左右の披裂軟骨が不対称に見える。
右(むかって左)の披裂軟骨が開いて息を吸おうとしているが、左の披裂軟骨はまったく動かない。
こういう状態だと、競走中には左の披裂軟骨は気管に吸い込まれて、気管の入り口を塞いでしまう(虚脱;右図は Equine Surgery より)。馬は苦しくて走ることができない。
Tieback(喉頭形成術)とVentriculocordectomy(声嚢声帯切除)をした。
左は手術から約1週間後。
深呼吸しただけで馬の喉頭はこれくらい開く。
全力疾走しているときにはこれ以上開くかもしれない。
右の披裂軟骨は開いたり閉じたりしている。左は糸で固定されて開いたままだ。
息を吸い込むためには良い開き具合なのだが・・・・・・・・
左の披裂軟骨は、息を吸っていないときでも開いた(外転)したまま。
1回目の手術から1ヶ月以上経ってこの状態、もうゆるむことは期待できない。
気管には食べ物があって、誤嚥しているのがわかる。
1回目の手術のときに、披裂軟骨と甲状軟骨の間を剥がして、牽引された状態で癒着するようにしているので、糸を切っただけではあまりゆるまない。
再度、軟骨の間を剥がして、望ましい程度にゆるませる。
その2回目の手術後(左上)。
右の披裂軟骨が開くとこんな感じ(左下)。
これなら競走のときの激しい呼吸にも対応できるだろう。
声嚢声帯も切除してあるので、喉頭の下側にあるべきV字も開いている。
2回目の手術の後、馬は咳もしなくなったし、誤嚥もないようだ。
-
しかし、まだ安心はできない。
調教が激しくなると咳をし始める馬もいる。また、Tiebackした馬は輸送性肺炎も起こしやすい。
-
左右の披裂軟骨が目いっぱい開いて酸素を吸いながら走っている馬と勝ち負けするためには、Tiebackでもかなりしっかり左の披裂軟骨を開かせなければならない。
ただ、開かせすぎると咳や誤嚥が起きてしまう。
しかも、手術中や、手術直後よりは、多かれ少なかれ牽引は緩む。
それを予測して望むよりは強めに牽引しなければならない。
たいへん微妙で、難しい手術なのだ。
-
明日から武者修行に行ってきます。
しばらく更新はお休みです。
武者修行ですか、ブログを楽しみにしています。
今、武者修行から帰って来ました。
Tiebackもやってきましたが、まったく加減が難しい手術です。しかし、少しでも治癒率を上げたいと思っています。