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Donne, "To Mr T. W." ("Pregnant again. . . .")

ジョン・ダン
「T・W君に」

いつもの双子、〈希望〉と〈恐れ〉を妊娠して、
君にたびたび手紙を書いて訊く。どこにいますか?
お元気ですか? お手紙いただけません?

まるで、抜け目ない乞食が通りでじーっと
お恵みをくれそうな人の手や目の動きを観察して、
それで少し希望が頭に宿る時のよう。

それで今、君から施しをもらって、君の手紙を読んで、
死んだ体が生き返る。
みじめに飢えていたけど、たくさん食べさせてもらえた。

このごちそうの後、ぼくの魂はお礼のお祈りをして、
そして君を称える。そして熱く抱きしめる、
君への愛を。でもそれは、
食べながらこう言う食いしん坊の愛と同じ--
「これ大好き、もっと食べたい」。

*****
John Donne
"To Mr T. W."

Pregnant again with th' old twins, Hope and Fear,
Oft have I asked for thee, both how and where
Thou wert; and what my hopes of letters were;

As in our streets sly beggars narrowly
Watch motions of the giver's hand or eye,
And evermore conceive some hope thereby.

And now thy alms is given, thy letter's read,
The body risen again, the which was dead,
And thy poor starveling bountifully fed.

After this banquet my soul doth say grace,
And praise thee for 't, and zealously embrace
Thy love, though I think thy love in this case
To be as gluttons, which say 'midst their meat,
They love that best of which they most do eat.

http://www.luminarium.org/sevenlit/donne/tomrtw.htm

*****
書簡詩・変則ソネット
aaa bbb ccc dddee
9+5

*****
セネカ Seneca
希望・恐れ hope / fear
ソネット sonnet

*****
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Donne, "The Computation"

ジョン・ダン
「たし算」

昨日からの最初の20年間、
信じられなかった、君が行ってしまったなんて。
その次の40年間、ぼくは君の優しい思い出に浸り、
その次の40年間、君はこれからもずっと優しいはず、と考えた。
次の100年は涙に溺れ、その次の200年はため息が吹き消した。
次の1000年、もう考えず、動かず、一年一年を
分けて数えることもやめた。君が好き、という気持ち一色だったから。
そしてその次の1000年、そのことも忘れたから。
一生より長い、とか言わないで。もうぼくは死んで、
不死になっているから。魂でも死ぬ?

*****
John Donne
"The Computation"

For my first twenty years, since yesterday,
I scarce believed thou couldst be gone away;
For forty more I fed on favours past,
And forty on hopes that thou wouldst they might last;
Tears drown'd one hundred, and sighs blew out two;
A thousand, I did neither think nor do,
Or not divide, all being one thought of you;
Or in a thousand more, forgot that too.
Yet call not this long life; but think that I
Am, by being dead, immortal; can ghosts die?

http://www.luminarium.org/sevenlit/donne/computation.php

*****
100年=1時間で計算しなおして読む。つまり、
行1にあるとおり、昨日君と会っていて、今日は
ひとりで寂しい、という話。

黙示録の1日を1年として読む16-17世紀の終末論を
恋愛詩に援用。(不死・魂などはキリスト教用語。)
Cf. From Napier, A Plaine Discouery of the Reuelation

最後の「死」は、16-17世紀の意味で読む。
エロな意味で、昨日「逝った」。

*****
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Donne, "Air and Angels"

ジョン・ダン
「空気と天使」

二回か三回か、ぼくはもう君を愛していた、
君の顔を見る前に、君の名前を知る前に。
声として、かたちのない炎として、
天使はあらわれる--それと同じで、
君がいたところに行くと
美しく輝く見えない何かが見えた。
ぼくの魂は
肉の手足なしでは何もできなくて、
恋も魂の子だから
同じように体が必要で、
そんな恋は訊いた--
「君は何? 誰?」
それで今、ぼくの恋は君の体のなかにいる。
君の唇、目、肌のなかにいる。

