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Fletcher, G., Elegy 2

ジャイルズ・フレッチャー
エレジー 2

1.
愛しい人と離れ離れになってしまった。
でも、ぼくたちは誓った、絶対に変わらないと。
その証拠に、ぼくは心をあの人に預けた。
ずっと愛し、今も愛し、今後も愛さずにいられないぼくの心を。
こうして別れた、また会える日を楽しみにしつつ。
いつまでも心変わりしないと誓って。

2.
ひとりの女の子に連絡役をお願いした。
おたがいどうしてるか伝えるために。
恋愛が絡む時、男は男を信用しない。
好きだから相手のことは心配というもの。
また悲しい不安を味わうことになってしまう、
もし他の男が自分の恋人を好きになったら。

3.
連絡役の子を通じて、あの人はキスを送ってくれた。
純金よりも高価なキス。
あの人はその子にした、ぼくへのキスを。
女の子にキス……大胆だけど、別にいいよね?
羨ましい、あの人の甘いキスをもらうなんて!
天国でも、そんな幸せ、なかなかない。

4.
まじめなその子は恥ずかしがって、
それか、あの人のキスをひとり占めしたくなって、
インチキをして、ぼくへのキスをくれなかった。
でも、あの人がぼくのために考えたことは教えてくれた。
だからぼくは悪くない、その子にキスして好きになって告白しても。
ぼくは君がキスした子にキスしただけ。

5.
かわいい君、許して、ぼくを責めないで、ね?
ぼくはあの子の唇にキスした。でも、変なつもりはない、本当。
なかなか唇をあの子の唇から離せなかった。
だって、ね、かわいい君、君にキスしている気がしたから。
自然で気高く優しくて楽しい恋、最高の幸せが、
その一回のキスに詰まっていた。

6.
だからキスをもっと送って、あの子を通じて。
あの子にだけキスして。あの子にするか、誰にもしないで。
キスの宝を誰にもたせるか、よく考えて。
どこかに消えてしまうから、ぼくが受けとらなかったら。
ぼくを愛して、ね。いつもいつもキスして送って。
かわいい君、ぼくだけに好きと言って。愛して、ぼくだけを。

*****
Giles Fletcher
Elegy 2

1.
Distance of place, my Love and me did part;
Yet both did swear, We never would remove!;
In sign thereof, I bade her take my heart;
Which did, and doth, and cannot choose but, love.
Thus did we part, in hope to meet again;
Where both did vow most constant to remain.

2.
A she there was that passed betwixt us both;
By whom each knew how other's cause did fare:
For men to trust men in their love are loath.
Thus had we both of love a Lover's care.
Haply he seeks his sorrows to renew,
That for his love, doth make another sue.

3.
By her a kiss, a kiss to me She sent;
A kiss for price more worth than purest gold.
She gave it her. To me the kiss was meant.
A she to kiss: what harm if she were bold?
Happy those lips, that had so sweet a kiss;
For heaven itself scarce yields so sweet a bliss.

4.
This modest she, blushing for shame of this,
Or loath to part from that she liked so well,
Did play false play; and gave me not the kiss:
Yet my Love's kindness could not choose but tell.
Then blame me not, that kissing, sighed and swore,
I kissed but her, whom you had kissed before.

5.
Sweet, love me more, and blame me not (sweet Love)
I kissed those lips: yet, harmless, I do vow:
Scarce would my lips from off those lips remove;
For still, methought, sweet Fair, I kissèd you.
And thus kind love, the sum of all my bliss,
Was both begun, and ended, in a kiss.

6.
Then send me more; but send them by your friend,
Kiss none but her, nor her, nor none at all.
Beware by whom such treasures you do send,
I must them lose, except I for them call.
And love me (Dear) and still still kissing be.
Both like and love but none (sweet Love) but me.

https://www.gutenberg.org/ebooks/52620
(STC 11055にあわせて修正)

*****
詩集『リーシア』の付録。
カトゥルス、セクンドゥス的なキスの話。
独自の(微妙な)方向にだいぶ冒険しているのでは。

Licia
Catullus
Secundus

*****
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Fletcher, G., Licia 12 ("I wish sometimes")

ジャイルズ・フレッチャー
『リーシア』12

時々、バカバカしいとは思いつつ、
野心に駆られ、高い地位に憧れ、
君主、偉い王さまになれたら、と思う。
それが実現したら、もっと高い地位を望むに違いない。
でも、杉に吹きつけられる風や
名誉を望む人に襲いかかる嵐を思うと、
自滅を望むのは愚か、と反省。
王国なんていらない、冠がもらえても。
ああ、リーシア、君は奇跡のような人、
君がいればぼくは満足、ぼくは幸せ。
君に比べれば、王冠なんてただの屑。
アジアの宝石なんかでは君のキスひとつ買えない。
だからぼくにキスして、お願い。
そうしたら冠も王国もどうでもよくなるから。

*****
Giles Fletcher
Licia 12

I wish sometimes, although a worthless thing,
Spurred by ambition, glad for to aspire,
Myself a Monarch, or some mighty King:
And then my thoughts do wish for to be higher.
But when I view what winds the cedars toss,
What storms men feel that covet for renown;
I blame myself that I have wished my loss:
And scorn a Kingdom, though it give a Crown.
A' Licia thou, the wonder of my thought,
My heart's content, procurer of my bliss;
For whom, a Crown I do esteem as nought:
And Asia's wealth, too mean to buy a kiss.
Kiss me, sweet Love! this favour do for me;
Then Crowns and Kingdoms shall I scorn for thee.

https://www.gutenberg.org/ebooks/52620/

*****
「幸せな人」・「心の安らぎ」系の主題に
セクンドゥスの『キス』を接合。

Wyatt, "Of the Mean and Sure Estate"
Howard, "Praise of Meane and Constant Estate"
Howard, "The Means to Attain a Happy Life"
From Heywood, J (tr.), Thyestes, act 2
Sidney (tr.), Horace, Ode 2.10

Secundus, "Elegia V"
Secundus, Basium 14
Secundus, Basium 16
Secundus (Tr. Thomas Stanely), Basia 17
Ronsard, "A Cassandre" (Ode 2.5)
Fletcher, G, Licia 34
Jonson, "Charis 7: Begging Another [Kiss]"

*****
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Fletcher, G., Lucia 28 ("In time. . . .")

ジャイルズ・フレッチャー
『リーシア』28

いつか、高く立派な塔も倒れる。
いつか、薔薇も銀の百合も死ぬ。
いつか、王も囚人も奴隷となる。
いつか、海も川も涸れる。
硬い石でも、いつか溶けて砕ける。
長く伝わる名声も、いつか薄れて消える。
見下ろす山も、いつか下から見上げる。
変わらないように見える大地も、いつか滅ぶ。
太陽もいつか昇るのを忘れ、
東に居座るようになる。
下劣な人もいつか気高い思いを抱き、
強欲な人もいつか富を嘲る。
このようにすべてはいつか変わる。終わる。
違うのは、君の姿と心の美しさとぼくの気持ちだけ。

*****
Giles Fletcher
Licia 28

In time the strong and stately turrets fall.
In time the rose, and silver lilies die.
In time the monarchs captive are and thrall.
In time the sea and rivers are made dry.
The hardest flint in time doth melt asunder.
Still living fame, in time doth fade away.
The mountains proud, we see in time come under:
And earth for age, we see in time decay.
The sun in time forgets for to retire
From out the East, where he was wont to rise.
The basest thoughts, we see in time aspire.
And greedy minds, in time do wealth despise.
Thus all, sweet Fair, in time must have an end:
Except thy beauty, virtues, and thy friend.

