいはくらしぶりによって変わるし、人の気分もお天気しだい。
本を読むたびに考えが変わり、社会とともに生きかたも変わる。
(166-67)

* * *
Alexander Pope
Moral Essays
From Epistle I. To Sir Richard Temple, Lord Cobham

Not always actions show the man: we find
Who does a kindness, is not therefore kind;
Perhaps prosperity becalmed his breast,
Perhaps the wind just shifted from the east:
Not therefore humble he who seeks retreat,
Pride guides his steps, and bids him shun the great:
Who combats bravely is not therefore brave,
He dreads a death-bed like the meanest slave:
Who reasons wisely is not therefore wise,
His pride in reasoning, not in acting lies.
(61-70)

See the same man, in vigour, in the gout;
Alone, in company; in place, or out;
Early at business, and at hazard late;
Mad at a fox-chase, wise at a debate;
Drunk at a borough, civil at a ball;
Friendly at Hackney, faithless at Whitehall.
Catius is ever moral, ever grave,
Thinks who endures a knave is next a knave,
Save just at dinner―then prefers, no doubt,
A rogue with venison to a saint without.
(130-39)

Know, God and Nature only are the same:
In man, the judgment shoots at flying game,
A bird of passage! gone as soon as found,
Now in the moon, perhaps, now under ground.
(154-57)

Manners with fortunes, humours turn with climes,
Tenets with books, and principles with times.
(166-67)

* * *
64
イングランドでは、東風は、冷たくていやなもの、健康に悪いもの
(OED, "east wind")。「南」というのは、ただの雰囲気で。

68 slave
文字どおりの意味(18世紀のイギリスはそういう社会。
古代以来の「自由民と奴隷」という対照も関係している。)

比喩的な意味(日本語でも、たとえば「奴隷根性」という
語にあるような、「気高くない」という)。

136 Catius
カティウスは、ホラティウスの『諷刺』2巻4歌で
諷刺されている美食家・快楽主義哲学者(?)。
食べものについて薀蓄を垂れる。

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.gutenberg.org/ebooks/2428

ホラティウスの『諷刺』はここから。
http://www.gutenberg.org/ebooks/5419

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Pope, "Ode on Solitude"

アレグザンダー・ポウプ (1688-1744)
「オード--ひとりで--」

1
幸せな人--それは、受けついだ若干の土地をこえることを
願ったり、気にかけたりしない人。
生まれ育ったところ、自分の土地で暮らして、
楽しめる人。

2
家の牛たちがミルクを、畑がパンを、
羊たちが服を与えてくれるような人。
所有している森の木々が、夏には木陰を、
冬には薪を、与えてくれるような人。

3
本当に幸せな人--それは、特に心配ごとなどなく、
ゆっくり、静かに流れる時間、日々、年月を楽しめる人。
からだは健康で、心穏やかで、
日の光の下、隠すものもなく。

4
夜にはよく眠り、学びとくつろぎを
ともに楽しみ、楽しく遊ぶことができる人。
そして、心に罪のない人--思いをめぐらすとき、これがいちばん
うれしいことだから。

5
そのように生きたい、誰にも見られず、誰にも知られず。
そして、誰にも悲しまれることなく、死にたい。
この世からこっそり消えたい。どこで休んでいるかを告げる
石はいらないから。

* * *
Alexander Pope
"Ode on Solitude"

1
Happy the man, whose wish and care
A few paternal acres bound,
Content to breathe his native air
In his own ground.

2
Whose herds with milk, whose fields with bread,
Whose flocks supply him with attire,
Whose trees in summer yield him shade,
In winter fire.

3
Blest, who can unconcern'dly find
Hours, days, and years slide soft away,
In health of body, peace of mind,
Quiet by day;

4
Sound sleep by night; study and ease,
Together mix'd; sweet recreation;
And innocence, which most does please,
With meditation.