そんな体の錘(おもり)を恋の舟に積めば、
水の上でも倒れない、
お世辞・きれいごとでふわふわしない、
と思っていたら、積みすぎた。
一本の髪でも
恋には重すぎる。
恋は無じゃないけど、もの
でもない。究極に細く舞い輝く髪とも違う。
だから、いちばん純粋な、ものだけどものじゃない
空気の顔や羽を天使がもっているように、
ぼくの恋は君の心に入らせよう。
ほとんど同じくらい
空気と天使は純粋で、
男の恋と女の気持ちもそうでなければ。

*****
John Donne
"Air and Angels"

Twice or thrice had I lov'd thee,
Before I knew thy face or name;
So in a voice, so in a shapeless flame
Angels affect us oft, and worshipp'd be;
Still when, to where thou wert, I came,
Some lovely glorious nothing I did see.
But since my soul, whose child love is,
Takes limbs of flesh, and else could nothing do,
More subtle than the parent is
Love must not be, but take a body too;
And therefore what thou wert, and who,
I bid Love ask, and now
That it assume thy body, I allow,
And fix itself in thy lip, eye, and brow.

Whilst thus to ballast love I thought,
And so more steadily to have gone,
With wares which would sink admiration,
I saw I had love's pinnace overfraught;
Ev'ry thy hair for love to work upon
Is much too much, some fitter must be sought;
For, nor in nothing, nor in things
Extreme, and scatt'ring bright, can love inhere;
Then, as an angel, face, and wings
Of air, not pure as it, yet pure, doth wear,
So thy love may be my love's sphere;
Just such disparity
As is 'twixt air and angels' purity,
'Twixt women's love, and men's, will ever be.

https://www.poetryfoundation.org/poems/44091/air-and-angels-56d2230aa341c

*****
これは、なかなかすごいラヴ・ソング。
知的で、偽善がなくて、でも情緒的。
理想化すると嘘になるものをやっぱり理想化する、という。

*****
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Donne, ("Why are we by all creatures waited on?")

ジョン・ダン
(「すべての生きものが人に仕えるのはなぜ?」)

すべての生きものが人に仕えるのはなぜ?
なぜ土水風火は無駄にわたしに
糧を与えて生かす? 汚れたわたしに、
罪のない元素が、なぜ?
なぜ馬は何も知らず人に従う?
なぜ牛・猪は愚かにも
自分が弱いと思っている? なぜ人に打たれて死ぬ?
本当は人など皆殺しにして食い尽くせるのに?
ああ、わたしは他の生きものより弱く、悪い。
他のものには罪がない。疚しいところがない。
だから驚く、人より偉大なあの方に。
つくられたもののなか、人のため他の生きものが死ぬ。
すべてをつくった方、罪もなく死なないあの方は、
自分がつくった人を、自分の敵を、救うために、死ぬ。

*****
John Donne
("Why are we by all creatures waited on?")

Why are we by all creatures waited on?
Why do the prodigal elements supply
Life and food to me, being more pure than I,
Simpler and further from corruption?
Why brook'st thou, ignorant horse, subjection?
Why dost thou, bull and boar, so sillily
Dissemble weakness, and by one man's stroke die,
Whose whole kind you might swallow and feed upon?
Weaker I am, woe's me, and worse than you;
You have not sinn'd, nor need be timorous.
But wonder at a greater, for to us
Created nature doth these things subdue;
But their Creator, whom sin, nor nature tied,
For us, His creatures, and His foes, hath died.

https://en.wikisource.org/wiki/Holy_Sonnets/Holy_Sonnet_12

*****
神に捧げるソネット。
もとの手稿から削除された作品のひとつ。
原文は、人以外の生きものに呼びかけるかたちで
書かれている。

聖餐のパン・ワインが本当にイエスの肉・血であるとする
カトリックと、それを否定するプロテスタントの境界線上に
位置する微妙な作品。問題は、イエスが死んだのは過去に
一回だけか(プロテスタント)、それともミサのなかで
毎回死ぬか(カトリック)、ということ。16世紀から
17世紀にかけてのイングランドでは、このようなことが
宗教的・政治的に、そしてある意味科学的に、大問題であった。

しかし、宗教的・思想的・民族的・政治的・
社会的・科学的な理由で(正面から、あるいは陰で)
反目しあっている現代人に、過去を見て驚く・笑う
資格などまったくないであろう。

