真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「人妻不倫痴態 ‐女医・弁護士・教師‐」(1999/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:岡輝男/企画:稲山悌二《エクセス・フィルム》/撮影:千葉幸男/照明:高原賢一/編集:酒井正次/録音:シネ・キャビン/音楽:レインボー・サウンド/助監督:竹洞哲也/監督助手:北村隆/撮影助手:池宮直弘/照明助手:藤森玄一郎/効果:中村半次郎/スチール:佐藤初太郎/現像:東映化学/出演:女医篇 林由美香・久須美欽一・丘尚輝・山本万里 弁護士篇 佐々木基子・杉本まこと・田嶋謙一 教師篇 川原理香・中川大輔・竹本泰史・河野友孝・吉田健児)。
 タイトル開巻即座に、まるで手書きのやうな適当なフォントで“女医篇 田中みさえ 29歳”。泌尿器科・肛門科、チンコ模型を抜く画から、田中みさえ(林)が若い男(竹洞哲也)を羞恥気味に診察する、普通に若くてそれなりの山本万里が看護婦。診察時間は終つたにも関らず、みさえの元患者で数軒のラブホテルを経営する実業家・高橋俊弘(久須美)が来院。するとみさえは山本万里を帰し、診察室にて高橋と事に及ぶ。丘尚輝はみさえの夫で普通のサラリーマン・武則、劇中夫婦生活の恩恵には与れず。何だかんだの末、みさえが向かふ筈の学会のことはスッ飛ばし、“弁護士篇 服部芳子 33歳”。適当な法廷イラストと熱弁を振るふ様子を噛ませて、加川法律事務所所属の弁護士・服部芳子(佐々木)に繋がりが語られない土建業者・臼井和也(田嶋)から呼び出しの電話が入ると、海浜地帯に停めた臼井の車の中での逢瀬。改めて後述するが、作業服の田嶋謙一が、佐々木基子とカーセックスを一戦交へるとそれだけで退場する、杉本まことは同業者の夫・雅史。“教師篇 関口尚美 25歳”は授業風景から、一応ここまでは律儀なのだが。公立―あまり偏差値は高くないらしい―男子校教師・関口尚美(川原)の英語の授業、河野友孝と吉田健児が該当すると思はれる授業中の生徒要員は、計四名背中が見切れる。サクサク誰も居なくなる放課後、大胆なのか馬鹿なのか、尚美は教室で教へ子の斎藤一平(中川)と関係を持つ、竹本泰史は尚美の夫でこちらは私立進学校教師・仁。
 何の為に各個が別に掠りもしない三篇のオムニバス構成にしたのか、清々しく理解に遠い新田栄1999年第一作。ただでさへ短い一時間の尺を三分割、なほかつ濡れ場に関してシチュエーションの多彩さ込みでの質と量双方一欠片の妥協も頑強に拒むとあつては、元々望みの薄い物語の入り込む余地が本当に殆ど絶無。殊に、佐々木基子×杉本まこと×田嶋謙一と強靭な俳優部を揃へておいて、ドラマの膨らみなり深まりに一瞥だに呉れない、弁護士篇の逆の意味でのストイックさは正体不明の光芒を放つ。一方順番を前後して女医篇はといふと、面子からある意味磐石な、全く標準的な新田組。最後に、一応、不倫の不在工作といふ共通のネタを投げる時は意外と入念に投げておいて、最終的にはほぼ放置して済ます女医篇と弁護士篇に対し、教師篇は大概さがプリミティブな方向に加速。帰りの遅さを仁にやんはりと咎められた尚美は、三年生最後の大会が近い陸上部の活動と言ひ逃れる。ところが、二度の一平との教室戦に際して律儀に日付が一日進む黒板を見るに、劇中十二月。運動部にせよ文科系にせよ、日本で三年生が師走に参加する大会なんてあんのかよ。鞄から出て来たコンドームも、エイズ予防の指導要領が云々と強行回避。挙句に、急遽出来た暇にカミさんの教室でも覘いてくかと足を伸ばした―尚美の学校的には部外者に過ぎない―仁が、窓から覗ける―着衣のまま―騎乗位でアヒンアヒン腰を振る尚美の姿―下の男は死角―を「《陸上部の部活を》やつてるやつてる」と満足気にみやるシークエンスの底の抜け具合は、今でいふと草しか生えない。但しそんな他の二篇に劣るとも勝らない教師篇の決戦兵器が、まさかの主演女優、何がまさかなのか。ボサッとした馬面が、馬鹿デカい眼鏡で化けるのは奇跡のエクセスライク。三本柱に穴さへ開かなければ、新田栄は裸映画的には安定する。何処から見ても何処で止めても特に困らない、融通の利く一作である、どんな評し方だ。


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