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Symonds, JA, "The Vanishing Point"

ジョン・アディントン・シモンズ
「消失点」

蝙蝠(こうもり)が暗い湖を舞う。
そのかすかな声が
聞こえる人はごくわずか。
天地の幸せの歌、最後の声、
それが聞こえる人もごくわずか。
それは、誰にでも聞こえる神への歌に
心の耳が溺れていない人。むしろ
最高の美と呪いの槍に耳を貫かれた人。
そんな人には、結婚の歌も勝利の歌も、
神の賛歌も交響曲も、みな途切れて死ぬ。
彼らが求めるのは高く震える響き。張り詰めた、姿のない、
この世を超える、人の歌ならぬ歌。
鋭い、繊細な、天の、最高に美しい本物の歌。
震える星の光のように聞こえない歌。

*****
John Addington Symonds (1840–93)
"The Vanishing Point"

There are who, when the bat on wing transverse
Skims the swart surface of some neighbouring mere,
Catch that thin cry too fine for common ear:
Thus the last joy-note of the universe
Is borne to those few listners who immerse
Their intellectual hearing in no clear
Paean, but pierce it with the thin-edged spear
Of utmost beauty which contains a curse.
Dead on their sense fall marches hymeneal,
Triumphal odes, hymns, symphonies sonorous;
They crave one shrill vibration, tense, ideal,
Transcending and surpassing the world's chorus;
Keen, fine, ethereal, exquisitely real,
Intangible as star's light quivering o'er us.

http://www.sonnets.org/symonds.htm#300

*****
ロマン派以降の、神抜きで理想を描こうと試みるタイプの詩。
シェリー、キーツからの流れ。

*****
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Meredith, Modern Love 26

ジョージ・メレディス
『今時の恋愛』26

傷を負っていない〈愛〉は空高く飛ぶ鷲のよう、
大地の上を羽ばたき、赤い夕暮れから
薔薇色の夜明けに向かって舞い上がる。捕まえようと
網をつくっても無駄。はるか遠くを彼は飛ぶ。
でも、矢に撃たれたら話は別。
痛みと疲れに自由を奪われる。
赤い血が滴って、鎖のように
大地に縛る。もう彼は遠くに行けない。
こうして〈愛〉は、ずる賢い蛇になる。
かつてぼくの胸には鷲がいた。
今は呪いの蛇がいる。
だから何もいわない君の心が読める。
真実を話す君の嘘が聞こえる。
ぼく自身は君のしたことを許すかもしれないけど、
でも我慢して。君は〈愛〉を傷つけたから、
その牙に噛まれて毒を注がれることになる。

*****
George Meredith
Modern Love 26

Love ere he bleeds, an eagle in high skies,
Has earth beneath his wings: from reddened eve
He views the rosy dawn. In vain they weave
The fatal web below while far he flies.
But when the arrow strikes him, there's a change.
He moves but in the track of his spent pain,
Whose red drops are the links of a harsh chain,
Binding him to the ground, with narrow range.
A subtle serpent then has Love become.
I had the eagle in my bosom erst:
Henceforward with the serpent I am cursed.
I can interpret where the mouth is dumb.
Speak, and I see the side-lie of a truth.
Perchance my heart may pardon you this deed:
But be no coward:--you that made Love bleed,
You must bear all the venom of his tooth!

http://www.sonnets.org/modern.htm#026

*****
16行の変則ソネット。
テーマは妻の浮気、結婚の破綻。
メレディスの最初の結婚を扱う詩集といわれる。

個人的には、恋愛・結婚について、こう熱くなる
感覚があまりわからない。訳していて刺激的、
とは思うが。

*****
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Meredith, Modern Love 30

ジョージ・メレディス
『今時の恋愛』30

人とは何? 最初、人は動物で、次に
知恵ある存在に跳ね上がり、そして
いつか来る死の影、
墓碑銘の影のなか生きるようになる。
そんな人のところに〈愛〉がやってくる。まるで太陽王、
その光のなかで影は消える。
ぼくたちは支配者となり、命はあたたかく、
知恵と本能が一体となる。
でも、〈自然〉は考える--「人がわたしにいちばん
似ているのは、わたしについていちばん無知な時。だから
罰してやらないと」。こうして若い〈愛〉はどこか消え、
ぼくたちは目を覚ます。夢から醒めた恐怖に震えが止まらない。
賢い人とは〈自然〉を学ぶ人、
目を開けて生きるわずかな人、
科学的な動物になれる人。
このソネットを君の目に捧げよう。

