真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「わいせつ覗き 見せたがる女」(1996/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/監督:鈴木俊久/脚本:瀬々敬久/企画:朝倉大介/撮影:西久保維宏/照明:南園智男/編集:フィルムクラフト《金子尚樹》/助監督:坂本礼/監督助手:藤澤真佐志・森元修一・大西裕/撮影助手:谷川創平/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:沢田夏子・南志津香・岡田智弘・佐野和宏・飯田孝男・伊藤猛・小谷千亜紀・吉田京子《声の出演》)。
 望遠鏡を覗く男、覗かれる部屋では、下半身はパンティだけの沢田夏子が、エビアンを喇叭飲み。そこに佐野和宏が現れ、寝室に移りオッ始めたものの、ほどなく消灯。依然影に沈む男が望遠鏡から目を離し、どんよりとした夜景にタイトル・イン。沢田夏子の部屋に佐野が来るロングだけで、元が取れたやうに錯覚しかねない。
 雑然とヨットの並ぶマリーナを、新聞配達の岡田智弘が走る。マンションのエントランスで、岡田智弘は沢田夏子と衝突。泣きながら立ち去つた沢田夏子を追ふ伊藤猛が、何某か沢田夏子の郵便受けに入れて行く。岡田智弘が郵便受けを開けてみると二人の写真の裏に、“明日、2字30分発の浅間2号、ホームで待つてる”と書いてあつた。一年後、零細不動産屋の有限会社「尚弘」で働くナカモトタケキ(岡田)は、カップル客(女が多分小谷千亜紀、男は消去法で藤澤真佐志?)を案内した物件から、TVリポーターのトミタ(下の名前不詳/沢田夏子)が、ベランダで植木鉢に水をやる姿を遠目に目撃する。
 改めて配役残り佐野和宏は、トミタと関係を持つ局絡みの人。伊藤猛は同郷の長野から、トミタを連れ戻しに来た横山。飯田孝男と南志津香は尚弘の社長・権野と、もう一人の従業員・キクチジュン、ジュンコかも。吉田京子は、体だけは気をつけるんだよ的な電話越しのトミタ母声。その他尚弘に来店するショートカットの女と、合鍵屋が見切れる。
 思ひだしたやうに素のDMMでバラ買ひする正調での、国映大戦第三十一戦。鈴木俊久なる覚えのない監督といふか名義の正体は、入院した上野俊哉の中途を、瀬々敬久が引き継ぎ完成させた格好とのこと。といつて無論、国映系とたとへば旦々舎であるならば、濡れ場ひとつで呉越同舟が一目瞭然となるのかも知れないが、今作の場合、何処を上野俊哉が撮つてゐて、其処は瀬々敬久が撮つてゐるなどといふのは皆目判別不能。ナカモトのアバンを回収する―下は―パン一で水を飲む沢田夏子の部屋に、佐野がやつて来るシークエンス。外から望遠鏡で見たアバンと屋内視点の本篇とで、寝室に沢田夏子が自力二足歩行で普通に入るのと、玄関口から佐野に抱き抱へられ入るといつた程度には結構違ふのが、単に大概やらかしたのか、幾許かの含意が存在するのかも当サイトの節穴には全く以て見通せない。ただこれ、沢田夏子の御召物が実は白と黒とで下着の色から違ふんだよな。仕出かすには、寧ろ無防備すぎるやうな気もするのだが。
 覗かれてゐた女が、何の物の弾みか見せたガールにザクッと変貌する。硬質の画とセンシティブな演出とで体裁を気取りこそすれ、所詮は商業ポルノグラフィーにありがちなお話も通り越した、殆ど一種のファンタジー。まさかのクリシェの予感が実際さうなりグルッと一周して驚いた、終盤のキキードカンには開いた口が塞がらず、ラストも案外豪快に投げ放す。尤も後述する要因で飼ひ殺される二番手は兎も角、全盛期を思はせる主演女優は比較的以上に脱ぎ倒し、偏に沢田夏子を愛でる分にはこれで戦へなくもない。さうは、いつてもだな。イケメンを傘に着て、病的に自閉的なナカモトが折角据ゑて下さつた御膳を、卓袱台ごと引つ繰り返し続ける始終には呆れるどころか直截に腹が立つ。ジュンが自分ちに誘つて呉れてんだろ、行けやボケ。何が用事ならクソが、凍らすぞ。客席のそこかしこから投げつけられたポップコーン吹雪が銀幕に舞ふ、幻影のクリアに浮かぶ一作ではある。


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