真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「エッチな体温 白衣みだれ抜き」(2013/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/原題:『あすなろStory』/撮影監督:清水正二/音楽:大場一魅/編集:酒井正次/助監督:中川大資/監督助手:北川帯寛・松井理子/撮影助手:海津真也・矢澤直子/照明応援:広瀬寛巳/編集助手:鷹野朋子/録音:シネ・キャビン/現像:東映ラボ・テック/スチール:津田一郎/タイミング:安斎公一/協力:鎌田一利/出演:周防ゆきこ・日高ゆりあ・沢村麻耶・竹本泰志・牧村耕次・なかみつせいじ・野村貴浩・小林節彦・久保田泰也・北川帯寛/Special Thanks:松井理子・山ノ手ぐり子・倖田李梨)。
 チャリンコを転がす―ピンクの―白衣の周防ゆきこ、橋を渡り、安アパートに辿り着く。「訪問看護ステーション『あすなろ』の三鷹ゆかりです☆」と、元気に名乗りを上げたタイミングで完成されたタイトル・イン。開巻の訪問先は、寝たきりの独居老人・今泉(小林)宅。小林節彦に丸投げしたのか、リズミカルに発作を起こすほかは、「義母と郵便配達人 ‐禁欲‐」(2010/監督:松岡邦彦/主演:佐々木麻由子)時と殆ど全く同じ造形ではある。ゆかりは“あすなろスペシャル”と称して今泉に身を任せると、英気を取り戻させる。そんな―どんなだ―「あすなろ」事務所、面々は所長の額田恭介(竹本)以下、事務方の芳恵(倖田)。ヘビースモーカーの西崎明奈(日高)に、南野(結局登場せず)のセクハラを訴へながら帰還する小林(松井)。ゆかり曰く、いはゆる裏看護のあすなろスペシャルに関しては五人しか知らないといふのがよく判らない。額田と実働部隊のゆかりと明奈に芳恵と・・・・もう一人が誰よ、四人と聞き違へたかな?
 配役残り牧村耕次は、結構元気な車椅子生活を送る山村史郎。沢村麻耶は史郎の息子嫁・優子で、久保田泰也が優子が連れ込む間男の和彦。野村貴浩は史郎の告発も痴呆かと取り合はぬ、呑気な息子・誠。額田がゆかりをスカウトする件に登場する北川帯寛は、手術を控へた骨肉腫患者・山田。山田篇の頭と尻には、広瀬寛巳と中川大資が医療関係者要員でシレッと見切れる。山ノ手ぐり子(=五代暁子)は若年性痴呆症の夫を抱へ明奈に泣きつく恵で、目玉クリップで留めたポストイットでメメント状態のなかみつせいじが、当人は未だに最前線の企業戦士のつもりの国枝。となると、ここは実は、牧村耕次の息子ではなく野村貴浩を弟か何かで国枝に絡めると、森山茂雄第三作「美人保健婦 覗かれた医務室」(2003/主演:麻木涼子)とほぼ同じポジションにもなつたところである、それがどうしたといふのはいはないで呉れ。
 池島ゆたか2013年第一作にして、主演三作目の周防ゆきこ第三戦。オジサンどうにもかうにも、キャイキャイした周防ゆきこの今時声優風のメソッドが苦手で、これまでは殆ど喰はず嫌ひに済ませて来た次第である。とはいへ今回、周防ゆきこ自身が幾分落ち着いて来たのか、それともゆかり一人に焦点を絞る構成でないのが幸したか、その点に足を引かれることは個人的には意外となかつた。ゆかりと明奈の奮闘により今泉と国枝と山村史郎が元気になる物語が、殊更に騒ぎ立てするほど面白いといふ訳ではない。今泉と国枝と山村のハッピー・エンドはそれぞれ完全に別個の状態に止(とど)まり、劇中世界の重層的な絡み合ひが、一段二段のより深みを増すといふこともない。前作を想起するとしかも同じ面子で清々しく芸を欠く、ゆかりと初老の額田とのラブ・ロマンスは、額田が没妻への贖罪も込みで十五年放置した勃起不全が、あすなろスペシャルでコロッと完治するといふのは流石に御座なりに過ぎよう。尤もさうはいへ、いい湯加減の南風系娯楽映画に、さういふ瑣末な野暮は控へるべきだ。とりわけ、修羅場のどさくさに紛れ史郎は車椅子からスタンド・アップ。それに誠が気付くと、ゆかりと二人で史郎の周囲をグルグル回り、「立つた、立つた、親爺が立つた♪」と案外尺も費やし乱舞するカットの、底の抜けた幸福感は絶品。ピンクを取り巻く局地的な状況も、世間全般もとかくクソ塗れな閉塞した昨今につき、せめて小屋の暗がりの中浮世に沈んだ身を浸す一時の慰撫くらゐは、このくらゐ能天気で寧ろちやうどいい塩梅なのかも知れない。


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