*****
George Meredith
Modern Love 30

What are we first? First, animals; and next
Intelligences at a leap; on whom
Pale lies the distant shadow of the tomb,
And all that draweth on the tomb for text.
Into which state comes Love, the crowning sun:
Beneath whose light the shadow loses form.
We are the lords of life, and life is warm.
Intelligence and instinct now are one.
But nature says: 'My children most they seem
When they least know me: therefore I decree
That they shall suffer.' Swift doth young Love flee,
And we stand wakened, shivering from our dream.
Then if we study Nature we are wise.
Thus do the few who live but with the day:
The scientific animals are they.
Lady, this is my sonnet to your eyes.

http://www.sonnets.org/modern.htm#030

*****
16行の変則ソネット。
テーマは妻の浮気、結婚の破綻。

*****
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Eliot, G., Brother and Sister 1

ジョージ・エリオット
『兄と妹』1

いつも思い出す、
わたしと兄さんが、ふたつのつぼみみたいだった頃のこと。
蜂がぶんぶん飛んできただけでつぼみはゆれてキスする、
それくらい、わたしたちはいつもいっしょにそばにいた。

兄さんは小さくて、
背は100センチくらい、でもこわいもの知らずだった。
わたしはもっと小さくって、子犬みたいに兄さんについて
走っていったり、ついていけなかったり。

兄さんは頭がよかった。ヘビや鳥についてなんでも
知ってた。神さまのお気に入りはどのヘビか、とか。
兄さんに知らないことはなかった。兄さんが
知らないことを知ってるのは天使だけ、とか思ってた。

「しっ!」って兄さんがいえば、わたしは息を止めてじっとした。
「おいで!」っていったら、わたしはなにも考えずついていった。

*****
George Eliot
Brother and Sister 1

I cannot choose but think upon the time
When our two lives grew like two buds that kiss
At lightest thrill from the bee's swinging chime,
Because the one so near the other is.

He was the elder and a little man
Of forty inches, bound to show no dread,
And I the girl that puppy-like now ran,
Now lagged behind my brother's larger tread.

I held him wise, and when he talked to me
Of snakes and birds, and which God loved the best,
I thought his knowledge marked the boundary
Where men grew blind, though angels knew the rest.

If he said Hush! I tried to hold my breath;
Wherever he said Come! I stepped in faith.

http://www.online-literature.com/george_eliot/3656/

*****
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Calverley (tr.), "The Dead Ox" (Virgil, Georgics 3: 515ff.)

C・S・カーヴァリー (訳)
「死んだ牛」
(ウェルギリウス、『農事詩』 3:515ff.)

ああ、重く動かない犂(すき)の上に、牛が
倒れる。その口からは、血に染まった泡が吹き出している。
あえぎながら、牛は息を引きとる。悲しげな顔で農夫が
近づき、もう一頭、生きているほうの牛を
くびきからはずす。仕事の途中で、
犂は畑に放り出されたままだ。
森の奥の涼しいところも、気持ちのいい草原も、
もはや彼の気を惹かない。琥珀のように澄み、
崖の岩のところから平地にまで流れてくる川も、である。
大きな脇腹にはもう力が入らない。光のない目はガラスのよう。
重そうな首が低く、さらに低く、沈んでいく。
これまでしてきた仕事に対して、この牛はどれくらい感謝されるのか、
重くかたまった土を人間のためにずっと
耕してきたのに? しかも、牛たちは、イタリアのワインに酔いつぶれたり、
たくわえられたごちそうにおぼれたりしない。
緑の葉、汚れのない草だけを食べる。
澄んだ小川、気持ちよく流れる川の水だけを
飲む。罪がないからよく眠り、心配ごとで目を覚ますこともない。

* * *
C. S. Calverley (tr.)
"The Dead Ox" (Virgil, Georgics 3: 515ff.)

