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Rossetti, DG, "The Loves' Walk", The House of Life (1881) 12

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ
「恋人たちの散歩道」
『命の宮』(1881) 12

抱きあうようにからみあうきれいな花たち。
六月、風のない日。手はかたく手のなかに……
静かな森の小道。向かいあう顔と顔……
行李柳(こりやなぎ)の香る川の胸の奥に
空がうつる。鏡のように瞳が瞳にうつる……
時とともに色とかたちを変える、不思議な夏の国の
光と雲。ふたりの魂は虹のように広がってゆく、
ほほえみとせつないため息のあふれる空に……

ふたりは歩く、愛しげに
美しくからだを寄せあいながら……
ふたりの熱い心もいっしょになって、
絶対に裏切らない〈愛〉の神の胸に安らぐ。
白雲の泡立つ空の青も、
波のない水平線の青にそって静かに横になる。

*****
Dante Gabriel Rossetti
"The Loves' Walk"
The House of Life (1881) 12

Sweet twining hedgeflowers wind-stirred in no wise
On this June day; and hand that clings in hand:---
Still glades; and meeting faces scarcely fann'd:---
An osier-odoured stream that draws the skies
Deep to its heart; and mirrored eyes in eyes:---
Fresh hourly wonder o'er the Summer land
Of light and cloud; and two souls softly spann'd
With one o'erarching heaven of smiles and sighs:---

Even such their path, whose bodies lean unto
Each other's visible sweetness amorously,---
Whose passionate hearts lean by Love's high decree
Together on his heart for ever true,
As the cloud-foaming firmamental blue
Rest on the blue line of a foamless sea.

http://www.rossettiarchive.org/docs/2-1881.1stedn.rad.html#A.R.12

*****
自然と人間が対応している、というワーズワース的な話。

*****
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Ronsasrd ("Quand vous serez bien vieille")

ピエール・ド・ロンサール
(「君が本当に年をとって」)
『エレーヌへのソネット』より

君が本当に年をとって、夜、ろうそくの明かりの下、
暖炉の前にすわって糸をつむいだりするとき、
ぼくのつくった歌を口ずさんで、そして思い出して。
「昔、ロンサールはわたしのこときれいっていってくれた」って。

召使いの女の子はそんな話に興味ないだろう。
たぶん疲れて居眠りしている。
ぼくの名を聞いても、
君の名を永遠に称える歌を聞いても、まず起きやしない。

その頃にはぼくはもう骨のない亡霊、
銀梅花(ぎんばいか)の咲く土の下に眠っている。
君も火の前でうずくまるお婆さんになって、

ぼくの愛を受けとらなかったことを悔やんでいるだろう。
だから本当に、明日を待っていてはいけない。
今日からすぐに、薔薇のように咲く命を楽しもう。

****
Pierre de Ronsasrd
("Quand vous serez bien vieille")
From Sonnets pour Hélène, 1578

Quand vous serez bien vieille, au soir, à la chandelle,
Assise auprès du feu, dévidant et filant,
Direz, chantant mes vers, en vous émerveillant:
"Ronsard me célébrait du temps que j'étais belle!"

Lors, vous n'aurez servante oyant telle nouvelle,
Déjà sous le labeur à demi sommeillant,
Qui au bruit de mon nom ne s'aille réveillant,
Bénissant votre nom de louange immortelle.

Je serai sous la terre, et, fantôme sans os,
Par les ombres myrteux je prendrai mon repos;
Vous serez au foyer une vieille accroupie,

Regrettant mon amour et votre fier dédain.
Vivez, si m'en croyez, n'attendez à demain:
Cueillez dès aujourd'hui les roses de la vie.

https://fr.wikipedia.org/wiki/Sonnets_pour_H%C3%A9l%C3%A8ne

*****
次の作品の元ネタ。カルペ・ディエム。

Daniel, ("VVhen men shall finde thy flowre, thy glory passe")
Daniel, ("VVhen Winter snowes vpon thy golden heares")
Yeats, "When You Are Old"

これらダニエル二作のページではこの詩を「エレーヌ2.24」
としているが、ロンサールの詩の数えかたは選集・全集によって
まちまちなよう。

*****
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Rossetti, "The Love-Letter", The House of Life (1870) 10

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ
「ラヴレター」
『命の宮』(1870) 10

あの人が手であたため、髪で覆い、
胸に抱き寄せ、心を注いだこの手紙。
熱いあの人の鼓動が、白地に流れる黒い川、
滑らかで美しい文字から聞こえてくる。
はためく手紙、あの人の息をまだ受けているかのよう。
さあ、聞こえない歌を歌って。そして聞かせて、
あの人のくちびると目と魂がひとつになって
〈愛〉の神といっしょに歌うメロディを。

