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Eliot, "New Hampshire"

T・S・エリオット
「ニュー・ハンプシャー」

りんごの園、こどもの声
花と実のあいだの季節
金色の頭、血の赤の頭
木の葉の緑から根までのあいだ
空には黒い、暗い羽の舞
長い年月、春の終わり
悲しい今日、悲しい明日
木漏れ日に包まれる、そんな夢
金色の頭、黒い羽
しがみつき、ぶらさがり
跳ねて、歌って
りんごの木のなかへ

*****
T. S. Eliot
"New Hampshire"

Children's voices in the orchard
Between the blossom- and the fruit-time:
Golden head, crimson head,
Between the green tip and the root.
Black wing, brown wing, hover over;
Twenty years and the spring is over;
To-day grieves, to-morrow grieves,
Cover me over, light-in-leaves;
Golden head, black wing,
Cling, swing,
Spring, sing,
Swing up into the apple-tree.

https://www.poetrynook.com/poem/new-hampshire-1

*****
知っている全世界の詩のなかで
たぶんこれがいちばん好き。
二十歳くらいの時に初めて読んで、
以来頭から離れない。

*****
https://tinyurl.com/yd2ogbn7
https://tinyurl.com/y9q7hotg

同日録音
https://archive.org/details/gt_202001xx_em
- 上のものは、ここの06と14。
- 03, 08も同じ曲、別ヴァージョン。

その他、全録音
https://archive.org/search.php?query=creator%3A%22GT_JP_1971%22&sort=titleSorter

*****
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Eliot, TS, "To My Wife"

T・S・エリオット
「妻に捧げる詩」

うれしくて飛びあがりたくなって
体が生き返る、そんな目覚めの時間は君のおかげ。
眠りの時間の安らぎ、そのなかに流れるリズムも君のおかげ、
同じ音の息

を吸って吐いて、恋人同士おたがいの体のにおいがして、
話さなくても同じことを考えていて、
言いたいことがないのに同じ話ができるのも君のおかげ。

意地悪な冬の風が吹いても凍えない
機嫌の悪い熱帯の太陽にも枯れない
薔薇の園の薔薇の花はぼくたちの、ぼくたちだけの、もの

だから、かわりにこの詩を他の人たちにあげよう。
ぼくだけの気持ちを君に語るこの詩をみんなに。

*****
T. S. Eliot
"A Dedication To My Wife"

To whom I owe the leaping delight
That quickens my senses in our waking time
And the rhythm that governs the repose of our sleeping time,
The breathing in unison

Of lovers whose bodies smell of each other
Who think the same thoughts without need of speech
And babble the same speech without need of meaning.

No peevish winter wind shall chill
No sullen tropic sun shall wither
The roses in the rose-garden which is ours and ours only

But this dedication is for others to read:
These are private words addressed to you in public.

http://www.rjgeib.com/thoughts/eliot/eliot.html
https://www.lyrics.az/t-s-eliot/-/a-dedication-to-my-wife.html
(一部修正)

Stallworthy, ed., A Book of Love Poetry (1973) 所収。

*****
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From Eliot, TS, "Tradition and the Individual Talent"

T・S・エリオット
「伝統と個々の詩人たち」より

個人的な感情が、生活のなかでいろいろあって感じる内容が、詩人と他のふつうの人では違う、ということはない。詩人が実際に抱く気持ちは、たぶん雑で単純でつまらない。詩に描かれる感情はとても複雑かもしれないが、その複雑さは、ふだんから特別な感情を抱く人の感情の複雑さとは違う。よく勘違いされるのだが、詩人の仕事は新しい感情を見つけることではない。間違ったかたちで目新しいものを探そうとすると、だいたいおかしなことになる。詩人の仕事は新しい感情を探すことではなく、ふつうの感情を詩のなかでいろいろ変化させ、そして日々の感情のなかにはない感覚・気持ちを表現することである。その素材は実際によく抱く感情でもいいし、まったく経験したことのない感情でもいい。……詩を書く時、詩人は意識的に多くのことを考えなくてはならない。下手な詩人ほど意識すべきところで意識せず、考えなくていいことを考える。こうしてできあがるのは、だいたい「個人的」で「個性的」な作品だ。詩とは感情を自由に吐き出すことではない。個性の表現ではない。むしろ個性から逃避する手段のひとつである。もちろん、個性的で多くの感情を抱く人にしか、そこから逃げることの意味がわからないだろうが。

