goo

(新しい音が聞こえる)

(新しい音が聞こえる)

1
新しい音が聞こえる
新しい色が見える
新しい手ざわり
新しい気持ち

空、雲、風の音
海、川、時の色
土と草、揺れる花
教えて、ここはどこ

2
新しい音が聞こえる
新しい色が見える
新しい息づかい
新しい痛み

人、影、闇の音
星、月、夢の色
丘と木々、眠る花
教えて、君は誰

3
新しい音が聞こえる
新しい色が見える
新しい安らぎ
新しい迷い

雨、霧、森の音
露、道、朝の色
光る陰、歌う花
教えて、ここはどこ

* * *
1991?
1994?
1997?
2005?
20120129
20120216
20120824
20160118

* * *
20世紀半ば以降、ポップ・ミュージックは
巨大なビジネスになってきたわけですが、
シンプルな音楽は、もっと素人の、素人による、
素人のためのものであっていいように思います。

庭とか、部屋とか、子どもの服や手さげとか、
凝った料理とか、そのようなものをふつうに
自分でつくるように、音楽も素朴に、日常的に、
自分でつくって歌って楽しい、みたいな。

* * *
盗用/商用/悪用以外でしたら、好きにしてください。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )

Marlowe, ("Was this the face that launch'd a thousand ships")

クリストファー・マーロウ(1564-1593)
(「これが、千もの船を海に浮かべ・・・・・・」)
(『フォースタス博士の悲劇』より)

(フォースタス)
これが、千もの船を海に浮かべ、
先の見えないトロイの塔を焼き落とした顔か・・・・・・
美しいヘレネー、キスでわたしを神にしておくれ・・・・・・。
[ヘレネーにキスをする]
おお、魂が吸い出されてしまう・・・・・・ほら、あそこを飛んでいる!
おいで、ヘレネー、さあ、魂を返しておくれ。
わたしはここで暮らそう、天国とはまさにこの唇のこと。
ヘレネー以外、この世に価値あるものはない。
わたしはパリスになろう。そして君のために、
トロイではなく、ヴェルテンベルクを戦場にしてしまおう。
あの弱いメネラオスと一対一で戦うのだ、
おまえの紋章を兜の羽飾りにつけて。
そう、アキレウスのかかとに傷をつけて、
そして、ヘレネーにキスしてもらいに帰るのだ。
ああ、君は夜の空よりきれいだ、
たとえ、それが千もの星で着飾っていても。
君はユピテルの炎より輝いている、
かわいそうなセメレーを焼いてしまった炎よりも。
君は空の君主よりも美しい、
みだらなアレトゥーサの空色の腕に抱かれているときの太陽よりも、だ。
そうとも、わたしが恋人にしたいのは君だけなのだ!

* * *
Christopher Marlowe
("Was this the face that launch'd a thousand ships")
(From The Tragical History of Doctor Faustus)

FAUSTUS.
Was this the face that launch'd a thousand ships,
And burnt the topless towers of Ilium―
Sweet Helen, make me immortal with a kiss.―
[Kisses her.]
Her lips suck forth my soul: see, where it flies!―
Come, Helen, come, give me my soul again.
Here will I dwell, for heaven is in these lips,
And all is dross that is not Helena.
I will be Paris, and for love of thee,
Instead of Troy, shall Wertenberg be sack'd;
And I will combat with weak Menelaus,
And wear thy colours on my plumed crest;
Yea, I will wound Achilles in the heel,
And then return to Helen for a kiss.
O, thou art fairer than the evening air
Clad in the beauty of a thousand stars;
Brighter art thou than flaming Jupiter
When he appear'd to hapless Semele;
More lovely than the monarch of the sky
In wanton Arethusa's azur'd arms;
And none but thou shalt be my paramour!