見たかった、愛しい想いに駆られ、
あの人がこの手紙を胸に強く抱きしめるのを。
秘密の気持ちがあの人の胸に立ちあらわれた瞬間を。
本当に見たかった、あの人がふと目を上げたときに魂が胸から飛び出し、
ぼくの魂に向かうのを。魂と魂が交りあった瞬間に
言葉が生まれ、こんな美しく愛しい手紙になったはずだから。

*****
Dante Gabriel Rossetti
"The Love-Letter"
The House of Life (1870) 10

Warmed by her hand and shadowed by her hair
As close she leaned and poured her heart through thee,
Whereof the articulate throbs accompany
The smooth black stream that makes thy whiteness fair,---
Sweet fluttering sheet, even of her breath aware,---
Oh let thy silent song disclose to me
That soul wherewith her lips and eyes agree
Like married music in Love's answering air.

Fain had I watched her when, at some fond thought,
Her bosom to the writing closelier press'd,
And her breast's secrets peered into her breast;
When, through eyes raised an instant, her soul sought
My soul, and from the sudden confluence caught
The words that made her love the loveliest.

http://www.rossettiarchive.org/docs/1-1870.1stedn.rad.html

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Rossetti, DG, "The Potrait", The House of Life (1870) 9

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ
「肖像画」
『命の宮』(1870) 9

心の通いあう支配をつかさどる者、
〈愛〉よ! ぼくの愛しい人の絵に、
あの愛しい名を称えるためにぼくが描いた絵に、光を。
あの人の完璧な心まで、
あの人の真の美しさまで、目に見えるように。
優しいまなざしが投げかけるあの光だけでなく、
寄せては返すあのほほえみの波だけでなく、
空のような、海のような、あの人の魂まで見る人に伝わるように。

できた! 完成! なめらかに長い首、その上の
口を見れば、声が、キスの音が、聞こえる。
伏せられた目は、過去を、未来を、見ている。
この顔はまさに神殿、そしてそこに宿るあの人の魂。
みな知るがいい。これからずっと、(〈愛〉よ、ありがとう!)
ぼくの許可がなければ誰もこの神殿には近づけない。

*****
Dante Gabriel Rossetti
"The Potrait"
The House of Life (1870) 9

O Lord of all compassionate control,
O Love! let this my lady's picture glow
Under my hand to praise her name, and show
Even of her inner self the perfect whole:
That he who seeks her beauty's furthest goal,
Beyond the light that the sweet glances throw
And refluent wave of the sweet smile, may know
The very sky and sea-line of her soul.

Lo! it is done. Above the long lithe throat
The mouth's mould testifies of voice and kiss,
The shadowed eyes remember and foresee.
Her face is made her shrine. Let all men note
That in all years (O Love, thy gift is this!)
They that would look on her must come to me.

http://www.rossettiarchive.org/docs/1-1870.1stedn.rad.html

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Rossetti, DG, "Passion and Worship", The House of Life (1870) 8

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ
「情熱と崇拝」
『命の宮』(1870) 8

炎の羽の者が白い羽のハープ奏者をつれて、
あの人とぼくがふたりきり、休んでいるところにきた。
そしていった。「この者は場違いですから
追い出してください。ここで歌うのはわたしだけで十分です。
〈愛〉の神に愛された方々にふさわしいのはわたしの歌です」。
わたしはいった。「たしかに君のオーボエはきれいだ。威圧的なまでに
美しい。でもそのうしろで彼のハープも切なく歌っている。
ぼくの愛しい人はその深くて透明な音が好きなんだ」。

彼女もいった。「あなたは〈情熱〉で、この方は〈崇拝〉ね。
〈愛〉のなか、あなたがたふたり、本当は織りあわさっているはず。
あなたの歌はまるで支配者、太陽に照らされた海に響きわたる。
そして、森のなか、色のない湖の水が震えるとき、
色のない月の光しか明かりがないとき、
彼のハープがわたしの気持ちを歌ってくれる」。

*****
Dante Gabriel Rossetti
"Passion and Worship"
The House of Life (1870) 8

One flame-winged brought a white-winged harp-player
Even where my lady and I lay all alone;
Saying: ‘Behold, this minstrel is unknown;
Bid him depart, for I am minstrel here:
Only my strains are to Love's dear ones dear.’
Then said I: ‘Through thine hautboy's rapturous tone
Unto my lady still this harp makes moan,
And still she deems the cadence deep and clear.’

