馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

ロドコッカス肺膿瘍の初期の画像診断

2018-05-18 | 馬内科学

子馬のロドコッカス感染症は、30日齢から45日齢で発症する子馬が多い。

それ以降に発症するのは、初期症状がないか、見逃しているのだろう。

おかしいと思ったら血液検査をして、炎症像がないか調べてみるのが良い。

あるいはロドコッカス感染症が発症する牧場は、日齢によって血液検査してみると良い。

炎症像があったら気管洗浄して、ロドコッカスが分離されないか検査すると良い。

ロドコッカスが分離されたら、肺に膿瘍ができていると思った方が良い。

肺の膿瘍は、表面を超音波でスキャンできる部位にあれば、超音波検査で大きさを知ることができる。

                 -

先日来院した、肩跛行があって、気管洗浄でロドコッカスが分離されていて、抗生物質を1週間近く投与されている子馬。

右肺、後葉中央に径2cmの膿瘍が見つかった。

その子馬の胸部X線画像。

右から。

左から。

右から、の拡大像。

左から、の拡大像。

超音波で確認できた肺膿瘍はX線画像では判別できないが、肺炎像だ。

Rhodococcus equiに効果がある抗生物質の投与をお勧めした。

                    ////////////

診療受付表であり、予定表であるホワイトボード。

来客 「これ全部手術ですかっ!?」

「全部が手術じゃないけど、診療予定です」

(1/3くらいは急患で、予定を押しのけて割り込んでくるんですけど・・・・)

              -

「時間が空いているときに診てほしい、って言ってます」

「じゃあ時間は空いてないなら診なくてイインだな」笑



4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (はとぽっけ)
2018-05-18 20:47:20
 初期症状、軽度の発熱?仔馬は毎日体温を測るものなのですか?
 すでに1週間飲んでいる薬は効いてなさそうですか?どれくらいの期間抗生剤での治療を継続するものですか?早期に軽症で治療し、治ると競走馬になれるんですね。
 そだ、肺疾患で痩せちゃう人用の栄養剤があるのですが、仔馬用にもそういうのあるといいですね。それよりまずは予防第一でしょうけど。
 「お時間に空きがありましたら、、、、」そう言う人の気持ち、わかる気がするなぁ。通じない国や土地柄、職種があるのもわかる気がするなぁ。
返信する
>はとぽっけさん (hig)
2018-05-19 04:19:33
検温は大切ですが、やっているかどうかは、牧場によります。ただ、子馬はとくにいろいろなことで体温が不安定なのと、ロドコッカス感染症は、発熱もせず進行することがあるようです。
膿瘍をつくる菌ですし、細胞内にも入る菌ですので、確定診断したら脂溶性の高い抗生物質で長期にたたく・おさえるのが望ましいようです。

診療予定の入れ方は、病傷の内容にもよります。感染を疑う跛行なら早く確定診断して抗生物質治療する必要があります。骨折でも早く診断して手術しなければいけないのもありますし、動かさない方が良い骨折を疑う症例もあります。
「時間が空いてたら一度診ておいてほしい」ってのは、後回しですよね;笑
返信する
Unknown (zebra)
2018-05-22 07:48:24
ネタには困らないのでしょうけれども、忙しい中で更新し続ける気力には敬服いたします。
いろいろなパターンがあるのでしょうけれども、紹介の症例はエコーで見つかったおそらく一つの膿瘍の排膿がびまん的な肺感染のきっかけになっていますよね。
そこまではほぼ無症状で行くので、発症したときは常に対応が遅いということになるのだろうと思います。
ERIの馬事通信でAAEPでロドコッカスの有効なワクチネーションの可能性が示されたとありましたよね。
感染のどの段階のリスクを減らしているのかは日本語読みの私にはわかりませんが苦笑
ワクチネーションができるならば、逆に早期に拾える感染の指標がありそうなものでしょうけれどもいかがでしょう。
返信する
>zebraさん (hig)
2018-05-24 05:44:38
膿瘍から肺の感染が広がるのではなく、肺の化膿性炎症から一部に膿瘍が形成されるようです。感染実験の結果からです。

発症実験でも、10-13日間の潜伏期間があることが知られています。自然感染はもっと長いかもしれません。
感染実験では潜伏期間後に発熱しますが、自然感染では発熱もせず、呼吸器症状もマイルドなのかもしれません。
見逃しがちなのはわかりますので、日齢で警戒し、スクリーニング検査や、早期発見のための精査を提案しています。

おそらく感染時期は生まれて最初の1ヶ月です。その日齢の子馬は免疫的に未熟なのでワクチンで守るのはかなり難しいでしょう。
母馬を免疫賦活しても液性免疫でしか守れません。細胞内寄生菌なので、肝心なのは細胞性免疫です。
画期的なワクチンに期待はしますが、日本で臨床応用できるのはまだまだ先でしょうね。
返信する

コメントを投稿