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Howard, "The Restress State of a Lover" (Tottel 3)

ヘンリー・ハワード、サリー伯
「恋する男の落ちつかないようす」

若さゆえに突っ走ってきた。
愛の神に鞭で追い立てられて、へとへとになりながら。
ふり返り、はじめにいた場所、そもそも
どこから走りはじめたか考えてみた。

そうだった、欲望のためにぼくは
いけない方向に走ってきた。道を誤ってきた。
目が目の前のご褒美を求めすぎ、
それでぼくはよりよい餌食を逃してきた。

ぼくはため息をついて日々過ごし、
悲しみを隠せなかった。陽気にふるまえなかった。
ため息はいつも沸騰した蒸気のように熱かった。
燃える秘密の炎を隠せなった。

胸は塩辛い涙でいっぱい。でも
心の畑もいっぱい、愛の神が撒く楽しい誘惑の種で。
その果実を美しいあの人が潰す、
芽が出て花が咲く前に。

いつも目は追ってきた、
狙う獲物を。逃げる獲物を。
飢えた目で獲物を狙うたび、
新しい秘密の傷で心が痛んだ。

獲物を狙って頬が染まる、
死人の白に、赤熱の赤に。
誰が見ても明らかな色に。そんな時、
ぼくの心は逃げた、あの人に助けを求めて。

今さらながら愛の神から習っている、
顔色を上書きする方法を。
人目をだます方法を。
愛でいろんな色の染みがついた頬を隠せるように。

それよりむしろ誰にも見えない心がほしい。
そこで愛の神をこっそり讃えたい。
彼に聖なる炎を燃やしたい。
赤い火花を飛ばすことなく。

*****
Henry Howard, Earl of Surrey
"Description of the Restress State of a Lover"

When youth had led me half the race
That Cupid's scourge had made me run;
I looked back to mete the place
From whence my weary course begun.

And then I saw how my desire
By guiding ill had led the way:
Mine eyen, to greedy of their hire,
Had made me lose a better prey.

For when in sighs I spent the day,
And could not cloak my grief with game;
The boiling smoke did still bewray
The present heat of secret flame.

And when salt tears do bain my breast,
Where Love his pleasant trains hath sown;
Her beauty hath the fruits opprest,
Ere that the buds were sprung and blown.

And when mine eyen did still pursue
The flying chase of their request;
Their greedy looks did oft renew
The hidden wound within my breast.

When every look these cheeks might stain,
From deadly pale to glowing red;
By outward signs appeared plain,
To her for help my heart was fled.

But all too late Love learneth me
To paint all kind of colours new;
To blind their eyes that else should see
My speckled cheeks with Cupid's hue.

And now the covert breast I claim,
That worshipp'd Cupid secretely;
And nourished his sacred flame,
From whence no blazing sparks do fly.

http://www.luminarium.org/renlit/whenyouth.htm

*****
解釈例:

a better prey
= "Her beauty" の彼女
= "To her for help my heart was fled" の彼女
≒ 宮廷風恋愛のパターンにおける「貴婦人」

"my desire . . . guiding ill"
"Mine eyen, to greedy of their hire"
"The boiling smoke"
"The present heat of secret flame"
"his [i.e., love's] pleasant trains"
"The hidden wound within my breast"
"My speckled cheeks with Cupid's hue"
≒ 他のいろんな女性も好きになる、ということ

"worshipp'd"
"nourished"
≒ 仮定法(的)

愛の対象(だと自分で思っている人)がいて、
でも他に好きになってしまう女性もたくさんいて、
それがばれないようにしたい、という話。

*****
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Smith, "At Middleton in Sussex"

シャーロット・スミス
「ソネット--サセックス・ミドルトンの教会のお墓で」

無言の月に支配され、
彼岸の暴風と一緒になって、
自制を忘れた高波が
怯える陸に襲いかかって圧倒する。
西の洞穴から立ちのぼる荒い突風で
巨大な波が目覚め、うねり、押し寄せる。
そして草むらから村人の死体をほじり出す、
墓場の沈黙と安らぎを打ち破って。
岸では貝殻・海藻と入りまじった
骨が、あああ! 何度も波に打たれて白くてきれい!
唸る風も海の音も死体には聞こえない。
風土火水の戦争は、もう彼らに関係ない。
惨めなわたし、長い人生の嵐に潰れそうなわたしは、
そんな死体の安らぎが羨ましくて、見つめる目が離せない。