*****
(読みやすいように改行位置を操作)

個人的な感情が、
生活のなかでいろいろあって感じる内容が、
詩人と他のふつうの人では違う、
ということはない。
詩人が実際に抱く気持ちは、
たぶん雑で単純でつまらない。
詩に描かれる感情はとても複雑かもしれないが、
その複雑さは、
ふだんから特別な感情を抱く人の感情の複雑さとは違う。
よく勘違いされるのだが、
詩人の仕事は新しい感情を見つけることではない。
間違ったかたちで目新しいものを探そうとすると、
だいたいおかしなことになる。
詩人の仕事は新しい感情を探すことではなく、
ふつうの感情を詩のなかでいろいろ変化させ、
そして日々の感情のなかにはない感覚・
気持ちを表現することである。
その素材は実際によく抱く感情でもいいし、
まったく経験したことのない感情でもいい。
……詩を書く時、
詩人は意識的に多くのことを考えなくてはならない。
下手な詩人ほど意識すべきところで意識せず、
考えなくていいことを考える。
こうしてできあがるのは、
だいたい「個人的」で「個性的」な作品だ。
詩とは感情を自由に吐き出すことではない。
個性の表現ではない。
むしろ個性から逃避する手段のひとつである。
もちろん、個性的で多くの感情を抱く人にしか、
そこから逃げることの意味がわからないだろうが。

*****
T. S. Eliot
From "Tradition and the Individual Talent"

It is not in his personal emotions, the emotions provoked by particular events in his life, that the poet is in any way remarkable or interesting. His particular emotions may be simple, or crude, or flat. The emotion in his poetry will be a very complex thing, but not with the complexity of the emotions of people who have very complex or unusual emotions in life. One error, in fact, of eccentricity in poetry is to seek for new human emotions to express; and in this search for novelty in the wrong place it discovers the perverse. The business of the poet is not to find new emotions, but to use the ordinary ones and, in working them up into poetry, to express feelings which are not in actual emotions at all. And emotions which he has never experienced will serve his turn as well as those familiar to him. . . . There is a great deal, in the writing of poetry, which must be conscious and deliberate. In fact, the bad poet is usually unconscious where he ought to be conscious, and conscious where he ought to be unconscious. Both errors tend to make him “personal.” Poetry is not a turning loose of emotion, but an escape from emotion; it is not the expression of personality, but an escape from personality. But, of course, only those who have personality and emotions know what it means to want to escape from these things.

https://www.poetryfoundation.org/articles/69400

*****
散文。

18世紀以降の「共感・感受性」の文学
(ロマン派やヴィクトリア朝詩を含む)
に対するアンチテーゼ。

*****
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Eliot, TS, "La Figlia Che Piange"

T・S・エリオット(1888-1965)
「泣いている娘」

石の階段のいちばん上に立って--
庭の壺にもたれて--
織りこんで、織りあわせて、日の光を君の髪に--
驚き、痛む心で、腕に抱いた花束をぎゅっと引き寄せて--
それを地面に投げつけて、後ろを向いて、
傷つけられた憤りを少し目に浮かべて、
でも、織りこんで、織りあわせて、日の光を君の髪に。

彼は、そのように去ったらよかった、
あの子は、そのように立ちつくして悲しめばよかった、
彼は、そのように立ち去りたかった、
つまり、魂が、殴られ、引き裂かれた肉体から去るように、
心が、それまで使っていた肉体を見捨てるように。
わたしは見つけなくては--
かぎりなく軽やかで上手なやり方を、
わたしたち二人にちゃんとわかるようなやり方を、
ほほえみや握手のように、簡単で、心のこもらないやり方を。

あの子を後ろを向いた。が、その日の秋の空模様とともに
わたしの思考を支配した。何日も、
何日も、そして何時間も。
あの子の髪は腕にかかっていて、腕いっぱいの花を抱いていて・・・・・・。
やはり二人は一緒にいるべきだったのか?
キザなポーズやふるまいなど、やめておくべきだったのだ。
時々、このような考えに、今でもふいに襲われる、
心乱れた真夜中に、真昼、休息しているときに。

* * *

T. S. Eliot
"La Figlia Che Piange"

Stand on the highest pavement of the stair--
Lean on a garden urn--
Weave, weave the sunlight in your hair--
Clasp your flowers to you with a pained surprise--
Fling them to the ground and turn
With a fugitive resentment in your eyes:
But weave, weave the sunlight in your hair.

