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Blake, "A Poison Tree"

ウィリアム・ブレイク(1757-1827)
「毒の木」

わたしは友達に対して怒っていた。
そのことを伝えたら、怒りはおさまった。
わたしは敵に対して怒っていた。
そのことを伝えずにいたら、怒りは大きく育った。
わたしは、こわがりながらも、それに水をやった。
夜も昼も、涙という水を。
それから、わたしのほほえみで照らしてあげた。
甘い嘘と罠もあわせて。

すると、昼も夜も、その木は大きくなった。
そして輝くリンゴがなった。
敵はこの光るリンゴを見て、
それがわたしのものだと知っていたので・・・・・・

庭に忍びこんできた、
夜が空をヴェールで覆った頃に。
朝、うれしいことに、わたしは見た、
敵が木の下で倒れているのを。

* * *

William Blake
"A Poison Tree"

I was angry with my friend:
I told my wrath, my wrath did end.
I was angry with my foe:
I told it not, my wrath did grow.
And I watered it in fears
Night and morning with my tears,
And I sunned it with smiles
And with soft deceitful wiles.

And it grew both day and night,
Till it bore an apple bright,
And my foe beheld it shine,
And he knew that it was mine,―

And into my garden stole
When the night had veiled the pole;
In the morning, glad, I see
My foe outstretched beneath the tree.

* * *

日常的な怒りの話を、アダムとイヴのリンゴの
エピソードと重ねて、謎めいたかたちで。

* * *

14 the pole
空(OED n2, 4)

* * *

英文テクストは、William Blake, Songs of Innocence
and Songs of Experience (1901)より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/1934

* * *

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Blake, "The Lily"

ウィリアム・ブレイク(1757-1827)
「ゆり」

恥ずかしがりなバラは棘を出す。
控えめな羊は角を見せて脅す。
が、白いゆりは、愛をおおいに楽しめばいい。
棘や脅しには、彼女の輝かんばかりの美しさを汚させはしない。

* * *

William Blake
"The Lily"

The modest Rose puts forth a thorn,
The humble sheep a threat’ning horn:
While the Lily white shall in love delight,
Nor a thorn nor a threat stain her beauty bright.

* * *

1 modest
自慢げ、堂々とした、あつかましい、恋愛や性的関係に
積極的、という状態の反対(OED 2-3)。

1 Rose
美と性愛の神アプロディテ/ウェヌスの花。
見かけと香り、どちらも明らかにゴージャスで、
通常、控えめとはとらえられない。また、
控えめだから、身を守るために棘を出す、
という考えも逆説的。(攻撃は最大の防御、
ということで。)

2
構文は、The humble sheep [puts forth] a threat'ning horn. . . .

2 sheep
羊は、臆病で、おとなしく、攻撃的ではない
イメージの動物。(いけにえとしても定番。)
それが角を出すのいうのは逆説的。

たとえば、教会や学校で「こうしなさい」といわれることに
(つまり諸々の社会的要請に)おとなしくにしたがう
タイプの人は実は攻撃的、とか、一般的に善とされることは
実はそれほど善ではない、ということかと。

3 shall
話し手の意志の入った未来をあらわすかたちで
ここでは解釈。・・・・・・するだろう、ではなく、
・・・・・・させよう。

3 Lily
白いゆりは純潔をあらわす花。それが「愛をおおいに
楽しむ」というのは逆説。

つまり、『天国と地獄の結婚』という作品のタイトルに
見られるような弁証法、対立概念の止揚(どちらも否定
することなく組みあわせること)を、ゆり(純潔)と
バラ(性愛)でおこなっている。純潔であっても、
性愛を楽しむことができる、楽しんでいい、というような。
(もちろん、あくまで純潔なかたちで。)

4
構文は次のように解釈。
Nor a thorn nor a threat [shall] stain her beauty bright.

(つまり全体としては、1+2行目, while 3+4行目、
というかたちで解釈。)

* * *

リズムについて。



基調はストレス・ミーター(四拍子)。
歌にのせられるリズム。

ポイントは、1-2行と3-4行のあいだの音節数の差。
x/のみのリズムにxx/が入り(4行目はxx/がメイン)、
よりゆるやかなリズムに移行している。

もちろんこれは、「棘」と「脅し」から「愛の楽しみ」と
「美」へ、という内容の移行に対応。

(やや雰囲気が変わってしまうが)
何回も読んでいると、実際には次のように、
3-4行目がそれぞれ四拍子二行分であるようにも
感じられるのでは。(つまり、3-4行目は1-2行目の
1/2のスピード。)



* * *

英文テクストは、William Blake, Songs of Innocence
and Songs of Experience (1901)より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/1934