* * *

フォースタス博士が悪魔メフィストフィリスに頼み、
トロイ戦争を引き起こした絶世の美女ヘレネ―に
あわせてもらう場面。「千もの船を海に浮かべた顔」
(the face that launch'd a thousand ships)
という、今でも使われる表現は、この場面からのもの。
意味は、「究極に美しい顔」、とか。

* * *

1 thousand ships
トロイ戦争のために出撃した船のこと。
ホメーロスの『イリアス』では、これらの船が
カタログ化されている。(xの町からはy人の兵を
乗せた船がz艘・・・・・・というようなことが
延々と語られる。)

2 topless
頂点が見えない、それ以上高いものがない(OED 2a-b)。
OEDは、これらの意味について、「比喩的なもの」としている
(用例はtopless villany, topless divine
benefits, topless deputationなど)が、
ここでは文字通りの高さも意味されているかと。

2 Ilium
トロイのラテン語名。

3 Helen
スパルタ王メネラオスの妻ヘレネ―のこと。最高神ゼウスと
スパルタ王テュンダレオースの妻レーダーの娘。
(ゼウスは、白鳥に化けてレーダーをレイプ・・・・・・
ギリシャ神話の神々のすることはムチャクチャ。)

3 male me immortal
Immortalとは「死なない」ということ。死なないのは
神(や天使)。つまり、ヘレネーとキスができたら、まるで
自分が神であるような気になれる、ということ。

4 it
魂。魂が吸い出されて、ふわふわと宙を舞っている、ということ。
(宙を指さすような演技をするところかと。)

5
ト書き(脚本中の指示)はないが、おそらくこの行の後で
またキスをするはず。また、シェイクスピアの『ロミオと
ジュリエット』のキス・シーンは、この場面の応用版。
---
ロミ
キスでぼくの罪を浄めて・・・・・・(キスする)

ジュリ
あなたの罪がわたしの唇にうつっちゃったわ。

ロミ
それはいけない、その罪を返して・・・・・・(またキスする)

(あー、お腹いっぱい。)
---

8 Paris
トロイの王子パリスがヘレネーを連れ去ったことから
トロイ戦争ははじまった。

9 Wertenberg
1616年版ではWittenbergとなっている。
これはドイツの都市で、ルターが宗教改革をはじめたところ。
L. S. Marcusによれば、Wertenbergとは
WittenbergではなくWirtenberg (Württemberg).
これはルター派よりもさらにラディカルなツヴィングリ派の
反乱などが起こった場所。Unediting the Renaissance:
Shakespeare, Marlowe, Milton (1996),
ch. 2参照。

10 combat
(一対一で)闘う(OED 1)。

11 colours
色つきの紋章(OED 6)

11 crest
兜の頂点の部分、あるいは兜全体(OED 4)。

12
アキレウスはギリシャの英雄。トロイ戦争で活躍。
かかとが唯一の弱点で、それ以外は無敵だった。

16-17
最高神ゼウス/ユピテルと、テーバイ王カドモスの
娘セメレーの話は、オウィディウス、『変身物語』の
第三巻に。
---
1
ゼウスとセメレーの不倫関係を知ったゼウスの妻ヘーラー/ユーノーが
セメレーにいう、「ゼウスに、本当の姿でわたしを抱いて、
と頼んでごらん」。その本当の姿とは、雷と稲妻、光と炎・・・・・・。

2
セメレー「ねえ、ゼウス、お願いがあるの。」
ゼウス「よし、何でも聞いてやるぞ、地獄の川に誓ってもいい。」
セメレー「本当の姿でわたしを抱いて。」
ゼウス「うわ、ちょ、ちょっと待て・・・・・・。」

3
地獄の川に誓ってしまっていたので、ゼウスはセメレーの
願いどおりにせざるをえず、セメレーを抱きながら焼き殺して
しまう・・・・・・。

(いったいどうしたら、こういうストーリーを思いつくのか。)
---

18-19
泉にうつる太陽よりもヘレネーのほうが美しい、ということ。

18 the monarch of the sky
太陽(太陽神アポローン)のこと。たぶん。

19 Arethusa
アレトゥーサの物語はオウィディウス、『変身物語』第五巻に。
---
1
アレトゥーサはニンフで、川の神アルペウスAlpheusに
いい寄られ、追いかけられる。

2
もう捕まる、というときに、アルテミス/ダイアナが
アレトゥーサを泉に変身させて逃げさせる。

3
が、アルペウスは川の神なので、さらに水になって
アレトゥーサを抱こうとする。

4
が、アルテミス/ダイアナがふたり(二つの水)のあいだに
地面を入れて、アレトゥーサをさらに守る。

(いったいどうしたら・・・・・・)
---

18-19
アレトゥーサの腕に抱かれるアポローン、というのは、
つまり、青い泉に映る太陽、ということ。

また、アレトゥーサがみだら、というのは、マーロウが
勝手につけ加えたこと。いい寄ってくる男から逃げるような
タイプの女の子が実はエッチ、みたいなことを、ちょこっと
想像させるため。