https://www.gutenberg.org/ebooks/52620/
(一部修正)

*****
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Fletcher, Licia 27 ("The crystal streams")

ジャイルズ・フレッチャー
『リーシア』27

愛しい人が泳いだ水晶の川。
泣き崩れて涙になる、ぼくと同じ悲しみで。
川の水よりあの人は明るく光る。
まるで真珠の水、雪より白い。
熱で蒸発した香水のように、
川は熱い蒸気になって燃えあがりそう。
不思議、あんなに冷たい人が
川を蒸発させるとは。
なぜ? たぶん、こういうこと--
あの人にふれた水があの人に恋して燃えた。
あの人にふれて川は幸せ、
涙の川ではなくなった。
川にこんな幸せをあげるくらいなら、
ね、ぼくも愛して。同じことをして。

*****
Giles Fletcher
Licia 27

The crystal streams, wherein my Love did swim,
Melted in tears, as partners of my woe;
Her shine was such as did the fountain dim,
The pearl-like fountain, whiter than the snow.
Then, like perfume resolvèd with a heat,
The fountain smoked, as if it thought to burn.
A wonder strange to see the cold so great,
And yet the fountain into smoke to turn.
I searched the cause, and found it to be this:
She touched the water, and it burnt with love.
Now, by her means, it purchased hath that bliss
Which all diseases quickly can remove.
Then if, by you, these streams thus blessèd be:
Sweet, grant me love; and be not worse to me!

https://www.gutenberg.org/files/52620/52620-h/52620-h.htm

*****
ジローラモ・アンジェリアーノのエピグラムの翻案。
水が熱くなるという主題はマリアノス・スコラスティコスから。
(『ギリシャ詩撰』9.627)

(誰?)

James Hutton, "Analogues of Shakespeare's Sonnets 153-54",
Modern Philology 38 (1941): 385-403.
The Complete Poems of WIlliam Shakespeare, ed. Shrank and Lyne
(Longman Annotated), 2017.

Girolamo Angeriano
Marianus Scholaticus
Greek Anthology

*****
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Fletcher, G., Licia 17 ("As are the sands on the shore")

ジャイルズ・フレッチャー
『リーシア』17

リーシア、岸の砂と、
冠のような春の花々と、
見たこともふれたこともない霜の粒と、
秋に実る果実と
夜空に織りこまれた金銀の糸のようにきらめく星と、
海に跳ねる魚と、
どこを見ても見えない空気と、
ぼくのため息は同じ。だから、つらい。
でも、これらの数には限りがあるはず。
自然のものである以上、無限じゃない。
ただ、ぼくの心のつくため息だけは
いつまでも終わらない。むしろ、いつもはじまってばかり。
だから受けとって、君に捧げるお香のようなため息を!
君のためにそれは不死、永遠に続くのだから。

*****
Giles Fletcher
Licia 17

As are the sands, fair LICIA, on the shore;
Or coloured flowers, garlands of the Spring;
Or as the frosts not seen nor felt before;
Or as the fruits that autumn forth doth bring;
As twinkling stars, the tinsel of the night;
Or as the fish that gallop in the seas;
As airs; each part that still escapes our sight:
So are my Sighs, controllers of my ease.
Yet these are such as needs must have an end,
For things finite, none else hath nature done:
Only the sighs, which from my heart I send
Will never cease, but where they first began.
Accept them, Sweet, as incense due to thee!
For you immortal made them so to be.

http://www.shakespeares-sonnets.com/Archive/Licia.htm

*****
カトゥルス7をペトラルカ的な純片思いの詩に援用。
Cf. Jonson, "To Celia" (II) ("Kiss me, sweet")

*****
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Fletcher, "A Dialogue betwixt Two Sea-Nymphs"

ジャイルズ・フレッチャー
「海の精ドリスとガラテイアがポリュペモスについて話す:
ルキアノスの作品から翻訳・要約」

最近、海の精たちが岸で遊んでいた。
ちょっとおもしろかったのは、
聞いたことのないような恋愛話がはじまったこと。
二人の精の言い争い。
きれいなドリスはガラテイアの彼氏に納得がいかない。
でもガラテイアは、彼がいい、と言い返していた。

ドリス
この野原で最近告白してきた彼氏、
羊飼いたちも他のみんなも言ってるけど、
シキリアのダサいキュクロプスでしょ。
恥ずかしくない? あんなのとつきあって?

ガラテイア
笑わないで、ドリス、彼がブサイクだからって。
バカにする言葉は聞きたくない。
好きになってもいいじゃない。十分な相手よ。
生まれもいい。ネプトゥルヌスさまの子だから。
ガラスのような海の支配者ネプトゥルヌスさま。
ユピテルさまにつらなる血筋を引いてる。

ドリス
ネプトゥルヌスさまの子、ってのは確かにいい。
ユピテルさまと近い関係というのもすてき。
でも、だまされたらダメ。
生まれつきどんな性格か、顔を見ればわかる。
あんなにブサイクで、雑で、田舎の親父みたいに汚い。
そもそも一つ目の怪物じゃない!
たとえ冠をかぶっていても、ブサイクはブサイク。
顔がいいのがいちばん。みんなそう思ってる。

ガラテイア
そこまでブサイクでかっこ悪くないから。
ひどすぎ。どこかの田舎のバカみたいに見えて
確かにケダモノっぽいけど、その分中身がいいの。
ついでに、男らしい顔のほうが、わたし、タイプ。
あの怒ってるみたいな笑顔、ひげがあっていい感じ。
あの目の光、一つしかないから太陽みたい。
だからいいの。他の子は、こわい、って言うけど。
目なんて見えれば十分。

ドリス
へー、わかった、ほんとに好きなのね。
好きだから現実が見えてなくて、それで
ブサイクでもかっこよく見えるのね。よくあること。
もっとかっこよかったらいいのに。それかあんた、目を覚ませば?

ガラテア
いいえ、ドリス、実際、好きなわけじゃないわ。でも、
ひどい言葉はいや。バカにしすぎ。
もしかして、そんなことを言うのは彼に好かれなかったから?
だって、わたしの気持ちはユピテルさまのお導き。
あの人がこの原っぱで羊の世話をしてた時、
わたしたち岸で遊んでいて、そして
彼、みんなを無視してわたしにだけやさしかった。
あの時、悔しかったんでしょ。見ててわかった。
笑わないで。ほんとのことを言ってるだけだから。
自分より幸せな人がいたら、誰だっていやでしょ?

ドリス
悔しがるって? あの目なし野郎に相手にされずに?
ブサイクにモテてるあんたをうらやましがってる、って?
あいつ羊飼いだから、白すぎるあんたを羊乳だと思ったんじゃない?
学校行ってなくて見分けがつかないの。バカだから。
真っ白なあんたを見てお腹いっぱいって、ぷぷぷ。
白けりゃいいってものじゃない。ほっぺも唇も真っ白って、ねぇ?

