真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「SEXYダイナマイト マドンナのしづく」(昭和63/製作協力:ユープロピジョン/配給:株式会社にっかつ/監督:石川欣/脚本:吉本昌弘/プロデューサー:剣持鉄也/企画:作田貴志・北條康/撮影:富田伸二/照明:隅田浩行/録音:福島信雅/音楽:金刺勝治/編集:井上治/助監督:橋口卓明/選曲:佐藤富士男/色彩計測:菊池亘/現像:IMAGICA/出演:菊池エリ・舞坂ゆい・山本竜二・池島ゆたか・いぐち武士・佐野和宏・志水季里子)。
 引いた画でラブホテルから出て来る男と、少し遅れて女。ゴミを出すラブホ従業員のオバチャンに、佐野和宏が金を掴ませゴミを入手する。“離婚成立屋”を自称する浮気調査専門の探偵・筒井修一(佐野)が、依頼人の川本真弓(舞坂)に旦那の使用済みコンドームを渡す。オナニーと言ひ張られた場合離婚出来ぬと難癖をつけ、戦利品に首を縦には振らない真弓が据ゑた膳を、「慰謝料取れなくなりますよ」と、筒井は今回僅かに佐野らしくダルでクールに辞退。立腹し部屋を出て行く舞坂ゆいの背中に、何となく画的(ゑてき)にしつくり来ないタイトル・イン。クレジットに並走してシコシコ作成した書類を投函して筒井が帰宅すると、隣室の前では菊池エリと時代を超え得ないトッポさがどうにもなアンチャンがああだかうだ争つてゐた。菊池エリにフラれたアンチャンは退場、隣室の鍵は開かず、筒井が探偵ぽく試みたピッキングも失敗する。筒井の部屋からベランダ経由で自室に戻つた菊池エリは、挙句ガス代を払つてゐないゆゑ筒井宅で入浴。弁護士に作つて貰つたとの曲で月に二回刑務所を慰問してゐるとかいふ、素頓狂な素性の女・百恵(菊池)に筒井は心奪はれる。
 配役残り志水季里子は、筒井が望む離婚に頑として応じない妻・裕子。筒井と裕子のロングは、振りきれて映画的。探偵バレで逆離婚、住む家を失つた真弓をとりあへず筒井が百恵の部屋に連れて行つてみたところ、出て来る山本竜二は百恵の部屋に転がり込んだ、自称芸能マネージャー・大塚。大塚は百恵を、小百合と呼んだ。いぐち武士は、深夜の馬鹿騒ぎに堪忍袋の緒を切らした筒井が飛び込んだ、百恵宅でのツイスターゲームのMC・町田。町田も町田で、百恵を小夜子と呼んだ。相変らず百恵と筒井がドアが開かないだ閉まらないだしてゐると現れる池島ゆたかは、百恵でも小百合でも小夜子でもなく、家出癖のある妻・マチコの居場所を遂に探し当てた夫。オバチャンとかアンチャンとか、ツイスターゲームに於ける百恵の対戦相手やラスト登場する管理人等はクレジットもなく手も足も出せずに不明。
 何か大御大・小林悟を見るつもりでDMMをブラブラしてゐて、何故か菊池エリ経由で辿り着いた石川欣昭和63年第二作の買取系ロマポ。因みに菊池エリ的には映画第五戦、細山智明二作の前に、石川江梨子名義で初陣があるらしい。一方、石川欣といふと一本しか観てゐないが、「痴漢バス バックもオーライ」(昭和62/監督:石川欣/脚本:アーサーシモン/主演:長谷川かおり)の鮮烈な印象が残つてゐるだけに、期待して臨んだものだがこれが何とも腰どころか首も据わらぬ一作。百恵が筒井に右肘を曲げ伸ばした左腕に添へさせた形の両腕を、左から右に回させて「仮面ライダー」。煙草を足で消す動作をさせ「ロックンロール」、これには筒井の「ツイストだろ」といふツッコミも入る。筒井と百恵がミーツしたところで、物語らしい物語が起動するでもなく、さうした児戯じみたシークエンスを延々見せられ続けるのには、正直退屈な苦痛も禁じ難い。そもそも未だ口跡の覚束ない若き菊池エリに、ただでさへ浮世離れた長台詞を寄こす蛮勇にも、ぼちぼち三十年の時を経て改めて付き合ふのは厳しい。さうはいへ、主演女優の地から浮いた足が綺麗に空滑りしてしまつたとしても、まだ俳優部は佐野和宏を一枚残してゐるぢやないか。ところがこれが、筒井の造形が百恵に劣るとも勝らず見るに堪へない。ツイスターゲームの馬鹿騒ぎに怒鳴り込んだ筒井は、「お前らなあ自由と身勝手履き違へてんだよ」と説教、座を白けさせる。アンタの口から、そんな凡庸な能書聞きたかねえよ。最終的にオーストラリアに飛ぶ腹の百恵を助手席に、筒井は車を売つた金で田舎に小さな家を買つて云々かんぬんと、クソみたいな新生活の展望をグジャグジャ語る。少なくとも俺は、色気もダンディズムの欠片もない佐野なんて見たかねえよ。不自然に海岸に落ちてゐた民族楽器のこきりこで、筒井がエリマキトカゲをおどけてみせるのも勿論致命傷。菊池エリにも決して見劣りしないオッパイを誇る舞坂ゆいと、絶対美人の志水季里子をも擁しながら、雑な展開はさて措き全篇を塗り潰す不用意なアンニュイさに、女の裸に持てるエモーションを全て突つ込む気勢も削がれる始末。兎にも角にも、オッパイに免じて菊池エリは兎も角、佐野和宏の惰弱なカッコ悪さが堪へた。


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