真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「猟色未亡人 着物のまゝで」(1997『いんらん家族 好色不倫未亡人』の2008年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/脚本・監督:深町章/企画:福俵満/撮影:清水正二・大宮八満/照明:多摩三郎/編集:酒井正次/助監督:高田宝重/監督助手:佐藤吏/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:槇原めぐみ・相沢知美・浅倉麗・田口あゆみ・熊谷孝文・樹かず・池島ゆたか・風見怜香)。
 私立探偵・中川洋(熊谷)の探偵事務所を、出入りする法学部で犯罪心理学を専攻する女子大生・晶(槇原)が訪ねる。法学部に犯罪心理、学科ではないにせよゼミなんてあるか?晶は郵便受けに放たらかしになつてゐた、仕事の依頼と思しき手紙を渡しに現れたものだつたが、中川はそれには構はず晶を押し倒す。アラレちやんメガネと、カーキのジャケットにベレー帽を合はせてみたりなんかする、晩熟風の変則フェミニンな女子大生ルックで武装しながら、いざ一服剥いてみると、思ひのほかムチムチとした槇原めぐみのオッパイの破壊力に心を持つて行かれる。事後漸く便りを繙いてみたところ、依頼人が生命の危機を訴へる内容に、二人は山梨県の山村を訪れてみることにする。開巻は工藤ちやん風のシティ・テイストな探偵扮装であつた中川は、今度はかういふ格好がうつてつけの事件だと、金田一耕介のコスプレを披露するフットワークの軽さを見せる。
 中川と晶が目指したのは、当主・大作(池島)が莫大な遺産を遺し死去したばかりの旧家・小松家。ところが二人が小松家に辿り着いた時には既に、依頼人で大作秘書の須藤美子(風見)は死亡してゐた。大作の死に伴ひ労を労ふ酒席で、美子のグラスに青酸カリが入つてをり服毒死したのだ。ポップに一癖も二癖もありさうな小松家の成員は、大作の後妻・シズコ(田口)。シズコとは反目する大作前妻(一切登場しない)の娘・アケミ(浅倉)、但しアケミは実は前妻と不倫相手との間に出来た子供で、大作との間に血縁関係はなかつた。アケミの婿養子で隠れて―当然だが―シズコとも関係を持つタモツ(樹)に、最初に中川と晶を怪訝に出迎へた、お手伝ひのキミコ(相沢)。全方位的に胡散臭げな家族の面々と何処かしら影を宿すキミコを前に、ひとまづ中川は事件の調査を開始し、晶は一同の過去を洗ふ。
 何事か豪華にも五人とも女優が脱ぐたて続けられる濡れ場濡れ場に彩られた、別に松田優作に囚はれるでもない文字通りの探偵物語。色香に始終迷はされ倒すのはさて措き挙句に無能な中川を押し退け、晶が俄かに名探偵ぶりを発揮する展開は兎も角、肝心の謎解きの件のお粗末さに、評価が一段上がるのは阻まれた一作ながら、濡れ場の質量には全く遜色ないゆゑ、十分にピンク映画的にはとりあへず成立してゐる。加へて個人的には、濡れ場に突入してもメガネを頑強に外さぬ―あるいは外させぬ―見上げた槇原めぐみの、しかも意外に重低音をバクチクさせる桃色の威力だけで、全く問題なく戦へる。遅ればせるにもほどがありつつこの期に至つて漸く気がついたが、深町章がしばしば見せる、少々本篇がグダグダでもラストだけは爽やかに、時には叙情的な余韻を持たせて締め括る、得意の振り逃げも今回爽やか方面に綺麗に決まる。探偵の果たす役割に期待し過ぎだといふ無粋なツッコミが成立するならば、このお話、そもそも美子が中川を呼び寄せる意味がないよななどといふ大本の疑問は、それを持ち出した途端探偵映画が初めから成立しなくなつてしまふ以上、ここは好意的に控へるべきだ。晶、と中川のコンビは大変魅力的であるゆゑ、シリーズがあればそちらの旧作改題にも網を張つてみようかと調べてみたが、残念ながら、晶と中川の探偵譚といふのは今作限りであるやうだ。

 ところで旧題、未亡人なのだから不倫といふのは厳密に形式的には当たらないのではないか、とも思つたのだが、相手が血は繋がらぬとはいへ娘婿、即ち既婚者である以上、不倫といへば矢張り不倫なのか。それ、とも。更によくよく考へてみれば擬似近親相姦でもないか?等々とあれこれ思ひを巡らしてゐる内に、段々と訳が判らなくなつて来てどうでもよくなつた。


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