スキャンジョンのテクストは、Blake, Songs of Innocence
and of Experience (1789, 1794; rpt. 1967) より。
(最後の行、brightのあとのピリオドが抜けているのは、
私のミス。)

* * *

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万博記念公園

万博公園(大阪)
Expo Park
http://park.expo70.or.jp/
20120624



タイトルは「空」



イサム・ノグチ作



(作品x)



(作品y)



バラ園もあって。



日本民芸館の中庭の焼き物
(直径40-50cmくらい)

* * *

画像は、みな私が撮影したもの。


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国立民族学博物館 2

国立民族学博物館(大阪)2
National Museum of Ethnology, Osaka, Japan
http://www.minpaku.ac.jp/
20120624



女性の部屋の壁(中央・北アジア)



食卓(東アジア)



インドのサリー



メッカの神殿にかけられる布(キスワ)



イス(「言語」の体験コーナー、展示品ではなく座るもの)



書道(中国の人がアラビア文字を筆で。斜めから撮影。)



アラビア文字アート



刺青の男女(オセアニア)

* * *

歴史的に見て、また世界的に見て、現在の日本の
(特に都市部の)暮らしがあたりまえのものでは
ないことを感じるための場所。

美意識、素材も文化によっていろいろ。

* * *

画像は、みな私が撮影したもの。

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Rossetti, CG, ("She sat and sang alway")

クリスティーナ・ロセッティ(1830-1894)
(「あの子はすわっていつも歌っていた」)

あの子はすわっていつも歌っていた、
川のほとりの草の上で。
魚が飛び跳ねるのを見ながら、
楽しげな日の光を浴びて。

わたしはすわっていつも泣いていた、
月のかすかな光の下で。
五月の花たちが、
涙のように花びらを川に散らすのを見ながら。

わたしは過去を思って泣いた。
あの子は輝くように明るい希望を思って歌った。
わたしの涙は海に飲みこまれた。
あの子の歌は空で死んだ。

* * *

Christina G. Rossetti
Song ("She sat and sang alway")

She sat and sang alway
By the green margin of a stream,
Watching the fishes leap and play
Beneath the glad sunbeam.

I sat and wept alway
Beneath the moon's most shadowy beam,
Watching the blossoms of the May
Weep leaves into the stream.

I wept for memory;
She sang for hope that is so fair:
My tears were swallowed by the sea;
Her songs died on the air.

* * *

リズムについて。





ストレス・ミーター。四拍子。

拍子ではないところに来ているストレスのある語
(スムーズな四拍子を崩す語)に内容的な重みがある。

* * *

英文テクストは、Poems by Christina G. Rossetti
(1906) より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/19188

* * *

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Rossetti, CG, ("Two doves upon the selfsame branch")

クリスティーナ・ロセッティ(1830-1894)
(「二羽の鳩が同じ枝に」)

二羽の鳩が同じ枝に、
二輪の百合がひとつの茎に、
二羽の蝶がひとつの花に--
これらを見つめる人たちは幸せ。

手をつないでこれらを見つめて、
バラ色の夏の日ざしに赤く染まって。
手をつないでこれらを見つめて、
夜のことなどまったく考えずに。

* * *

Christina G. Rossetti
"Song" ("Two doves upon the selfsame branch")

Two doves upon the selfsame branch,
Two lilies on a single stem,
Two butterflies upon one flower:--
O happy they who look on them.

Who look upon them hand in hand
Flushed in the rosy summer light;
Who look upon them hand in hand
And never give a thought to night.

* * *

英文テクストは、Poems by Christina G. Rossetti
(1906) より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/19188

* * *

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詩人のことば(2)--ハーバート、『異国のことわざ集』より--

詩人のことば(2)
ハーバート、『異国のことわざ集』より

49
愛と咳は隠すことができない。
Love, and a Cough cannot be hid.

53
口よりも足が軽やかなほうがいい。
Better the feet flip then the tongue.

88
お腹いっぱいでは戦えないし、逃げられない。
A full belly neither fights nor flies well.

89
真理を語ればいいというものではない。
All truths are not to be told.

96
悲しみよ、君はどこに行く? いつものところに。
Whether goest griefe? where I am wont.

97
夜に昼を称えよう。そして死ぬときに生を称えよう。
Praise day at night, and life at the end.

* * *
53
then = than

96
whether = whither
goest: go の二人称単数現在形
"Where do you go, Grief?"