個人的には、(イングランドにて抑圧される側であった)
カトリックの視点があってもいい、という意図で
ダンは書いていると思う。

ダンはカトリックとして育ち、後に国教会に改宗。
(表向き従っただけ、とも。)

*****
英語としては、最後の現在完了時制("hath died")が
時間・場所の不特定性、および現在への継続を暗示する、
という点に(プロテスタントにとっての)問題がある。
死者は現在完了時制の文の主語にならない、ならば
イエスは……などということ。
(しかし逆に、初期近代英語では、現在完了で特定の
過去を表すこともできたので、さらに微妙。)

*****
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Donne, ("What if this present were the world's last night?")

ジョン・ダン
(今夜でこの世が終わるなら?)

今夜でこの世が終わるなら?
おお、おまえ、わたしの魂、心のなか、
十字架のキリストをよく見るがいい。
どうだ? 彼は怖い顔をしているか?
目には涙、それでまばゆい光が消えている。
苦しそうな顔、貫かれた頭から流れる血。
その口はお前に地獄落ちを宣告する……?
悪意ある敵にさえ許しを祈っていたはずでは……?
違う、キリストは怖くない。偶像のように
悪くて素敵な女の子たちを思い出そう。
優しい子はきれい、冷たい子はかわいくない、
と言って口説いてきた子たち……。それと同じで、
恐ろしい姿をしているのは悪霊だけ、
美しいキリストには間違いなく慈悲の心が宿っているはず。

*****
John Donne
("What if this present were the world's last night?")

What if this present were the world's last night?
Mark in my heart, O soul, where thou dost dwell,
The picture of Christ crucified, and tell
Whether His countenance can thee affright.
Tears in His eyes quench the amazing light;
Blood fills his frowns, which from His pierced head fell;
And can that tongue adjudge thee unto hell,
Which pray'd forgiveness for His foes' fierce spite?
No, no; but as in my idolatry
I said to all my profane mistresses,
Beauty of pity, foulness only is
A sign of rigour ; so I say to thee,
To wicked spirits are horrid shapes assign'd;
This beauteous form assures a piteous mind.

https://en.wikisource.org/wiki/Holy_Sonnets/Holy_Sonnet_13

*****
神に捧げるソネット。
もとの手稿から削除された作品のひとつ。

*****
終末論・千年王国思想(プロテスタント)
偶像崇拝(カトリック)
プラトン思想(内=外)

いずれも、肯定されているのか否定されているのか
わからない、という微妙な扱いかた。

*****
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Donne, ("Show me, dear Christ, thy spouse)

ジョン・ダン
(「救い主さま、透明に輝くあなたの花嫁を見せてください」)

愛しい救い主さま、透明に輝くあなたの花嫁を見せてください。
えええ!? それはあちらの岸にいて、豪華に着飾って
化粧もしているあの人なんですか? それともドイツやここで
身ぐるみ剥がれてぼろぼろになって泣いて悲しんでいるような方ですか?
千年眠っていて、ある年、急に目覚めるような方ですか?
その方は自分が真理なのに、誤ることがあるのですか?
その方は過去に、今、未来に、どこにいますか?
ひとつの丘、七つの丘、丘のないところ、のどこですか?
その方はわたしたちと一緒に暮らしていますか? それとも騎士の
試練のように、わたしたちは旅をして探して求愛すべきですか?
優しい夫の救い主さま、あなたの花嫁をこっそり見せてください。
恋するわたしたちの魂に、鳩のように優しいあなたの妻を口説かせてください。
その方があなたをいちばん愛している時、あなたにとって最高に愛しい時、
それはその方ができるだけ多くの男たちに抱かれている時のはずです。

*****
John Donne
("Show me, dear Christ, thy spouse so bright and clear")

Show me, dear Christ, thy spouse so bright and clear.
What! is it she which on the other shore
Goes richly painted? or which, robbed and tore,
Laments and mourns in Germany and here?
Sleeps she a thousand, then peeps up one year?
Is she self-truth, and errs? now new, now outwore?
Doth she, and did she, and shall she evermore
On one, on seven, or on no hill appear?
Dwells she with us, or like adventuring knights
First travel we to seek, and then make love?
Betray, kind husband, thy spouse to our sights,
And let mine amorous soul court thy mild dove,
Who is most true and pleasing to thee then
When she is embraced and open to most men.