Then said my lady: ‘Thou art Passion of Love,
And this Love's Worship: both he plights to me.
Thy mastering music walks the sunlit sea:
But where wan water trembles in the grove
And the wan moon is all the light thereof,
This harp still makes my name its voluntary.’

http://www.rossettiarchive.org/docs/1-1870.1stedn.rad.html

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Rossetti, DG, "Bridal Birth", The House of Life (1870) 1

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ
「結婚=誕生」
(『命の宮』2)

ずっと闇のなかにあった欲望が太陽のようにあらわれる、
はじめて母が自分の子を見る、
そんなときのように、あの人は呆然と見つめ、そしてほほえむ、
魂のなかに〈愛〉が宿ったことを知ったから。
みずからの分身として、突き刺す渇きと
激しく美しい飢えから生まれた〈愛〉が、今、あの人の心のなか、
暗がりのなか、脈打っている。彼を縛る鎖が、今、
誰かの大きな声により断ち切られる……

今、その〈愛〉の翼におおわれ、ぼくらふたりは見つめあって
求めあう。大きくなった〈愛〉が森の花を集め、
ぼくらにベッドを用意してくれている。
彼の歌を聴きながら、今度はぼくらの魂がからだから抜け出し、
彼の子に生まれ変わる。ぼくらは結ばれて息絶え、天国に向かう、
〈愛〉の頭の光輪に導かれて。

*****
Dante Gabriel Rossetti
"Bridal Birth"
The House of Life (1870) 1

As when desire, long darkling, dawns, and first
The mother looks upon the newborn child,
Even so my Lady stood at gaze and smiled
When her soul knew at length the Love it nursed.
Born with her life, creature of poignant thirst
And exquisite hunger, at her heart Love lay
Quickening in darkness, till a voice that day
Cried on him, and the bonds of birth were burst.

Now, shielded in his wings, our faces yearn
Together, as his fullgrown feet now range
The grove, and his warm hands our couch prepare:
Till to his song our bodiless souls in turn
Be born his children, when Death's nuptial change
Leaves us for light the halo of his hair.

www.rossettiarchive.org/docs/1-1870.1stedn.rad.html

*****
魂と肉体という、恋愛におけるふたつの側面の
複雑で微妙なからみあいを言葉で表現する試み。

たとえば、最後のDeathとは、性的絶頂(肉体の幸せ)
であると同時に、魂による肉体の放棄(魂にとっての幸せ)。
ダブル・ミーニングであると同時に、
一語のなかでオキシモロン。

*****
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Rossetti, ("A Sonnet is a moment's monument")

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ
(「ソネットはある一瞬の記念碑」)

ソネットはある一瞬の記念碑。
魂の世界、永遠の世界からの贈りもので、
死んだ、でも死んでいない一瞬を記憶する。それは
浄化の儀式、あるいは運命の予言で、
聖なる、ありえない、未来を語る。
象牙に刻めば〈日〉に支配され、
黒檀に刻めば〈夜〉に支配される。いつか、やがて
夜明け色、真珠の色の花冠に輝く。

ソネットは硬貨のようなもの。表にあるのは
魂。裏には、それが仕える神の顔。
そして、わかるはず--それが、神聖な〈生〉の力への
捧げものか、気高き〈愛〉への
預金か、それとも、あの世に向かう暗い波止場、靄(もや)に
つつまれたあの岸で、カロンに渡す〈死〉の切符なのか。

*****
Dante Gabriel Rossetti
("A Sonnet is a moment's monument")

A Sonnet is a moment's monument,---
Memorial from the Soul's eternity
To one dead deathless hour. Look that it be,
Whether for lustral rite or dire portent,
Of its own arduous fulness reverent:
Carve it in ivory or in ebony,
As Day or Night may rule; and let Time see
Its flowering crest impearled and orient.