5
Thus let me live, unseen, unknown,
Thus unlamented let me die,
Steal from the world, and not a stone
Tell where I lie.

* * *
ポウプが12歳のときの作品。

マルティアリスのエピグラム10巻47番と
セネカの『テュエステス』2幕のセリフを
組みあわせたもの。

Martial, Epigrams X, 47
Seneca, Thyestes, act 2.

どちらも16世紀以来、多くの詩人たちが英語に
訳してきた。

マルティアリス10.47--
サリー伯(16c)、B・ジョンソン、ファンショー
(Richard Fanshawe, 17c)、フェントン(Elijah Fenton, 18c)

セネカ、『テュエステス』2幕--
ワイアット(16c)、ヘイウッド(Jasper Heywood, 16c)、
ヘイル(Matthew Hale, 17c, 有名な裁判官)、カウリー、
マーヴェル

Charles Tomlinson, ed., The Oxford Book of Verse in
English Translation (1980) が便利。

* * *
スタンザ1-2
念頭にあるのは、裕福な田舎の土地持ち紳士の生活。
(ポウプは商人の家の生まれ。)現実的な思考ではなく、
都市や宮廷に対して田舎の平穏なくらしを理想化して
賛美するギリシャ・ローマ古典以来の考え方にもとづく。

スタンザ3-4
幸せの概念が、土地、家畜など、スタンザ1-2の
物質的豊かさから、平穏なくらし、健康、心の平安、
活動と休息のバランス、善良さなど、抽象的で
道徳的なものへと移行。

スタンザ5
誰ともかかわらずに生き、そして死にたいという
希望の表明。ここに至って読者はタイトルを思い出す。
また、スタンザ1-4を読み直し、そこに描かれた
「幸せ」に、人との関わりが含まれていないことに
気づく。

* * *
何がいいたい?

古典的・教科書的な「幸せ」の概念は、
人との関わり・交わりを含まないという点で
不完全・不正確ということ?

あるいは/加えて、人との関わり・交わり
なくして生きることが(自分にとって)
本当の幸せ、ということ?

* * *
英語テクストはThe Poetical Works of
Alexander Pope, Vol. 1 より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/9413

* * *
20131005
20140103

* * *
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From Pope, The Iliad of Homer, bk. 12 (Stones and Snow)

アレグザンダー・ポウプ (1688-1744) 訳
『ホメロスのイリアス』 第12巻より
(石の弾丸と雪)

今、石の弾丸が、重い雨のように落ちてくる。
まるで、ゼウスが大砲を調達し、
雲の弾薬庫を開いて弾丸を激しく降らせるときのよう。
冷たく色のない冬が世界を支配し、
洪水のような雪が大地を隠す時のよう。
ゼウスは風を静め、大空を眠らせる。
そして厚く、深く、音もなく、嵐を注ぐ。
まず山の頂点が、次に緑の野原が、
そして砂浜が、白に覆われる。
森の木々は、重みにたわみ、うなづくように頭を下げる。
人がつくったものは、みな一面の輝く荒地の下に埋もれていく。
大地をとり囲む海だけが、降り注いでは溶けていく
羊の毛のような雪をすべて受けいれ、飲みこむ。
まさにそのように、両軍から石の雨が降り注ぎ、
そして、大地に白い廃墟を築いたのであった。

* * *
Alexander Pope
From The Iliad of Homer, bk. 12
(Stones and Snow)

And now the stones descend in heavier showers.
As when high Jove his sharp artillery forms,
And opes his cloudy magazine of storms;
In winter's bleak uncomfortable reign,
A snowy inundation hides the plain;
He stills the winds, and bids the skies to sleep;
Then pours the silent tempest thick and deep;
And first the mountain-tops are cover'd o'er,
Then the green fields, and then the sandy shore;
Bent with the weight, the nodding woods are seen,
And one bright waste hides all the works of men:
The circling seas, alone absorbing all,
Drink the dissolving fleeces as they fall:
So from each side increased the stony rain,
And the white ruin rises o'er the plain.