*****
Charlotte Smith
"Sonnet Written in the Church Yard at Middleton in Sussex"

Pressed by the moon, mute arbitress of tides,
While the loud equinox its power combines,
The sea no more its swelling surge confines,
But o'er the shrinking land sublimely rides.
The wild blast, rising from the western cave,
Drives the huge billows from their heaving bed,
Tears from their grassy tombs the village dead,
And breaks the silent sabbath of the grave!
With shells and sea-weed mingled, on the shore
Lo! their bones whiten in the frequent wave;
But vain to them the winds and waters rave;
They hear the warring elements no more:
While I am doomed--by life's long storm oppressed,
To gaze with envy on their gloomy rest.

http://english.unl.edu/sbehrendt/courses/4802/
Smith%20Church-yard.htm

*****
キーワード:
感受性 sensibility
心の安らぎ ataraxia
エピクロス Epicurus
ホラティウス Horace
ルクレティウス Lucretius
無感情 apathy
美徳 virtue
ストア派 the Stoics
セネカ Seneca

*****
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Yearsley, "To Indifference"

アン・イアズリー
「心の麻痺に」

来て、心の〈麻痺〉! あなたの眠り薬を
鋭すぎるわたしの心に注いで。傷だらけの心を
無感情の海に沈めて。石にして。
乗っ取ってしまって。お願い、あなた、
敏感な心の敵。冷たく抱きしめて、
わたしの魂を死のような眠りで包んで休ませて。
わたし、ずっと休息がなかった。究極の幸せから
悲しみの針に落とされてきた。ああ、神のように優しいあなた、
忍耐のかわりに救ってくれるあなた! 戦う兵士にも
鎖につながれて沈む捕虜にも安らぎをくれるあなた!
恋の悩みも、金持ちが抱く盗難の恐怖もやわらげてくれるあなた!

あなたがいらないなんて言うのは、きれいで傲慢な人!
〈美徳〉が自慢な人! 冷たい息で魂を凍らせてくれるのは、
荒れ狂う感情を眠らせてくれるのは、あなただけなのに。

勘違いしてる。救ってくれる〈麻痺〉、あなたを
冷たく拒むなんて。胸のなかでしか生きられない、
傷だらけの〈美徳〉のほうが大事だなんて。
それでわざわざ葛藤に悩み、報われない
恋の激痛に苦しみ、恰好だけの馬鹿な人たちに
心を剣で刺され、昔からの友だちにも
毒矢で深く貫かれる。そうして
痛々しい勝利のなかで死にそうになってる。そんなの嫌、
助けて、痛みを中和してくれるあなた、心の〈麻痺〉! みんな
あなたの価値がわかってない。まるで意味がない、豊かな感受性を
見せびらかして、そしてつらく惨めに生きるなんて!
感受性は酔わせてくれて幸せ、でも棘がある。
痛みだけ残って幸せは続かない。魂が高く高く上昇して、
でもずっと上にはいられない。針のような頂点からすぐ
飛びおりることになる。ある意味、気が楽なのは落ちているときだけ。

〈感受性〉がくれるのは陶酔か
悲しみのどちらかだけ。中間の落ち着きなんてない。
まるで赤道下の世界。切れる寸前まで引っぱられた
糸のような魂の世界。痛みも喜びも、
くれる時はいつも山盛り。でも〈麻痺〉、あなたはもっと
優しくて、痛みからも喜びからも心を守ってくれる。休ませて
くれる。誰もが望む安らぎをくれる。心のなか、
いろいろしたいことはあるけど、
わたしは〈麻痺〉、あなたに身を任せたい。あなたといっしょに
幸せに無気力に過ごしたい。一時間だけでもいいから。
〈感受性〉にふりまわされて弄ばれて
いつまでも生きるなんて嫌。ああ! 〈感受性〉の針に刺されすぎて
わたしの心はまるで蜂の巣。スポンジみたいに悲しみを吸いこんでる。