ガラテイア
わたしは白すぎだけど、彼はそんなわたしがいい、って。
あんたは確かにかわいいけどモテてない。告白されてない。
格下の男でも彼氏がいないよりはマシ。
あんたみたいにかわいくてももてない人は、結局かわいくないってこと。
わたしのために、彼、竪琴弾いて歌ってくれる。
かっこはダサいけど、実は頭はそこそこだから。

ドリス
やめたら? 田舎のバカをもちあげるなんて。
彼はちょっとムラムラして、歌って口説きたくなっただけ。
ひどい歌、みんないやな顔してた。
どっかのロバかと思った。
あんな汚い声聞いて森もいやがってたし、
ふだんはうるさいこだまだって、しーんとしてた。
ほら穴だって、あんな不吉な声聞いたことないって。
ついでに竪琴も下手くそ。そう言えば、
こないだ、あの怪物、熊みたいな犬の子二匹抱っこしてた。
いっしょにバカみたいに遊んでたわ。
犬の毛がボサボサだったけど、あんたの彼氏、もっとひどかった。
犬より汚くて怖い。
ほんと笑っちゃう、ごめんね、あんた、
わたしたちの誰かに彼氏をとられたらどうしよ、って思ってるでしょ。

ガラテイア
もう、ほんと彼をバカにしないで、もっといい彼氏つくって
紹介してくれるまでは。

ドリス
今はいないし、いても教えないから。
ちょっとよさげな男に告白されてるけど。
この岸の恥になるような
ブサイクとつきあうほど落ちぶれてないし。
でも、バカな愛の力って怖い。
ブサイクで汚い男がかっこよく見えるんだから。

この話を聞こうと、わたしは樫の木に隠れてすわっていた。
注意深く彼女たちの言葉を聞いて、そしてそのまま書き記した。

*****
Giles Fletcher
"A Dialogue betwixt Two Sea-Nymphs Doris and Galatea
Concerning Polyphemus: Briefly Translated Out of Lucian"

The sea-nymphs late did play them on the shore,
And smiled to see such sport was new begun,
A strife in love, the like not heard before,
Two nymphs contend which had the conquest won.
Doris the fair with Galate did chide;
She liked her choice, and to her taunts replied.

DORIS
Thy love, fair nymph, that courts thee on this plain,
As shepherds say and all the world can tell,
Is that foul rude Sicilian Cyclop-swain;
A shame, sweet nymph, that he with thee should mell.

GALATEA
Smile not, fair Doris, though he foul do seem,
Let pass thy words that savour of disgrace;
He's worth my love, and so I him esteem,
Renowned by birth, and come of Neptune's race,
Neptune that doth the glassy ocean tame,
Neptune, by birth from mighty Jove which came.

DORIS
I grant an honour to be Neptune's child,
A grace to be so near with Jove allied.
But yet, sweet nymph, with this be not beguiled;
Where nature's graces are by looks decried,
So foul, so rough, so ugly as a clown,
And worse than this, a monster with one eye!
Foul is not gracèd, though it wear a crown,
But fair is beauty, none can that deny.

GALATEA
Nor is he foul or shapeless as you say,
Or worse; for that he clownish seems to be,
Rough, satyr-like, the better he will play,
And manly looks the fitter are for me.
His frowning smiles are gracèd by his beard,
His eye-light, sun-like, shrouded is in one.
This me contents, and others make afeard.
He sees enough, and therefore wanteth none.

DORIS
Nay, then I see, sweet nymph, thou art in love,
And loving, dotes; and doting, dost commend
Foul to be fair; this oft do lovers prove;
I wish him fairer, or thy love an end.

GALATEA
Doris, I love not, yet I hardly bear
Disgraceful terms, which you have spoke in scorn.
You are not loved; and that's the cause I fear;
For why? My love of Jove himself was born.
Feeding his sheep of late amidst this plain,
Whenas we nymphs did sport us on the shore,
He scorned you all, my love for to obtain;
That grieved your hearts; I knew as much before.
Nay, smile not, nymphs, the truth I only tell,
For few can brook that others should excel.

DORIS
Should I envy that blind did you that spite?
Or that your shape doth please so foul a groom?
The shepherd thought of milk, you looked so white;
The clown did err, and foolish was his doom.
Your look was pale, and so his stomach fed;
But far from fair, where white doth want his red.

GALATEA
Though pale my look, yet he my love did crave,
And lovely you, unliked, unloved I view;
It's better far one base than none to have;
Your fair is foul, to whom there's none will sue.
My love doth tune his love unto his harp.
His shape is rude, but yet his wit is sharp.

DORIS
Leave off, sweet nymph, to grace a worthless clown.
He itched with love, and then did sing or say;
The noise was such as all the nymphs did frown,
And well suspected that some ass did bray.
The woods did chide to hear this ugly sound
The prating echo scorned for to repeat;
This grisly voice did fear the hollow ground,
Whilst artless fingers did his harpstrings beat.
Two bear-whelps in his arms this monster bore,
With these new puppies did this wanton play;
Their skins was rough but yet your loves was more;
He fouler was and far more fierce than they.
I cannot choose, sweet nymph, to think, but smile
That some of us thou fear'st will thee beguile.

GALATEA
Scorn not my love, until it can be known
That you have one that's better of your own.

DORIS
I have no love, nor if I had, would boast;
Yet wooed have been by such as well might speed:
But him to love, the shame of all the coast,
So ugly foul, as yet I have no need.
Now thus we learn what foolish love can do,
To think him fair that's foul and ugly too.

To hear this talk, I sat behind an oak,
And marked their words and penned them as they spoke.

ftp://eremita.di.uminho.pt/pub/gutenberg/1/8/8/4/18841/18841-h/18841-h.htm

*****
ルキアノスの作品を翻訳した
セクンドゥスからの翻訳とのこと。
Dougall Crane, Johannes Secundus (1931), pp. 53-54.

*****
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Smith, W, Chloris 22 (Echo Poem)

ウィリアム・スミス
『クロリス』 22

世界でいちばんきれいな君にあります、言いたいことが
--言いたいことが
君を思うと悲しみが湧き出てきます
--湧き出てきます
ぼくのうめき声を聞いてください、聖人さま
--聖人さま
涙のメロディにのせて歌います
--歌います
ぼくの詩の女神はいつも話しています、君のこと
--君のこと
下心はありません、お願い、やめて、軽く見ないで!
--軽く見ないで
苦い悲しみで苦しめないで、ぼくを
--ぼくを
やさしく見つめてください、つらいのですから
--つらいのですから
ぼくの思いを殺さないで、そうじゃなく
--そうじゃなく
慰めの薬をぼくの心にください
--心にください
絶望から脱出して、生きる希望を
--生きる希望を
見つけて、苦しみを癒すために
--苦しみを癒すために
だから、やさしくしてください、ぼくの一途な恋が
--恋が
ひどい仕打ちで消えないように
--消えないように

*****
William Smith
Chloris 22

O fairest fair, to thee I make my plaint,
--- my plaint
To thee from whom my cause of grief doth spring;
--- doth spring
Attentive be unto the groans, sweet saint,
--- sweet saint
Which unto thee in doleful tunes I sing.
--- I sing
My mournful muse doth always speak of thee;
--- of thee
My love is pure, O do it not disdain!
--- disdain
With bitter sorrow still oppress not me,
--- not me
But mildly look upon me which complain.
--- which complain
Kill not my true-affecting thoughts, but give
--- but give
Such precious balm of comfort to my heart,
--- my heart
That casting off despair in hope to live,
--- hope to live
I may find help at length to ease my smart.
--- to ease my smart
So shall you add such courage to my love,
--- my love
That fortune false my faith shall not remove.
--- shall not remove

https://en.wikisource.org/wiki/Elizabethan_Sonnet-Cycles/Chloris

*****
オウィディウス『変身物語』以来のこだまの詩。
ただ行末の言葉をくり返すのみならず、
このくり返し部分(偶数行)のみでも
意味が通じるようになっている。

かたちの点では、この詩は奇数行だけで
14行のソネットをなす。そこに、各行の
こだまが響くようにはさみこまれている。

*****
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Willes, De Re Poetica

リチャード・ウィルズ
『詩について』
「詩に対する批判への回答」

何かを称える理由は、それが気高いから、あるいは役に立つから、である。が、詩は気高くないし、役にも立たない。むしろこのような言いかたは甘すぎる。詩は卑しく最低で有害だ。この卑しさの証明は以下のとおりである。

まず、詩の目的とは何か? 言わなくてもいい。わかっている。楽しみ、であろう。精神的な、そして感覚的な楽しみだ。この楽しみは、人だけでなく動物のものでもある。獣たちがオルペウスの歌の虜になった、という詩人たちの話を信じるのであれば。輝かしい技術である、人を動物のレベルに引き下げるとは!