http://www.luminarium.org/sevenlit/donne/holysonnet18.php

*****
神・救い主の妻 = 教会

*****
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Donne, "To His Mistress Going to Bed"

ジョン・ダン
「愛しいお嬢さまに、ベッドに行こう、と」

おいで、お嬢さま、ぼくに休息はいらないから。
君に種を植えないと、ぼくはある意味身重な感じ。
決闘の時、敵を前にして立ってるだけで
きつかったりする、戦ってないのに。それと同じ。
さあ、銀河のように輝くその帯をほどいて。
そして星降るこの世界よりきれいなからだを見せて。
きらきらのスパンコールの胸あてもはずして。
きょろきょろ落ちつかない目が集中できるように。
首飾りもとって。金と銀と宝石のチャイムで
ベッドの時間をお知らせして。
君を抱きしめるコルセットもはずして。うらやましい、
君にぴったりくっついてるなんて。
ドレスがはらりと落ちてきれいな景色が見えてくる。
丘の影から花咲く牧場が出てきたかと思った。
金細工の小さな冠も脱いで。
金色の髪そのものが冠だから。
タイツと靴も脱いで。そしてそっと
神聖な愛の神殿に、このやわらかなベッドにきて。
昔、こんな真っ白な服で天使はこの世に
降りてきた。君も天使だから、君がいるだけで
ここは天国、それかマホメットのハレム。おばけも
白い服を着てるけど、見わけるのはかんたん。
天使とおばけの違いはこれ--
おばけを見て立つのは髪、天使ならからだ、の一部。

さまようぼくの手を特許して。自由に探検させて、
前に後ろに真んなかに、それから上にも下にも。
そう、まさに君はぼくのアメリカ、ぼくの新大陸、
ぼくの王国、国民もぼくだけだからぜったい平和、
宝石あふれるぼくの鉱脈、帝王ぼくの国。
最高に幸せなぼく! 君を発見できたから!
ここに閉じこめられることこそ自由。
手がしばられたら、同じところで心もしばられていたい。

さあ素っ裸で準備OK! これですべての喜びが君のもの。
魂がからだを脱ぐように、からだも服を脱がなくちゃ。
でないと本当の喜びは味わえない。女の子がつける宝石は
アタランタのりんごみたいに男の目を惹きつける。
バカな男は宝石を見て、そして
その宝石のほうを好きになる、女の子じゃなく。
無知な人は絵や本の派手な装丁が好き。
女の子もそんな派手な服を着る。
でも本当は女の子自身が神秘思想の本だから、
ぼくらはその奥儀を学んでりっぱな人になるために
すみずみまでちゃんと読まないと。
産婆さんに見せるようにすべてを
見せて。そんな時こんな白いシーツで隠さないし。
ということで、ぜんぜん悪いことじゃないから大丈夫。
お手本としてぼくももう裸。だったら
君が男のぼくより着てるって変じゃない?

*****
John Donne
"To His Mistress Going to Bed"

Come, madam, come, all rest my powers defy;
Until I labour, I in labour lie.
The foe ofttimes, having the foe in sight,
Is tired with standing, though he never fight.
Off with that girdle, like heaven's zone glittering,
But a far fairer world encompassing.
Unpin that spangled breast-plate, which you wear,
That th' eyes of busy fools may be stopp'd there.
Unlace yourself, for that harmonious chime
Tells me from you that now it is bed-time.
Off with that happy busk, which I envy,
That still can be, and still can stand so nigh.
Your gown going off such beauteous state reveals,
As when from flowery meads th' hill's shadow steals.
Off with your wiry coronet, and show
The hairy diadems which on you do grow.
Off with your hose and shoes; then softly tread
In this love's hallow'd temple, this soft bed.
In such white robes heaven's angels used to be
Revealed to men; thou, angel, bring'st with thee
A heaven-like Mahomet's paradise; and though
Ill spirits walk in white, we easily know
By this these angels from an evil sprite;
Those set our hairs, but these our flesh upright.