Lo! smoking in the stubborn plough, the ox
Falls, from his lip foam gushing crimson-stained,
And sobs his life out. Sad of face the ploughman
Moves, disentangling from his comrade's corpse
The lone survivor: and its work half-done,
Abandoned in the furrow stands the plough.
Not shadiest forest-depths, not softest lawns,
May move him now: not river amber-pure,
That volumes o'er the cragstones to the plain.
Powerless the broad sides, glazed the rayless eye,
And low and lower sinks the ponderous neck.
What thank hath he for all the toil he toiled,
The heavy-clodded land in man's behoof
Upturning? Yet the grape of Italy,
The stored-up feast hath wrought no harm to him:
Green leaf and taintless grass are all their fare;
The clear rill or the travel-freshen'd stream
Their cup: nor one care mars their honest sleep.

* * *
最後の数行は、人間よりも牛のほうが道徳的に
すぐれた生きかたをしている(のに、然るべく
評価されていない)、ということ。

* * *
英語テクストは、Verses and Translationsより。
https://archive.org/details/versesandtransla04096gut

* * *
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Calverley (tr.), Heine, "I crave an ampler, worthier sphere"

C・S・カーヴァリー (訳)
ハインリヒ・ハイネ
(「もっと広くて、もっとりっぱなところに行きたい」)

もっと広くて、もっとりっぱなところに行きたい。
全身から血を流してもいい、
ここのケチな連中、金のために平気で嘘をつく
奴隷どものあいだで息を詰まらせないですむならば。

奴らは食べる、飲む。まったくモグラそっくりで、
モグラくらい幸せだ。
そしてたんまり恵みを垂れる。貧しい人への
施し用のポストの口くらいに薄っぺらな。

奴らはパイプをくわえて道を行く。
手はポケットに突っこんで。幸せにも奴らは
お腹いっぱいだ。自分たちは
まったく食えない連中のくせに!

何かやましいこと、何か大きな罪を犯して
真っ赤な手だって、羊の毛のように白いってもの。
あの毛並みのいい、聖人面した連中にくらべれば。
借金を返せば、それでいいと思ってやがる。

ああ、おまえたち、遠くの国に飛んでいく雲よ、
どこでもいいから、好きなところにぼくも連れてってくれ。
雪降るラップランドでも、リビアの砂漠でも、
世界の果てでもいい。とにかく進もう!

連れてってくれ、雲よ! ああ、下を見てくれさえしない。
そして、(頭がいい証拠だ、)
ハンブルクの町の上にやってきたかと思ったら、
あっという間に、はるかかなたに去っていった。

* * *
C. S. Calverley (tr.)
Heinrich Heine
"I crave an ampler, worthier sphere"

I crave an ampler, worthier sphere:
I'd liefer bleed at every vein
Than stifle 'mid these hucksters here,
These lying slaves of paltry gain.

They eat, they drink; they're every whit
As happy as their type, the mole;
Large are their bounties ― as the slit
Through which they drop the poor man's dole.

With pipe in mouth they go their way,
With hands in pockets; they are blest
With grand digestions: only they
Are such hard morsels to digest!

The hand that's red with some dark deed,
Some giant crime, were white as wool
Compared with these sleek saints, whose creed
Is paying all their debts in full.

Ye clouds that sail to far-off lands,
O waft me to what clime ye will;
To Lapland's snows, to Libya's sands,
To the world's end ― but onward still!

Take me, O clouds! They ne'er look down;
But (proof of a discerning mind)
One moment hang o'er Hamburg town,
The next they leave it leagues behind.

* * *
パンク?

とりあえずハイネはハンブルクが嫌いだったらしい。

* * *
英語テクストはThe complete works of
C. S. Calverley (1905)より。
https://archive.org/details/completeworksofc00calv

* * *
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Bridges, "Nightingales"

ロバート・ブリッジズ (1844-1930)
「ナイティンゲールたち」

君の家のある山は美しいにちがいない。
実り多き谷で、川は輝いているにちがいない、
君に歌を教える川は。
星降る君の森はどこ? そこに行って歩きたい。
花のなか、天国のような空気のなか、
一年中咲いている花々のなかを!