So I would have had him leave,
So I would have had her stand and grieve,
So he would have left
As the soul leaves the body torn and bruised
As the mind deserts the body it has used.
I should find
Some way incomparably light and deft,
Some way we both should understand,
Simple and faithless as a smile and shake of the hand.

She turned away, but with the autumn weather
Compelled my imagination many days,
Many days and many hours:
Her hair over her arms and her arms full of flowers.
And I wonder how they should have been together!
I should have lost a gesture and a pose.
Sometimes these cogitations still amaze
The troubled midnight and the noon's repose.

* * *

以下、訳注。

タイトル La Figlia Che Piange
英語では、"The Daughter Who Is Weeping" というような意味。
「娘」daughter といっていますが、下記の内容からみて
「若い女の子」ととらえていいと思います。
もともとこの詩は、エリオットが友人に "La Figlia
Che Piange" という彫像を北イタリアの美術館で見るように
すすめられた(が、それはなかった、とか)というできごとを
発端に書かれたものなので、特に親子という意味合いは抜きで
解釈します。(Eliot, The Waste Land and Other Poems,
ed. F. Kermode, [New York, 2003] 85.)

1-7
時制は現在。(下記のように、時制と人称が
複雑に操作されてる詩なので注意。)

4 Clasp your flowers to you
Claspは、両腕で抱きしめる、手でぎゅっと握る
OED 4b, 5)。[T]o youは腕や花束の動きの
方向を示す。片手に花束の花の部分を載せ、
もう片手で茎を束ねたところを握っていて、
そしてからだ全体の緊張によって、花束が胸のところに
引き寄せられる、というようなようす。

8-12
8-10行目のSoは11-12行目のAsに対応している--
Soそのように = As以下のようななかたちで。

8-12
仮定法過去完了。つまり、過去に実際にあったこととは
反対のことをいっている。

魂が肉体から去るときのようにあっさりと
(あたりまえですが、肉体からの反応も特になく)--

彼は去ったらよかった (でも、できなかった)
あの子は、立ちつくして悲しめばよかった (でも実際は違った)
彼は立ち去りたかった (でもできなかった)

なお、「彼は去ったらよかった」といっている「わたし」と
この立ち去る「彼」は、おそらく同一人物。

(「わたし」=「彼」と考えないと、この詩はまったくわけの
わからないものになってしまうかと。「詩は難しい=
わけのわからない言葉やイメージを不思議なかたちで
並べた変なもの」、というような、詩になじみのない人が
詩に対して抱きがちなイメージは、おそらくエリオット以降の
現代詩(特にアメリカ詩)からくるものと思いますが、
少なくともこの詩においては、混乱しているように
見える言葉の背後に、それなりに話の筋を読みとることが
できます。)

(でも個人的に、"Waste Land" などはちょっときついかな、
と感じます。)

13-16
時制は現在。

17-20
時制は過去。つまり、ここに書かれているのは
実際にあったこと。

21-22
仮定法過去完了。つまり、過去に実際にあったこととは
反対のことをいっている。

21 they
意味としてはwe.

22 gesture
立ちふるまいの美しさ(OED 1b--古語ですが)。

22 pose
現実とは異なる特定のキャラクターを演じること
OED "pose" v1, 4cより)。

23-24
時制は現在。

* * *

以下、解釈例。時制と人称の混乱を整理し、ひとつの話の筋を
とりだしてみます。その糸口は、以下のような、過去のできごとを
語る箇所。

---
魂が肉体を去るときのように、あっけなく別れることが
できなかった。
(8-12: 仮定法をひっくり返す)

あの子は後ろを向いた。
(17)

あの子の髪は腕にかかっていて、腕いっぱいの花を抱いていた。
(20)

二人は一緒にいるべきだったのか?キザなふるまいなど、
やめておくべきだった、などという考えに今でも襲われる。
(21-24)
---

以上より、実際にあったことは、およそ次のようなことだと
わかります。

---
i.
わたしは恋人に別れることを告げた。

ii.
そのとき相手の女の子は花束をもっていた。
(何かを祝うため? 少なくとも、彼女にとって
別れることはまったく頭になかった、ということ。)

iii.
別れる、という「わたし」の言葉に対して、彼女は
背を向けた。

iv.
あっさりと、後に尾を引くことのないかたちで、
別れることができなかった。
---

なぜあっさり別れられなかったのかといえば・・・・・・
それは、上のiii(詩のなかでは17行目)の「後ろを向いた」の
ところからわかります。(というか、そこからわからない、
というか。) つまり、「わたし」の切り出した別れの言葉に
対して、彼女は、後ろを向いただけ?