だから〈感受性〉なんてさよなら! どこかに消えて!
まだら模様の天使! 純な心の子のところに行って!
あなたなんて嫌い! いつも順番に
喜びと悲しみを生むだけだから。優しい〈麻痺〉、あなたのほうがいい!
粗末な家だけど、どうぞお客になって、
死んで時間が止まるまでここにいて。わたし、
あなたといっしょに硬い草のソファに座って沈んでいく。
友情や愛や希望とか、どうせ消えてしまうものは
いらない。あああ! 見せないで! 早く消して! そんなもの!
命がないくせに出しゃばってくるなんて! お願い、わたしの
心の窓を閉じて鍵をかけて。心を氷にして祈っているのに、それを自分で
取り消しちゃうといけないから。……ありがと、落ちついた。

想いを首絞めで殺せば、心は荒れ野原。
〈感受性〉が貪る餌は、もうない。

*****
Ann Yearsley
"To Indifference" (1787)

INDIFFERENCE come! thy torpid juices shed
On my keen sense: plunge deep my wounded heart,
In thickest apathy, till it congeal,
Or mix with thee incorp'rate. Come, thou foe
To sharp sensation, in thy cold embrace
A death-like slumber shall a respite give
To my long restless soul, tost on extreme,
From bliss to pointed woe. Oh, gentle Pow'r,
Dear substitute of Patience! thou canst ease
The Soldier's toil, the gloomy Captive's chain, 10
The Lover's anguish, and the Miser's fear.

Proud Beauty will not own thee! Her loud boast
Is VlRTUE--while thy chilling breath alone
Blows o'er her soul, bidding her passions sleep.

Mistaken Cause, the frozen Fair denies
Thy saving influence. VIRTUE never lives,
But in the bosom, struggling with its wound:
There she supports the conflict, there augments
The pang of hopeless Love, the senseless stab
Of gaudy Ign'rance, and more deeply drives 20
The poison'd dart, hurl'd by the long-lov'd friend;
Then pants with painful victory. Bear me hence,
Thou antidote to pain! thy real worth
Mortal can never know. What's the vain boast
Of Sensibility but to be wretched?
In her best transports lives a latent sting,
Which wounds as they expire. On her high heights
Our souls can never sit; the point so nice,
We quick fly off--secure, but in descent.

To SENSIBILITY, what is not bliss 30
Is woe. No placid medium's ever held
Beneath her torrid line, when straining high
The fibres of the soul. Of Pain, or Joy,
She gives too large a share; but thou, more kind,
Wrapp'st up the heart from both, and bidd'st it rest
In ever-wish'd-for ease. By all the pow'rs
Which move within the mind for diff'rent ends,
I'd rather lose myself with thee and share
Thine happy indolence, for one short hour,
Than live of Sensibility the tool 40
For endless ages. Oh! her points have pierc'd
My soul, till, like a sponge, it drinks up woe.

Then leave me, Sensibility! be gone,
Thou chequer'd angel! Seek the soul refin'd:
I hate thee! and thy long progressive brood
Of joys and mis'ries. Soft Indiff'rence, come!
In this low cottage thou shalt be my guest,
Till Death shuts out the hour: here down I'll sink
With thee upon my couch of homely rush, 50
Which fading forms of Friendship, Love, or Hope,
Must ne'er approach. Ah!--quickly hide, thou pow'r,
Those dead intruding images! Oh, seal
The lids of mental sight, lest I abjure
My freezing supplication.--AII is still.

Idea, smother'd, leaves my mind a waste,
Where SENSIBILITY must lose her prey.

http://www.english.upenn.edu/~curran/250-96/Sensibility/yearsind.html
Poems on Various Subjects (1787), pp. 49-53.

