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Dowson, "A Last Word"

アーネスト・ダウソン
「最後に」

さあ、行こう、もう夜だ。
昼の時間はすり切れはてた。鳥もどこか飛んでいった。
神々が種をまいてくれたものは、もう十分刈りとった。
絶望とか、死とか。底なしの闇が地面をつつんでいる、
卵をあたためる夜の鳥みたいに。もうわからない、
笑うとか、泣くとか。ぼくらが知っているのは、
くだらない、ってことだけ。無意味なことのために、
あてもなく、目的もなく、歩いてきた、ってことだけ。

さあ、行こう、どこか知らない、冷たいところへ。
なにもない空っぽの国へ。いい人も悪い人も、
働かなくていいところ、年とった人が休めるところ、
愛や恐れや欲望からみんな解放されるところへ。
手をつなごう、傷だらけの手を! ああ、大地が包んでくれますように、
生に病んだぼくらの心を。そして、土に戻してくれますように。

*****
Ernest Dowson
"A Last Word"

Let us go hence: the night is now at hand;
The day is overworn, the birds all flown;
And we have reaped the crops the gods have sown;
Despair and death; deep darkness o'er the land,
Broods like an owl: we cannot understand
Laughter or tears, for we have only known
Surpassing vanity: vain things alone
Have driven our perverse and aimless band.

Let us go hence, somewhither strange and cold,
To Hollow Lands where just men and unjust
Find end of labour, where's rest for the old,
Freedom to all from love and fear and lust.
Twine our torn hands! O pray the earth enfold
Our life-sick hearts and turn them into dust.

*****
世紀末のデカダン・ソネット。

ペトラルカ以来の伝統でいえば、
「生」や「幸せ」が、手の届かない
貴婦人の位置に。

*****
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Dowson, "Cynarae"

アーネスト・ダウソン
「ぼくはもう、かわいいキナラエの虜だった頃のぼくじゃない」

昨夜、そう、昨日の夜、あの子にキスしようとしたとき、
ねえ、シナラ、君は割りこんできたね! 君の息を感じたんだ、
心で。あの子とキスしたり、ワインを飲んだりしてたのに。
だからぼくは寂しくなって、昔のことを思い出してつらかった。
そう、寂しくなって、うなだれた……
ねえ、シナラ、君がまだ好きなんだ! 嘘じゃない。

一晩中、あの子の胸の音を胸に感じてた。
一晩中、あの子を腕に抱いて、愛しあい、眠った。
買った子だけど、あの子の赤い唇、すてきだった。
でも寂しかった。昔のことを思い出してつらかった。
目を覚ますと、朝は灰色だったから……
ねえ、シナラ、君がまだ好きなんだ! 嘘じゃない。

ねえ、シナラ、もう覚えてないよ。みんなどこかに消えた、
風に吹かれて。大騒ぎして、薔薇を投げて、投げて、踊って、
百合のような君との色あせた日々を消そうとしてきたから。
でも寂しかった。昔のことを思い出してしまってつらかった。
いつもそうなんだ、長く踊っていると……
ねえ、シナラ、君がまだ好きなんだ! 嘘じゃない。

もっと速い曲を! もっと強いワインを!
でも、パーティが終わって明かりが消えると、
シナラ! 君の影がやってくる! 君を思って一晩中眠れない。
寂しくて、昔のことを思い出してつらいんだ。
今でもいちばんほしいのは君の唇……
ねえ、シナラ、君がまだ好きなんだ! 嘘じゃない。

* * *
Ernest Dowson
"Non sum qualis eram bonae sub regno Cynarae"

Last night, ah, yesternight, betwixt her lips and mine
There fell thy shadow, Cynara! thy breath was shed
Upon my soul between the kisses and the wine;
And I was desolate and sick of an old passion,
Yea, I was desolate and bowed my head:
I have been faithful to thee, Cynara! in my fashion.

All night upon mine heart I felt her warm heart beat,
Night-long within mine arms in love and sleep she lay;
Surely the kisses of her bought red mouth were sweet;
But I was desolate and sick of an old passion,
When I awoke and found the dawn was gray:
I have been faithful to thee, Cynara! in my fashion.

I have forgot much, Cynara! gone with the wind,
Flung roses, roses riotously with the throng,
Dancing, to put thy pale, lost lilies out of mind;
But I was desolate and sick of an old passion,
Yea, all the time, because the dance was long:
I have been faithful to thee, Cynara! in my fashion.

I cried for madder music and for stronger wine,
But when the feast is finished and the lamps expire,
Then falls thy shadow, Cynara! the night is thine;
And I am desolate and sick of an old passion,
Yea, hungry for the lips of my desire:
I have been faithful to thee, Cynara! in my fashion.