2.
次に、詩は何を教えるものか考えよう。その内容は何か? ギリシャ、ローマ、その他の国の詩人の作品を読めばわかる。詩から学べるのは、まず呪われた人々、特に、鎌や車を発明したなどという理由で愚かな古代人が祭壇や神殿に祀ってきた者たちの所業である。本来称えられるべきは唯一の不死なる神であるのに。こうして詩人たちは、さまよい、争い、狩をし、宴をし、快楽に耽って乱れた暮らしを送る人々を描いてきた。そんな作品にどんな気高さがあるというのか? 人のどんな偉大さや尊厳が詩から学べると言うのか?

さらに言うが、古代人が神々とみなす存在を詩が描く時、つまり戦争、親殺し、その他数々の不敬で呪わしい恥ずべきおこないを描く時、これらは神々の定めとして、あるいは善への報い、悪への処罰とされている。老婦人、お婆さんの目から見たならただの愚行、嘲笑すべき馬鹿馬鹿しい内容であろうに。

3.
さて、神々から人に目を移してみよう。詩人は人についてどんなことを言っている? 神々について言ったこと以外に? 人を神々より優れた存在と描くことは不自然である。詩人は神々の恋愛を、淫行を、残虐行為を、罪を描いた。そしてこれら神々の悪行・不正を可能なかぎりもっとも正確に真似する者こそ最高の栄誉に値する、とした……。

4.
最高に気高い君主の姿は、ホメロスの描いたアキレウスに見られる。このアキレウスほど野蛮で獰猛な者はいない。賢い人とはどのようなものかはオデュッセウスを見ればわかる。彼以上の欺瞞・策略・嘘の達人はいない。最後につけ加えよう。詩人は王たちの権力と富が大好きで、いつも彼らの前でしっぽをふっている。

さて、ここから第二部だ。いかに詩が人を腐敗させるかについて書く。まず、詩人は若者にどのような疫病をもたらすのだろう? 詩人自身の、また他人の、抑えられない恋愛感情や性欲を描くことによって? そう、間違いなく詩人には悪影響がある。道徳を駄目にする。性欲や残虐行為や無意味な栄光や欺瞞について、上品で洗練された詩が書かれているから困る。言葉・内容ともに美しく、聞く者の耳に優しくふれ、心を完全に奪ってしまうのだ。まさに文章の魅力それだけで。これはどれほど有害なことか。生まれつき歪み腐っているわたしたちの欲望の対象、見たい、体がふらふらついていってしまう、考える前に衝動的に求めてしまう、そんなものごとが目の前に描かれるのだ。言葉で描かれなくてもこの内容自体に魅力があり、また内容がなくても言葉だけで魅惑的であるのなら、甘い毒入りの内容に甘い言葉のスパイスがふりかけられた時に何がおこるか、察するまでもないだろう。詩のリズムはそんな内容のためにあみ出されたのではないか? つまり、人がますます悪いことをしたくなるように? 確か、詩人たちは高ぶる歌を歌ったから、信心深く敬虔で神聖とされていた。神の幻を見ていると思われていた。少なくとも、オウィディウスはそう言っていた。

わたしたちのなかにいるのは神?
神に突き動かされてわたしたちは燃えている?
抵抗できないこの衝動、
これが聖なる、特別な、精神の源?

いやいや、プブリウス・ナソ、女の子のさらいかたを教えたり、女の子を破滅させて喜ぶ勝利の歌を歌う君には、むしろこう尋ねたいところだ。

君のなかにいるのは冥界の王?
闇の王に突き動かされて君は燃えている?
抵抗できないその衝動、
それこそ残虐な死の源?

ティブルスの歌もカトゥルスの11音節詩もプロペルティウスのエレギアもマルティアリスのエピグラムもホラティウスのオードも似たようなものである。あのような詩を書いたから、つまり、人の愚かな、価値のない、淫らな、罪深いふるまいを神々のものとして描いたから、ホラティウスやホメロスは天才の父と呼ばれたのか? むしろ、ごみのような嘘の父と呼んだほうがはるかに適切ではないか! 詩も詩人も、わたしたちにとってなんの役にも立ちはしない。そこにあるのは残虐行為と嘘と野心と淫らな欲望と恥だけである。

2.
だから、詩はごみ・くず、と言ったエラトステネスは正しかった。『パイドロス』でプラトン曰く、詩人が語るのはつくり話である。アリストテレスによれば、「詩人は嘘ばかり言う」。もしこのように詩がひとえに虚偽・嘘であるなら、そんなものをつくる才能に何の価値がある? 実際、プラトン・アリストテレスのような重要な著作家は、真実を語る詩人はもはや詩人の名に値しないと考えた。だから、創作ではなく実際にローマ人が戦った内乱を英雄詩にしたルカヌスは、いずれ詩人として扱われなくなるだろう。実際の農耕を指南する時のウェルギリウスもだ。詩の特権はつくり話の国でのみ有効である。その根拠は真理ではなく嘘なのだ。

3.
非常識で下卑た喜劇はどうか? 詩・つくり話を舞台にあげて客に見せる、つまり詩人が自分が嫌いな者たちを無礼な言葉でこきおろす--そんな厚顔無礼に対し、まず裕福な有力者たちが取締りを試みた。次に法がつくられた。他人を口汚く侮辱する詩を書くこと、他人の誹謗中傷を舞台にあげることが、禁じられたのである。これで諷刺喜劇が沈黙し、姿を変えることとなった。よりくだらないことが劇の主題となっていった。すなわち、恋愛、娼婦のかけひき、ポン引きの罵り、兵士たちの無礼・残虐などが、である。こういった内容が扱われるようになったので、劇場に人が押し寄せるようになった。こどもから大人までの女たち、職人、教養のない連中が、である。驚愕を禁じえないほど道徳は低下した。劇を見て、そのせりふを聞いて、恥ずかしい行為に耽る者が続出したのである。

4.
あえて言いたくはないが、恋する男たち--言いかえれば、恋愛感情や欲望を制御できない奴隷たち、とっとと地獄に堕ちてほしい奴ら--は、そんな劇をおおいに活用している。恋のかけひきに使えるからだ。詩は、欲望を満たす、恥ずかしい行為の数々を実現してくれる、そんなポン引きになり下がっているのである。みんな知っているであろう、楽しくいやらしいことがしたいなら、男は歌ったり、楽器を弾いたり、きれいな嘘を語ったりできたほうがいいのだ。これはなかなかすばらしいテクニックだから、親から子に伝えさせよう。教育して、訓練して、恥ずかしい人生を! いやはや、詩や劇ほど若者に悪影響を及ぼすものがあるだろうか?