*****
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Greville, "A Prayer for Indifference"

フランシス・グレヴィル
「心なんて麻痺すればいい」

いろんな神さまたちにお願いしたけどダメだった、
へとへとになるくらいお祈りしたのに。
でももう一度やってみる。今度は
妖精のオーベロンさんに。

空飛ぶかわいい妖精、いたずらなあなた、
森に隠れたり、
銀色の月の光のなか
楽しげに散歩したり。

かわいそうって思ってくれるなら、
昔話ではそうなっているし、
恋するアテネの女の子のために
不思議な魔法を使ってくれたように、

ねえ、もう一度力を貸して!
たぶん草や木かなにかに、
あの西の花の蜜みたいな
力が隠れているはずだから。

恋を叶えてほしい、とか、
かわいくなって好かれたい、とかじゃない。
そんなプレゼントはどうでもいい。
ため息が出るくらいわたしがほしいのは、心の安らぎ。

わたしの心は安らげない、落ちつかない。
両方とも針のように痛く感じてしまうから、
楽しいことにも、悲しいことにも背を向ける、
そして背を向けたまま震える。

悩みで魂が痛いというけど、
その痛みにも度合いがいろいろある。
一定の範囲内なら痛くても幸せ。
でもそれを超えたらただの激痛。

だから裏切り者の心を追放して。
わたしを苦しめてばかりから。
喜びを純化して痛みに変えるから。
痛みをもっと痛くするから。

急いであの最高の薬をもってきて。
ばらばらになった神経をつなぎ直して。
わたしのところに、静かで穏やかな
あの〈心の麻痺〉の妖精を連れてきて!

彼女が来たら、〈希望〉も〈恐れ〉も
〈期待〉も飛んで逃げていく。
〈失望〉もその後についていく。
もう楽しい約束が破られることもなくなる!

〈哀れみ〉に教えられて涙を流したことを
目が忘れる。それでいい。
人の悲しみに泣いた心が、自分の悲しみすら
感じないようになる。それでいい。

一瞬ごとに血を流している傷口が
その瞬間に閉じるようになる。うれしい。
日々穏やかに過ごせるようになる。
夜、穏やかに眠れるようになる。うれしい。

オーベロンさん! これだけでいいからお願い。
優しい〈麻痺〉の安らぎをちょうだい。
そうしたら祈ってあげる、永遠の幸せが
花咲くあなたの道にいつもありますように!

蛍の静かな明かりが
あなたの小さな足を導いてくれますように、
人が行ったことのない
新しい喜びの国に!

あなたのどんぐりのカップがいっぱいになりますように、
神さまたちが飲むような、
いちばんきれいな、咲いたばかりの花からの、
甘くて新鮮な露で!

そしてわたしは残りの人生を
冷静にくつろいで生きる、
半分だけ幸せに、半分だけ満足して。
半分だけ幸せなふりをすることで満足して。

*****
Frances Greville
"A Prayer for Indifference"

Oft I've implor'd the gods in vain,
And pray'd till I've been weary;
For once I'll seek my wish to gain
Of Oberon, the Fairy.

Sweet airy being, wanton sprite,
Who lurk'st in woods unseen,
And oft by Cynthia's silver light,
Trip'st gaily o'er the green:

If e'er thy pitying heart was mov'd,
As ancient stories tell,
And for the Athenian maid who lov'd,
Thou sought'st a wondrous spell;

O deign once more t'exert thy power!
Haply some herb or tree,
Sovereign as juice of western flower,
Conceals a balm for me.

I ask no kind return of love,
No tempting charm to please;
Far from the heart those gifts remove,
That sighs for peace and ease:

Nor peace, nor ease, the heart can know,
That, like the needle true,
Turns at the touch of joy or woe,
But, turning, trembles too.

Far as distress the soul can wound,
'Tis pain in each degree;
'Tis bliss but to a certain bound,
Beyond, is agony.

Then take this treacherous sense of mine,
Which dooms me still to smart;
Which pleasure can to pain refine,
To pain new pangs depart.

O haste to shed the sovereign balm,
My shatter'd nerves new string;
And for my guest, serenely calm,
The nymph Indifference bring!

At her approach, see Hope, see Fear,
See Expectation fly!
And Disappointment in the rear,
That blasts the promis'd joy!

The tear which Pity taught to flow
The eye shall then disown;
The heart that melts for others' woe
Shall then scarce feel its own.

The wounds which now each moment bleed,
Each moment then shall close;
And tranquil days shall still succeed
To nights of calm repose.

O Fairy Elf! but grant me this,
This one kind comfort send,
And so may never-fading bliss
Thy flowery paths attend!

So may the glow-worm's glimmering light
Thy tiny footsteps lead
To some new region of delight,
Unknown to mortal tread!

And be thy acorn goblet filled
With heaven's ambrosial dew,
From sweetest, freshest flowers distilled,
That shed fresh sweets for you!

