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de la Mare, "Faint Music"

ウォルター・デ・ラ・メア (1873-1956)
「かすかな音楽」

弧を描く静かな彗星。音のない雨。
霧が、黙ったまま、動かない堀の水と親しく話している。
放っておかれた花のためいき。
あのベルの聞こえない音色。

内に隠れた自分が騒ぎ出す。その眠りは破られて。
愛の秘密が、水晶のように、子宮のなかに生まれる。
心臓は裏切ることなく脈打つ、口に出して誓わなくても。
すべての音は、静寂に向かう。

* * *

Walter De la Mare
"Faint Music"

The meteor's arc of quiet; a voiceless rain;
The mist's mute communing with a stagnant moat;
The sigh of a flower that has neglected lain;
That bell's unuttered note;

A hidden self rebels, its slumber broken;
Love secret as crystal forms within the womb;
The heart may as faithfully beat, the vow unspoken;
All sounds to silence come.

* * *

声や音を発することがなくても、表に見えなくても、
何かが起こっている、ということをいろいろなかたちで
表現した作品。

思うに、ワーズワース、シェリーら、ロマン派以降の
イギリス詩の直系、という雰囲気。

(テニソン、ロセッティなど、ヴィクトリア朝詩人の
センチメンタルな雰囲気も加わっていて。)

* * *

5
構文は、A hidden self rebels, its slumber [being] broken.

6
構文は、主部: Love secret/述部: forms (自動詞)

7
構文は、The heart may as faithfully beat,
the vow [being] unspoken, [as when it is spoken].

[口に出して誓ったときと同じくらいに]、心臓は裏切ることなく脈打つ、
誓いを口に出さなくても。

誓いを口に出しても出さなくても、それを守る意志は同じ、ということ。

* * *

個人的にデ・ラ・メアの詩には、シドニー、シェリー、
イェイツなどに通じるような、さりげなくきれいに言葉を
並べるセンスのようなものを感じる。

子ども向けの物語や、幻想的、怪奇的な小説なども
書いており、大詩人という雰囲気ではないが、
彼の詩は、イェイツ、パウンド、オーデンら、
いわゆる大詩人たちによって高く評価されていた。

* * *

英文テクストは、Walter De la Mare, Collected Poems
(1941) より。

* * *

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