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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

馬の眼科 講義と実習

2019-11-15 | 講習会

きのうは地元獣医師会の産業動物講習会。

会場へ向かう途中、繁殖雌馬の疝痛の依頼があり、スタッフ半分はUターン。

今年は眼科の講義と実習をやってもらった。

午前中は講義。

午後は、まず実馬を使って、

眼の局所麻酔。

眼の超音波検査。

眼底検査。

のデモと体験。

初めての獣医さんも眼底を観れたようで、ヨカッタ。

会場を移って、解剖体で、

鼻涙管洗浄。開口部の確認。

眼球摘出、結膜フラップ、結膜下点眼システムの装着、etc.を体験。

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眼は特殊な器官で、病気や事故も、構造も、そして治療への反応も特殊。

そして、特に馬では重要な器官であることは間違いない。

講義を聴くだけでなく、針を刺したり、切ったりすることで、untachable な分野ではなくなったのではないだろうか。

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戻って来て、片づけをした頃、疝痛の依頼。

季節の変わり目、かね。

この1日2日、北海道は荒れるらしい。

 

 

 

 


大学での講義

2019-11-10 | How to 馬医者修行

某大学に呼んでいただいて、「産業動物診療についての理解醸成のための講習」、のうちの「馬生産地域の馬の診療」、について講義してきた。

中央畜産会が経費負担して行っている獣医科大学生対象の講義で、

大動物診療をめざす学生が減って不足しているので、「理解醸成」が必要だということなのだろう。

大動物診療に当たっている獣医師も組織も、その必要性はわかるでショ?協力するのが当然でショ?ということで、

ほとんどボランティア;笑

しかし、行かねばなるまい。

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午前中は、宮城NOSAIの先生が、牛群管理の講義をしていた。

私は途中から聴かせてもらった。

飼養管理、代謝プロファイルテスト、繁殖健診、蹄病管理、etc.

酪農場の実態を知っていないと理解も興味も持てない内容だと思うのだが、学生たちがわりと真面目に聞いているのに感心した。

以前来たときは、広い階段教室のうしろ、上の方にだけ学生が集まり、やる気のなさがいっぱいだったのだが・・・

ずっとスマホをいじっているのが5%、寝ているのが10%くらいは居たけどね。

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私は午後から3時間の講義。

生産地でどのような馬の診療が行われているか。

生産地の馬の死亡廃用事故は何が多くて、助けるためにどうするか。について話した。

質問は出ない。

「NOSAIが馬の診療をしているのを知りませんでした」

「実習に行きたいんですけどどうすればイイですか?」

と言ってきた学生も居たので、まあこうやって自分達の職域を説明に来ることも必要なのだろう。

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往復船中泊で出張した。

帰りのフェリーは揺れた。

さすがに睡眠不足がこたえた。

                          

 

 

 


鼻翼ヒダ切除

2019-11-04 | 学問

「のどじゃなくて鼻が鳴ってる気がする」、と言われることがある。

私は、今まで2-3頭鼻翼ヒダ切除をしたことがある。

それらの馬を手術したときも、今も、必要だったのか、効果があったのか、半信半疑だ。

獣医外科分野の最も権威ある学術誌 Veterinary Surgery に鼻翼ヒダ切除についての報告が載った。

           ー

Alar fold resection in 25 horses: Clinical findings and effect on racing performance and airway mechanics (1998-2013)

鼻翼ヒダ切除した馬25頭:臨床所見と競走成績と気道メカニクスへの効果(1998-2013)

ノルウェイ、オスロ、ノルウェイ生命科学大学からの報告。

要約

目的:鼻翼ヒダ虚脱が診断され、外科治療された馬で臨床所見とパフォーマンスを報告し、形状と呼吸器閉塞の程度を評価すること。

研究のデザイン:回顧的症例シリーズ。

動物:21頭のスタンダードブレッド、2頭のコールドブラッド・トロッター競走馬、1頭のサラブレッド、1頭のアイスランド馬。

方法:鼻翼ヒダ虚脱は高速トレッドミル上での運動の間に鼻道憩室が膨らみ、持続的に異常な震える呼気音がし、それが鼻翼ヒダの一時的な背側への縫合により楽になったことに基づいて診断された。

5頭では、鼻咽頭気道圧を測定した。

完全な、両側の鼻翼ヒダ切除後のパフォーマンスは競走成績記録の調査と馬主あるいは調教師への電話インタヴューにより評価した。

結果:馬は、プアパフォーマンスか、異常な呼吸音、あるいはその両方により受診された。

21頭スタンダードブレッドのうち12頭では、付随的な動的問題が見つかった(間欠的DDSP:n=10;鼻咽頭蓋の虚脱:n=2)。

報告されている正常値に比べて、鼻翼ヒダ虚脱がある馬の呼気時の鼻咽頭圧は上昇しているように思われた(範囲+10.8から+21.8cmH2O)。

鼻翼ヒダの完全外科的切除と同様に背側への固定は呼気時の鼻咽頭圧を報告されている正常レベルへ改善した。

平均68か月(範囲7-121)の追跡において、25頭中20頭は手術後競走しており、17頭の繋駕競走馬のうち13頭はキロメーター当たりの時間が変らないか、改善されていた。

結論:鼻翼ヒダ虚脱は軽度から中程度の呼気閉塞を引き起こす。また、この集団の二次的な鼻咽頭虚脱につながっているかもしれない。

臨床的重要性:完全外科的切除は鼻翼ヒダ虚脱の治療として効果的だと思われた。

鼻咽頭圧測定は、鼻翼ヒダ虚脱の診断を確定できる可能性がある方法である。

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これは本文中の写真。

しっかり鼻孔を切開して、鼻翼ヒダを完全に切除している。

この手術方法は新しいものではなく、Equine Surgeryにも以前から載っている。

内圧まで測ってしっかり診断した、というのが要点のようだ。

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この夏も鼻が鳴る、と言われて2頭ほど鼻翼を開帳するように縫合して観察?聴取?してもらった。

2頭とも”鼻鳴り”は変らなかった、とのことで、鼻翼ヒダ切除の適応ではないと診断した。

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星守る犬
村上たかし
双葉社

図書館で借りてきて読んだ。

犬と、そして福祉のストーリーだった。

続・星守る犬
村上たかし
双葉社

読む人は、続編もあわせて読むと良い。

少しは希望も見えてくる。

生きていくことは、生きていくだけでたいへんだ。