* * *

また修正/加筆します。

* * *

英文テクストは、Christopher Marlowe, The Tragical
History of Doctor Faustus, ed. A. Dyceより。
http://www.gutenberg.org/ebooks/779
(これは、1604年版からのもの。1616年版からのものもある。
URLの最後の番号が811。)

* * *

学生の方など、自分の研究/発表のために上記を参照する際には、
このサイトの作者、タイトル、URL, 閲覧日など必要な事項を必ず記し、
剽窃行為のないようにしてください。

コメント ( 0 ) | Trackback (  )

Jonson, "Charis II"

ベン・ジョンソン(1572-1637)
「彼女に出会ったとき」
(「カリス礼賛」II)

カリスとはじめて出会った日、
彼女は、五月の花々よりきれいに咲いていた。
彼女の装いは、はるかに美しかった、
野原を彩るいちばんの花よりも。
ぼーっと見とれてはいないで、わたしは
すぐにキューピッドを呼びにいった。
キューピッド、見たくはないか?
最高の光を放つ的があるんだ、一緒に来いよ。
矢の筒はどこだ? 弓を引け。
ほら、矢だ。おっそいなあ!
こういってわたしは、彼の目隠しをほどき、
はっきり見えるようにしてやった。
でも、彼は目が見えるようになるとすぐ、
今度は力を失ってしまった。
それから度胸も。彼は
その場にいられず、弓も矢も投げ捨てて
すぐに逃げてしまった。
そして、どんなに脅しても、呼んで頼んでも、
ふり返ろうとすらしなかった。
無謀にもわたしは、キューピッドが
捨てた矢と弓を
拾った。あのわたしの的を
撃つためだ。でも彼女は、
(わたしが弓を引いたとき)あまりにまばゆい稲妻を
放ったので、わたしは目がくらんで何も見えなくなり、
まったく動けなくなってしまった。
わたしは、石になって立ちつくし、
みんなにバカにされた。ある者には、
(聞いていて悲しくなり、また頭に来たのだが、)
ヒゲ付のキューピッド像だ、それとも
ヘラクレスの格好をして
キューピッドを猿真似してる男性像か? などといわれたり。

* * *

Ben Jonson
II. How He Saw Her
(From "A Celebration of Charis")

I beheld her on a day,
When her look out-flourish'd May:
And her dressing did out-brave
All the pride the fields then have:
Far I was from being stupid,
For I ran and call'd on Cupid;―
Love, if thou wilt ever see
Mark of glory, come with me;
Where's thy quiver? bend thy bow;
Here's a shaft,―thou art too slow!
And, withal, I did untie
Every cloud about his eye;
But he had not gain'd his sight
Sooner than he lost his might,
Or his courage; for away
Straight he ran, and durst not stay,
Letting bow and arrow fall:
Not for any threat, or call,
Could be brought once back to look.
I fool-hardy, there up took
Both the arrow he had quit,
And the bow, with thought to hit
This my object; but she threw
Such a lightning, as I drew,
At my face, that took my sight,
And my motion from me quite;
So that there I stood a stone,
Mock'd of all, and call'd of one,
(Which with grief and wrath I heard,)
Cupid's statue with a beard;
Or else one that play'd his ape,
In a Hercules his shape.

* * *

タイトルのHeは詩人、つまり、この詩における「わたし」のこと。

同じくタイトルの「彼女」とはカリス(Charis)、
ギリシャ神話における美の女神Charitesのなかのひとり。

ボッティチェリの「春」Primaveraの左のほうで
踊っている三姉妹が美の女神Charites.
ラテン語Grātiæ, ギリシャ語Χάριτες(表示されていますか?)


Scan by Mark Harden

また、カリスは火と鍛冶の神ウルカーヌス(ローマ神話)の
妻のひとり、とも。

* * *

訳注。

2 out-
「(・・・・・・よりも)勝って・・・・・・」という
意味を動詞に加える接頭辞。

4 pride
(何らかの種のもののうち)もっともよいもの
(OED 5a)。きれいな装飾物(OED 7)。

5 stupid
驚き、悲しみなどで呆然としている(OED 1)。

6 call'd on
= called on, Call onは呼んでお願いをする(OED, "Call" 23a)、

権威として頼る(同23d)。

7 Love
キューピッドのこと。キューピッドは、ローマ神話に
おける愛の神。ギリシャ神話におけるEros(西欧の
アルファベットで記せば)に対応。ラテン語(古代ローマの
言葉)ではCupido(クピド―)。 その意味は、愛、欲望
(OED, "Cupid")。というか、愛や欲望を擬人化して
神格化したのが、エロスやクピド―。