97
"and [praise] life at the end"

* * *
George Herbert, Outlandish Proverbs (1640) より。

* * *
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Carew, "Lips and Eyes"

トマス・ケアリ (1595-1640)
「くちびると目」

シーリアの顔のなかで議論がおこった。
くちびると目、どちらがきれいなのか?
目はいう、「わたしたちは先のとがった矢をはなって、
絶対に砕けない鉄の石のようにかたくなな心でもつらぬくわ」。
くちびるも答える、「わたしたちが最高のしあわせを与えるのよ、
恋人たちがやさしいことばや甘いキスを交わすときに」。
すると目は泣いた。そしてその泉から
液体になった東方の真珠が雨のように流れた。
それを見てくちびるはよろこび、うれしく思い、
美しくほほえんで真珠の宝箱を開けて見せた。
そして「愛」に対して、決めて、といった。どちらがシーリアの顔を
さらにより美しく見せているかを。泣いている真珠か、ほほえんでいる真珠か。

* * *

Thomas Carew
"Lips and Eyes"

In Celia's face a question did arise,
Which were more beautiful, her Lips or Eyes:
"We," said the Eyes, "send forth those pointed darts
Which pierce the hardest adamantine hearts."
"From us," reply'd the Lips, "proceed those blisses,
Which lovers reap by kind words and sweet kisses."
Then wept the Eyes, and from their springs did pour
Of liquid oriental pearl a show'r.
Whereat the Lips, mov'd with delight and pleasure,
Through a sweet smile unlock'd their pearly treasure;
And bade Love judge, whether did add more grace,
Weeping or smiling pearls in Celia's face.

* * *

20110903のHerrick、20110820のMarvellと同様の小ネタ。

* * *

訳注。

4 adamantine
Adamantとは、古代ギリシャ以来、この世でもっともかたい
(架空の)金属や石をさすことば。具体的に思い浮かべられるのは、
鉄だったり、サイファイアや研磨用の金剛砂emeryになる鋼玉
corundumだったり、ダイヤモンドだったり。さらには磁石的な
金属だったり。

Corundumいろいろ

By Rob Lavinsky
http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Corundum-cu09abg.jpg

研磨用の金剛石(砂)emeryは、たとえば次のような
商用サイトでふつうに取引されている。
http://www.hellotrade.com/intertradepro/emery.html

11 Love
愛の神エロス/クピド。(特に深い意味はなさそうだが。)

* * *

英文テクストは、The Works of the English poets,
from Chaucer to Cowper (1810) より。
http://books.google.co.jp/books?id=-jgpAAAAYAAJ

* * *

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音楽(6)--歌--

音楽(6)--歌--

Paul Hillier
Proensa
http://www.ecmrecords.com/Catalogue/New_Series/1300/
1368.php?lvredir=712&catid=0&doctype=Catalogue&order
=releasedate&we_search=%2Bproensa&rubchooser=901
&mainrubchooser=9

中世、吟遊詩人の歌(とのこと)。

* * *

Alexander Knaifel
Chapter Eight: Make Me Drunk with your Kisses
http://www.amazon.co.jp/Make-Drunk-With-Your-Kisses/
dp/B000000S8B/ref=sr_1_11?s=music&ie=UTF8&qid
=1339787770&sr=1-11

聖書、「雅歌」第八章より。
フェルドマンをキリスト教に引き寄せたような音(?)。

(フェルドマンはユダヤ系で、曲は異教的な雰囲気。
静かなのに「邪」な感じ。)

* * *

また加えていきます。


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道端アート/素人アート (6)

道端アート/素人アート (6)



慶應義塾大学 三田キャンパス



身内のアーティストS

* * *

画像はみな私が撮影したもの。


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Pound, "An Immorality"

エズラ・パウンド (1885-1972)
「不道徳な話」

愛と怠惰なくらしをたたえて歌おう。
他に価値あるものなどない。

多くの国を見てきたが、
愛と怠惰なくらしが生のすべてだ。

バラの花びらたちが悲しみで死ぬことがあっても、
わたしはよろこびと快楽を味わっていたい。

ハンガリーで、人の想像を絶するような
気高いことをするよりも。

* * *

Ezra Pound
"An Immorality"

Sing we for love and idleness,
Naught else is worth the having.

Though I have been in many a land,
There is naught else in living.

And I would rather have my sweet,
Though rose-leaves die of grieving,

Than do high deeds in Hungary
To pass all men's believing.