いいえ、あの山に木々はなく、川も枯れている。
わたしたちの歌は欲望、夢にまで出てくる欲望の声。
それは、心が痙攣している音。
わたしたちを苦しめるぼんやりした幻、心の底の禁じられた希望は、
消え入る歌や、長いため息ではあらわせない。
どんなに歌が上手でも。

うっとりして聴く人間の耳に、ひっそり、大きな音で、
わたしたちは、夜のように暗いわたしたちの秘密を注ぐ。そして、
カーテンが開くように夜が明けて、
きれいな草花の生える牧場や、飛び出すかのような五月の枝が見える頃に
夢を見る。数えきれない昼の聖歌隊が
夜明けを歓迎するなかで。

* * *
Robert Bridges
"Nightingales"

Beautiful must be the mountains whence ye come,
And bright in the fruitful valleys the streams wherefrom
Ye learn your song:
Where are those starry woods? O might I wander there,
Among the flowers, which in that heavenly air
Bloom the year long!

Nay, barren are those mountains and spent the streams:
Our song is the voice of desire, that haunts our dreams,
A throe of the heart,
Whose pining visions dim, forbidden hopes profound,
No dying cadence, nor long sigh can sound,
For all our art.

Alone, aloud in the raptured ear of men
We pour our dark nocturnal secret; and then,
As night is withdrawn
From these sweet-springing meads and bursting boughs of May,
Dream, while the innumerable choir of day
Welcome the dawn.

* * *
タイトル
ナイティンゲールは鳥。夜にきれいな声で鳴く。

2
the streams wherefrom Ye learn your song
[must be] bright in the fruitful valleys

7
the streams [are] spent

9
[Or] A throe of the heart

10-11
No dying cadence, nor long sigh can sound
Whose [i.e.,the Heart's ≒ our] pining, dim visions
[and] forbidden, profound hopes

13-14
(参考)
シェイクスピアのハムレットの父は、
寝ているときに耳から毒を注がれて死ぬ。

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.theotherpages.org/poems/bridges1.html

* * *
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Landor, "Why, why repine"

ウォルター・サヴェッジ・ランドー (1775-1864)
(「なぜ? なぜ悲しみ、不平をいうのか? 友よ」)

なぜ? なぜ悲しみ、不平をいうのか? 友よ、
失われた喜びについて?
〈運命〉の女神たちは、何でも与えてくれるわけではないし、
たとえ与えてくれたものでも、みな去っていく。

空に虹、
草には露--
わたしは考えたりしない、
どうしてそれらはきらめくのか、どうして消えてしまうのか、などと。

わたしなら、腕を組んで立ち止まり、
虹や露を呼び戻そうとしたりはしない。無駄だから。
ここで、あるいはどこか別のところで、
それらはまた輝くのだから。

* * *
Walter Savage Landor
("Why, why repine, my pensive friend")

Why, why repine, my pensive friend,
At pleasures slipp'd away?
Some the stern Fates will never lend,
And all refuse to stay.

I see the rainbow in the sky,
The dew upon the grass,
I see them, and I ask not why
They glimmer or they pass.

With folded arms I linger not
To call them back; 'twere vain;
In this, or in some other spot,
I know they'll shine again.

* * *
'twere
= it were = it would be

* * *
英語テクストは次のウェブページより。
http://www.theotherpages.org/poems/landor01.html

* * *
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Clough, ("Old things need not be therefore true")

アーサー・ヒュー・クラフ (1819-1861)
(「古いことが、だからといって正しいとはかぎらない」)

「古いことが、だからといって正しいとはかぎらない」--
だが、イギリス人よ、同様に新しいことも正しいとはかぎらない。
そう、今しばらく古い考えをとっておこう。
そして、とっておくだけでなく、もう一度よく考えてみよう。

もう二千年ものあいだ、人々は
ここに積み蓄えてきた、労働と恐れを、
苦労して稼いできたものすべてを--
だが、もう一度よく考えてみよう。

わたしたち? わたしたちに何が見える? それぞれ、
目の前の数ヤードの空間くらいだ。
それで広い世界について何がわかる?
そう、もう一度よく考えてみよう。

ああ! この大きな社会はみずからの道を進む。
そして日が変わるごとに、何が正しいか、新しく決める。
人々はそれを捨てないが、とっておくこともない。
ましてや、それをふたたび考えたりなどしない。

* * *

Arthur Hugh Clough
("Old things need not be therefore true")

"Old things need not be therefore true,"
O brother men, nor yet the new;
Ah! still awhile the old thought retain,
And yet consider it again!