8 mark
境界(OED 1)--「美しさの極み」というようなニュアンス。
(矢を打つときなどの)的(OED 7)--キューピッドは矢で
人の心を撃つから。

9-10
カリスを早く矢で撃って、わたしのことを
好きになるようにしろ、ということ。
頼んでおいて、「おっそいなあ!」などと、
なかなかあつかましい。

9 glory
光を放つ美しさ(OED 6)。

12 cloud
隠すもの、よく見えない状態(OED 9)。キューピッドは
しばしば目隠しをされた少年として描かれるから。
(愛は盲目、ということで。)

14-20
キューピッドは、カリスがあまりに美しいので、
恐れをなして逃げた、ということ(?)

15 courage
性的な活力、というニュアンスもあるらしい(OED 3e)。

16 Straight
すぐに。

23-27
美しいカリスの(目が)放つ光によって石になる、
というのは、醜いメドゥーサ(髪のかわりに頭から
ヘビが生えている)に見られると石になる、という
神話の裏返し。あまりにきれいな人と目があうと
固まってしまう、というようなことを神話的に
極端に表現。

メドゥーサ

http://commons.wikimedia.org/wiki/File:
Rondanini_Medusa_Glyptothek_Munich_252_n2.jpg

これはなんとも・・・・・・。

By George Shuklin
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:
%D0%93%D0%BE%D1%80%D0%B3%D0%
BE%D0%BD%D0%B0_(%D1%8D%D0%BB%
D0%B5%D0%BC%D0%B5%D0%BD%D1%
82_%D1%80%D0%B5%D1%88%D1%91%
D1%82%D0%BA%D0%B8_%D0%9B%D0%
B5%D1%82%D0%BD%D0%B5%D0%B3%
D0%BE_%D0%A1%D0%B0%D0%B4%D0%B0).jpg

もともとメドゥーサはとても髪のきれいな、美しい女性だった。
が、彼女は、知恵、芸術などの女神パラス・アテーナーの神殿で
ポセイドンにレイプされる。怒ったアテーナーは、
罰としてメドゥーサの美しい髪を気持ち悪いヘビに変えてしまう・・・・・・。
(オウィディウス、『変身物語』第4巻)
(なぜポセイドンは罰せられない?)

24-25
Such A that . . . の構文。That以下の結果を
もたらすようなA.

32 Hercules
ヘラクレスはギリシャの怪力の英雄。
(後日、画像を。)

これがジョンソン。ごつい大男だった。
(決闘で人を殺したこともあったり・・・・・・。)


* * *

リズムについて。

基調はストレス・ミーター。四拍子。歌にのるタイプ。



---
/: ストレスのある音節
x: ストレスのない音節
B: ビート(拍子)

音節: 母音ひとつ + 前後に付随する子音(群)
- 長母音、二重母音も基本的に母音ひとつと数える。
- /ng/や後ろに母音のない/l/などは、子音のみでも音節をつくる。

ビート:
そこで手拍子など、リズムをとると、話し言葉とは違って、
歌のような一定のリズムが聞こえてくる、という音節。
---

上は、1-4行目のスキャンジョン例。行のはじめのxx/がポイント。
ゆるやかで、かつ変化をもって流れるようなリズム。
4行目のアタマにストレスのある音節が来ていて、
以降のリズムの変化を少し予想させて・・・・・・



5行目から、行頭にストレスのくるもうひとつのリズムを
明確に提示。こちらのリズムは、xx/とx/が混在しないので、
ゆるやかに流れるような雰囲気がない。歌にはのるが
やや論述的、というか、バラッドのようなあまり優雅ではない
リズムやメロディの歌のよう、というか。

5-6行目にだけ行末に弱音節がついているのは(いわゆる
feminine endingなのは)、1-4行目とのリズムの違いを
明確にするため。おそらく。

(6行目のアタマにはストレスがないので、1-4行目と
同じリズムでも読める。だから、7-8行目で行頭にストレスのある
新しいリズムをさらに強調。)

以降、上記二種類のリズムが適宜入れかわりつつ展開。

特に、23-26行目の「彼女の目からの稲妻に打たれて・・・・・・」
というリリカルな箇所では、うねって流れるようなxx/を
多用していることに注目。

but she threw
Such a light[ning],
as I drew,
At my face
And my mo[tion]
from me quite

