真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「デコトラ☆ギャル奈美 爆走!夜露死苦編」(2010/製作:ミュージアムピクチャーズ/監督:城定秀夫/脚本:貝原クリス亮・城定秀夫/製作:山田浩貴/プロデューサー:西健二郎・久保和明/ラインプロデューサー:征矢吉裕/撮影・照明:田宮健彦/音楽:タルイタカヨシ/編集:城定秀夫/録音:小林徹哉/助監督:伊藤一平/監督助手:山口通平・加藤学/撮影助手:河戸浩一郎・花村也寸志/車輌コーディネイト:濱田旬《エイティ企画》/ロケーションコーディネイト:柳川庄司、他/出演:吉沢明歩・亜紗美・吉岡睦雄・平田敬士・石井亮・松浦祐也・中村英児・河野智典・蘭汰郎・神楽坂政太郎・しじみ・速水今日子・野上正義)。
 開巻はセピア基調の回想パート、白いセーラ服にチェーンで武装した吉沢明歩と、黒セーラにアフロヘアー、鉄パイプを構へた亜紗美とのタイマン勝負。引いたカメラが逆パンするにつれ色が戻り現在時制に。運転席で仮眠を取つてゐたところ、悪戯小僧に亡き父譲りのデコトラ「勇生丸」に落書きされた女トラッカーの奈美(吉沢)は激怒する。婦警(亜紗美)の運転するミニパトを嘲笑ふかのやうに振り切りつつ、奈美は馴染みの野上正義が大将の食堂で食事、ではなくあくまでメシ。前作「デコトラ☆ギャル奈美」(2008/監督・脚本:城定秀夫)とは厳密には食堂自体の物件は別物ながら、不思議なことにといふか何といふか、清々しく料理が不味さうにしか見えない点は相変らず。こちらも引き続き、画期的なコンビとしての相性を誇る馬鹿トラック野郎二人組(松浦祐也と中村英児)が、妙な羽振りの良さを皆に自慢する中、食堂に激震が走る。食堂の表、何時ものやうに停めてゐたトラッカー達の愛車に、先刻の婦警が次々に駐禁を切つてゐた。血相を変へ婦警に突つかかつて行つた奈美は驚く。婦警はかつて西校のスケバンであつた奈美と激しく覇を争ひ渡り合つた、北校のスケバン・綾乃であつたのだ。結局、現行犯進行形の公務執行妨害まで含め奈美は免停を喰らひ、翼を捥がれた日々を送る。漸く現場復帰したはいいものの、ブランクが祟り思ふやうに荷にありつけない奈美は、因果応報的に免許を停止された松浦祐也と中村英児の代りに、聞くからに怪しげな仕事を引き受ける。深夜の漁港で受け取つた荷物を、さして離れてもゐない指定場所へと、午前二時キッカリに届けるだけで報酬は即金で五十万。手下二人(蘭汰郎と神楽坂政太郎)を引き連れた見るからに怪しげな依頼主(河野)を訝しみながらも一仕事終へた奈美が出さうかとした勇生丸に、何時の間にか綾乃が忍び込んでゐた。聞くとクライアントは竜宮会若頭補佐の木下で、奈美は薬物のいはゆる“ショットガン密輸”の片棒を担がされたといふ。しかも、冒頭の対決に割つて入り、後に綾乃と結婚した刑事のトオル(石井)は、警察がその存在を認めない潜入捜査で神宮会に潜り込んだ結果、木下に殺害される。綾乃は夫の復讐を誓ひ、単独で捜査を続けてゐた。とりあへず綾乃宅に招かれた奈美は改めて驚く、綾乃の息子・祐太が、勇生丸に落書きした悪ガキであつたのだ。綾乃は頑強に首を横に振る奈美を薬で眠らせまでして祐太を押しつけると、いよいよ単身木下の懐に飛び込むべく行動を開始する。
 配役残り速水今日子は、竜宮会が仕切るクラブに偽装した売春宿の、女主人・美佐子。しじみ(ex.持田茜)は、そこで働くシャブ漬けでガラクタ寸前の女・ユウカ。二人とも、脱ぎはしない。
 諸々の要素を雑多に詰め込み、パイロット・フィルム然とした第一作と比較すると、第二作は綾乃の結構ハードでシリアスな復讐譚と、祐太を無理矢理任せられた奈美のいはばヤンママ奮闘記といふ二本立てのメイン・プロットに、ひとまづガッチリ纏められてはゐる。ところで個人的には、一般映画に際して「子供と動物が主人公の映画は観ない」といふ俺ルールを採用してゐるやうな歪んだ人間なので、もうそろそろ、「グロリア」(1980/米/監督・脚本:ジョン・カサヴェテス)の翻案はいい加減打ち止めにして頂きたい。それは兎も角、逆に今作に大きく欠けてゐる部分は、前作に於ける桃香(今野梨乃)、他には「18倫 アイドルを探せ!」(2009/監督:城定秀夫/脚本:貝原クリス亮・城定秀夫)の町子(琴乃)と真也(中村英児)のやうな、形振り構はずエモーションの無茶振りを炸裂させる飛び道具が存在しない。その為、技術論的かつ平板な総合評価であれば今作の方が勝つてゐるのかも知れないが、逆に一転突破の激越な訴求力には幾分以上に劣り、その分結果的には全般的な仕方のない安普請さが際立つた印象が強い。オーラスのデコトラの使ひ方にしても、二番煎じといふことはシリーズの定番展開と理解しさて措くにしても、感動的に美しいファンタジーであつた第一作に対して、完全に現実と地続きの単なるサプライズでしかないといへばない点は、矢張り些か弱い。そんな中、最も映画―だからVシネだろ、とかいふ無粋なツッコミは黙れ―が弾むのは、純然たる枝葉ながら腕白坊主に手を焼く奈美の傍らで、手放しに楽しさうに祐太と遊ぶ松浦祐也と中村英児。純粋に大きな子供が、子供と同じテンションで遊んでゐるやうにしか見えない。子供嫌ひの身ではあるが、シンプルに無邪気な二人の姿には柄にもなく胸が温かくなつた。

 奈美が囚はれの綾乃を救出に向かふ、修羅場といふ意味でのクライマックス。どうも木下の背後に、まるで壁のやうに段ボールが積み上げられてゐる不自然に気付くと、案の定、菊雄(吉岡)の駆る「爆心丸」が段ボール壁を突き破り突つ込んで来るお約束には、一周回つた清々しさも覚えた。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 人妻不倫痴態... 新・監禁逃亡2... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。