The souls of now two thousand years
Have laid up here their toils and fears,
And all the earnings of their pain,---
Ah, yet consider it again!

We! what do we see? each a space
Of some few yards before his face;
Does that the whole wide plan explain?
Ah, yet consider it again!

Alas! the great world goes its way,
And takes its truth from each new day;
They do not quit, nor can retain,
Far less consider it again.

* * *

6 laid up
畑の山の列(畝)として(土を)積む(OED 60b)。
(安全なところに)蓄えておく(60c)。
埋める(60f)。

6 fears
(おそらく)わかりやすさとToilsとの頭韻のため、
tearsとしている版もあるが、fearsのほうが正しいと思われる。

9-10 each a space / Of some few yards
= each [sees] a space / Of some few yards

11 explain
見せる(OED 2b)。詳細を示す(3)。
意味を与える(4a)。

12 plan
(この世界の)設計図、(この世界がつくられたときの)
計画(OED 2-3)。視線と垂直に交わる面としてとらえられた
視界(4a)。

13 world
現世的な利害や活動(OED 2)。大地とつくられた者すべて(7a)。
星(8b)。(神に)つくられたものとしての世界(9)。
人々(15)。何らかの人々の集団(16b)。人間社会(17a)。
The great worldで上流社会という意味も(18)。

13 take(s)
選ぶ(OED 23)。選んで採用する(24)。

* * *

リズムはストレス・ミーター(四拍子)。

基本的にこのパターン。四歩格的に音節数は各行8。


3行目だけ例外。音節数的にも、拍子的にもthoughtが余計。


つまり、ある意味、この詩のクライマックス、いちばん
いいたいことは、この行の内容、「今しばらく古い考えをとっておこう」。

ポイントは、これが1行目、人の言葉の引用としてあげられている
「古いことが、だからといって正しいとはかぎらない」の正反対で
あること。

* * *

英語テクストは、Leaves of Life (1914) より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/14849

スタンザ2はPoems of Arthur Hugh Clough (1913) から補足。
http://archive.org/details/poemsofarthurclo00clourich

* * *

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Thompson, "The Poppy"

フランシス・トムソン(1859-1907)
「ケシ」(モニカに)

夏が裸の大地の胸にキスすると、
その跡が赤いケシになる。
燃えるあくびのように、ケシは草のなかに生え、
風にあおがれてふくらみ、炎のようにゆれる。

ライオンのような赤く燃える口で、ケシは
太陽の血を飲み干す。太陽は死んで沈む。
東の空にワインが流れると、
ケシは、花のカップを輝く深紅に浸す。

やがて激しいまでの幸せに、ケシは力を失い、
疲れたジプシーのように熱くなり、
荒々しくも眠たげにまどろむ。
焼き焦がすキスを求め、くちびるをつき出して。

女の子が男と歩いていた。肩をならべ、
夕暮れの端のところを。
つないだ手と手のあいだに
20年の枯れた月日があったが、二人は気づいていなかった。

豊かな南国風の黒髪をゆらし、女の子が脇を見ると、
そこには、眠るジプシーのようなケシの実があった。
そして、子どもらしい思いつきでこれをすばやく折ってとり、
彼にわたした。こういいながら--「死ぬまで大事にして!」

水浴びからあがるニンフたちのように、
彼のほほえみが、ふるえながら涙の海から立ちあがった。
そしてよろこびが、沖の海にゆられるカモメのように、
とまどう彼の心の波にゆれた。

それは彼が知っていたから。彼女の知らないことを。
みずからの熱で火がついたかのように、
端からしおれたケシの実のなかに、まだ火がくすぶっていることを。

そして彼は気づく、手と手のあいだにある
20年の枯れた日々に。
花ではなく、しおれた20年の日々。

「はじめてだ」
彼は心に小さくつぶやく、「眠りの
花が目ざめを、
忘却の花が記憶をもたらしたのは。」

「はじめてだ、
足が赤くなるほど長いあいだケシに浸ってきているのに。」
そして彼は心に、さらに小さくつぶやく、
「ねえ、モニカ、ぼくはひとを愛する。愛するし、愛を知っているから。」

