真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「巨乳編集長 やはらかな甘み」(1999/製作:旦々舎/配給:大蔵映画/脚本・監督:山邦紀/撮影:岩崎智之・藤井昌之/応援:橋本彩子/照明:上妻敏厚・荻野真也/応援:河内大輔/編集:《有》フィルム・クラフト/音楽:中空龍/助監督:田中康文/応援:松岡誠・横井有紀/制作:鈴木静夫/スチール:岡崎一隆/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:河野綾子・風間今日子・吉田祐健・石川雄也・やまきよ・村上ゆう)。
 徐々に与へられる諸情報を煩はしくなる故前後はスッ飛ばして筆を進めると、ジョイトイ屋とはいへ、移転したものでなければ「ラブピースクラブ」(1996年開業)ではなく「Dream Shop 夢の城」、パッキパキに照明の当てられた店長・サボテン(河野)の御満悦な表情を抜いてタイトル・イン。マドンナメイト文庫を主戦場とする、自称どエロ小説家の雄豹(やまきよ)がカタカタと執筆中。それはワープロなのかPCか知らんけど机上に威容を誇る、早過ぎる時代の流れを窺はせるガジェットの巨大さに驚かされる。夜中になると無性に食ひたくなるカップ麺を雄豹が啜つてゐると、妻の村上ゆうが起きて来る。日と所変りマドンナメイト編集部、サボテン店長改めここではマドンナ編集長(だから河野綾子)はオーナーの愛人で、前編集長の種馬(石川)は目下その下に甘んじてゐた。種馬から手を出す形で火蓋を切る一戦はビデオカメラに捉へられてをり、病的な潔癖症につき自室から外に出られない梟オーナー(吉田)が、風間今日子と乳繰り合ひつつ監視する。改め気付いたが、大概特異な劇中世界に放り込まれてなほ、更に独特な存在感を誇示する祐健はとなれば何処の組でも何時も通りの祐健だ。編集部に雄豹先生が原稿をフロッピーで持つて来ると、マドンナは種馬を人払ひ、雄豹戦に華麗に移行する。河野綾子と風間今日子、巨大なオッパイの大山脈が壮観な併走する二戦経て、建物から出て来る村上ゆうの静謐なカット挿んで、村上ゆうは精子の数が少なく女を妊娠させることが出来ないといふ、衝撃の検査結果を雄豹に叩きつける。動揺を隠せない雄豹に村上ゆうが追ひ討ちをかける、「次の世代の新しい生命を生むことは、人間の崇高な義務よ」、「女を妊娠させられないやうな男は、もう男ぢやないよ」なる保守的な男女観は、こと敵が旦々舎とあつては殊更奇異に映る。ともあれ、都会のジャングルを駆け抜ける雄豹気取りの雄豹は忽ち自信を喪失し、果てには書けなくなつてしまふ。
 前後を薔薇族が挟撃する、山邦紀1999年ピンク映画全三作中第二作。野性のタフガイを自任してゐたつもりが、思はぬ事実に呆然と立ち尽くす雄豹の姿は、順序的には逆なのだが今にして思ふと「社長秘書 巨乳セクハラ狩り」(2007/主演:安奈とも)に於ける、砂漠に屹然と獲物を狙ふコヨーテといふ自画像と、周囲の評価―と思ひ込んだ妄想―とのギャップに壊れて行く池島ゆたかを連想させる。ケロッと筆を滑らせてしまふが最終的にはサボテンにアナルを開発された雄豹が、女装エロ作家として開眼するだなどといふ着地点はケッサクで、菊穴に捻じ込まれたディルドーに終に達した雄豹即ちやまきよ(a.k.a.山本清彦)が安らかに涙を流すカットには、単なる色物の枠内に止(とど)まらない正方向のエモーションが満ちる。そこまではいいとして、資本の論理だけはエロ本は駄目である、あるいは男女共々の“変形”。風間今日子が抜群の安定感で適宜投げる挑戦的な視座は、本当に風呂敷が拡げられるばかりで清々しく未消化のまま、映画は河野綾子と風間今日子を向かうに回しては流石の祐健も劣勢は否めない、劇中二度目となる大巴戦の重厚な勢ひで堂々と振り逃げる。頗る魅力的なキャラクターの梟オーナーも、結局無菌の自室から両義的に微動だにしない。物語に本位を置くならば物足りなさも残す反面、河野綾子と風間今日子の何れもタフな濡れ場には尺もタップリと費やされ、オッパイ海でのダイビングには最適の一作。オッパイの山だ海だと、俺は自分で抜いた底に落ちて消滅すればいいのに。


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