5.
だから、プラトンは詩人や作家を彼の理想の国から追放した。彼らの作品は国家にとって有害なのだ。

6.
詩が善良であるなら、詩人も善人になるはずだ。が、いにしえの作家たちの生涯を見るといい。彼らはみなベロベロの酒浸りか恥知らずなクズ野郎か社会のルールをまるで知らない馬鹿、場合によってはただの狂人である。だから詩人の作品は酒くさい。もしくは浮気・姦淫ばかり語る。もし、何かの弾みで詩人が清らかなことを書いたとしたら、それは彼らの生きざまに完全に矛盾する。まったく、オウィディウスの言葉は最高の冗談だ。

書く話はいやらしくても生きかたはまじめ。

7.
最後にもうひとつ。デモクリトスらはこう言った、詩神にとり憑かれていないような詩人は詩人ではない。万歳! 正常な精神と共存しえない詩よ、永遠なれ! アウグストゥスがしたように、わたしたちも詩人を嫌おう。詩人に近寄らないようにしよう。彼は、恋の技を発明したオウィディウスを国から追い出した。追放して地の果てに閉じこめた。野蛮な者たちのなかでせいぜい苦境を詩に書いて嘆くがいい、と。そもそも詩を書いて捕まって追放されたのだから、それが当然の報いである。

これら、および類似する批判を、悪意ある者たちは詩という芸術に対してしつこく投げかける。教養のない者は、それをまったく正しいことと考える。若干の教養をもつ者は、まあそうかな、程度に考える。しかし真の知識をもつ賢い人から見れば、これらはまったく愚かな嘘である。上の議論はみな詩を理解せず不当に扱うものであり、知恵ある者の言うことではない。知恵があれば、詩それ自体を攻撃したりはしない。悪い詩人は避けるべき、と言うのみである。……しかし、詩に対する批判ひとつひとつに答えていこう。その議論はニ部門に分けられる。まず、詩が四点で下劣で卑しいということ、第二に、詩が七つの理由で害悪をもたらすということ。この最初の誹謗中傷は、詩の目的を考えれば容易に退けられるであろう。詩の目的は上に見たような身体的な快楽のみではなく、そこに道徳教育も含まれるからである。調和する詩の言葉は、共同体のなか自由に生きる者の精神を然るべき美徳に目覚めさせるのである。

(回答2)
第二の議論は、詩というよりも、キリスト教以外の宗教に対する非難である。つまり、すべての領土や国家の人々、すべての君主や皇帝、すべての知識人や賢者、実際、唯一の真の神を信じることを知らないすべての者が、非難されているのである。詩人たちだけではなく。詩人は、異教の神々の使いとして、全世界が栄誉に値するとした者たちを最高の言葉で称えているのみである。そんな盲目な詩人たちからわたしたちは学ぶ。彼らにならって、彼らの博識を汲んで、彼らの詩の規則や言葉の調和、そのリズムや形式をとり入れて、選び抜かれた彼らの言葉を用いて、よりふさわしいかたちで高く永遠なる神を称えることを。わたしたちは、非キリスト教徒より敬虔であるべきなのだから。

(回答3)
詩人たちは、犯罪など人の恥ずべき行為を歌う、とも批判されている。だが、それだけでもないだろう。恥ずべき行為のみでなく、彼らは神を恐れぬ恥ずかしい者たちが受ける罰をも歌っているからだ。プロメテウスの話を見てもいい。シシュポス、イクシオン、ベロスの子たちの話でもいい。同時に、詩人は正しい人々やその美徳、そして彼らが得た報酬をも称えてきた。さらに言うが、すべての詩人が悪人を称えているわけじゃない。ウェルギリウスは悪を歌わない。彼が歌ったのは人と戦争についてであり、敬虔なアエネアスの姿をわたしたちに描いてみせた。そんなウェルギリウスの詩ほど、清らかで優雅で気高いものはない。彼が身を落として軽薄な内容、例えばアエネアスとディドの恋などを扱ったとしても、その技術と慎みと威厳ゆえに、このうえなくすばらしいできばえである。アリストパネスの劇のなか、エウリピデスはアイスキュロスについて同じことを言っている。

(回答4)
アキレウスは野蛮人、オデュッセウスは嘘つきであるが、その分だけホメロスはさらにおもしろいと言うべきだ。彼らの長所だけでなく、ちゃんと短所も描いているのだから。逆に、多くの弁論家やたいていの歴史家は、君主たちの偉業を語りつつその罪には目をつむってきた。だから詩人たちが人の悪を作品で明確に非難してきたことについて、わたしたちはどう考えるべきだろう? 悪に仕える者たちは、ホラティウス、ユウェナリス、ペルシウスら諷刺詩人たちにさんざん咎められてきたではないか? カトゥルスはその11音節の詩で、ユリウス・カエサルに永遠に消えぬ汚名の焼き印を入れたではないか? 恥ずかしげもなく彼がマムラと戯れるところを描いたのだから。わたしたちの祖先や君主や王や将軍や皇帝や教皇たちは、みなアレティノのような詩人を恐れてきたではないか? そう、だから詩人たちが君主や皇帝の悪を許さないことは明らかである。許さないどころか、見逃さず、堂々ときつい言葉を浴びせるのだ。もちろん、弁論家や著作家と同様、詩人も誰かを称える時には、天に届くほどその人をもちあげるのではあるが。

次に、詩を攻撃する者は、詩が疫病のようなもので危険だと言う。しかし、もしそうなら、なぜアリストテレスは考えたのか、若きアレクサンドロス大王に美徳を教えるにはホメロスを読ませるのがいちばんよい、と。彼はホメロスから、正しく幸せな、そして君主にふさわしい生きかたに関するすべてのことを余すところなく学んだのだ。なぜエジプト王プトレマイオスはあれほどの代償を払ってまで喜劇作家メナンドロスを雇ったのか? なぜマケドニアのアルケラオスはエウリピデスに、マエケナスはホラティウスに、あれほどの賛辞を贈ったのか? なぜキケロはカトゥルスやアルキアスやカエリウスをあれほど好んだのか? ウェルギリウスはアウグストゥスの前で、ソポクレスはアテナイの人々の前で、アイスキュロスはシュラクサイのヒエロンに、作品を読みあげて、そしてあれほど高く称賛されたのはなぜか? さらに言うが、ルクルスでさえカエキリウスの喜劇を見たのだ。だが考えよう、どうしてここまで詩人が敵視されるのか? 恋愛を歌うからだ。淫らな詩人はクビだ。で? 淫らでない詩人もいるだろう? そのとおり。ウェルギリウスは清らか、アイスキュロスも清らか、他にもいる。しかし、ほとんどの詩人の作品は猥褻だろう? いや、それでも、すべての詩がそういうわけではない。淫らな本はみんな捨てればいい。理性に従うなら、そうすることが道徳的に正しいはずだし、キリスト教においても求められる。

だからウェルギリウスを読もう。彼は大丈夫だ。ホラティウスも読もう。だが、悪いところは飛ばさなくては。マルティアリスを読もう。去勢されたアウゲリウス版で。オウィディウスの『祭暦』、『悲しみ』、『黒海からの手紙』もいいだろう。だが、彼自身がこう言って断罪した他の作品は駄目だ。

青く若かった頃にもてあそんだ
くだらない作品は嫌いだ。罪深いと思う、今更ながら!