「君はひとを愛していないし、まだまったく知らない、
〈愛の神〉の宮殿にはいろんな部屋があることを。
早起きなひともいるが、ずっといるひとはほとんどいないということを。
みんなかなり違うニュアンスで聞き、理解するということも、
聖霊のように降ってくる〈愛の神〉のことばを。」

「君はまだ恋人と友だちの違いを知らない。
ひとが話すようなぼくと、本当のぼくの違いも知らない。
本当にぼくにぴったりのプレゼントなんだ、
君がくれた、この枯れた夢の花は。」

「ねえ、素直で移り気で、移り気だけど嘘のない君、
月日が経ったら、君はどうなるかな?
君は誰を、どんなかたちで、好きになるかな?
ねえ、素直で移り気で、移り気だけど嘘のない君?」

「ぼくを愛してくれたね、生まれてから死ぬまで、三回分--つまり、この三日間。
そんな気持ちは、ぼくの顔が見えなくなったら消えるはず。
でも、ぼくには、どこに行っても君の顔が見える。
ぼくが裏切らないように見張ってるんだ。」

「ぼくは、ね、君の恋人のただの代理。
何年か経ったら、
君はぼくの前から消えて、誰かのところに行く。
でも、ぼくは育ての母のように君のことを知ってる。そして愛してる。」

「だから、素直で移り気で、移り気だけど嘘のない君、
短い一生のあいだ、ぼくは君がくれた
このプレゼントをとっておくよ。たぶん、ぼくに
ぴったりの、この夢のつまった、枯れた花を。」

* * * * * *

眠りの花は小麦畑で頭をゆらす。
夢がつまって重い頭を。小麦にパンがつまっているように。
実った小麦、陽に赤く染まる眠りの花、
ともに刈られる。そして刈った人も〈時間〉に刈られる。

ぼくも人々のなか、無用な頭を垂れる。
ぼくが生むのは夢。小麦がパンを生むように。
育った人々、陽に焦げた眠りの花、
ともに〈時間〉に刈られる。でも、その後で
誰かが集めてくれたら。死んで眠るぼくが残したものを。

ねえ、かわいいモニカ、君のくれた枯れた夢の花は、
詩の本のなか、ずっと残る。
詩の隅に閉じこめられ、守られて。
刈りとる人からも、人を刈りとる〈時間〉からも。

かわいいモニカ、ぼくは時間の爪につかまる。
でも、詩の本のなかに残る、
認めてもらえたぼくの一部が--
ぼくの枯れた、枯れた夢が。

* * *

Francis Thompson
"The Poppy: To Monica"

Summer set lip to earth's bosom bare,
And left the flushed print in a poppy there;
Like a yawn of fire from the grass it came,
And the fanning wind puffed it to flapping flame.

With burnt mouth red like a lion's it drank 5
The blood of the sun as he slaughter'd sank,
And dipped its cup in the purpurate shine
When the eastern conduits ran with wine.

Till it grew lethargied with fierce bliss,
And hot as a swinked gipsy is, 10
And drowsed in sleepy savageries,
With mouth wide a-pout for a sultry kiss.

A child and man paced side by side,
Treading the skirts of eventide;
But between the clasp of his hand and hers 15
Lay, felt not, twenty withered years.

She turned, with the rout of her dusk South hair,
And saw the sleeping gipsy there;
And snatched and snapped it in swift child's whim,
With---"Keep it, long as you live!"---to him. 20

And his smile, as nymphs from their laving meres,
Trembled up from a bath of tears;
And joy, like a mew sea-rocked apart,
Tossed on the wave of his troubled heart.

For he saw what she did not see, 25
That---as kindled by its own fervency---
The verge shrivelled inward smoulderingly:

And suddenly 'twixt his hand and hers
He knew the twenty withered years---
No flower, but twenty shrivelled years. 30

"Was never such thing until this hour,"
Low to his heart he said; "the flower
Of sleep brings wakening to me,
And of oblivion memory."