Licence my roving hands, and let them go
Before, behind, between, above, below.
O, my America, my Newfoundland,
My kingdom, safest when with one man mann'd,
My mine of precious stones, my empery;
How am I blest in thus discovering thee!
To enter in these bonds, is to be free;
Then, where my hand is set, my soul shall be.

Full nakedness! All joys are due to thee;
As souls unbodied, bodies unclothed must be
To taste whole joys. Gems which you women use
Are like Atlanta's ball cast in men's views;
That, when a fool's eye lighteth on a gem,
His earthly soul might court that, not them.
Like pictures, or like books' gay coverings made
For laymen, are all women thus array'd.
Themselves are only mystic books, which we
—Whom their imputed grace will dignify—
Must see reveal'd. Then, since that I may know,
As liberally as to thy midwife show
Thyself; cast all, yea, this white linen hence;
There is no penance due to innocence:
To teach thee, I am naked first; why then,
What needst thou have more covering than a man?

http://www.luminarium.org/sevenlit/donne/elegy20.htm

*****
マーロウ訳のオウィディウス『恋の歌』の路線のエロティックな詩。
でもダンは(後の)セント・ポール大聖堂の主席司祭。
Cf.
Marlowe (tr.), Ovid's Elegia 1.5
Carew, "Rapture"
Milton, A Maske (part) ("Nay Lady sit. . . .")

文学史的には、ペトラルカ的純愛路線の対立項として、また
ペトラルカにもギリシャ・ローマ古典にもないタイプの比喩・
修辞の実験として、ある意味で重要。……などとあえて論じる
ような内容でもないが。

*****
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Donne, "Negative Love"

ジョン・ダン (1572-1631)
「否定愛」

わたしは絶対身を落とさない。
目や頬やくちびるを貪って喜ぶ体は卑しい。
まず身を落とさない。
美徳や精神を称えて喜ぶ心も卑しい。
体や心は知っている、何を求めて
自分が熱く燃えるのか。
わたしの愛はもっと愚かでもっと気高い。
求めるものが手に入らないから。
求めるものが手に入った時でも。

もっとも完璧なのは
否定でしか表現できないもの。
わたしの愛こそまさにそれ。
すべての人が求めるすべてにわたしは言う、それじゃない、と。
わたしについてわたしが知らないことを知る人が、
いちばんわたしを知っている。教えて、そんな人、
わたしが求めず求めるものは何? さしあたり、
こう考えれば悩まない。
あたりはない、つまりはずれもない。

20170731

*****
わたしは絶対に身を落とさない、あのように、
目や、頬や、くちびるを餌食として貪り食う者のようには。
まれにしか身を落とさない、あのように、
美徳や精神を称えることしかできない者のようには。
感覚や理解は
何が自分を燃えあがらせるか知っているだろう。
卑しく無知であっても、わたしの愛のレベルはもっと高い。
なぜならわたしは、いつも求めるものを手に入れられないから。
何がほしいかわかっていても。

もし、もっとも完璧なものとは、
否定のかたちでしか表現できないもので
あるならば、わたしの愛こそ、そういうもの。
すべての人が愛するすべてのものに、わたしはいう。ちがう、と。
わたしたちには知りえないことを解読できる人が、
わたしたち自身についてもっともよく知っているというなら、
私の求める、その存在しない何かについて教えてほしい。今のところ、
わたしは、こう考えて悩まないようにしている。求めるものが
存在しないなら、それは手に入らないが、失うこともないだろう、と。

20120922

*****
John Donne
"Negative love"

I Never stoop'd so low, as they
Which on an eye, cheeke, lip, can prey,
Seldome to them, which soare no higher
Then vertue or the minde to'admire,
For sense, and understanding may
Know, what gives fuell to their fire:
My love, though silly, is more brave,
For may I misse, when ere I crave,
If I know yet, what I would have.

If that be simply perfectest
Which can by no way be exprest
But Negatives, my love is so.
To All, which all love, I say no.
If any who deciphers best,
What we know not, our selves, can know,
Let him teach mee that nothing; This
As yet my ease, and comfort is,
Though I speed not, I cannot misse.