この詩のタイトルを見てみると・・・・・・違いますよね?
彼女は泣き、それで「わたし」は、スパッと別れてあっさり
忘れることができなくなってしまった、というわけです。
(ありきたり、といえば、そうかもしれませんが。)

現在時制で語られる1-7行目は、別れの場面の
フラッシュバックと考えられます。実際にあったこと、
それから、もしかしたら、こうだったらよかったのに、
という希望も入りまじっていて。次のフレーズが
くり返されているのは、そのときの彼女の髪のようすが、
目に焼きついて忘れられない、ということでしょう。

"Weave, weave the sunlight in your hair--"
織りこんで、織りあわせて、日の光を君の髪に--

この髪のようすも、「わたし」が彼女のことを
忘れられない大きな一因となっていると思われます。
(たんなる深読みですが、ありがちなことでは。)

同じく現在時制の13-16行目についても、別れの場面が
あまりに鮮明に頭に残っているために、つい、それがこれから
起こることであるかのように、「こうしなくっちゃ」と考えてしまう、
ということかと思います。

いずれにせよ、このような時制と人称の操作により、
歌、小説、絵、映画、TVドラマ、マンガ、アニメ
(それから現実生活)など、どこにでもありそうな場面の
描写に、他ではありえないような複雑で多層的なニュアンスが
与えられていると思います。

第二スタンザの、"Prufrock" や "Waste Land" を
想起させるような、知的かつダークで、身勝手ながらも
まさに的確なイメジャリーも、この詩のセンチメンタルな
ところをうまく中和しています。

でも、なんといっても、この詩の印象を決定づけているのは、
このフレーズでしょう。

"Weave, weave the sunlight in your hair--"
織りこんで、織りあわせて、日の光を君の髪に--

こういうのを読むと、たとえば、「美しい」ということばが、
少なくとも詩においては、いかに空虚でチープなものか、
思い知らされるような気がします。(だからエリオットは、
"sweet!" を連発するシェリーやキーツのようなロマン派が
嫌いだったのかと。)

* * *

ちなみに庭の壺はこのようなもの。

By David Lally
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Urn_in_
Wallington_Walled_Garden_-_geograph.org.uk_-_
975801.jpg

* * *

以下、リズムの解釈例。

第一スタンザ:


基調はゆるやかなストレス・ミーター(四拍子)。
(各行の音節数はまちまちだが、ストレスの数は3-4で
一定。)

B(拍子beatのB)のところで手拍子をしたり、机をコツコツしながら
声に出して読んでみてください。歌のように、BとBの間隔を
一定にする必要はありません。普通の会話や独り言のように、
あるいは散文を読むように、読んでみてください。
自由詩ということで、一定のリズムにしばられないながらも、
ゆるやかな、それこそ風に流れる髪のような、リズムが
感じられるのではないかと思います。

(1, 3, 4, 7 行には、下記のaccentual five-
syllableに近い雰囲気も。それぞれの行のof, in, youを
ビートにのせることができるので。)

ですが・・・・・・

第二スタンザ:


1-3:
この仮定法のところで、ストレスのない機能語(代名詞、助動詞、
それ自体意味のない副詞soなど)が多用され、第一スタンザの
ゆるやかな四拍子が崩れている。詩になっていない、ただ頭のなかを
駆けめぐる思い、という感じかと。

(各行のwouldをあえてビートにのせると、ストレス・ミーターに
なる。が、個人的には、こうだったらよかったのに、という
楽しくない回想を歌のように読むと、まるで演歌かブルーズか
パンクのようで、この詩の雰囲気にあわないように思う。)

4-5:
4行目は、十音節、弱強五歩格のちょっとした変奏。
5行目は、ストレス・ミーター(音節11、ストレス4)。
詩形の上では異なるが、この二行は構文、内容、
そして脚韻と、すべての点で対をなしており、また、
知的かつグロテスクな比喩という点でもつながっている。
声に出して読んだときの雰囲気も似ているはず。

9
この行は、ストレス・ミーターと弱強五歩格の中間の
リズム(のひとつ)、各行5ストレス + 音節数はいくつでもOK、
というaccentual pentameter (accentual five-stress).

