真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「狂つた性欲者 主婦を襲ふ!」(昭和54/製作:プロダクション鷹/配給:日活株式会社/脚本・監督:和泉聖治/撮影:西川卓磨/照明:西田光月/音楽:新音楽映像/編集:竹村編集室/助監督:加能遊/効果:秋山実/現像:東映化学㈱/録音:東音スタジオ㈱/協力:山手輸送㈱/出演:桂たまき・くどう麻屋・与那城ライラ・いぬい順子・草薙良一・津崎公平・久須美護・市村譲・仲台ひろし・竹田一郎・松本たかし)。出演者中久須美護と、竹田一郎は本篇クレジットのみ。逆に、ポスターにのみ矢田健とかいふ名前が載る。更に市村譲と仲台ひろしが、ポスターでは市村ジョージと仲台あきら。市村ジョージが市村譲臭いのは、事前に読めた。
 同じものを使つてゐる訳ではないが、三年後の珠瑠美昭和57年第十作「新妻残酷に犯す」(脚本・プロデューサー:木俣堯喬/主演:美野真琴=よしのまこと)で以前目にした、MIYOWA PICTUREなる謎の組織も名前を連ねるプロ鷹作品ロゴで開巻。
 暗転して刑務所スチール、御馴染都健二によるナレーション、略してミヤコレーションが起動する。婦女暴行で四度目の懲役を三年六ヶ月喰らつた森山哲郎(草薙)が、二年三ヶ月で仮出獄。こゝで、“仮出獄”の用語に関して。旧監獄法(平成19年廃止)を改正する形で新たに設けられた、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成18年施行)により、法令上に於いても仮釈放に改められた。閑話休題、てな塩梅で飛び込んで来る、妙なドーランの塗り方で血色悪く映る市村譲が、森山が月に二度面会を受けなければならない保護司の村井。村井が繙く、森山が過去に起こした事件の調書にタイトル・イン。くどう麻屋が、タイトルバックを担当する当該事件の被害者、煽情的な暴れぷりが素晴らしい。
 新聞頼りに求職する森山は、アパートの二階に住む主婦(ポスターを飾る与那城ライラ)に道を尋ね、北新宿の運送会社「山手輸送」―恐らく社名を山手運送に変更して現存―を訪ねる。社長夫人・マサコ(桂)の二年前に死去した亡兄・マサオに酷似する森山を、社長の多分山手(やまて/津崎公平)は即日採用する。
 jmdbならびnfaj始め、別館検索にもまるで引つかゝらないビリング後ろ三人に全く手も足も出ない配役残り、久須美護(のちの久須美欽一)と、そこはかとない内トラぽさも窺はせる髭と田中要次の若い頃みたいな三人が、リーダー格のアラキ以下山手要員。男優部もう一人は、与那城ライラの配偶者。いぬい順子は入社十日で運転を任された森山の、にも関らずな配達中の餌食となる車をエンコさせてゐた女。
 きのふけふ始まつた話でも別にないけれど、ex.DMMの中に未見の弾もピンクは殆ど残つてゐなく、戯れに和泉聖治を見られるだけ見て行くかとした昭和54年第二作、当年全八作。実父の木俣堯喬と、義母の珠瑠美については一応可能な限り観るなり見てゐる。和泉聖治が今なほ「相棒」―ビートきよしの声色で―を撮つてゐるものかと思ひきや、昔といふほどではないにせよ結構前、第十四季(2014~2015)で自ら足を洗つてゐたとは知らなかつた。
 塀の中では余程大人しくしてゐたのか、四度目の累犯にしてシャバに解き放たれた狂つた性欲者が、案の定主婦を襲ふ。実も蓋もないレス・ザン・ヒューマニティーな物語ながら、完全にトンだ目で、頬を痙攣させる草薙良一のメソッドが異常に秀逸。現に狂つてゐるやうにしか見えず、女の乳尻もそれなり以上にあるとはいへ、滅多矢鱈に大仰な劇伴にも火に油を注がれさながらポルノといふよりも、寧ろサイコスリラーかホラー映画に軸足を置いた趣。逡巡してゐた森山がカーブミラーの中で点火する、ソリッドなカットなど普通にカッコいゝ。反面、当時的にはこれで平然と通用してゐたのか、少なくとも2022年視点では正直薹の立つた女優部が居並ぶ、訴求力の直截な低さも否定はしない。いぬい順子の車の脇を一旦通り過ぎた森山が一人で配送するトラックが、再度元来た道に回り込んでゐたりするよく判らない動線。結局さしても何も碌に機能しない、マサコが肌身離ぬ十字架の全く以て木に竹も接ぎ損なふ意匠。といつた目につく些末もなくはないものの、終に犯されたマサコが、限りなく一目散な勢ひで電車に飛び込んで死ぬ。心なさがグルグル二三周してこの際清々しい無体な結末は大御大・小林悟の乾いたビートにも似た、腰の据わつたやつゝけにしか辿り着き得まい、良くも悪くも突き抜けたか底を抜いた最果ての地平。一時間に二三分毛を生やした尺をズバッと締め括る、線路脇に赤い靴が残される感動的に呆気ないラスト・カットが、見る者観る者には一欠片の感興たりとて許さない。
 最後にもう一点クレジット絡みで、撮影の西川卓磨は、a.k.a.西川卓。五十音順に市村譲と西川卓に矢竹正知が、俳優部と撮影部に照明部で三枚揃ふ一作なんてないのかな、あつて全然おかしくない気はする。
 と、いふか。矢竹正知監督作に於ける俳優部仕事が妙に目立つ、西田光月はもしかすると変名?

 付記< 矢竹正知クラスタ―房?―が矢竹正知を賛美するツイートに、西田光月の画像を貼つてをられる。となるとどうも、あるいは矢張り。西田光月は矢竹正知の変名であるみたい


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