二十歳のソネット（フェリス、2019夏）

二十歳のソネット（フェリス、2019夏）

- 学生作品
- 若干加筆修正あり

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セミ

7年間土の中で静かに眠り姫
睡眠は最高の美容法
雨水しみた泥パックも毎日
遮光100%で日焼け対策も完璧

地上に出るまであと何日？ 青い空に抱かれたい
地上に出るまであと何日？ 熱い風に胸焦がしたい

ああ……王子の声がする
ハスキーな声に重なって
世界にひとつの花をあなたにあげる
あなたの体は夏より熱い

あと4日、あなたと抱きあって
あと3日、あなたの歌を聴いて

あと2日、なんだか小さくなってゆく
あなたの腕の中、わたしはまた眠りに落ちる

S. I.

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（わたしはさみしくない）

わたしはさみしくない
家族と離れて暮らしてもう一年半
この一年半、一人で暮らしてきて
一度もホームシックになっていない
でもある日の夜
苦手な虫が部屋にいて
何とかしてくれる人がいないことに
わたしははじめて気がついた
とても長い夜だった
自分で決めたことと思いつつ
やっぱり虫は怖かった
一睡もできなかった
家族と離れて暮らしてまだ一年半
わたしはさみしいのかもしれない

M. H.

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ハイヒール

つま先にのしかかる
欲望と常識
選ばれたい、という欲望と
二十歳ならヒールくらい当たり前でしょ、という常識

前はスニーカーしかダメだった
色は白しかダメだった
すぐに汚れる白いスニーカー
紐でぎゅっと縛られていた

自由になったと思っていたのに
またルールに縛られる
狭くて黒いトライアングルに
今日もまた押しこまれる

未来が決まったら脱げる？
きっとずっと押しこまれたまま

N. U.

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（正義とは何か）

正義とは何か
正しいことだけが正義ではない
同調意識の中で生きる私たちには真実がすべてではない
環境・関係・利害、すべてに正義は左右される
多数の中に埋もれるのは簡単
でも譲歩に慣れすぎて何が本当に正しいのかわからない
でも多数と戦うのは難しい
説得するより流されるほうが楽

群れ・群集・集まり・集団
一度遅れると、もうその中には入れない、追いつけない
だから正義・善を知っていながら道を踏みはずす
恐い・怖い
一人では無力
だから私は群れに埋もれる

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（湘南の大学生の夏休み）

赤いリップを塗って
赤いマニキュアをして
赤いハイビスカスを
横目に自転車……あれは三年前

水着で飛びこんで
ソーダ味のアイス
魚のウロコがキラキラ……そんな二年前

木陰で涼む
木の葉と草のにおい
目を閉じても見える緑色……もう一年前

今年はただ駅まで歩く
黒い靴に白いシャツに黒いジャケット
今年はただ家に帰る、そして
白い紙に黒い字を書く

K. T.

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盗用・商用・悪用禁止。

Cambridge and the Lake District, 2019

Cambridge and the Lake District, 2019


--- 以前の学生からイギリスの画像が届きました ---



































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撮影：北代朋子
- 若干加工済とのこと
- 転載等禁止