And what of life remains for me
I'll pass in sober ease;
Half pleased, contented will I be,
Content but half to please.

http://www.english.upenn.edu/~curran/
250-96/Sensibility/greville.html

*****
キーワード:
感受性 sensibility
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エピクロス Epicurus
ホラティウス Horace
ルクレティウス Lucretius

*****
18世紀に大流行した「感受性」文学の例。

この詩は16-17世紀の「心の安らぎ」の哲学の
普及版的変奏と見受けられる。また、19世紀の
バイロン『ハロルド』、キーツ「憂鬱」などに
連なる作品と思われる。

*****
オーベロン云々はシェイクスピア『夏の夜の夢』への
言及。(未読なので上の訳にずれがあるかも。)

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Jonson, "To My Beloved Master William Shakespeare"

ベン・ジョンソン
「敬愛するウィリアム・シェイクスピア君と
彼の遺した作品を記念して」

君の名を汚してしまうといけないから、
君と君の本について長めに語ります。
君の著作は
詩や散文でどれだけ称えても称えきれないので。
本当にそうです。誰もが認めることです。でも、ただ褒め言葉を
並べることはしません。
それでは無知蒙昧な者と変わらないので。いいことを言っても、
実は誰かが言ったことをくり返しているだけ、というような。
それに、闇雲にすばらしいと言ってもけっして真理は
伝わらないので。あたっていてもせいぜい偶然、という。
また、称えるふりをして貶すという器用なこともありえますから。
褒めて殺す、というように。
ポン引きや娼婦に称えられても、まじめなご婦人に
とっては迷惑な話でしかないでしょう?
君はもっと高いところにいます。そう、もはや
よくも悪くも褒められる必要がないのです。
ということで、はじめます。この時代の魂である君!
演劇を称えられるもの、しかも楽しいものにしてくれた奇跡の人!
シェイクスピア君! 甦ってください! 君はチョーサーやスペンサーの
隣で眠っていてはいけない。ボーモントにも
ちょっとどいてもらいましょう。
君自身が記念碑のようなものだから、君に墓はいらない。
君は死んでいないのです、君の本が読まれ続けるかぎり、
わたしたちが読み続け、称え続けるかぎり。
考えるに、君を同列に考えることはできません、
偉大な、しかし常に偉大とはいえない作家たちとは。
次世代以降のために
君を他の者たちと比べて、こう言いましょう、
君はリリーよりはるかに優れていた、
楽しげなキッドや強力な詩を書くマーロウよりはるかに輝いていた、と。
ラテン語はたいして知らず、ギリシャ語はもっとダメだったけど、
それでも優れている作家はたくさんいるので、いちいち名前を
挙げません。むしろ雷のように言葉を轟かせたアイスキュロス、
エウリピデス、ソポクレスを呼び出しましょう。
パクウィウスとアッキウスとコルドバのセネカを墓から
生き返らせましょう。そして君の悲劇に舞台が
震えるのを見せてやりましょう。喜劇についても、
君ひとりで打ち負かしてやってください、
傲慢で偉そうなギリシャ・ローマ人が書いた作品すべてを。
さらに、その灰からできた翻案のすべてを。
喜べ! 勝ち誇れ! 我が国ブリテン! シェイクスピア君が
ヨーロッパ中で称えられているのだから。
彼の作品は今だけではなく永遠のものなのだから!
他の作家たちが活躍するなか、シェイクスピア君は
あらわれました。アポロンのようにわたしたちを
熱狂させ、メルクリウスのように心を奪いました。
〈自然〉の女神から見ても彼の劇は自然であって、
だから彼女は彼の言葉のドレスを着て喜んでいました!
あまりにも豊かな言葉の糸であまりにも上手に編まれていたから、
もう彼女は他の人のドレスを着なくなりました。
ギリシャ喜劇、きつめのアリストパネスや無駄のない
テレンティウス、言葉巧みなプラウトゥスなど、もう今では面白くない。
古臭くて誰も見たいと思いません。
〈自然〉の家系とは違うから。
でも、自然であるだけではダメですよね。シェイクスピア君、
君の技巧も称えないといけません。
詩人は自然を題材とし、
そこに技巧を凝らして作品をつくる。だから生きた詩を
書こうと思ったら、鍛冶部屋で汗を流しつつ、
君のように鉄鎚(かなづち)で何度も
詩を打たなくてはなりません。旋盤にかけて
つくらなくてはならない、作品を、そして自分を。
でないと嘲笑されるだけです。
優れた詩人には生まれながらの才能とともに努力がいるのです。
そう、まさに君こそそんな詩人でした! 父の面影が
子に見えるように、シェイクスピア君の
想いと人となりが輝いています、
ていねいに磨かれた美しい詩のなかに。
その一行一行のなか、彼は槍を振るっています。
無知と戦っているのです。
エイヴォン川の美しい白鳥であった君!
もう一度君がやってきてくれたなら!
もう一度テムズの岸で君が舞ってくれたなら!
かつてエリザベス女王、そしてジェイムズ王をあれほど魅了したように!
いや、やっぱりいいです。今、君は天球の
向こう側にいて、すでに星座になっていますから!
そこで輝いてください、詩人たちの憧れの星である君。激しく、優しく、
落ちこんでいる今の演劇界を叱って、励ましてください。
君が去ってからずっと悲しみに暮れ、いつも夜のように
真っ暗なんです、君の作品集が照らしてくれないかぎり。