* * *

詩のリズムについては、以下がおすすめ。

ストレス・ミーターについて
Derek Attridge, Poetic Rhythm (Cambridge, 1995)

古典韻律系
Paul Fussell, Poetic Meter and Poetic Form, Rev. ed.
(New York, 1979)

その他
Northrop Frye, Anatomy of Criticism: Four Essays
(Princeton, 1957) 251ff.
(後日ページを追記します。和訳もあります。)

Joseph Malof, "The Native Rhythm of English Meters,"
Texas Studies in Literature and Language 5 (1964):
580-94

(日本語で書かれたイギリス詩の入門書、解説書の多くにも
古典韻律系の解説がある。)

* * *

このサイトで、「四歩格」などという古典韻律系の
用語ではなく、ストレス・ミーター(stress meter,
英語ではaccentual meter, accentual verseなどという
表現のほうが一般的)というより大ざっぱな意味あいの
ことばを使っているのは、実際、四拍子(歌タイプ)の
詩をつくる際の意識が、多くの場合、x/x/x/x/と一定の
リズムを刻むことにあるとは、とても考えられないから。

むしろ詩人たちは、詩の内容、そのなかの行ごとの内容、
さらには行のなかのフレーズごとの内容にあわせて、
リズムを変化させている。

(ポップソングなどをつくる際に、この歌詞には
こんなメロディがあうかな・・・・・・などと考えるのと)
おそらく同じ。「楽しいね!」みたいな歌詞に、
Eマイナー --> Aマイナー --> Bセヴンス みたいな
進行のスローな曲は、まずつけない。)

上のカリスの詩の場合、いかにもラヴ・ソング的で
きれいな(あるいは、芝居がかっていてクサい)ところと、
論述的かつバラッド的にややズッコケな感じで
笑わせるところでは、明らかにリズムが異なるわけで。

* * *

また修正/加筆します。

* * *

英文テクストは、The Works of Ben Jonson (1816),
vol. 8より。
http://books.google.co.jp/books?id=pEEUAAAAYAAJ&d

* * *

学生の方など、自分の研究/発表のために上記を参照する際には、
このサイトの作者、タイトル、URL, 閲覧日など必要な事項を必ず記し、
剽窃行為のないようにしてください。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )

Rossetti, CG, ("When I am dead, my dearest")

クリスティーナ・ロセッティ(1830-1894)
(「わたしが死んだら、ね」)

わたしが死んだら、ね、
悲しい歌は歌わないで。
お墓の頭のところにバラは植えないで。
影をつくるイトスギもダメ。
お墓のところの緑の草を
雨や露で濡らしておいて。
そして、思い出してくれてもいいし、
忘れてくれてもいい。

わたしにはもう影が見えないだろうし、
雨も感じない。
ナイチンゲールの歌も聞こえない、
痛々しく歌っていても。
そして、昇りも沈みもしない
薄あかりのなかで夢を見ながら、
わたしも思い出すかもしれないし、
忘れるかもしれない。

* * *

Christina G. Rossetti
"Song" ("When I am dead, my dearest")

When I am dead, my dearest,
Sing no sad songs for me;
Plant thou no roses at my head,
Nor shady cypress-tree:
Be the green grass above me
With showers and dewdrops wet;
And if thou wilt, remember,
And if thou wilt, forget.

I shall not see the shadows,
I shall not feel the rain;
I shall not hear the nightingale
Sing on, as if in pain:
And dreaming through the twilight
That doth not rise nor set,
Haply I may remember,
And haply may forget.

* * *

以下、訳注と解釈例。

日本語にするのは簡単な、とてもシンプルな作品だが、
バラ、イトスギをはじめ、とりあげられているものの
もつ象徴的意味やニュアンスまで考えないと、
実際何をいっているのかよくわからないという、
なかなか練られた詩。

3 roses
特に書かれていなければ、バラといえば赤いバラ。
愛と美の女神アプロディテ/ウェヌス(英語読みでヴィーナス)の花。
(ド=フリース、『イメージ・シンボル事典』など参照。
ウェブ上では、たとえば、次のものなども。Symonds, JA,
"The Pathos of the Rose in Poetry," Time, new ser. 3
[1886]: 396-411,<http://books.google.co.jp/books?id=
C6IdsKh2HX4C&d>.)