* * *
sharp
(攻撃が)激しい、荒々しい(OED 4c)。
(嵐が)激しい、荒々しい(OED 4d)。
(冬が)刺すように冷たい(OED 4j)。

* * *
英語テクストはThe Iliad of Homer (1899) より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/6130
一部、タイプミスを修正。

* * *
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From Pope, The Iliad of Homer, bk. 13 (Hector)

アレグザンダー・ポウプ (1688-1744) 訳
『ホメロスのイリアス』 第13巻より
(ヘクトルは崖から落ちる岩のよう)

かくして、見るも恐ろしい隊列を組み、死をもたらすべく、
密集した軍勢が力強く進む。
殺戮にはやり、突進すること、まさに猛々しい。
先に攻め入ったのはトロイ軍、先頭はヘクトルだ。
その姿、まるで、山の額、切り立つ岩の崖から裂け落ちた
岩が飛ぶかのよう。狂気とも見まごう怒り、
かたい岩壁から奔流を噴き出さんばかりの狂乱に駆られ、
まっさかさまに岩は落ちる。
崖から崖へ、すべてを破壊しつつ岩は跳ね、転がる。
木にぶつかれば、それはみな爆音とともに裂け、折れる。
常に岩は力を増し、その熱さは煙が立ちのぼらんばかり。全力で、すごい勢いで
あちこちに跳ね、飛び、雷のようにすべてをなぎ倒して落ち、野原にたどりついて
止まる。まさにヘクトルはそんな岩、彼ひとりにて軍勢すべてに値する。
彼が荒れ狂う時、それは誰にも止められない。止まったなら、誰にも彼を動かせない。

* * *
Alexander Pope
From The Iliad of Homer, bk. 13

Thus breathing death, in terrible array,
The close compacted legions urged their way:
Fierce they drove on, impatient to destroy;
Troy charged the first, and Hector first of Troy.
As from some mountain's craggy forehead torn,
A rock's round fragment flies, with fury borne,
(Which from the stubborn stone a torrent rends,)
Precipitate the ponderous mass descends:
From steep to steep the rolling ruin bounds;
At every shock the crackling wood resounds;
Still gathering force, it smokes; and urged amain,
Whirls, leaps, and thunders down, impetuous to the plain:
There stops---so Hector. Their whole force he proved,
Resistless when he raged, and, when he stopp'd, unmoved.

* * *
英語テクストはThe Iliad of Homer (1899) より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/6130

* * *
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From Pope, The Iliad of Homer, bk. 6 (men and leaves)

アレグザンダー・ポウプ (1688-1744) 訳
『ホメロスのイリアス』 第6巻より
(人間は木の葉のよう)

人間とは木の葉のようなもの。
若く青々としているかと思えば、枯れ落ちて地に横たわる。
次の春、また新たなものがあらわれる。
木の葉は次から次へと落ち、次から次へと育つ。
人の世代も同じ、次から次へと滅んでいく。
花咲く者たちがいて、その背後に死にゆく者たちがいる。

* * *
Alexander Pope
From The Iliad of Homer, bk. 6

Like leaves on trees the race of man is found,
Now green in youth, now withering on the ground;
Another race the following spring supplies;
They fall successive, and successive rise:
So generations in their course decay;
So flourish these, when those are pass'd away.

* * *
Cf. Ecclesiasticus 14: 18.

* * *
英語テクストはThe Iliad of Homer (1899) より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/6130

* * *
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Pope, "The Dying Christian to his Soul"

アレグザンダー・ポウプ (1688-1744)
「死にゆくクリスチャンがみずからの魂に語る」

1.
わたしの命の源であった天の炎の火花、
死にゆくこの体から去るがいい!
おまえは震えつつ希望を抱いている。とどまろうとしつつ、飛び去ろうとしている。
ああ、死の痛み、そして喜び!
やめるんだ、愚かな体、抵抗するな、
衰えるがままに死なせてくれ、そして生きさせてくれ!