カトゥルスの詩やテレンティウスの喜劇を若者に対してあえて薦めることはできない。が、学校の先生には、彼らの作品から美しいラテン語の文体・表現の模範を探して生徒たちに示すよう強く促したい。ティブルスからはわかりやすい文章の書きかたを学ばせよう。彼は他の誰より楽しく、繊細で、簡潔で、美しい詩を書く。それに何より、彼の詩は自然だ。異質な魅力があるからプロペルティウスも使えるだろう。彼はティブルスより骨太で、正確で、そしてていねいな作品を書いている。これらの詩人は小さい頃から、つまり性欲が芽生える前から、読ませるべきだ。カトゥルス自身も言っていたように、敬虔な詩人は純潔でなければならない。他に評価すべき詩人たちはあまりいない。ルカヌスやセネカは一見輝かしく見えるが、スペイン人の彼らがもたらしたのは大袈裟に誇張された文体にすぎない。それがかの国の国民性である。その影響で詩は、飾りのない、いわば正しい、自然の模倣から離れてしまった。(アテネから離れて生きた者たちの詩と同じ道をたどったということだ。) 彼らの作品には、ローマの言葉本来の美しさがないのである。

確認しよう。ここにあげた者の作品には確かに淫らなところがあるが、もし少しでもいやらしいところがある本をすべて捨てなければならないなら、歴史家の年代記にはみなさよなら、である。自然に関する哲学者の議論も、医学の論文も、教会法の一部も、認められないことになる。聖書中の掟も家系の話も、ソロモンの歌も駄目だ。

(回答2)
つくり話をするのが詩人であるなら、ルカヌスは詩人と言えない? ホメロスのように二つめの点から答えよう。詩人の仕事は、存在しないものをつくり出すことだけではない。存在するものを模倣することもそこに含まれる。加えて言えば、詩人が話をつくるのは悪いことじゃない。数学者が存在しない多くの円を空に見ても恥ずかしくないのと同じだ。それに実際、数学者はいつも質料をもたないかたちを扱う。何らかの大きさをもつものにはすべて質料があるはずなのに。それから、どんなものであれ詩人のつくり話は、何がためになるか、あるいはならないかを教えるためのものである。例えば、オルペウスの歌を聴けば木も感動する。言いかえれば、詩は田舎の無知な人をも楽しませることができる。アクタイオンは鹿に変身させられて犬に食い殺される。すなわち、金銭感覚のない金持ちがお気に入りをたくさん抱えれば、その富はあっという間になくなる。こんな例をひとつひとつあげていっても、しかたがないだろう。

(回答3)
劇や諷刺や他の詩に見られる上記のような大胆さは、人を悪に誘うためのものではない。むしろ、悪を思いとどまらせるためのものである。だからこそ淫らなものも非難に値するものも、みなあくまで虚構ととらえられてきた。また、ある詩人の淫らさのために詩人すべてが責められるのはおかしい。もうひとつ言えば、諷刺や暴言は弁論家の文章のなかにもあるはずだ。

(回答4)
だから批判に答えて主張しよう。詩は悪のしもべではない。悪い詩人は詩を濫用するかもしれないが、それは、(実際よくあるように)道からはずれた哲学者が弁証法を、不誠実な修辞家が雄弁術を、濫用してきたのと同じことである。キケロが言うように、そのような者たちに自由に語る機会を与えても弁論家になどなれやしない。それは、たんに狂人に武器を与えるようなものである。さらに別のかたちで言うが、悪い目的のために多くの曲が用いられてきたからといって、音楽も廃止しなくてはならないだろうか?

(回答5)
プラトン自身も同じ箇所で説明している。彼はたんに詩人であれば誰でも追放、と言っているのではない。悪い詩人は追放、と言っているのである。

(回答6)
いかがわしい酔っ払い詩人は確かにいるが、それが何だというのか? 淫らであること、酒に溺れること、これらは詩人の、というより、全人類の悪癖である。それで軽薄なタイプの詩人はこれらを詩に描く。すると、趣味の腐った者たちが喜ぶのだ。カトゥルスが11音節の詩で言うように、

詩は面白くない、美しくない、
官能的でいやらしくないならば。

しかし、だからといってすべての詩人を淫乱、ワイン浸りとみなすのは、まったく無礼な話だ。

(回答7)
狂乱・神にとり憑かれた状態には四種類あると言っていいだろう。そのうちの二つは批判されることがあるが、残りの二つはよいこととされる。プラトン曰く、四つの名は、それぞれ、妄想狂乱、恋愛狂乱、幻視狂乱、詩的狂乱である。最初のものは酔っ払いのそれだ。酔っておかしくなった時に彼らはふだん見えないものを見る。恋する者の荒れ狂う感情が二つめのものである。プラトン曰く、「愛の神、などよく言うが、実際それはつらいもの、震えるほど恐ろしいものである」。三つめの狂乱は文字どおり幻視者の、四つめは詩人の、それである。デモクリトス曰く、詩人はとり憑かれて我を忘れているというより、むしろ心を集中しすぎてみずからの描く感情に入りこみすぎている。それで狂乱興奮の状態に陥っているように見えるだけ、神の霊感を受けて頭と心があちこちに行ってしまっているように見えるだけである。これは私たちにもよくあることだ。何かを真剣に考えている時など、無我夢中になって我を忘れているものだから。だからアリストテレスも、哲学者はとり憑かれていると言った。デモクリトス曰く、この「狂乱」の状態に陥らなければ、偉大な詩人にはなれない。

オウィディウスについていえば、彼がスキュティアに追放されたのは詩人だったからではない。彼が淫らだったから、あるいはむしろ、彼自身がよく不満げに語っていたように、『恋の技法』ゆえにではなく、何かカエサルがしていた卑しい行為を見てしまったからである。

なぜわたしはあれを見てしまった? なぜ目に罪を犯させた?
なぜ愚かにもあの過ちを知ってしまったのか?

詩という芸術、詩人の作品については、もうこれくらいで十分であろう。以下は、註そのものである。それを見れば、わたしの詩の意味がわかるであろう。

*****
Richard Willes
De Re Poetica (1573)
Tr. A. D. S. Fowler

原文はラテン語。その英語訳から日本語へ。

*****
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Gascoigne, "The Lullaby of a Lover"

ジョージ・ギャスコイン
「恋する男の子守り歌」

子守り歌を歌おう、女の人が
赤ん坊を寝かしつける時のように。
ぼくにも歌える子守り歌、
女の人のように上手に。
女の人がこどもを寝かす子守り歌。
たぶん、勘違いでなければ、
ぼくにもたくさんやんちゃな子がいて、
子守り歌で寝かしつけなければ。

まず、お休み、ぼくの若い頃。
もうベッドの時間。
歳で腰が曲がって白髪になって、
頭のなかが静かになってきた。
だから、お休み、ぼくの若さ。
お楽しみは、もう子守り歌だけ。
勇気はしぼんで、とぼとぼついてくるだけ。
お休み、もうそれでいいんだよ。

次に、お休み、ぼくの目。もう見つめる力がない。
昔は鋭かったのに。
どの鏡を見ても
ぼくの顔はしわだらけ。
だから、お休み、目を閉じて。
お休み、もう見なくていい。
かわいい顔、輝く人に、
もう惹かれなくていい。無駄だから。

そして、お休み、ぼくのエッチな気持ち。
理性をぼくの君主にしよう。
分別ついて、今さらながらわかってきた、
妄想の代償は大きかった、って。
お休み、もうゆっくりして。
お休み、もうどきどきしなくていい。
こう信じよう、気持ちが盛りあがらなければ
体も盛りあがらない。

そしてお休み、ぼくのエロ息子、
ぼくの小鳥くん、もうお休み。
歳でもう熱くなれない、まじめぶる必要もない。
もう子づくり道具はお片づけ、それしかない。
子守り歌だけが今の楽しみ。
子守り歌で欲望はふにゃふにゃに。
ペニーがある奴がお支払い。
もうぼくには何も払えない。

こうして歌う、ぼくの若さと目と
欲望とあそこに子守り歌。昔の自分にお休みを。
ずるずる引きずってはいられない。
こんにちは、痛みくん。楽しみさん、さようなら。
子守り歌でさようなら。
子守り歌で楽しい夢忘れ。
次に起きたら、ぼんやりした目で
この子守り歌をまた歌おう。

*****
George Gascoigne
"The Lullaby of a Lover"

Sing lullaby, as women do,
Wherewith they bring their babes to rest,
And lullaby can I sing too
As womanly as can the best.
With lullaby they still the child,
And if I be not much beguiled,
Full many wanton babes have I
Which must be stilled with lullaby.

