馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

分娩後の不調を静観してはいけない

2023-04-06 | 馬内科学

早朝、入院馬を診に行こうと思っていたら、分娩2日後の繁殖雌馬の疝痛の依頼。

来るのに1時間半かかる。

入院馬は、前日の結腸捻転馬で軽症ではないがPCVも下がり、母仔で退院できそうだった。

カルテを記入していると、分娩7日後の繁殖雌馬の不調の診療依頼。

70超の先生、「何だかわからないんだよ」とのこと。

血液検査もしていない。

           ー

もうそろそろ1頭目の疝痛馬が来院する、という頃、分娩後5日後の不調の診察依頼。

39℃の発熱がある。

これは別の70超の先生、血液検査もしていない。

超音波?訊くまでもないだろう。

           ー

来院した疝痛馬は立っていられないほど痛い。

血液検査でPCV54、乳酸値6.5mmol/l。

結腸捻転だろう。

すぐ開腹する。

が、結腸の損傷はけっこうひどい。

内容を抜いて、捻転を整復するが、色調は完全には回復しない。

切開部(結腸骨盤曲)の粘膜も暗赤色で壊死を示していた。

結腸切除・吻合することにする。

切断部でも粘膜の色調はアズキ色。浮腫もひどい。

            ー

それが終わって、次の馬の開腹。

大網が空腸へ癒着した小腸閉塞だった。

空腸切除・吻合手術になった。

            ー

分娩5日後の発熱馬は午後1時に連れてきてもらった。

PCV65%。

右子宮角に穿孔が確認された。

開腹し、子宮裂孔を修復し、腹腔洗浄して腹膜炎の治療をするか・・・・

しかし、PCV65で口粘膜はチアノーゼ。

あきらめる。

剖検では腹腔内はひどい状態で、腹水は大量、黄色い塊になったフィブリンが析出し癒着が始まっていた。

もう1日か2日早く有効な治療を開始しないと助けられない。

           ー

分娩後の不調は静観してはいけない。

腹膜炎はないか?

腸閉塞はないか?

馬をよく観て、血液検査して、超音波で腹水を観て、遅れず診断しなければならない。

まず診断

私は獣医師になった頃、先輩獣医師に言われた。

当たり前のことなんだけどね。

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林の中の福寿草。

誰も見にはこない。

 

 



2 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2023-04-06 06:57:03
 現役のご高齢の先生、きっと娩出はお得意なのでしょう。
 続きますね。あきらめることが続くと気持ちが下がっちゃわないようにするのが大変だったりしますか?
 遅れず連絡もらってどんどん助けちゃいたいですね。
 ドバイの活躍すごかったですね。日本馬はあの日からこんなにも強くなれているんだと感動。

 朝から目の覚めるようなフクジュソウ、眼福です。
 コブシもそろそろでしょか?桜も待ち遠しいですね。
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>はとぽっけさん (hig)
2023-04-07 04:19:51
難産介助は体力・腕力勝負。高齢だと厳しいです。
手術をしたのが助からないとへこみます。手遅れが続くと啓蒙の必要を感じます。

花の季節が待ち遠しいですね。林の中、ひっそり、でした。クマの気配がしないか、気をつけながら;笑
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