Poems (1633), STC 7045

*****
否定神学ならぬ「否定愛」。

7 silly
粗野な、身分が低い、田舎者の、知性に欠ける(OED 3-4)。
1-4行目の宮廷的な「彼ら」they/themとの対比で。

8-9
may I misse what I would have
+
when ere I crave what I would have
+
If I know yet what I would have

9 If
= Even if (OED 4)。

10 simply
例外なく、絶対的に(OED 6d)。

13 I say no
つまり、それはわたしのほしいものではない、ということ。

18 speed
うまくいく、目的を達成する(OED 1)。

*****
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Donne, ("Spit in my face, you Jews")

ジョン・ダン
(「わたしの顔に唾を吐け」)

わたしの顔に唾を吐け、おまえたちユダヤ人、
脇を刺せ。殴り、嘲り、鞭打ち、十字架に磔にしろ。
わたしは罪人、今も罪を犯している。あの方だけが
罪もないのに死んできた……。
いや、わたしの死は償いにならない。
わたしの罪はユダヤ人の不敬よりはるかに重い。
ユダヤ人は天に昇る前のひとりの男を一度殺したのみ。だが、わたしは
毎日十字架で処刑している、あの神である方を。
ああ! だから驚くべきあの方の、この世のものならぬ愛を称えよう。
王は罪を赦す。あの方は罪人のかわりに罰を受ける。
ヤコブは卑しく痛い服を着た、
エサウの地位を奪って利を得るために。
神は卑しい人の肉を身につけた、
弱くなり、痛みと苦しみのなか死ぬために。

20200416

*****
わたしの顔に唾を吐きかけてください、ユダヤのあなたがた、
わたしの脇を刺してください。わたしを殴り、嘲り、鞭打ち、十字架に
かけてください。わたしは罪を犯してきましたから。今でも犯して
いますから。そして悪をなさないあの方だけが死んだのですから--
いや、わたしが死んでも罪の償いにはならない。
わたしの罪はユダヤ人の悪よりはるかに大きい。
彼らは天に昇る前のひとりの男を一回殺しただけだが、わたしは
毎日毎日殺してしまっている、神になったあの方を。
ああ! だからあの方の比類なき愛を称えよう。
罪を許す王も偉いが、罪人のかわりに罰を受けるあの方はもっと偉い。
ヤコブは卑しく肌に痛い服を着た、
エサウの地位を奪って得をするために。
これに対し、神は卑しい人間の肉を身につけた。
弱くなるために。痛みと苦しみのなか死ぬために。

20160913

*****
John Donne
("Spit in my face, you Jews")

Spit in my face, you Jews, and pierce my side,
Buffet, and scoff, scourge, and crucify me,
For I have sinn'd, and sinne', and only He,
Who could do no iniquity, hath died.
But by my death can not be satisfied
My sins, which pass the Jews' impiety.
They kill'd once an inglorious man, but I
Crucify him daily, being now glorified.
O let me then His strange love still admire;
Kings pardon, but He bore our punishment;
And Jacob came clothed in vile harsh attire,
But to supplant, and with gainful intent;
God clothed Himself in vile man's flesh, that so
He might be weak enough to suffer woe.

http://www.luminarium.org/sevenlit/donne/sonnet11.php

*****
(キーワード)

ソネット sonnet
キリスト教 Christianity
イングランド宗教改革 English Reformation
カトリック信仰 Catholicism
教皇信仰者 Papist
プロテスタント Protestant
イングランド国教会 Anglican Church
エサウとヤコブ Esau / Jacob
カルヴァン Calvin
予定 Predestination
主の晩餐・聖餐・聖体拝領・聖体拝受・ミサ・秘蹟・典礼
Communion, Eucharist, Lord's Supper, Mass, sacrament
聖餐のパンとワインのなかにイエスの体は存在するか
Consubstantiation, real presence, transubstantiation,

*****
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Donne, "A Valediction: Of Weeping"

ジョン・ダン
「別れの歌--涙--」

泣いてしまう、
君の顔を見てると。もうじきさよならだから。
この涙は金貨のよう、君の顔が刻印されて映ってる。
特別に大事なものなんだ。
涙のなか、
君が宿ってるんだ。
それは大きな悲しみの果実で、もっと大きな悲しみを予言してる。
涙が落ちれば、そのなかの君も落ちて消える。
海をこえて離れたら、もう君が見えないように。