2.
聞け! 天使たちがささやいている、こういっている、
「我らの妹、魂よ、こっちへおいで!」
わたしを飲みこもうとしているこれは何だ?
わたしの感覚を盗み、視界を閉じ、
体を流れる命の水を流し去り、そして息を枯れさせようとしているのは?
教えてくれ、魂よ、これが死か?

3.
世界が遠ざかっていく、消えていく!
天国が目の前に開いていく! 耳に
天使たちの歌が鳴りひびく!
羽、羽をください! わたしも登ります! 飛んでいきます!
墓よ! おまえの勝利はどこへ行った?
死よ! お前の痛みはどこへ行った?

* * *
Alexander Pope
"The Dying Christian to his Soul"

1.
Vital spark of heavenly flame!
Quit, oh quit this mortal frame:
Trembling, hoping, lingering, flying,
Oh the pain, the bliss of dying!
Cease, fond Nature, cease thy strife,
And let me languish into life!

2.
Hark! they whisper; angels say,
'Sister Spirit, come away!'
What is this absorbs me quite?
Steals my senses, shuts my sight,
Drowns my spirits, draws my breath?
Tell me, my soul, can this be Death?

3.
The world recedes; it disappears!
Heaven opens on my eyes! my ears
With sounds seraphic ring!
Lend, lend your wings! I mount! I fly!
O Grave! where is thy victory?
O Death! where is thy sting?

* * *
Pope, ("Ah fleeting spirit") とセットの作。

この詩はクリスチャン、ハドリアヌスは異教徒
(クリスチャン以外)。死んで天国に行く(善人は)、
という考えがあるかないか、という違い。

* * *
英語テクストはThe Poetical Works of
Alexander Pope, Vol. 1 より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/9413

* * *
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Pope, ("Ah fleeting spirit")

アレグザンダー・ポウプ (1688-1744)
(「おお、消えていく魂!」)

「おお、消えていく魂! さまよい出ていく炎、
長いあいだわたしの胸をあたためてきた炎よ!
このからだにもう命を吹きこんでくれないのか?
気持ちよい、楽しい客人としてとどまってくれないのか?
どこへ、ああ、どこへ、おまえは飛んでいく?
どんな暗い、誰も知らない岸辺へ?
おまえ全体が震え、粉々になり、死んでいくようだ。
もう気のきいた言葉もジョークも出てこない!」

* * *
Alexander Pope
("Ah fleeting spirit, wandering fire")

"Ah fleeting spirit, wandering fire,
That long hast warm'd my tender breast!
Must thou no more this frame inspire,
No more a pleasing, cheerful guest!
Whither, ah, whither art thou flying?
To what dark undiscover'd shore?
Thou seem'st all trembling, shivering, dying,
And wit and humour are no more!"

* * *
"Animula vagula, blandula,
Hospes, comesque corporis,
Quae nunc abibis in loca?
Pallidula, rigida, nudula,
Nec (ut soles) dabis joca!"

* * *
古代ローマ皇帝ハドアリアヌスの死に際の
言葉(詩)を英訳したもの。

* * *
英語・ラテン語テクストはThe Works of Alexander
Pope, vol. 1 (1824) より。
http://books.google.co.jp/books?id=PksfAAAAMAAJ

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Pope, "Epigram on the Collar of a Dog"

アレクサンダー・ポウプ (1688-1744)
「わたしが皇太子閣下にお贈りした犬の首輪に
刻まれたエピグラム」

ぼくはキューの閣下の犬だワン。
ねえ旦那さま、あなたは誰の犬ですかワン?

* * *

Alexander Pope
"Epigram, Engraved on the Collar of a Dog
Which I Gave to His Royal Highness"

I am His Highness' dog at Kew;
Pray tell me, sir, whose dog are you?

* * *

何気ない犬同士の会話、ではなくて、この首輪の言葉を
読む人に対する強烈な皮肉。誰の犬、って・・・・・。

* * *

キューKewは地名。王立植物園がある。

* * *

英文テクストは、Poetical Works of Pope,
Vol. II (1856) より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/9601

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