* * *
タイトルはホラティウスのオード4.1より。

* * *
英語テクストは次のページから。
http://www.gutenberg.org/ebooks/8497

* * *
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Dowson, "Vitae summa brevis. . . . "

アーネスト・ダウスン (1867-1900)
「ライフ・イズ・ショート、ロング・ホープ・インポッシブル」

長くはつづかない。涙も、笑いも。
愛も、欲望も、憎しみも。
ぼくらは、これらを忘れるはず。
あの門をくぐったら。

長くはつづかない。ワインとバラの日々は。
霧のようにぼんやりした夢のなか、
ぼくらの道が見えて、そして、すぐに消えた。
夢のなかで。

* * *

Ernest Dowson
"Vitae summa brevis spem nos vetat incohare longam"

They are not long, the weeping and the laughter.
Love and desire and hate:
I think they have no portion in us after
We pass the gate.

They are not long, the days of wine and roses:
Out of a misty dream
Our path emerges for a while, then closes
Within a dream.

* * *

タイトルは古代ローマの詩人ホラティウスからの引用。

(英語中のラテン語は、日本語中の英語のようなもの、
ということで、日本語訳のタイトルは上のようなものに。
Life is short, long hope impossible. 後日、英語の
定訳を調べて記します。)

* * *

英文テクストは、The Poems and Prose of Ernest Dowson より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/8497

* * *

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Dowson, "After Paul Verlaine (I)"

アーネスト・ダウスン (1867-1900)
「ポール・ヴェルレーヌをまねて (1)」

「街に静かな涙の雨が降る」--ランボー

心に雨が降る。
街に雨が降るように。
どこから来るのか、けだるさが
ぼくの心にとり憑いて離れない。

ああ、美しい雨が
大地と屋根の上に!
痛む心の上に、
ああ、雨の音楽が!

理由もないのに、涙が、
悲しい心のなか流れる。
なぜ? おかしくない?
この悲しみに理由がないなんて。

そうじゃない! 悲しくてどうしようもないのは、
その理由がわからないから。
(愛じゃない。憎しみでもない。)
悲しくてどうしようもない、その理由がわからないから。

* * *

Ernest Dowson
"After Paul Verlaine (I)"

Il pleut doucement sur la ville.-----RIMBAUD

Tears fall within mine heart,
As rain upon the town:
Whence does this languor start,
Possessing all mine heart?

O sweet fall of the rain
Upon the earth and roofs!
Unto an heart in pain,
O music of the rain!

Tears that have no reason
Fall in my sorry heart:
What! there was no treason?
This grief hath no reason.

Nay! the more desolate,
Because, I know not why,
(Neither for love nor hate)
Mine heart is desolate.

* * *

こういう作品を見ると、いろいろ想像したり、
考えたりしてしまう。

1
バイロン、シェリー、キーツから、テニソン、D・G・ロセッティを通って、
19世紀の詩は一気に感傷的になってきている。

18世紀から、演劇や小説には感傷的なものが
多くあり、またシャーロット・スミスのものなど、詩にも
この手のものがあったが(そして売れていたが)、
19世紀には、それが、何というか、一気に詩の主流の
ような雰囲気になってきている。

20世紀のパウンドやエリオットの作品は、この感傷性に
対する抵抗?

パウンドは、いわゆるモダニズム的な言葉や表現を
使う反面、内容はなかなか(だいぶ、かなり)感傷的。
有名な『詩篇』81番(「君が深く愛したものだけが残る、
あとのものはカス」)など。

エリオットの作品については、感傷的なところが
思い浮かばない。作品における視点は、個人のもの
という感じではなく、上からのもの、知性ある人が
概観する、というようなもの。(ポウプなど、18世紀の
詩人たちのよう。)

2
理由のない悲しみ、というのも、おそらく19世紀的。

近代化が進む以前の社会では、悲しみの理由と
思われるものはいくらでもあったはず。病気、貧困、
いろいろな不自由など。

そんな悲しみの理由が、社会が発展するなかで
解消されて減ってきたのに、なぜかまだ悲しい、
という現実に直面しているかのよう。

3
日常的に使われる「悲しみ」ということばは不正確。

悲しみを感じられるということは、ある意味幸せなこと。
もっと悲しいこと、もっと恐ろしくて避けたいことは、
よろこびなどプラスの感情だけでなく、悲しみなどマイナスの
感情も感じられないような、そういう状態。
上の詩でいえば、languor--けだるさ、心身が疲れて、
生きる力がない状態(OED 4-5)。

人、それから、たぶんすべての生きものは、
これから逃れるためだったらどんなことでもする。
社会的、道義的、健康的に、いいことも、悪いことも。

(だから人には教育や法が必要なわけで。)

* * *

英文テクストは、The Poems and Prose of Ernest Dowson より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/8497

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