球体に
職人は地図を貼りつけて、
ヨーロッパやアフリカやアジアをそこにつくる。
あっという間に無から全世界ができあがる。
涙の粒も同じで、
君が映っていれば、
それはぼくの地球、ぼくの世界。
そして君の涙がぼくの涙といっしょにあふれ、
その世界を流し去る。君が流す涙で、ぼくの天国がとけていく。

ねえ、ダメだよ、月より強く
涙で海を満ちさせないで。
君が泣くと、ぼくは死んでしまう。海が
まねをして、本当に嵐になってしまうから。
風も
まねをして、
いつも以上に荒れてしまう、
君とぼくがいっしょにため息をついてたら。
ため息をたくさんつくのはひどいことだよ。その分ぼくの死が早まるんだ。

* * *
John Donne
"A Valediction: Of Weeping"

LET me pour forth
My tears before thy face, whilst I stay here,
For thy face coins them, and thy stamp they bear,
And by this mintage they are something worth.
For thus they be
Pregnant of thee;
Fruits of much grief they are, emblems of more;
When a tear falls, that thou fall'st which it bore;
So thou and I are nothing then, when on a divers shore.

On a round ball
A workman, that hath copies by, can lay
An Europe, Afric, and an Asia,
And quickly make that, which was nothing, all.
So doth each tear,
Which thee doth wear,
A globe, yea world, by that impression grow,
Till thy tears mix'd with mine do overflow
This world, by waters sent from thee, my heaven dissolvèd so.

O! more than moon,
Draw not up seas to drown me in thy sphere;
Weep me not dead, in thine arms, but forbear
To teach the sea, what it may do too soon;
Let not the wind
Example find
To do me more harm than it purposeth:
Since thou and I sigh one another's breath,
Whoe'er sighs most is cruellest, and hastes the other's death.

* * *
英語テクストは次のページから。
http://www.luminarium.org/sevenlit/donne/valweep.php

* * *
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Donne, ("Batter my heart, three-person'd God")

ジョン・ダン
(三位一体の神さま、こなごなになるまで)

三位一体の神さま、こなごなになるまで
わたしの心を打ち砕いてください。来てドアを
たたいてくださるくらいではたりません。息を吹き入れ、輝き、
そしてわたしを罪から解放してください。
わたしが立ちあがれるように、まっすぐ立っていられるように、
わたしをひっくり返してください。わたしを攻撃
してください。壊して、爆破して、焼き尽くしてください。
そして新しい人間にしてください。
わたしは、まるで占領された町です。
あなた以外のものになってしまっています。
あなたにおいでいただきたいのですが、でも、
ああ、それができないのです。
あなたの代理である理性が
わたしを守ってくれることになっているのですが、
その理性も捕虜になってしまっています。
弱くて、そして、いつ裏切るかわかりません。
神さま、わたしは心からあなたを愛しています。
あなたに愛されたいと思っています。
でも、あなたの敵と結婚してしまっているのです。
離婚させてください。こんな結婚、こんな結び目を
もう一度ほどいてください。壊してください。
誘拐してください。監禁してください。だってわたしは、
あなたの奴隷にならないかぎり自由になれないのです。
あなたに汚されないかぎり、きれいなからだでいられないのです。

* * *
John Donne
("Batter my heart, three-person'd God")

Batter my heart, three-person'd God ; for you
As yet but knock; breathe, shine, and seek to mend;
That I may rise, and stand, o'erthrow me, and bend
Your force, to break, blow, burn, and make me new.
I, like an usurp'd town, to another due,
Labour to admit you, but O, to no end.
Reason, your viceroy in me, me should defend,
But is captived, and proves weak or untrue.
Yet dearly I love you, and would be loved fain,
But am betroth'd unto your enemy;
Divorce me, untie, or break that knot again,
Take me to you, imprison me, for I,
Except you enthrall me, never shall be free,
Nor ever chaste, except you ravish me.