First lullaby my youthful years;
It is now time to go to bed,
For crooked age and hoary hairs
Have won the haven within my head.
With lullaby, then, youth be still;
With lullaby content thy will;
Since courage quails and comes behind,
Go sleep, and so beguile thy mind.

Next, lullaby my gazing eyes,
Which wonted were to glance apace.
For every glass may now suffice
To show the furrows in my face;
With lullaby then wink awhile,
With lullaby your looks beguile;
Let no fair face nor beauty bright
Entice you eft with vain delight.

And lullaby, my wanton will;
Let reason's rule now reign thy thought,
Since all too late I find by skill
How dear I have thy fancies bought;
With lullaby now take thine ease,
With lullaby thy doubts appease.
For trust to this: if thou be still,
My body shall obey thy will.

Eke lullaby, my loving boy,
My little Robin, take thy rest;
Since age is cold and nothing coy,
Keep close thy coin, for so is best;
With lullaby be thou content,
With lullaby thy lusts relent,
Let others pay which hath mo pence;
Thou art too poor for such expense.

Thus lullaby, my youth, mine eyes,
My will, my ware, and all that was.
I can no mo delays devise,
But welcome pain, let pleasure pass;
With lullaby now take your leave,
With lullaby your dreams deceive;
And when you rise with waking eye,
Remember then this lullaby.

https://www.poetryfoundation.org/poems/56369/the-lullaby-of-a-lover

*****
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Turbervile, "The Louer Exhorteth His Ladie to Take Time"

ジョージ・ターバーヴィル
「恋する男が相手の貴婦人に歌う、
時をつかまえて、まだ時間があるうちに」

あなたはまぶしいほどきれいです。
あなたほど美しい人はいません。
アペレスのような画家の絵でも、
あなたにはまるで敵いません。
でも、あなたもすぐに年をとって眠くなり、うつむくようになります。
老いがあっという間に攻めてくるのです。
鋤で畑が削られるように肌のつやが削られて、
美しい輝きがくすんでしまうでしょう。
ですから、まだ若いうちに、
よく考えてください、すぐに年をとって
腰が曲がってしまうことを。無駄にした若さを
無駄に思い出さなくてすむように。
できるあいだに、まだ緑の
若さが新鮮なうちに、
楽しいことをしてください。年月は発作のように、
予想外の洪水のように、やってきます。
流れ去った水は
戻ってきません。
過ぎ去った時間を呼び戻そうとしても
無駄でしょう。
時をつかむのです、時が味方でいてくれるうちに。
時の足は速く、すぐに行ってしまいます。
過ぎ去った全盛期と
その後の老いは、比べものになりません。
灰色の丘が見えますが、
かつては若い芽と花でいっぱいでした。
ぼくは棘(いばら)の冠をかぶりました。
それで恐れることを知りました。
今、あなたはは男たちのことを
相手にしていませんが、このままだと、
腰の曲がった口うるさいお婆ちゃんになって、
くさくて汚い小屋でひとりで暮らすことになりますよ。
今、いつも夜になると男たちがあなたの家の
裏門でけんかしていますし、
朝、扉を開ければ、外は薔薇で
飾られていますが、そんなことはなくなります。
主よ、どうしてこんなに早く人の体は、
ごみの詰まった汚いしわだらけになるのですか?
このあいだまでまぶしいほど美しかった人、
きれいだった人の姿が、なんと早く破壊されることでしょう?
小さい頃からきれいだった君だって、
罵りたい気分になるでしょう。
手のひらを反(かえ)すように、頭が
灰をかぶったようになるのですから。
蛇は脱皮して
醜い老いも脱ぎすてます。
鹿も古い角を柵にぶら下げて
若返ります。
でも、あなたの財産は完全に失われて
とり戻せません。だから、花を受けとってください。
茎から摘まなければ、その花は
一時間後には枯れて落ちてしまいます。

*****
George Turbervile (b. 1543/4, d. in or after 1597)
"The Louer Exhorteth His Ladie to Take Time,
While Time Is"

Though braue your Beautie be
and feature passing faire,
Such as Apelles to depaint
might vtterly dispaire:
Yet drowsie drouping Age
incroching on apace,
With pensiue Plough will raze your hue
and Beauties beames deface.
Wherefore in tender yeares
how crooked Age doth haste
Reuoke to minde, so shall you not
your minde consume in waste.
Whilst that you may, and youth
in you is fresh and gréene,
Delight your selfe: for yeares to fit
as fickle flouds are séene.
For water slipped by
may not be callde againe:
And to reuoke forepassed howres
were labour lost in vaine.
Take time whilst time applies;
with nimble foote it goes:
Nor to compare with passed Prime
thy after age suppoes.
The holtes that now are hoare,
both bud and bloume I sawe:
I ware a Garlande of the Bryer
that puts me now in awe.
The time will be when thou
that doste thy Friends defie,
A colde and crooked Beldam shalt
in lothsome Cabbin lie:
Nor with such nightlie brawles
thy posterne Gate shall sounde,
Nor Roses strawde afront thy dore
in dawning shall be founde.
How soone are Corpses (Lorde)
with filthie furrowes fild?
How quickly Beautie, braue of late,
and séemely shape is spild?
Euen thou that from thy youth
to haue bene so, wilt sweare:
With turne of hand in all thy head
shalt haue graye powdred heare.
The Snakes with shifted skinnes
their lothsome age dooway:
The Buck doth hang his head on pale
to liue a longer day.
Your good without recure
doth passe, receiue the flowre:
Which if you pluck not from the stalke
will fall within this howre.

http://tei.it.ox.ac.uk/tcp/Texts-HTML/free/A14/A14019.html
(一部修正)

*****
Secundusのエレゲイア1.5の翻案。
出版は1567年。

*****
カルペ・ディエム carpe diem

*****
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Fletcher, G, Licia 29

ジャイルズ・フレッチャー
『リシア』29

うわ、死ねばよかった、さっきの夢のなか。
(大好きなあの人が出てきたのに短すぎ!)
神さま、お願いです。眠らせてください。
天国です、あんな夢が見れるなら。
闇のなか輝くお姫さま、
乳色の白い丘が二つあって、そこに甘いお酒がつまっていて、
太ももは象牙みたいで、もう奇跡かと思いました。
ぼくの目鼻口耳手足胴の求めるものが、みんなそこにありました。
その時にした楽しい遊びは内緒です。秘密だからこそ最高なので。
妄想が実現したみたいでした。
ぼくたちは一戦を交え、はぁはぁ言いながら休みました。
ぼくはずっと彼女に、彼女はずっとぼくに、キスしてました。
神さま、眠らせてください。幻でいいからぼくの体を満足させてください。
それか、目覚めさせてください。そして本当に満足させてください。