"Was never this thing to me," he said, 35
"Though with bruisèd poppies my feet are red!"
And again to his own heart very low:
"O child! I love, for I love and know;

"But you, who love nor know at all
The diverse chambers in Love's guest-hall, 40
Where some rise early, few sit long:
In how differing accents hear the throng
His great Pentecostal tongue;

"Who know not love from amity,
Nor my reported self from me; 45
A fair fit gift is this, meseems,
You give---this withering flower of dreams.

"O frankly fickle, and fickly true,
Do you know what the days will do to you?
To your Love and you what the days will do, 50
O frankly fickle, and fickly true?

"You have loved me, Fair, three lives---or days:
'Twill pass with the passing of my face.
But where I go, your face goes too,
To watch lest I play false to you. 55

"I am but, my sweet, your foster-lover,
Knowing well when certain years are over
You vanish from me to another;
Yet I know, and love, like the foster-mother.

"So, frankly fickle, and fickly true! 60
For my brief life-while I take from you
This token, fair and fit, meseems,
For me---this withering flower of dreams."

* * * * * *

The sleep-flower sways in the wheat its head,
Heavy with dreams, as that with bread: 65
The goodly grain and the sun-flushed sleeper
The reaper reaps, and Time the reaper.

I hang 'mid men my needless head,
And my fruit is dreams, as theirs is bread:
The goodly men and the sun-hazed sleeper 70
Time shall reap, but after the reaper
The world shall glean of me, me the sleeper!

Love, love! your flower of withered dream
In leavèd rhyme lies safe, I deem,
Sheltered and shut in a nook of rhyme, 75
From the reaper man, and his reaper Time.

Love! I fall into the claws of Time:
But lasts within a leavèd rhyme
All that the world of me esteems---
My withered dreams, my withered dreams. 80

* * *

ケシ:
その一種がアヘンの原料となる。畑によく咲く(ヒナゲシ: corn poppy,
field poppy)。

ぼく:
トムソン。医者の息子で浮浪者あがりで、
アヘン中毒の詩人・批評家。このとき詩に描かれた
できごとがあったとき(1891年)、31歳。


モニカ:
トムソンを援助していた雑誌編集者夫妻の子。
このとき、11歳くらい。

* * *

いろいろ特殊で、内容的にもやや錯綜している詩。

解説など今後。

* * *

英語テクストは、Poems (1893) より。
http://archive.org/details/poemsthomrich

* * *

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Arnold, "A Question"

マシュー・アーノルド (1822-1888)
「疑問」

フォースタに。

よろこびは来ては去る。希望は引き、また満ちる、
波のように。
変化が人々の心の落ちつきや強さをほどいて壊す。
愛は生に貸し与える、魅力を少し、
悲しいほほえみも少し。が、その後
愛も生も冷たいところで眠る。
墓のなかで。

夢は夜明けのように輝き、そして逃げる。友はほほえみ、死ぬ、
春の花々のように。
もてはやされる生も、実は長くつづく葬儀のようなもの。
人々は苦い涙を流しながら墓を掘る、
届かなかった希望のための墓を。そしてみな、
疑念に惑い、恐れに病みつつ、
残された時間を数えている。

そう、残された時間を数えている。わたしたちの夢、
嘘で、空っぽだった夢、
わたしたちが去った後も、それは生きつづけるのか?
かすかに感じるよろこび、
ほほえみ、消えていった顔、
潰えるべくこの世に生まれた希望を、
追いかけようか?

* * *

Matthew Arnold
"A Question"

To Fausta

Joy comes and goes, hope ebbs and flows
Like the wave;
Change doth unknit the tranquil strength of men.
Love lends life a little grace,
A few sad smiles; and then,
Both are laid in one cold place,
In the grave.

Dreams dawn and fly, friends smile and die
Like spring flowers;
Our vaunted life is one long funeral.
Men dig graves with bitter tears
For their dead hopes; and all,
Mazed with doubts and sick with fears,
Count the hours.

We count the hours! These dreams of ours,
False and hollow,
Do we go hence and find they are not dead?
Joys we dimly apprehend,
Faces that smiled and fled,
Hopes born here, and born to end,
Shall we follow?