A Sonnet is a coin: its face reveals
The soul,---its converse, to what Power 'tis due:---
Whether for tribute to the august appeals
Of Life, or dower in Love's high retinue,
It serve; or,'mid the dark wharf's cavernous breath,
In Charon's palm it pay the toll to Death.

http://www.rossettiarchive.org/docs/2-1881.1stedn.rad.html#p161

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Herrick, "A Country-Life"

ロバート・へリック
「田舎のくらし--弟トマスに--」

三倍、いやそれ以上に幸せなわたしの魂の片割れ、弟のトマス、
正しい決断をしたね。
都会を離れ、かわりに
田舎の穏やかで質素な暮らしを見る、というのはいいことだ。
しかも、見て学ぶだけでなく、ちゃんとそれを実践し、
清い生きかたを、
美徳の名だけでなくその本質を、
学ぶというのだから立派なことだ。
口先だけの美徳にはまるで意味がない。美徳とはどういうことかを、
どう生きるかでなく、どう正しく生きるかを、学ばないと。
もうわかってるはずだ。今、君は
良心に従って生きているのだから。自然な心に
従って正しく生き、それが
賢い生きかただと証明しているのだから。
そう、人は本質的に賢いはず。だから
ふつうに知恵を使えば、人は自然と節制する。
欲を制御するのは金銭的な限界ではなく、
むしろ満足感だ。
君を見てみな学べばいい、次々とものを欲しがっているかぎり
けっして豊かな暮らしはできない、ということを。
君は本当によく知っているから、誰もがかかるあの病気には
かからない。天から与えられた
以上のものは君は求めず、
広い土地はなくとも最低限の富により、
清く正しいからだが求める程度に、贅沢に溺れぬ程度に、
欲を満たして生きている。
そう、君は食についても控えめで、
見ても楽しい豪華な食事は求めない。
吠えたてる胃を鎮めるのに
十分な食べものだけで上手に生きている。
だが、君の田舎暮らしで何よりも幸せなのは
奥さんとの夜だろう。
運命と星の恵みが重なって、君は
特に美しくなくとも真面目でしっかりしたあの子と結婚した。
あの子が隣にいるから、君は安らかに寝ることができる。
〈愛〉が見張り役だ。
昼間にしっかり働いているから、
絹のように静かに滑らかに君は眠る。
闇にまぎれて悪い男が入ってくることもなく、
だから君のベッドが罪に汚れることもない。
あの子は真面目で浮気をしないから、
いわば毎晩初夜のようなもの。
絹のように彩り豊かな牧場、小石の透けて見える川の音、
そのなかで君は安らかに、幸せな夢を見る。
さらさらと流れる川、小さな森、鳥たち、楽しい木陰、
花々できらきらした野原が
あらわれ、さらに幻のなか、
百万本の百合が薔薇のあいだに咲き誇る。
めえめえ鳴きながら
母の乳を吸う子羊の声が聞こえてきて、
家畜を守るファウヌス神が、
狼から羊たちを守っている。
心あたたまるそんな夢が毎夜のように見られれば、
君もぐっすり気持ちよく眠れるというもの。
しかも、もっといいのは、
鶏(にわとり)が夜の終わりを警告する頃には
まだ起きなくていいこと。日の出とともに起きて
仕事をはじめる。その前にちゃんとお祈りもする。
昨日犯した過ちについて天と仲直りしなくては、
神聖なパンと吹き出す塩の涙で。
その後、ことわざどおりにせっせと働く。
働かざる者食うべからず、だ。
そのように真面目に信じ、働く君だが、
真剣に心配しすぎて頭がおかしくなる、ということもない。
たとえば、勤勉すぎる商人のように。彼は
金(きん)を求めて西インドに飛んでいき、そして
