四十肩・五十肩は肩の障害として有名。
幸い私は大丈夫だが、直腸検査を生業とする馬医者は、直腸検査の最中に馬が動いたりして肩を傷めることも多い。
「腱板損傷」という病名を聞くこともある。
人の肩関節は非常に可動性が高い、つまりあらゆる方向に動かなければならない。
骨同士が深くかみ合っていたり、靭帯で固められていないのでその動きが可能になる。
そのかわり、肩関節の周りを「棘上筋」「棘下筋」「肩甲下筋」「小円筋」の腱が包んで補強している。
これが回旋筋腱板(ローテーターカフ)と呼ばれる。
(図ほか、「肉単」より)
これらの筋肉は、強大な筋肉ではないのだが、肩関節の保護や安定のためにも働いている。
野球のピッチャーが150km/hのボールを投げるときには、指先もその速さで振らなければならない。
肩は大きくしなった後、腕を振り出すが、放っておけば肩関節は脱臼してしまう。
微妙に肩関節と腕を制御して、腕が抜けないように、しかもボールが微妙にコントロールされるように調節しなければならない。
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四肢動物の肩関節も基本的には球関節で、各方向に動くのだが、実際には前後方向への動きが主で、あまり肢を外へ向けたり(外旋)したり、肢を横へ開いたり(外転)したりはできない。とされている。
加藤嘉太郎先生の比較解剖学の教科書にもそのことが記載されている。
四肢動物では、
「肩関節の内、外側の表面を関節の補強の意味も含めて、肩甲下筋、棘下筋、棘上筋の強腱が関節包の表面を被っているが、これも肩関節の内、外転、回旋運動を妨げる一因となる。」
人の肩関節では、インナーマッスルとローテーターカフ(回旋筋腱板)が微妙な動きを調節しているが、馬の肩関節では肩関節周りの筋肉は動きを制限しているようだ。
ただし、筋肉の一覧表の「作用」には、
三角筋;上腕の外転。
小円筋;肩関節を屈す。(とあるが、「三角筋から分離したと考える学者もある。解剖の際、棘下筋と混同し易い。」ともあるので、肩関節の屈曲だけでなく、微妙に外転・回外にも働くのだろう。)
棘下筋;肩関節を屈す。上腕の外転と回外(微弱)。
肩甲下筋;肩関節を屈す。上腕の内転(僅かに)。
大円筋;上腕の内転。
などの作用も挙げられている。
馬も肩を外転させたり、上腕を回外させたりできるのだ。
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