* * *

Fausta
アーノルドの姉のジェインのこと。

4 grace
いい印象を与えるもの、魅力(OED 1)。

18 apprehend
・・・・・の存在を感じる、認識する、見る(OED 8)。

15-21
(おそらく、いってはいけない、マネをしてもいけない内容。)

* * *

同時代の詩人スウィンバーンがこの詩について曰く、
「シェリーの声のこだまがかすかに・・・・・・」。

この手のナルシスト的な物思いのようなものは
シェリーから、ということ(?)

* * *

英語テクストは、Poetical Works of Matthew Arnold
(1891) より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/27739

* * *

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Housman, ("Loveliest of trees")

A・E・ハウスマン (1859-1936)
(「一番きれいな木、桜の」)

一番きれいな木、桜の
枝が、今、花で飾られている。
森のなかの道の脇で、
このイースターの季節に白く装われて。

ぼくの七十年の生涯のうち、
二十年はもう二度と来ない。
七十の春から二十を引いたら、
残っているのは、あと五十。

咲いている花を見るのに、
五十回の春とは少なすぎる。
だから、ぼくはいろんな森に行こう、
雪のような花をつけた桜を見に。

* * *

A. E. Housman
("Loveliest of trees, the cherry now")

Loveliest of trees, the cherry now
Is hung with bloom along the bough,
And stands about the woodland ride
Wearing white for Eastertide.

Now, of my threescore years and ten,
Twenty will not come again,
And take from seventy springs a score,
It only leaves me fifty more.

And since to look at things in bloom
Fifty springs are little room,
About the woodlands I will go
To see the cherry hung with snow.

* * *


By Benjamin Gimmel
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:
Fr%C3%BChlingslandschft_Aaretal_Schweiz.jpg
(きれいすぎて、この詩の雰囲気とは違う。
森ではないし。)


私が撮影したもの。東京のはずれ、高尾の
桜保存林にて。2005年頃。下のものも同じ。


(これらも、やはり日本だから雰囲気が違う。)

* * *

訳注と解釈例。

2 hang
ぶらさがるもので飾る(OED 5)。With以下で
何で、ということを示す。

3 ride
馬に乗って通るための道(OED, n1, 2a)。
乗りものとして自動車が発明されたのは、
長い歴史のなかではごく最近。

4 for
時間をあらわすfor (= during, throughout)
(OED 28)。あるいは目的、事前の準備を
あらわす(……のために)(OED 8)。
さらっと読むと8のほうが自然? どちらも
同じといえば同じ?

4 Eastertide
Easterはキリストの復活を祝う祭日。3月21日以降の
最初の(暦の上の)満月の後の最初の日曜日。
(イギリスなどで生活していないと、ピンとこない。)

Tideはtime. ここでは一定の期間や季節のこと
(OED 4b)。Eastertideは、イースターから
一週間だったり、五十日だったり、土地や宗派や
時代によって長さが異なる(らしい)。

イースターと白と雪(最終行)の関連--
白は死の色(死者を包む布shroudは白)。
白は純潔の色(母マリアを象徴する花は白いユリ)。
白は羊の色(キリスト=いけにえの子羊lamb)。
ふわふわで白い雪は、子羊の毛のよう。
(他にも?)

つまり、4行目と12行目では、つもる雪のように
花を咲かせる桜と、神の子羊キリストが、
白くてふわふわ、というつながりで、微妙に、
ではあるが、視覚的に重ねられている。

(非クリスチャンから見れば、「なるほど」半分、
「そういう話なの?」半分、といったところ?)

10 room
何かをする機会や時間(OED n1, 4)

* * *

時間、死を扱う小作品。

人生七十年、と、あたりまえのように計算している
ところが、19世紀以降的。「いつ何が起こって
死ぬかわからないから、できるうちに、今すぐ、
恋をしよう」、と歌っていた17世紀の感覚とは
かなり違う。

* * *

リズムは、ストレス・ミーター(四拍子)。
それぞれの行につき、四回手をたたいたり
しながら読めるかたちになっている。

もちろん、本当に手をたたきながら、
一定のリズムで読むと、童謡、民謡、
遊びのかけ声などのように聞こえ、
雰囲気がかなり損なわれてしまう。

(どの音節/母音に拍子/ビートをのせるか、
考えてみてください。また後日スキャンジョンを
のせます。)

* * *

英文テクストは、A. E. Housman, A Shropshire
Lad, (1919) より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/5720

* * *

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