恋人アドニスを失ったウェヌスの涙がバラになったとか、
あるいはアドニスの血がバラになったとか。
(オウィディウス、『変身物語』10巻では、アドニスの血は
アネモネになる。)

今でも同じだが、恋人には赤いバラを、というのが
詩のなかでも定番。(20110702の記事のWallerの
詩でもそう。)

つまり、お墓にバラを植えないで、というのは、
もう死んでるんだから、バラはいらない
=キレイとか、好きとか、いってくれなくてもいい、
ということ。生きているときのように接して
くれなくていい、という。

3 at my head
お墓のなかのわたしの頭の上の地面のところ。

4 cypress
イトスギ。死の悲しみ、喪の象徴(OED 1a, 1c)。
オウィディウス、『変身物語』10巻に、大好きだった鹿が
死んでしまったときに、一生嘆いていたい、といって
イトスギに変身させてもらう少年キュパリッソスの話がある。

イトスギを植えないで、というのは、たとえば、
死んだからといって嘆き悲しまないで、ということ。
完全に死んだ、みたいに扱わないで、という。

つまり、3-4行目は(上のような意味で)矛盾している。
死んだわたしに対して、死んだ者として接してほしいのか、
生きてるように接してほしいのか、よくわからない。
(「わたし」自身、わかっていない。)

墓地のイトスギ(影をつくっている)

By Oliver Dixon
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Auchteraw_
Burial_Ground_-_geograph.org.uk_-_1497138.jpg

5-6
緑の草=生き生きしているイメージ。

雨=草に命を与えるものであり、涙のようなもの、
悲しみをあらわすものでもある。(プラス、ふつうに
うっとうしい、というのも?)

露=キレイ+涙のような、悲しみをあらわすもの。

つまり、5-6行目も矛盾している。わたしの墓を、
生命力=再生などを感じさせる場所、いわば
生き生きとしたところにしてほしいのか、それとも
悲しむための場所にしてほしいのか、よくわからない。
(「わたし」自身、わかっていない。)

7-8
覚えていてもいいし、わすれてもいい、ということは、
つまり、自分としては、どうしてほしいかわからない、
ということ。

3-6行目の矛盾、あいまいさは、みなここにつながる。
永遠の愛、悲しみ、再生など、死と関連することがらを
思い浮かべることはできるが、実際、「わたし」自身にとって
それらが何を意味するか、わたし自身が死後何を感じ、
恋人から何を望むか、などということがわかっていないようすを
あらわしている。

9
死んでしまっているから、4行目のイトスギの
影が見えない、ということ。

同時に、死んでしまっているから、世界や人生の闇の
部分がもう見えない、ということ。

世界や人生の闇をもう見ない、というのは、ある意味で
幸せなことであると同時に、不幸なことでもある(完全な無、
虚無をあらわすから)。

つまり、ここで死後の世界は、幸せなものととらえている?
それとも不幸なもの? それがよくわからない表現になっている。

10
雨とは6行目の雨。雨を感じないというのは、
悲しみを感じない、うっとうしくない、という点でいいこと。
同時に、命を与えるものを感じない、という点で悪いこと。
で、結局どっち?

11-12
ナイチンゲールという鳥の鳴き声はとてもきれいで、
歌の上手な人、詩人の比喩として用いられる(OED 1, 2)。
この意味で、ナイチンゲールの歌が聞こえないというのは
マイナスなこと。

同時に、ナイチンゲールとは、オウィディウス、『変身物語』
6巻において、ピロメラが変身したもの。

---
(プロクネとピロメラとテレウスの話)

1
テレウス(トラキアの王)とプロクネは夫婦。
ピロメラはプロクネの妹。

2
テレウスがピロメラをレイプ。(頭おかしい。)

3
ピロメラがこれを暴露しないように、テレウスは、
彼女の舌を切る。(完全に頭おかしい。)

4
ピロメラは、自分がされたことを描く布を織り、
それをプロクネに伝える。

5
怒り狂ったプロクネは、自分とテレウスの子を殺し、
料理に入れてテレウスに食べさせる。(プロクネも
途中から完全に頭おかしい。)