船が奪われないかとびくびくしながら大急ぎで帰ってくる。
裕福な暮らしに慣れ、貧しく慎ましい生きかたを知らないからだ。
君は違う。まるで天国にいるかのように家にいて
安泰で、海は危険だと
わかっている。欲に汚れていない君は、
地図の上にしか海しか見たことがない。
安全なところで海を見て、
その恐さを想像してこうつぶやいたりする。
「最初に大海を切り拓いた人は
樫と真鍮の三重の鎧を心に着ていたのだろう。
でもぼくは家にいて、波風を受けることなく、
地図の上で旅をする。
色とりどりの国々を見て、そのきれいな色から
そこでの暮らしを思い浮かべる。
方位磁針はいらないし、
こんな旅にはお金(かね)もまったくかからない」と。
でも、異国のことは君もちゃんと知っている。
驚きつつも恐れはしない、
よその国の政府や人々、宮廷や王の話を聞いて、
そういうものもあるのか、と。
結局、これらは幸せな君には特に関係せず、
あくまで噂を聞くだけのものだから。実際に見たものではなく。
同じく噂で、というかこれは事実なのだが、宮廷では
〈悪徳〉がほとんどの、いやすべての者を支配していることを聞き、
君は願う、自分は離れて生きているが、
そこが〈美徳〉の治める国であったらいいのに、と。
君は恐れを知らない。君の顔色は変わらない、
〈運〉の女神がやってきても、去っていっても。
考えには筋が通っていて、どこから
どんなことが起こっても君は動じない。
いいことがあろうと悪いことがあろうと気にしない。
賢者は、正方形のようにどこから見てもいつも同じで、
森の王たる樫の木のように、嵐に打たれても揺るがない。
むしろ打たれた分だけさらに強くなる。
そうありつづけるのだ、強くなれ。円の中心のようにどっしり構えろ。
見かけだけではなく、本当にそうであれ。
わたしが描くような者となれ。自分を
鍛えろ。苦境を前にうろたえるな、
今もそうであるように。世に出ず、
家の守護神とともに生きることをあえて選んでいるのだから。
お腹が空いたとき、食べるパンが
おいしいかどうかなど気にしない君だから。
偉そうにおいしいものを求めない君だから。
空腹なときには粗末な食事もごちそうとなる。
誰に命じられずとも、君はベーコン入りの脂ののった肉を求めない。
そのようなものは高価だが不自然だ。
茹でた刺草(いらくさ)やキャベツやビート、
その他の苦い草もぜいたく品だ。
軟弱な気分になったら守護神の定める家訓を思い出し、
神のごちそうだと思ってなんでもありがたく食べなさい。
このような食事における節制は
貧困からくる必然ではなく、君がみずから課す修行のようなもの、
飢えの感覚を麻痺させるために。堕ちた人間ほど飢えを強く感じるから、
もちろん頭では知っていても、君は特にそれを感じないのかもしれない。
慎ましやかな君の家では、
火のそばでこおろぎの合唱団が歌っている。
ねずみも元気にパンくずでパーティをしている。
やがて緑の目をした猫がやってくるが、
そんな急襲もかわしてねずみは
自分の部屋に逃げ帰る。
とにかく、わずかな蓄えで上手に生きる君を見れば、
富ではなく愛によって人が生きていることがわかる。
君だってお金を使うこともある、
ちゃんとした目的があるときには。
ただ倹約すればいいわけでもない。きちんと考え、
ぜいたくと欠乏という両極端を避けている。
蓄えがまったくなくなることはないようにするとともに、
無駄遣いをしないようにしている。
君はまっとうに、ひっそり生きる、自分に対して
嘘はつかず、特に人に知られることもなく。
君の田舎の聖域が
君と君の奥さんの楽園となるよう祈る。
黄金の中庸という規範に従ってふたりで楽しみ、愛しあうといい。
控えめなほうが喜びは大きいものだから。
生きるのだ、天国にいるかのように、他の何倍も幸せな二人よ。
そして、息を引きとるときもふたり一緒だ。
愛と信仰と信頼でひとつになったふたりだから、
死もひとつ、墓もひとつでいい。
君たちが互いを疑うことなく生きていけるよう、
死を恐れたり望んだりすることがないよう、わたしは祈っている。

