真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「女3人 すけべ好き」(1994『いんらん三姉妹』の2006年旧作改題版/製作:サカエ企画/配給:新東宝映画/監督:新田栄/脚本:夏季忍/企画:中田新太郎/撮影:千葉幸男/照明:渡波洋行/編集:酒井正次/助監督:国沢実/監督助手:北村隆/撮影助手:島内誠/照明助手:藤森照明/音楽:レインボーサウンド/効果:時田グループ/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:原田ひかり・吉行由美・七重八絵・芳田正浩・杉本まこと・久須美欽一)。脚本の夏季忍は、久須美欽一の変名。
 悶え狂ふ三人の女の姿が、画像処理で万華鏡のやうにグルグル巡る豪快なイメージ・ショットで開巻。
 新婚夫婦のツキミ(原田)とマサオ(芳田)、ツキミは、マサオにセクロスの腕を仕込んでゐる。ツキミはマサオと店で出会つた風俗嬢上がりといふ設定は、原田ひかりの右太股大きな牡丹の彫物を織り込んでの後付か。マサオの父から電話のあつたことと、折り返す旨を事務的に伝へながらの絡みがリアルでいやらしい。最中、ツキミに電話がかゝつて来る。度重なる浮気のバレた姉・カナエ(吉行)が終に離婚、実家に出戻つて来てゐるとやらで、慌ててツキミは郷里に向かふ。一方マサオの父親(久須美)は、結局マサオからの電話はないまゝに、当時米不足の折、田舎よりコシヒカリを大袋一杯に背負ひ上京して来る。
 典型的なオカメ顔の七重八絵は、三姉妹の三女で女子高生のハナミ。旧題新題とも清々しくストレートな看板を更に一切偽らぬ、すけべ好きで淫乱な三姉妹の姿を、妻を案じ実の父親に対して嫉妬に狂ふマサオの未成熟や、ハナミが電車の車中で痴女プレイを仕掛け、逆に面倒を背負ひ込まされる破目になる痴漢氏らを、適当に交へながら描く桃色ホーム・コメディ。適当なのか、適当なんだよ。
 杉本まことがハナミから痴女プレイを仕掛けられる、痴漢氏の小松。勢ひに乗つたハナミが、遂に人目も憚らず電車の車中で尺八を吹き始めるに至り、眉をひそめるその他乗客要員で、国沢実が刹那ながら確実に見切れる。小松がマサオの意地悪な上司でもある、如何にも御都合な世間の狭さはゴキゲン。実は男が眠るとも知らずマサオがベッドに飛び込むギャグを二度繰り返す辺りにも、今作のイイ感じのヌルさが溢れてゐる。全盛期の吉行由実の裸をもう少し見たかつた心は残しつつも、超絶の美しさを誇る主演の原田ひかりはその分タップリと堪能出来る。特筆すべき点は勿論何処にもない上でなほ、低目とはいへ一応の水準には達した、プログラム・ピクチャーの枝幹を主には量的に飾る一作。
 尤も概ねそれなりのセンで撮り上げられてゐる割に、オーラス中のオーラスでひとつミソをつけてしまふのは。クライマックスを飾る順当に、ツキミとマサオの絡み。正常位でエッサカホイサカお盛んな様を一頻り引き気味に押さへたのち、カメラは左にパン。窓から捉へた外景に、“終”とエンド・マークが被さる。のが映画の幕引きなのであるが、視点が動く直前に、原田ひかりが確実に千葉幸男の方を見てしまつてゐる。確かに、観てゐる分にも入れポン出しポンを押さへてゐる間は、平素慣れ親しんだ安定感を明らかに通り過ぎた、些か以上に間延びしたものではあつたのだが。

 ハナミの部屋に初期V系バンドのZI:KILL(活動期間1987~1994)のポスターが見られ、時代を大いに感じさせる。
 弘前大学映研のブログによると、今作は1997年に「好色三姉妹 不倫ぐるひ」と旧作改題されてゐるとのこと。即ち今回は、二度目の改題新版公開といふ格好になる。但し男なら兎も角、不倫に狂つてゐるのはカナエだけではある。


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