*****
Giles Fletcher
Licia 29

Why dy'd I not when as I last did sleepe?
(O sleepe too short that shadowed foorth my deare)
Heavens heare my prayers, nor thus me waking keepe:
For this were heaven, if thus I sleeping weare.
For in that darke there shone a Princely light:
Two milke-white hilles, both full of Nectar sweete:
Her Ebon thighes, the wonder of my sight,
Where all my senses with their objectes meete:
I passe those sportes, in secret that are best,
Wherein my thoughtes did seeme alive to be;
We both did strive, and wearie both did rest:
I kist her still, and still she kissed me.
Heavens let me sleepe, and shewes my senses feede:
Or let me wake, and happie be indeede.

http://tei.it.ox.ac.uk/tcp/Texts-HTML/free/A00/A00946.html

*****
次のようなロンサールの夢ネタの模倣。
(Il faisoit chaud, et le somne coulant)
(J'attachay des bouquets de cent mille couleurs)
(Ces longues nuicts d'hyver)

「ルネサンス」とはこういうこと。
難しくとらえる必要などない。

*****
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Fletcher, G, Licia 34

ジャイルズ・フレッチャー
『リシア』34

かわいいリシアにお願いする、キスして、
薔薇と百合が美を競うその唇で、と。
するとすぐ、ぼくの目が羨んで、
最高の幸せをぼくの唇から奪おうとする。
リシアを見つめて、目を満足させようとすると、
今度は唇が羨んで、目を押しのける。
こうしてぼくの唇と目が権利を主張しあって、
ある意味共謀して、ぼくから幸せを奪う。
美しい人には不思議な力があって、
体のすべての部分に不思議な力があって、
ぼくがばらばらになってしまう。
ぼくとぼくが喧嘩してしまう。
君のすべてがぼくのものなら、こんな嫉妬はおこらない。だから
リシア、君のすべてがほしい。すべてくれないなら、まったくいらない。

*****
Giles Fletcher
Licia 34

When as I wish, fair LICIA, for a kiss
From those sweet lips where rose and lilies strive
Straight do mine Eyes repine at such a bliss,
And seek my lips thereof for to deprive.
When as I seek to glut mine Eyes by sight;
My Lips repine, and call mine Eyes away.
Thus both contend to have each other's right;
And both conspire to work my full decay.
O force admired of beauty in her pride;
In whose each part such strange effects there be,
That all my forces in themselves divide,
And make my senses plainly disagree.
If all were mine, this envy would be gone:
Then grant me all, fair Sweet; or grant me none!

http://www.shakespeares-sonnets.com/Archive/Licia.htm

*****
元ネタはヨハネス・セクンドゥスの『バジア』7
(Centum basia centies)。

Johannes Secundus (1511-36)
Basia = kisses

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Lodge, Phillis 34

トマス・ロッジ
『ピュリス』 34

あふれる金色の雨のなか、
快楽に誘う雨の快楽に溺れながら降りそそぎたい、
美しいかわいいピュリスの太もものあいだに、
眠りが眠りであの人の感覚を鈍らせている時に。
乳白の牛に変身したい、
あの人が気持ちいい野原にくる時間に、
そして気持ちいい滑らかな肌で愛しい人をはっとさせる、
気持ちいい花を茎からとっている時に。
痛みのほうが飽きるまで痛みつくしてやろう、
ナルキッソスになって、泉のあの子のなか、
心がよじれるつらい気持ちを溺死させよう。
そしてもっと、いろいろ変身したままでいたい、
気持ちいい妄想の太もものあいだに寝転んで、
新しい欲望を感じたい。そうしていないと欲望は死ぬ。

*****
Thomas Lodge (c.1558-1625)
Phillis 34

I would in rich and golden-coloured rain,
With tempting showers in pleasant sort descend
Into fair Phillis' lap, my lovely friend,
When sleep her sense with slumber doth restrain.
I would be changèd to a milk-white bull,
When midst the gladsome field she should appear,
By pleasant fineness to surprise my dear,
Whilst from their stalks, she pleasant flowers did pull.
I were content to weary out my pain,
To be Narcissus so she were a spring,
To drown in her those woes my heart do wring,
And more; I wish transformèd to remain,
That whilst I thus in pleasure's lap did lie,
I might refresh desire, which else would die.

http://www.shakespeares-sonnets.com/Archive/Lodge.htm

*****
ロンサールのソネット("Je vouldroy bien richement jaunissant")
の英語訳。無駄な英語のくり返しを無駄に日本語に訳した。
ロンサールよりはエロティックでない。
結末は微妙に哲学的(?)

abbacddceffegg
ソネットの脚韻は必ず見たほうがいい。
イタリア式・イギリス式などという
教科書的な説明がいかにおざなりかわかるはず。

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Davies, "Of the Gull"

ジョン・デイヴィス
「ひよっこ野郎」

以下、この本にはひよっこ野郎を笑う詩がたくさんあるが、
この言葉の意味がわからない人が多いだろうから、
まず最初にちゃんと書いておこう、
どんな奴がひよっこ野郎かを。

ひよっこ野郎はヴェルヴェットのドレスがちょっと苦手、
気が小さいからきれいな女の子には話しかけられない。
でも町中をうろちょろしていて、
誰にでも結婚を申しこむ。

ひよっこ野郎は偉そうに
銀の柄(つか)の剣を腰にぶらさげる。
でも、嘘で中傷されても耳のところを殴られても、
その剣は鞘のなかで眠ったまま。

ひよっこ野郎はおしゃれして
お偉いさんのそばにいて、髪をかきあげたりする。
まともな話ができないから、「なんでやねん」とかいってばかり。
内容のあることを話すのは一年に一回以下。
ということで、ひよっこ野郎というのは
かっこいいつもりの馬鹿のこと。

*****
Sir John Davies
"Of a Gull"

Oft in my laughing rimes, I name a gull,
But this new terme will many questions breed.
Therefore at first I will expresse at full,
Who is a true and perfect gull indeede.

A gull is he, who feares a veluet gowne,
and when a wench is braue, dares not speake to her:
A gull is he which trauerseth the towne,
and is for marriage knowne a common wooer.

A gull is he, which while he prowdlie weares,
a siluer hilted Rapier by his side:
Indures the lyes, and knockes about the eares,
Whilst in his sheath, his sleeping sword doth bide.

A gull is he which weares good hansome cloathes,
And standes in presence stroaking vp his hayre:
and filles vp his vnperfect speech with othes.
but speakes not one wise word throughout the yeere
But to define a gull in termes precise,
A gull is he which semes, and is not wise.

https://quod.lib.umich.edu/e/eebo/A19921.0001.001

*****
マーロウ訳オウィディウス『恋の歌』と合本で出版された
エピグラム集より。発禁処分を受けたのはマーロウよりも
むしろデイヴィスのせい、とも。

この意地悪く突き放す感じがイギリス的。

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Kendall (tr.) Martial 1.33

ティモシー・ケンダル(訳)
マルティアリス、エピグラム 1.33

ゲリアについて

父が死んでもゲリアは泣かない、
誰も見ていないところでは。
でも、誰かが来ると
涙があふれ出す。
本当は悲しいことなんてない。
彼女はただ褒められたいだけ。
心から悲しい人というのは、
いつだって涙を流しているはず。

*****
Timothy Kendall (tr.)
Martial, Epigramme 1.33

Of Gellia.

For syre deceast thou dost not weepe,
if Gellia sole thou be:
But looke when commeth companie,
the teares then gush from thee.
She naught lamenteth Gellia;
that seekes for laude and praise:
But she who sorroweth inwardly,
tis she that wepes alwaies.

https://quod.lib.umich.edu/e/eebo/A04794.0001.001

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