真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「高校教師 淫らな課外授業」(1996/製作:IIZUMI Production/提供:Xces Film/脚本・監督:北沢幸雄/企画:稲山悌二《エクセスフィルム》・業沖球太/製作:北沢幸雄/撮影:鈴木一博/照明:渡波洋行/音楽:TAOKA/編集:北沢幸雄/助監督:灘島弘義/監督助手:小谷内郁代/撮影助手:便田あーす/照明助手:那雲サイジ/スチール:本田あきら/車両:灘友人/ネガ編集:酒井正次/効果:東京スクリーンサービス/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:ひとみ綾・葉月蛍・西山かおり・樹かず・田嶋謙一・モト大野・荒木太郎《友情出演》・高田宝重・片山圭太・紗樹・藤崎健・橘梧郎・日暮謙& Dear Friends)。出演者中、葉月蛍がポスターには葉月螢、荒木太郎のカメオ特記と、高田宝重以降は本篇クレジットのみ。
 タイトル開巻、こんちこれまた宝徳学園。生徒と一緒に登校するヒロインが、とりたてゝ騒ぐほどの美貌といふ訳でもないものの、佇まひなり物腰がクッソどエロい。3年A組担任で担当科目は日本史の松澤香奈(ひとみ)が、恋人の数学教師・竹田英司(田嶋)が女生徒にモテてゐる場に軽く交錯するカット噛ませて、受験の頻出領域でもない割に、日本が大東亜戦争に突入する昭和初期を掘り下げる3Aの授業風景。竹田が顧問の映画研究会部長でもある筒井義之(モト)に、優等生で同じく映研の桐島温子(葉月)を抜いて、空席が二つ。その頃空席の主はといふと、へべれけに夏服を着崩す不良生徒の後藤健(樹)とガールフレンドの小林幸恵(西山)は、ラケットが映り込む点を見るにテニス部部室?にてヤリまくつてゐた。
 配役残り荒木太郎は、後藤の停学を3Aに報告する教師A、教頭かも。紗樹が筒井・温子ともう一人の映研部員なのか、授業中に体調を崩した温子が担ぎ込まれる保健室の、養護教諭なのかは完ッ全に特定不能。紗樹を飛ばして片山圭太以降は生徒要員として、問題があの高田宝重が、何処に見切れてゐるのか判らないピンク映画史上最大級のミステリー、ロングでもその人と知れる御仁なのに。
 北沢幸雄1996年第四作は、同年第二作「高校教師 私は、我慢できない」(主演:沢口レナ)、翌1997年ピンク映画第一作「高校教師 黒い下着を脱ぐとき」(主演:聖亜舞)と明確な三部作を成す「高校教師」シリーズ第二作。如何にもそこら辺にゐさうな風情を、さうはいつてもそこら辺にはさうさうゐないクオリティで撃ち抜く何気にエクセレントな主演女優を擁する反面、本筋らしい本筋は、何時まで経つても起動しない。夜の教室、後藤が呼び出した香奈を押し倒すと、手前の机々に埋もれた二人が一時見えなくなる間抜けな画面設計は強ひてさて措き、締めの濡れ場こそ締めらしい決定力に一応溢れてはゐるものの、生死から不明な竹田の去就に、双眼鏡で香奈のマンションを監視する筒井の出歯亀。そして何より、竹田の子を宿した温子の妊娠。蒔いた種を何ひとつ回収しないまゝに、日本史授業からシレッと暗転してのける豪快なラストには逆の意味で度肝を抜かれた。これでひとみ綾の何気な超絶美身でもお腹一杯拝ませて呉れれば裸映画として立つ瀬がまだしもあつたものを、如何せん不用意に暗い濡れ場が多く、却つてフラストレーションを募らせる始末となると正しく万事休す。広げた風呂敷を満足に畳み損ねる第一作と、碌すつぽ広げもしない第二作。ガッタガタの物語を無理から綺麗に纏める第三作が案外輝いて映る、北沢幸雄の高校教師三部作は一勝二敗といふ寸法。香奈単体の比較だと表情の硬い聖亜舞が一歩下がる、「私は、我慢できない」≒「淫らな課外授業」>「黒い下着を脱ぐとき」とならうかとも思ふけれど。

 ところで2005年に旧作改題された際の闇雲な新題が、「高校美教師 下着モモチラ!!」。後藤再テストなら兎も角、淫らも何もそもそも劇中課外授業が行はれてゐなければ、タイトスカートから下着がチラ見えるショットも別に設けられてはゐない件。“下着モモチラ!!”なる今でいふパワーワード、全体何処から降つて来たんだ。


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