6
それを食べているテレウスに、プロクネは、
「その肉はあなたの子なの!」と教える。

7
怒り狂ったテレウスは、プロクネとピロメラを殺そうと
追いかける。

8
もうつかまる、というときに、二人は鳥に変身して
逃げる。プロクネはツバメに、ピロメラはナイチンゲールに。

(絵画のテーマになっているエピソードですが、
グロなので、画像は自粛。関心のある方のために、
一応URLのみ。)

http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Bauer_-_Tereus_Philomela_Procne.jpg

http://commons.wikimedia.org/wiki/File:
Antonio_Tempesta_-_Tereus_Philomela_Procne.jpg

http://www.wikipaintings.org/en/peter-paul-
rubens/tereus-confronted-with-the-head-of-
his-son-itylus-1638
---

つまり、痛々しく歌うナイチンゲールの声が聞こえない、
というのは、ある意味幸せなこと。

で、結局どっち? ナイチンゲールの歌が聞こえないのは
いいこと? 悪いこと?

13 twilight
夜明け前、太陽がまだ地平線の下にあるが、地平線上が
明るくなってきている状態。あるいは、日没直後、太陽が
地平線上に見えないのに、まだぼんやり明るい状態(OED 1)。

つまり、明るいのか、暗いのか、どっち? というあいまいさを
あらわしている。

13-14
そんな薄あかりが昇りもせず、沈みもせず、つづく状態が
死後の世界、と想像している。(rise昇る、set沈む、というのは
ふつう太陽に対して用いられる語。)

昇るのか、沈むのか、どっち? というあいまいさ。

15-16
思い出すかも、忘れるかも、というあいまいさ。
(生きていたときのことを、あなたのことを。)
死後、自分がどう感じるか、「わたし」自身にも
よくわかっていないようすをあらわす。

* * *

結局、この詩でわたしがいっていることは、
「わたしが死んだら、ね・・・・・・あなたにどうしてほしいか、
よくわからないわ・・・・・・自分がどうなるかも
わからないわ・・・・・・」ということ。

当然ながら、読者にも、この「わたし」が何をいいたいのか、
わからない。「わたし」であれ、読者であれ、生きている
人間には死後の世界を具体的に想像することができないから、
これらはあたりまえ。

で、ポイントは、このような内容のよくわからない詩から、
「わたしが死んだら・・・・・・」ということが話題になるような、
「わたし」と恋人(my dearest)のなんともいえない関係が、
微妙なかたちで想像されるということ。

それから、「わたしが死んだら・・・・・・」ということを
考えてしまう(考えざるを得ない?)「わたし」の性格/
感受性/身体的状況なども、微妙なかたちで想像される、
ということ。

* * *

英文テクストは、Poems by Christina G.
Rossetti
(1906) より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/19188

* * *

学生の方など、自分の研究/発表のために上記を参照する際には、
このサイトの作者、タイトル、URL, 閲覧日など必要な事項を必ず記し、
剽窃行為のないようにしてください。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )

Jonson, "Hour-Glass"

ベン・ジョンソン(1572-1637)
「砂時計」

少し考えてみよう、この砂時計のなかを
流れる砂が、
かつて一粒一粒生きていたとしたら?
想像できるだろうか、この砂の粒は、
ひとつひとつ、恋する男たちの
からだだったのだ。
それぞれが愛しい女性の前で蛾のように舞い、
彼女の瞳の炎に焼かれて灰になってしまったのだ。
そう、生前、愛に恵まれなかった彼らの不幸は
死んだ今もつづいていて、そして、これらの砂はこう語る--
灰になっても、恋する男にはけっして安らぎが訪れない、と。

* * *

Ben Jonson
"The Hour-Glass"



昔の印字体なので、fと縦長のsの区別が
最初は難しいかも。たとえば一行目は、
DO but consider this small dust, となっている。

(また後日入力し直します。)

* * *

訳注。

1 but
Only, merely, no more than(OED, prep., adv., conj. 6)。

1 dust
風に舞うくらい細かくて軽い状態の土、砂(OED 1)。
死んだあとにからだが帰る「土」(OED 3a)。

3 atom
原子のように小さい粒(OED 4)。

4-6
散文的に構文を直すとこのように--Could you believe
that this was the body of one that loved?
([T]he bodyとoneが逆なだけ。)

7 flie
Fly=ハチ、ブヨ、イナゴ、蛾など、飛ぶ虫(OED 1)。
火に寄ってくるのは蛾なので、ここではそのように訳す。

10 hav't
have it

9
構文は、(省略されている語をすべて出すと、)
たとえば以下の通り。

and [they=恋する男たち are as] unblessed
in death as [they were in] life.

10-11
構文は、to have it expressed [that]
even ashes of lovers find no rest.

