真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「姫を犯す」(2002『につぽん淫欲伝 姫狩り』の2012年旧作改題版/製作:ジャパンホームビデオ株式会社・新東宝映画株式会社/配給:新東宝映画/監督・脚本:藤原健一/企画:福俵満/プロデューサー:寺西正己/撮影:中尾正人/照明:東海林毅/編集:酒井正次/音楽:川口元気/衣裳:おかもと技粧、他一名/撮影助手:田宮健彦、他一名/助監督:本間利幸・斉藤勲、他一名/制作協力:フィルムワークスムービーキング/出演:西村萌・りょうじ・勝矢秀人・伊達直也・風間今日子・美咲レイラ・愛染恭子《友情出演》)。決して拾ひ辛いクレジットではなかつたのだが、己のメモが読めん。何たることか(;´Д`)
 新東宝カンパニー・ロゴ時より、法螺貝と合戦の適当なSEを鳴らして開巻。戦国の世、鈴鹿の地。織田―信長―勢についた菊川家の主君(勿論登場せず)は討ち死にし、姫君のまつ(西村)は大矢与助(りょうじ)の護衛の下、今川家の追跡を逃れ越前朝倉家を目指すことに。アバンタイトルのみ登場の愛染“塾長”恭子は、まつの侍女・月代。
 ベートーヴェンの交響曲第五番をガッチャガチャにアレンジした、リアルタイムでm@stervision大哥も難じてをられる激安の劇伴とタイトル明け、鈴鹿を離れることに相変らず不平を垂れつつも、ひとまづ与助とまつは山道をホテホテ行く。一方山中のあばら家、赤鬼と呼ばれる山賊(勝矢)と、後にカッ浚はれて来た出自も窺はせる、女房?・菊乃(風間)の情事。映画全体の平衡を易々と放棄した上で大概延々繰り広げられる、風間今日子と勝矢秀人(現:勝矢)による重量級の、濡れ場の度も越えた正しく一戦はど迫力。にも関らず、事後それでも満ち足りることを知らぬ菊乃の性欲に閉口気味に、汗を流しに向かつた赤鬼は、絶妙なグッド・タイミングでまつが先に川で水を浴びる現場に遭遇。他愛ない外堀は端折つて不意を突いた与助は縛り上げ、まつを手篭めにするかとした赤鬼は、所持品の櫛の紋から女が菊川家の姫であることを知る。今川家にまつを売れば結構な金になると踏んだ赤鬼がほくそ笑んでゐると、亭主が余所の女に鼻の下を伸ばしたものと菊乃が血相を変へ追ひ駆けて来る。シンプルなのかややこしいのかよく判らない修羅場に、虚無僧・久蔵(伊達)がプラりと現れる。勝矢秀人を伊達直也が圧倒し得るやうには半欠片も見えないのだが、兎も角赤鬼は菊乃を連れ一旦退散。まつと与助が招かれた庵には久蔵のほかに同じく修行中との、不自然極まりなくも妖艶な尼僧・順庵(美咲)が居た。
 となると当然今年が五十年となる新東宝の創立四十周年から何時の間にか早十年、PINK‐XプロジェクトあるいはA計劃の第三弾は、それなりに体裁は整へた一応本格時代劇。折角の目出度い周年だ、祝儀代りに筆の糖度も増してしまへ。それはさて措き、今や新版ポスターでは無視されるPINK‐Xはそれはそれとして、もうひとつ側面から歴史的に通り過ぎることが許されないのは、今作が「美咲レイラ 巨乳FUCK」(2001/脚本:山崎浩治)と「痴漢電車 魅せます巨乳」(2002/脚本:五代暁子/監督は共に渡邊元嗣)に続く、超絶美身クイーン・美咲レイラの第一章最終作に当たるといふ点。映画の中身に話を戻すと、媚薬なのか忍術なのか、どうやら香を焚くことによつて前後不覚に陥らせたと思しきまつと与助を、久蔵と順庵がぞれぞれ篭絡する絡みがクロスファイアする中盤の見所は、美咲レイラの芸術的な裸身で勿論感動的に堪能させる。尤も、結局そこに飛び込んだ赤鬼が久蔵と順庵を文字通り秒殺してしまつては、二人が今川の手の者なのか否かは最終的には判らずじまひ。そもそも、久蔵がまつの―多分―初物を喰つてしまつたトピックを、綺麗に通り過ぎてみせるのは激しく理解に苦しむ。あれが嫌だこれも嫌だと、まつが戦乱に翻弄される我が身を呪ひ今風にいふと自由なり自我を摸索する風が全篇を貫くテーマ―のつもり―として匂はされはするものの、演出と主演女優双方の軽さに如何せん軸にしては覚束ない。地味に感じなくもない菊乃への距離が、まつの出現に止めを刺され終に最後の一線を越える赤鬼の狂気のみが、一人気を吐く勝矢秀人の馬力頼みで辛うじて満足に形になるばかり。伊達直也よりはマシなだけで、りょうじもただの色男に過ぎない。グルッと一周したクリシェが寧ろ鮮やかでさへあるともいへるのか風間今日子、殆どギャグのオーバー・アクトを見せる美咲レイラ、そして妹を影武者にすら差し出したといふのに、与助の報はれなさが迸る出し抜けなバッド・エンド。総じては捉へ処に欠いた一作ながら、三本柱の去就に濃厚な配慮を欠いた無造作さには、藤原健一らしさがある意味垣間見えるといへるのかも知れない。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 若未亡人 う... トルコ行進曲... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。