*****
Robert Herrick
"A Country-Life: To His Brother, Mr. Tho. Herrick"

THRICE, and above, bless'd, my soul's half, art thou
In thy both last and better vow:
Could'st leave the city, for exchange, to see
The country's sweet simplicity
And it to know and practise, with intent
To grow the sooner innocent
By studying to know virtue, and to aim
More at her nature than her name.
The last is but the least; the first doth tell
Ways less to live than to live well
And both are known to thee, who now can'st live
Led by the conscience; to give
Justice to soon-pleased nature; and to show
Wisdom and she together go
And keep one centre: this with that conspires
To teach man to confine desires
And know that riches have their proper stint
In the contented mind, not mint:
And can'st instruct that those who have the itch
Of craving more are never rich.
These things thou know'st to th' height, and dost prevent
That plague; because thou art content
With that heav'n gave thee with a wary hand,
More blessed in thy brass than land,
To keep cheap nature even and upright;
To cool, not cocker appetite.
Thus thou canst tearcely live to satisfy
The belly chiefly, not the eye;
Keeping the harking stomach wisely quiet,
Less with a neat than needful diet.
But that which most makes sweet thy country life
Is the fruition of a wife:
Whom, stars consenting with thy fate, thou hast
Got not so beautiful as chaste:
By whose warm side thou dost securely sleep,
While love the sentinel doth keep,
With those deeds done by day, which ne'er affright
Thy silken slumbers in the night.
Nor has the darkness power to usher in
Fear to those sheets that know no sin;
But still thy wife, by chaste intentions led,
Gives thee each night a maidenhead.
The damask'd meadows and the pebbly streams
Sweeten and make soft your dreams:
The purling springs, groves, birds, and well-weav'd bowers,
With fields enamelled with flowers,
Present their shapes; while fantasy discloses
Millions of lilies mix'd with roses.
Then dream ye hear the lamb by many a bleat
Woo'd to come suck the milky teat:
While Faunus in the vision comes to keep
From rav'ning wolves the fleecy sheep.
With thousand such enchanting dreams, that meet
To make sleep not so sound as sweet:
Nor can these figures so thy rest endear
As not to rise when Chanticlere
Warns the last watch; but with the dawn dost rise
To work, but first to sacrifice;
Making thy peace with heav'n, for some late fault,
With holy-meal and spirting-salt.
Which done, thy painful thumb this sentence tells us,
Jove for our labour all things sells us.
Nor are thy daily and devout affairs
Attended with those desp'rate cares
Th' industrious merchant has; who, for to find
Gold, runneth to the Western Inde,
And back again, tortured with fears, doth fly,
Untaught to suffer poverty.
But thou at home, bless'd with securest ease,
Sitt'st, and believ'st that there be seas
And watery dangers; while thy whiter hap
But sees these things within thy map.
And viewing them with a more safe survey
Mak'st easy fear unto thee say,―
"A heart thrice wall'd with oak and brass that man
Had, first durst plough the ocean
But thou at home, without or tide or gale,
Can'st in thy map securely sail:
Seeing those painted countries, and so guess
By those fine shades their substances:
And, from thy compass taking small advice,
Buy'st travel at the lowest price.
Nor are thine ears so deaf but thou canst hear,
Far more with wonder than with fear,
Fame tell of states, of countries, courts, and kings,
And believe there be such things:
When of these truths thy happier knowledge lies
More in thine ears than in thine eyes.
And when thou hear'st by that too true report
Vice rules the most or all at court,
Thy pious wishes are, though thou not there,
Virtue had, and mov'd her sphere.
But thou liv'st fearless; and thy face ne'er shows
Fortune when she comes or goes,
But with thy equal thoughts prepared dost stand,
To take her by the either hand;
Nor car'st which comes the first, the foul or fair:
A wise man ev'ry way lies square,
And, like a surly oak with storms perplex'd,
Grows still the stronger, strongly vex'd.
Be so, bold spirit; stand centre-like, unmov'd;
And be not only thought, but prov'd
To be what I report thee; and inure
Thyself; if want comes to endure:
And so thou dost, for thy desires are
Confin'd to live with private lar:
Not curious whether appetite be fed
Or with the first or second bread,
Who keep'st no proud mouth for delicious cates:
Hunger makes coarse meats delicates.
Canst, and unurg'd, forsake that larded fare,
Which art, not nature, makes so rare,
To taste boil'd nettles, colworts, beets, and eat
These and sour herbs as dainty meat,
While soft opinion makes thy genius say,
Content makes all ambrosia.
Nor is it that thou keep'st this stricter size
So much for want as exercise:
To numb the sense of dearth, which should sin haste it,
Thou might'st but only see't, not taste it.
Yet can thy humble roof maintain a choir
Of singing crickets by the fire:
And the brisk mouse may feast herself with crumbs
Till that the green-eyed kitten comes,
Then to her cabin blest she can escape
The sudden danger of a rape:
And thus thy little well-kept stock doth prove
Wealth cannot make a life, but love.
Nor art thou so close-handed but canst spend,
Counsel concurring with the end,
As well as spare, still conning o'er this theme,
To shun the first and last extreme.
Ordaining that thy small stock find no breach,
Or to exceed thy tether's reach
But to live round, and close, and wisely true
To thine own self; and known to few.
Thus let thy rural sanctuary be
Elizium to thy wife and thee;
There to disport yourselves with golden measure:
For seldom use commends the pleasure.
Live, and live blest, thrice happy pair; let breath,
But lost to one, be the other's death.
And as there is one love, one faith, one troth,
Be so one death, one grave to both.
Till when, in such assurance live ye may,
Nor fear or wish your dying day.

http://www.luminarium.org/sevenlit/herrick/thomas.htm
一部修正

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12-13行目の "to" については
OED "to (prep., conj., adv.)" 19参照。

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