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Dryden (tr.) From Virgil, Aeneid, bk 4 (Dido to Aeneas)

ジョン・ドライデン (1631-1700) (訳)
ウェルギリウス、『アエネイス』 第4巻より
(別れを告げるアエネアスにディドーが語る)

「まるでいんちきね。完全にだまされてたわ。この嘘つき!
りっぱな血筋なんて引いてないし、女神さまから生まれたなんて嘘。
かたい岩のお腹から出てきたんじゃない?
そして荒れはてたヒュルカニアの虎からおっぱいもらって育ったんじゃない?
いいたいこといわせてもらうわ。 もう失うものなんてないんだし。
この人、一度でも気にしてくれた? 話、聞いてくれた?
あたしが泣いてたときに、いっしょに悲しんでくれた? 涙を流してくれた?
全然よ--恩知らずで下衆な心しかもっていない証拠だわ。
ほんと汚らわしい。最悪よ。
でも、悪い男の文句をいったって無駄ね。
神々だって、ユピテルさまだって、何にもしないんですもの、
反逆が成功したときでも。そんな奴、雷を落としてやっつけちゃえばいいのに。
ユーノーさまだって、気にしてるのは自分の旦那の浮気だけ。
ほんと、この世は浮気な男だらけ! 天国も浮気な神々だらけ!
正義なんてどこかに逃げちゃったわ。真心になんてどこにもない!
あたしは、追い出されて逃げてきたこの人を助けてあげた。難破してたから。
お腹を空かせたトロイアの人たちにもごはんをあげたわ。
この人と王位を共にして、ベッドも共にした。そしたら・・・・・・この人は裏切った。
あたしって、ほんとバカ。あとのことなんてもういいわ。
ボロボロになった船を直してあげたりとかもしたけど。
あーあ、もう、気が狂いそうよ! 神さまが命じた、とかいって
天を共犯にして、あたしを棄てるなんて!
リュキアの占いとか、デロスの神とか、
ヘルメスが伝えるユピテルのお告げとか、
そんなのでここから出ていかなくちゃいけないなんて。天で楽しくくらしてる
神さまなんて関係ないじゃない! 人のことなんて気にしてないに決まってる!
いいわ、行きなさいよ! もう止めないから!
海の向こうまで行って、約束されたっていう国を見つければいいわ。
でも、覚えていて。神さまたち、あたしのお願いを聞いてくれるかもしれないから。
そしたら、波が裏切って--あなたの裏切りに比べればかわいいものだわ--
海底が陰謀をめぐらして、水のなかのお墓に沈むのよ、
ごりっぱな船も、それから嘘つきの船長も。
そのとき、棄ててきたわたしの名前を呼んで。ああ、ディドー・・・・・・って。
そしたらあたし、黒い硫黄の炎に包まれて会いに行くわ。
あたし、もう死んでるだろうから。
そして、あたしを裏切ったあなたがこどもみたいに泣くのを見て、にやって笑うの。
怒ってるあたしの亡霊が地の底からのぼってきて、
あなたにとり憑くの。あなたが眠っているときには、悪い夢を見させてあげる。
死んだあとでもいいから、あたし、あなたが苦しむ姿を見たい。
そして冥界に楽しい話を広めたい。ざまあみろっていう話をね。」

* * *
John Dryden (trans.)
From Virgil, Aeneid, book 4

"False as thou art, and, more than false, forsworn!
Not sprung from noble blood, nor goddess-born,
But hewn from harden'd entrails of a rock!
And rough Hyrcanian tigers gave thee suck!
Why should I fawn? what have I worse to fear?
Did he once look, or lent a list'ning ear,
Sigh'd when I sobb'd, or shed one kindly tear?-
All symptoms of a base ungrateful mind,
So foul, that, which is worse, 'tis hard to find.
Of man's injustice why should I complain?
The gods, and Jove himself, behold in vain
Triumphant treason; yet no thunder flies,
Nor Juno views my wrongs with equal eyes;
Faithless is earth, and faithless are the skies!
Justice is fled, and Truth is now no more!
I sav'd the shipwrack'd exile on my shore;
With needful food his hungry Trojans fed;
I took the traitor to my throne and bed:
Fool that I was- 't is little to repeat
The rest- I stor'd and rigg'd his ruin'd fleet.
I rave, I rave! A god's command he pleads,
And makes Heav'n accessary to his deeds.
Now Lycian lots, and now the Delian god,
Now Hermes is employ'd from Jove's abode,
To warn him hence; as if the peaceful state
Of heav'nly pow'rs were touch'd with human fate!
But go! thy flight no longer I detain-
Go seek thy promis'd kingdom thro' the main!
Yet, if the heav'ns will hear my pious vow,
The faithless waves, not half so false as thou,
Or secret sands, shall sepulchers afford
To thy proud vessels, and their perjur'd lord.
Then shalt thou call on injur'd Dido's name:
Dido shall come in a black sulph'ry flame,
When death has once dissolv'd her mortal frame;
Shall smile to see the traitor vainly weep:
Her angry ghost, arising from the deep,
Shall haunt thee waking, and disturb thy sleep.
At least my shade thy punishment shall know,
And Fame shall spread the pleasing news below."

* * *
英語テクストはThe works of Virgil (1803) より
http://books.google.co.jp/books?id=7ykNAAAAYAAJ

* * *
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