---
(比較)
一行の音節数・・・・・・
ストレス・ミーター: 任意
弱強五歩格: 10(か11--女性形の行末でひとつ弱音節がつく場合)
Accentual Pentameter: 任意

一行のストレス数・・・・・・
ストレス・ミーター: 原則4(四拍子にのるかぎり任意)
弱強五歩格: 原則5(だが、音節10であるかぎり、かなり自由)
Accentual Pentameter: 5
(音節数が変動するので、ストレス5の固定が必須)
---

(Accentual pentameterについては、下記Malof,
"Native Rhythm", p. 589ff.; Fussell, Theory of
Prosody in Eighteenth-Century England
, 1954,
pp. 101ff. など参照のこと。定訳はなさそうだが、
「五強勢格」とでも訳すべきか。)

(ひとり言ですが、このよく意味のわからない
「格」という語は必要? 少なくとも「型」のほうが
わかりやすいはず--弱強型、弱弱強型ではダメ?)

たとえば、次のような行がaccentual pentameter:

Inexplicable splendor of Ionian white and gold.
("Waste Land", l. 266; 音節14、ストレス5)

(また後日、例を追加します。)

第三スタンザ:


1
女性形行末の弱強五歩格。

4
Accentual five-stress. 音節の多さは、こめられた
感情の大きさをあらわす(と勝手に解釈)。
彼女の髪、腕、花束・・・・・・と美しく印象的な
イメージが集められていて、この詩のクライマックスのように
思われる。(これらのイメージは、第一スタンザの
反復としても強調されていて。)

5
第二スタンザ1-3行と同様、仮定法の行で、ストレスの
ない音節ばかり。詩としてのリズムがない。
詩になっていない、ただ頭のなかを駆けめぐる思い、
という感じ。"!" もこの雰囲気を強調。
前行とあわせて、この詩のクライマックス。
(4行目でいろいろ頭に浮かんできて、
5行目で、うわーっ、みたいな。)

6-8
エンディング三行が音節10でそろえられている。

6
弱強五歩格(ストレス・ミーターとしても読める)。
5行目と同様、仮定法だが、リズムがかなり明確。
エンディングに向かって、「わたし」が落ち着いて
きている印象。

7
弱強五歩格の一変奏。

8
弱強五歩格(ストレス・ミーターとしても読める)。
[A]ndで前半と後半が対句として結ばれ、バランスがいい。
やはり、「わたし」が落ち着いてきている印象。
たとえば、別れの場面を思い出したときの心の乱れを、
ある種のあきらめとともに受けいれはじめている、
という感じでは。

* * *

響きあう子音/母音:
Stand-highest-(pavement-)stair
この行で一定間隔でくり返される/t/音(と/d/)には、
階段をのぼる足音を想起させる意図があるはず。
(このようなSpenser的な音の組み方をEliotが
好んだかどうか、要リサーチですが。)

(Lean-garden-urn)
Lean-Weave
Clasp-pained-surprise
flowers-fling

have-had-him
have-had-her
body-bruised
deserts-body
Simple-smile

with-weather
my-imagination-many
full-flowers
flowers-wonder-together

意味的な連関が見られる脚韻:
stair-hair
surprise-eyes
leave-grieve
bruised-used 他

* * *

詩のリズムについては、以下がおすすめです。

ストレス・ミーターについて
Derek Attridge, Poetic Rhythm (Cambridge, 1995)

古典韻律系
Paul Fussell, Poetic Meter and Poetic Form, Rev. ed.
(New York, 1979)

その他
Northrop Frye, Anatomy of Criticism: Four Essays
(Princeton, 1957) 251ff.
(後日ページを追記します。和訳もあります。)

Joseph Malof, "The Native Rhythm of English Meters,"
Texas Studies in Literature and Language 5 (1964):
580-94

(日本語で書かれたイギリス詩の入門書、解説書の多くにも
古典韻律系の解説があります。)

* * *

英文テクストはT. S. Eliot, Prufrock and Other
Observations
<http://www.gutenberg.org/cache/
epub/1459/pg1459.txt> より。

"This eBook is for the use of anyone anywhere
at no cost and with almost no restrictions
whatsoever. You may copy it, give it away or
re-use it under the terms of the Project
Gutenberg License included with this eBook or
online at www.gutenberg.org" ということで。

* * *

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