数年前からの傾向なのだが、結腸捻転の発症は減っているように思う。
昼夜放牧するようになったことが要因ではないかと考えている。
青草の採食量は増えるのだろうが、厩舎での飼い付け量が減り、運動量が増え、ほぼ1日中青草を食べられることは結腸の健全な動きのために良いのだろう。
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しかし、昼夜放牧している馬にも結腸捻転は起こる。
生きるか死ぬかの病気であることにかわりはない。
Equine Veterinary Journal 2013, 45, 219-223 に結腸捻転後の生存状況についての調査成績が報告されている。
Survival of horses following strangulating large colon volvulus
絞扼性大結腸捻転後の馬の生存
要約
研究実施の理由: 絞扼性大結腸捻転馬の長期間の生存の状況と、長期間の生存に関係する特異的要因は調査されたことがない。
目的: 大結腸捻転馬の長期生存についてのデータを供給し、生存に関係する術前、術中、術後の要因を明確にすること。
方法: 360°以上の絞扼性大結腸捻転で全身麻酔した116頭の馬についての臨床データと長期間の追跡情報を得た。
術後の生存期間について2つの多変量Cox比率危険モデルを構築した;モデル1は全ての馬を含み術前の評価変数からなり、モデル2は麻酔後生存した馬からなり術前、術中、術後の評価変数からなる。
結果: 調査対象は116頭であった。89頭(76.7%)の馬が全身麻酔後生存した。
これらの馬のうち、退院まで、1年間、2年間、生存したパーセントはそれぞれ、70.7%、48.3%、33.7%であった。
全身麻酔から生存した馬の生存期間の中央値は365日であった。
モデル1では、術前のPCVの上昇は明らかに術後の生存の短縮に関連していた(hazard ratio 1.08, 95%confidence interval 1.05-1.11)。
しかし、この結果は経過時間で変化した。
モデル2では、術中の漿膜の色調の異常(hazard ratio 3.61, 95%confidence interval 1.55-8.44)、手術48時間後の心拍数の増加(hazard ratio 1.04, 95% confidence interval 1.02-1.06)、および術後入院中の疝痛(hazard ratio 2.63, 95% confidence interval 1.000-6.95)のすべてが術後の生存の短縮に明らかに関係していた。
結論: 大結腸捻転馬の生存期間は術前PCV、漿膜の色調、術後48時間後の心拍、および術後入院中の疝痛に関係していた。
関連の可能性: この研究は大結腸捻転馬の長期生存についてのエヴィデンス・ベースド・インフォメーションを提供し、臨床家とオーナーによる決断に寄与しうる変数を明らかにしている。
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イギリス・リヴァプール大学からの報告。
2001年1月から2010年末までの開腹手術記録からデータを集めている。
世界中の馬病院で環境が整い、疝痛馬が早期に来院するようになって結腸捻転馬の生存率は上昇して来た。
私のところでも2000年以降だと救命率はこんなものか、あるいはもう少し良いかもしれない。
術前のPCV、術中の結腸の状態、入院中に疝痛を起こさないかどうか、などが生きるか死ぬかに関係しているのは私も日頃感じている。
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長期間、術後の追跡をした点がこの調査のユニークな点になっていて、調査の目的としてもlong-term survival についての調査となっている。
しかし、その部分については調査も考察も不充分に思える。
89頭が麻酔後生存したのだが、そのうち22頭がその後、死ぬか安楽殺されている。
その内容は疝痛が17頭、疝痛に関係しない理由が3頭、不明が2頭となっている。
結腸捻転はたいへん再発することが多い。
私は自分たちの症例について調査したことがある。
最初調べたときには再発率(2回目の結腸捻転で来院した馬/その調査期間に結腸捻転で生存した馬)は12%だった。
しかし、結腸捻転で生存する馬が増えるにしたがって、2回目に調査したときには再発率は18%だった。
そして、再発までの時間も短くなっていた。
だから結腸捻転では再発予防策が必要だと考えて、1回目の手術から結腸固定術を行うようにしている。
しかし、この報告では退院した馬の疝痛が何であったのか記載されておらず、
結腸捻転の再発防止策についても書かれておらず、
結腸の切除と吻合(再発防止策でもある)したのは2頭だけだったとなっている。
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この報告での来院までの疝痛発見からの時間は中央値で10時間だったと書かれている。
馬が密集していてその中に病院があるケンタッキーや私のところでは、もっと早い時間に来院するようになっている。
その点ではliverpool大学は不利な条件にあるのかもしれない。
発症から3時間以内に来院してくれれば結腸捻転でも助からないことはほとんどない。
そのためには牧場での初診で正しく判断しないと3時間以内に来院させるのは無理だ。
今は強力な鎮痛剤や鎮静剤があるが、それに頼って「後でまた診に来ます」としたのでは3時間をはるかに越えてしまう。
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Equine Colic ?
一瞬そう見えた私はどうかしてる?
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今日は、1歳馬の肢軸異常。
当歳馬の血栓性頚静脈炎。
当歳馬の肢軸異常のスクリュー抜去。
2歳馬の喉頭片麻痺のTieback & Cordectomy 喉頭形成と声帯切除術。
2歳馬の中手骨内顆からの螺旋骨折のスクリュー固定。
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青葉繁れる。
今日は夏らしい日だった。
施設ごとの違いには、看護などの基本的な管理の差も影響するように思いますし。
この糞では肥料になれないのではないか?とか、思ったりもしながら検索したら、hig先生の過去記事の”They are woman”に遇って小さく笑いました。
そのとおりだと思います。文献自体にも付随データが示され、いろいろ考察されていたりしますが、そのあたりが実験室でのデータとは違い、症例の調査ですからどこでも同じ成績というわけにはいきません。
欧米では大学病院からの報告がとても多いのですが、骨折でも疝痛の治療でも、実は大学病院より大手の馬病院の方が成績が良い。というのが文献上の傾向になっています。
教育病院よりベテランだけが働いていること。立地条件が馬の数が多いところにあり輸送時間がかからないこと。助かる症例だけが選ばれがちなこと。成績の報告に営業上のバイアスがかかる可能性。などによるのではないかと思われます。
青草たっぷりの馬糞は肥料としてどうなんでしょうね?よく熟成させれば悪くないんじゃないかと思います。
リバプール大学病院の発表されること自体がすばらしいと思わざるをえない、状況です。悲しいことに、今も母校馬術部の学生が見せられているのは。
"これを普通と思うな""考えるのをやめるな"鋼の錬金術師のセリフですねネ。
彼我のかなた。というところですかね。
日本の臨床獣医学が犬と猫の獣医学になってしまわないうちに声を挙げて行かなければいけないのだろうと思います(努力も虚しくそうなってしまうだろうと思いながらも・・・・・・)。
馬房掃除してやっているのにはたかれるというのはひどいですね。フォークで刺してやるべきでした。