* * *

たわいもない作品のようなので、訳注などは後回し。

* * *

「不道徳な話」というタイトルがついているので、
パウンドも、人にすすめられる内容ではない、
という意識で書いているのだろう。しかし同時に、
口には出さないし出せないが、誰でもふと
思ったりするような内容として。

しかし、個人的に思うのだが、「恋愛こそすべて」的な
思考がかなり(あるいは、ある程度、くらい?)支配的な
現代の社会や文化のなか、実のところ「恋愛こそすべて」
と感じたり、考えたり、行動したりすることができない人も
少なくないのではないか。

つまり、道徳という基準抜きでもこの詩の内容に
共感できない、たとえ道徳的に許されても、
わざわざ愛と怠惰なくらしにおぼれたいとは思わない、
というような人が。

(極端な例をあげると上の話のニュアンスが変わって
しまうが、考えてみればバイロニック・ヒーローも、
愛と怠惰なくらしにおぼれ、そしてそれに飽き飽きして
しまった人だったりする。)

* * *

英文テクストは、Ezra Pound, Ripostes (1912) より。
http://archive.org/details/ripostesofezrapo00pounrich

* * *

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音楽(5)--音--

音楽(5)--音--

『水琴窟』
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008946121-00
(国立国会図書館の所蔵データ)

『卯建の町の水琴窟』
http://www.env.go.jp/air/life/oto/CYUBU/P49.html
(環境省のデータ)
http://www.bookoffonline.co.jp/old/0001055384
http://www.amazon.co.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%
AE%E9%9F%B3%E9%A2%A8%E6%99%AF-%E5%8D%AF%E5%81%A5%
E3%81%AE%E7%94%BA%E3%81%AE%E6%B0%B4%E7%90%B4%E7%
AA%9F-%E7%89%B9%E6%AE%8A%E9%9F%B3/dp/B00005GVV6/
ref=sr_1_fkmr0_1?ie=UTF8&qid=1341030106&sr=8-1-fkmr0
(ほか、中古品として入手できる? 20120630現在。)

* * *

また追記します。

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Pound, "A Girl"

エズラ・パウンド (1885-1972)
「少女」

木がわたしの手のなかに入り、
樹液がわたしの腕をのぼる。
木がわたしの胸のなかに育っている。
下向きに、
その枝がわたしから伸びる、腕のようなかたちで。

君は木、
君は苔、
君は風吹く空の下に咲くすみれたち。
なのに、とても高いところにいて、わたしには手がとどかない。
--なんて、ただの愚かな話。

* * *

Ezra Pound
"A Girl"

The tree has entered my hands,
The sap has ascended my arms,
The tree has grown in my breast---
Downward,
The branches grow out of me, like arms.

Tree you are,
Moss you are,
You are violets with wind above them.
A child---so high---you are,
And all this is folly to the world.

* * *

解釈例と訳注。この詩のポイントは二つ。

1. 1-6行が提示するこの詩のシナリオ。

「君は木で、手からわたしのなかに入り、腕をのぼり、
胸のなかで大きくなっているかのよう。」

恋愛関係の話でよくあるような、好きな人に
心を奪われて・・・・・・という状態や、
好きな人に手でふれたときの感覚が手から
頭や胸に伝わることを、このような比喩で。

少しシュールであると同時に、生命力のようなものや
不思議な一体感も感じられる表現。

---
2. 9行目の "so high".

「わたし」の好きな子(a child)がso highとはどういうこと?

So:
「そのように」。どのようにかといえば、前数行にある
木、苔、そしてすみれたちのように。この比喩が大切だから、
オリジナルではイタリック体で強調されている。

High:
高いところにある(OED 3)。
身分、気位などが高い、威厳がある(OED 5a)。
質的に高い、すぐれている(OED 6a)。
深遠で理解が困難(OED 6c)。
(植物などが)進化している(OED 6d)。
高価である(OED 10e)。

(1)
まずふつうに考える。木、苔、すみれは、通常の意味では
highではない。ふつうに野に(地面に)生えていて、
特に上品に気どっているわけではない。特に複雑な
ものでもないし、高価なものでもない。

(2)
しかしそれでも、木、苔、すみれは、なぜかhighであるように、
すなわち、身分と気位が高く、威厳があり、質的にすぐれていて、
深遠で理解を超えていて、複雑に進化していて、高い価値が
あるように思われる。(一言でいえば、たとえば、きれいだから。)


(私が撮影したもの。)


By Manfred Morgner
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Moos_5769.jpg


By Jerzy Opioła
http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Viola_alpina_a2.jpg

(3)
まさにそのような低くて高い木、苔、すみれたちのように、
「わたし」の好きな子も、ふつうの子であると同時に、なぜか
身分と気位が高く、威厳があり、質的にすぐれていて、
深遠で理解を超えていて、複雑に進化していて、高い価値が
あるように思われる。

---
以上から、この詩を要約:

「わたし」の好きな子は、ありふれたふつうの少女のはずなのに、
なぜか手が届かない気高い存在のように思われる。
そんな彼女は、もはや「わたし」のからだの一部のよう。

* * *

人間と通じあうべきもの、一体化すべきもの、という
ワーズワース風の自然観の一変奏のように思われる。

* * *

英文テクストは、Ezra Pound, Ripostes (1912) より。
http://archive.org/details/ripostesofezrapo00pounrich

* * *

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