*****
Ben Jonson
"To the Memory of My Beloved Master William Shakespeare,
and What He Hath Left Us"

To draw no envy, SHAKSPEARE, on thy name,
Am I thus ample to thy book and fame;
While I confess thy writings to be such,
As neither Man nor Muse can praise too much.
'Tis true, and all men's suffrage. But these ways
Were not the paths I meant unto thy praise;
For seeliest ignorance on these may light,
Which, when it sounds at best, but echoes right;
Or blind affection, which doth ne'er advance
The truth, but gropes, and urgeth all by chance;
Or crafty malice might pretend this praise,
And think to ruin where it seemed to raise.
These are, as some infamous bawd or whore
Should praise a matron; what could hurt her more?
But thou art proof against them, and, indeed,
Above the ill fortune of them, or the need.
I therefore will begin: Soul of the age!
The applause! delight! the wonder of our stage!
My SHAKSPEARE rise! I will not lodge thee by
Chaucer, or Spenser, or bid Beaumont lie
A little further, to make thee a room:
Thou art a monument without a tomb,
And art alive still while thy book doth live
And we have wits to read, and praise to give.
That I not mix thee so my brain excuses,
I mean with great, but disproportioned Muses:
For if I thought my judgment were of years,
I should commit thee surely with thy peers,
And tell how far thou didst our Lyly outshine,
Or sporting Kyd, or Marlowe's mighty line.
And though thou hadst small Latin and less Greek,
From thence to honour thee, I would not seek
For names: but call forth thund'ring Aeschylus,
Euripides, and Sophocles to us,
Pacuvius, Accius, him of Cordova dead,
To life again, to hear thy buskin tread
And shake a stage: or when thy socks were on,
Leave thee alone for the comparison
Of all that insolent Greece or haughty Rome
Sent forth, or since did from their ashes come.
Triumph, my Britain, thou hast one to show
To whom all Scenes of Europe homage owe.
He was not of an age, but for all time!
And all the Muses still were in their prime,
When, like Apollo, he came forth to warm
Our ears, or like a Mercury to charm!
Nature herself was proud of his designs,
And joyed to wear the dressing of his lines!
Which were so richly spun, and woven so fit,
As, since, she will vouchsafe no other wit.
The merry Greek, tart Aristophanes,
Neat Terence, witty Plautus, now not please;
But antiquated and deserted lie,
As they were not of Nature's family.
Yet must I not give Nature all; thy art,
My gentle Shakspeare, must enjoy a part.
For though the poet's matter nature be,
His art doth give the fashion: and, that he
Who casts to write a living line, must sweat,
(Such as thine are) and strike the second heat
Upon the Muses' anvil; turn the same,
And himself with it, that he thinks to frame;
Or for the laurel he may gain a scorn;
For a good poet's made, as well as born.
And such wert thou! Look how the father's face
Lives in his issue, even so the race
Of Shakspeare's mind and manners brightly shines
In his well torned and true filed lines;
In each of which he seems to shake a lance,
As brandisht at the eyes of ignorance.
Sweet Swan of Avon! what a sight it were
To see thee in our waters yet appear,
And make those flights upon the banks of Thames,
That so did take Eliza, and our James!
But stay, I see thee in the hemisphere
Advanced, and made a constellation there!
Shine forth, thou Star of Poets, and with rage
Or influence, chide or cheer the drooping stage,
Which, since thy flight from hence, hath mourned like night,
And despairs day, but for thy volume's light.

http://www.luminarium.org/sevenlit/jonson/benshake.htm

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