* * *
行1-9, 11はそれぞれ日本語では二行。

* * *
英語テクストは次のページから。
http://www.luminarium.org/sevenlit/donne/sonnet14.php

* * *
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Donne, ("Go and catch a falling star")

ジョン・ダン
「歌」
(「流れ星をつかまえに行こう」)

流れ星をつかまえに行こう。
マンドレイクの根を妊娠させよう。
過ぎた年月はどこに行く?
悪魔の足を二股にしたのは誰?
どうしたら人魚の歌が聞こえる?
どうしたらチクチク嫉妬を感じないですむ?
どんな
風が吹いたら
女の子は浮気しなくなる?

もし君が旅行好きなら、
ありえないものを探して、
毎日毎晩、三十年間旅してみて、
年をとって雪のように髪が白くなるくらいまで。
そして帰ってきたら聞かせて、
君が見たふしぎなできごとを全部。
たぶん、こういうから、
どこにもいなかった、って、
かわいいのに浮気しない女の子なんて。

もしそんな子がいたら教えて。
そんな子がいるなら旅する甲斐もあるし。
でも、やっぱりいいや。ぼくは行かないから。
そんな子がすぐ隣の家にいたとして、
君があったときにその子が浮気をしてなかったとして、
君が手紙を書いているあいだはまだそうだったとしても、
でも、
そんな子も、
ぼくが着く頃には絶対浮気してるはず。二人か三人と。

* * *
John Donne
"Song"
("Go and catch a falling star")

Go and catch a falling star,
Get with child a mandrake root,
Tell me where all past years are,
Or who cleft the devil's foot,
Teach me to hear mermaids singing,
Or to keep off envy's stinging,
And find
What wind
Serves to advance an honest mind.

If thou be'st born to strange sights,
Things invisible to see,
Ride ten thousand days and nights,
Till age snow white hairs on thee,
Thou, when thou return'st, wilt tell me,
All strange wonders that befell thee,
And swear,
No where
Lives a woman true and fair.

If thou find'st one, let me know,
Such a pilgrimage were sweet;
Yet do not, I would not go,
Though at next door we might meet,
Though she were true, when you met her,
And last, till you write your letter,
Yet she
Will be
False, ere I come, to two, or three.

* * *
ある意味、みんな浮気な女の子が好き、という。

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.luminarium.org/sevenlit/donne/song.php

* * *
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Donne, ("Death be not proud")

ジョン・ダン (1572-1631)
「聖なるソネット IV」
(「〈死〉よ、思いあがってはいけない」)

〈死〉よ、思いあがってはいけない。おまえは強い、恐ろしい、
という人もいるが、本当はそうではない。
殺した、とおまえが思っている者も、
実は死んではいない。おまえはわたしを殺せない。
おまえの生き写しである〈眠り〉、〈休息〉は、
とても気持ちいい。だから、おまえ自身はもっともっと気持ちいいはずだ。
いちばんすぐれた人が最初におまえと行く。
骨が安らぎ、魂が解放されるということだ。
おまえは〈運命〉、〈偶然〉、王たち、絶望した人間の奴隷にすぎず、
おまえの仲間は、毒と戦争と病気くらいだ。
それに、アヘンやまじないのほうがよく眠らせてくれる、
おまえの一撃よりも。どうして図にのることができる?
少し眠ったら、わたしたちは永遠の世界で目を覚ます。
もはやそこに〈死〉はない。〈死〉よ、おまえのほうが死ぬのだ。

* * *
John Donne
Holy Sonnet VI
("Death be not proud")

Death be not proud, though some have called thee
Mighty and dreadfull, for, thou art not soe,
For, those, whom thou think'st, thou dost overthrow,
Die not, poore death, nor yet canst thou kill mee;
From rest and sleepe, which but thy pictures bee,
Much pleasure, then from thee, much more must flow,
And soonest our best men with thee doe goe,
Rest of their bones, and soules deliverie.
Thou art slave to Fate, chance, kings, and desperate men,
And doth with poyson, warre, and sicknesse dwell.
And poppie, or charmes can make us sleepe as well,
And better then thy stroake; why swell'st thou then?
One short sleepe past, wee wake eternally,
And death shall be no more, death thou shalt die.

* * *
英語テクストは、Poems (1633, STC 7045) より。
パンクチュエーションを一部修正。

* * *
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