[I]tが指すのは[that]以下。この[that]を
はずしてあるのは、リズムのため、また
unblest, exprest, restの脚韻をつくるため。
(あと、なくてもいっか、というのも。)

11 Ev'n
Even. 二音節として読むこともできる語を
一音節で読め、と指示。

11
生前の恋する男には「安らぎがない」--
好きな女性に愛してもらえないから。

死後の恋する男にも「安らぎがない」--
灰になっても砂時計のなかを流れつづけてなくてならないから。

* * *

砂時計の砂の一粒一粒は実は愛されずに死んだ男の灰で、
だからいつも落ち着かずに動いている、という想像力の飛躍。

そこに、美しい女性の熱い視線に焼かれる、という
宮廷愛的な恋愛表現が重ねられている。
(Sidney, Astrophil and Stellaのソネット20など参照。)

Jonson, "Musical Strife" と同様、イギリス文学史上の
「形而上詩(人)」や「奇想」という概念が、あまり有効では
ないことを示す作品。("Musical Strife" は20111230に。)

* * *

また追記します。

(先の話ですが、今年の10月以降、
少し時間の余裕ができるはず。)

* * *

英文テクストは、The Works of Ben. Jonson, vol. 6
(Masques at Court, Epigrams, The Forest, Underwoods),
London, 1761より。
http://books.google.co.jp/books?id=rwngAAAAMAAJ&hl=ja

* * *

学生の方など、自分の研究/発表のために上記を参照する際には、
このサイトの作者、タイトル、URL, 閲覧日など必要な事項を必ず記し、
剽窃行為のないようにしてください。



コメント ( 0 ) | Trackback (  )

ノート 2 (火)

2

火に感謝。

昔の人に感謝。

昔の友人たちにも。



* * *

私事ですが、年末から元日にかけて、
地元で厄年関係の行事に参加しました。

私の地元では、本厄(数え42)の男性が、
大晦日深夜から元日早朝まで、神社で初詣の
接待をします。前厄(数え41)の男性や、
厄年の女性(数え19と33)も手伝います。

画像のように暖をとる火を焚いたり
(ドラム缶三つ)、甘酒などの飲物を
ふるまったり。

* * *

20世紀後半以降、TVなど強力なメディアの発展により、
伝え広められる情報が二種類にわかれてきました。

TVなどにのって全国的に広められるものと、そうでないもの。

TVなどにのって、魅力的なもの、ファッショナブルなものとして
全国的に広められるものと、そうでないもの。

この「そうでないもの」のほうが社会的に大切で、
しかも、ひとりひとりの日々のくらしを満たす
(空間的/時間的/身体的/精神的に)、
というあたりまえの事実が、忘れられがちかと思います。
(私もそう。)

あるいは、さまざまな人間関係のなかに日々少しずつの
(時に大きな)楽しみ/喜びを見出す、というくらしのあり方と、
それにともなう煩わしさを避けたいという欲求のバランスが、
崩れ気味、ということなのでしょうか。
(私も・・・・・・。)

それとも、都市的な生活と地元的な生活、それぞれを
形成する価値観があるなかで、都市的な価値観が現在
偏重されている、ということ? (個人を超えたレベルの
潮流のなかで?)

* * *

画像は地元の友人ハットリ氏によるもの。
(一部修正。)

* * *

(あまりないかとは思いますが)上記のような思考/考えは、
何かのネタとして自由に発展させて使っていただいてかまいません。

上記の文言を引用/援用などする際には、このサイトの作者、タイトル、
URL, 閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないようにしてください。

(一般論として一応記します。特にオリジナリティを主張する意味など
ない記事ですが。)


コメント ( 0 ) | Trackback (  )

ノート 1 (新しい年)

1

新しい年がくることに感謝。
また草が生え、葉が茂り、花が咲くことに。

新しい日がくることに感謝。
いつも太陽が同じ軌道で昇ることに。

必然のように見える、そんなただの偶然に。

* * *

Keith Richardsがいつかのインタヴューで話していたことの翻案。
「自分がまた生きて目覚めたことに感謝」という
ニュアンスだったように記憶。いつのインタヴューかは不明。

* * *

(あまりないかとは思いますが)上記のような思考/考えは、
何かのネタとして自由に発展させて使っていただいてかまいません。

上記の文言を引用/援用などする際には、このサイトの作者、タイトル、
URL, 閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないようにしてください。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )