馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

繁殖雌馬の空回腸纏絡

2017-03-20 | 急性腹症

きのうは休みで、夜は当番じゃなかった。

早朝、繁殖雌馬の疝痛の依頼。当番者に伝言した。

出勤したらその馬の開腹手術が始まるところだった。

実習生が来ていないので尋ねたら、3時まで手術していたので、まだ呼んでいない、とのこと。

電話して呼ぶ。

症例を観るために費用と時間をかけて実習に来ているのだ。私なら1例でも多く観たい。

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小腸閉塞でひどい。

成馬の小腸閉塞で、完全膨満していたら助手が必要だ。

実習生に手を洗わせる(手指を消毒して、滅菌手袋を着けた助手をさせることをそう言う)。

しかし、絡んだ空回腸がほどけない。

それで私も手洗いして手術に参加した。

赤黒く変色した纏絡部を切開して減圧した。

そのことで、やっとほどけた。

腸間膜が破れていた。

12日前の分娩後からずっと調子が悪かったそうだ。

ひょっとすると分娩で腸間膜が破れたのかもしれない。

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壊死部を切開して内容を棄てる。

腸間膜の血管を結紮止血する。

回腸を切断して、断端を閉じる。

壊死部を切除して、健康な部分を盲腸へ吻合する。

腸間膜を縫い付けて穴を閉じる。

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腹腔洗浄した。

完全壊死した小腸からは、大量の炎症性サイトカインが腹腔内へ放出されているはず。

それだけでなく、腸間膜が破れていたので、出血もあり、フィブリノーゲンも腹腔へ出ている。

こういう症例の腹水中の乳酸値や細胞逸脱酵素も、血中以上に上昇していることが報告されている。

それらは、癒着の要因になるはず。

腹腔洗浄はその可能性をいくらか減らしてくれるだろう。

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夜中中、疝痛に苦しんでいたらしい。

顔も肢も傷だらけ。

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きょうは暖かかった。

ことしは今日が春分の日だものね。

 



4 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2017-03-20 19:54:44
 じゅーににちかん!想像するだけで気絶しそう。その間、仔馬にお乳を飲ませたり、お世話をしたりもして?
 どうか、元気になってまた仔馬と過ごせますように。勝算はどれくらいでしょ。
 お彼岸の中日で、穏やかないい日でした。
 オラ君、似てる。そっくりだ。似ちゃうんでしょうね。オラ君、いいねぇ。
 ミルワーム、ちょっとしかなくて「おしまい」って言ったら「もっとたべな(もっとたべたい)」だって。食べるとき「ハイどうぞ」って言いながら食べたり。所詮だから、日本語変だ。似てないですよ。
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Unknown (chelsy)
2017-03-21 02:01:52
二人?で同じ方向を見ているオラ君とhig
先生。素敵な関係ですね(笑)
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>はとぽっけさん (hig)
2017-03-21 04:00:53
ずっとひどく具合が悪かったのではなく、落ち着いていた日もあったようです。それが突然ひどく痛くなったそうです。

牧場は仔馬をもう乳母につけました。半分あきらめているのかもしれません・・・

ニワトリと会話できるのは面白いですね。
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>chelsyさん (hig)
2017-03-21 04:04:43
隣に座ってくれる大型犬はいいですね。存在感が安心感につながります。すぐ背中を向けてきて、マッサージをせがみますけど;笑。
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