真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「濡れて開く 制服を犯す」(昭和63『北村美加 巨乳艶熟』の2012年旧作改題版/企画:《株》旦々舎/配給:新東宝映画/監督:浜野佐知/原案:小多魔若史/脚本:山崎邦紀/撮影:稲吉雅志/照明:出雲静二/助監督:鬼頭理三・武沢忠/編集:金子編集室/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:秋本ちえみ・徳大寺笙子・石部金吉・池島ゆたか・斉藤修・山崎邦紀・小多魔若史・北村美加)。出演者中、斉藤修がポスターには斎藤修。
 原稿の遅い痴漢野郎こと、エロマンガ家・小多魔若史先生―オタマと呼び捨て―の話をしながら二人の編集者(山崎邦紀と池島ゆたか/ここでは声のみ)がエロ写真の整理をしてゐると、何故か違反駐車を取り締まる制服婦人警官の盗撮写真が紛れてゐる。不審がる山崎邦紀に対し、池島ゆたかは小多魔若史の、制服好きのアシスタントが落として行つたものであらうと推測する。「変態だな」、と池島ゆたかの無下な断罪に続いてタイトル・イン。そんな次第で、婦警の橋村陽子(北村)を激写する当のアシスタント氏・鼻輪一矢(石部)の無防備に熱心な姿を挿んで、小多魔先生(当然ヒムセルフ)が仕事の遅い鼻輪に邪険に当たる仕事部屋に、編集者の池端啓二(山崎)が現れる。ジャケットを腕捲りした池端のファッションに、むず痒さを禁じ得ない、私は80年代を本当に嫌悪する。結局原稿は上がつたのか上がらないのか、馬鹿みたいにデカいビデオカメラを携へ、小多魔先生と池端は盗撮動画の撮影行脚。行き先は姉妹が二人暮らしする一軒家、歌つて踊れる看護婦を目指すルミ(秋本)が新しい白衣でクルクル舞つてゐるところに帰宅した姉は、エロマンガ愛読者の陽子であつた。小多魔先生は行きがけの駄賃に干してあつたブラジャーと揃ひのパンティだけくすね、ルミの入浴に、池端がカメラを回す。その頃陽子はといふと、小多魔先生の痴漢マンガを読みながら寝落ちる。ここで改めて本登場する池島ゆたかは、後に鼻輪が陥るイマジン共々白黒で処理される、陽子淫夢中の強姦魔。二つの白黒パートは、単なる屋外・屋内の撮影環境の差異によるものに過ぎないのかも知れないが、若干画調を違へて両者とも素晴らしい色を出す。
 ルミを見かけた小多魔先生は、勤務先の河北総合病院まで尾行してみる。配役残り登場順に斉藤修は、左足を骨折した入院患者、屋上にて申し出に乗り三万円でルミを買ふ。徳大寺笙子は、鼻輪と池端が出入りするカメラ屋の、女子高生アルバイト店員・村井薫。小多魔先生が陽子の住所を掴んでゐることを知つた鼻輪は、静かに点火する。そんな鼻輪を街で見かけたセーラ服の薫は気軽に接触、この人も三万円で事に及ぶ。事後乳房と陰部にトーンを貼れはしないのであくまで置いた鼻輪は、「これで仕上がりだ」と正体不明に納得する。
 盟友・小多魔若史と活き活きとカメラに収まる若き山﨑邦紀が結構男前な、浜野佐知昭和63年全八作中第一作。オッパイのボリューム感が堪らない北村美加を先頭に、粒の揃つた三本柱に恵まれ濡れ場に関しては質・量とも申し分ない。とりわけ三番手を、鼻輪を加速させる格好で放り込んだ秀逸は地味に光る。他方といふか反面、そもそも鼻輪の脳内―のみ―で完結する余人には了解不能なエモーションを軸に進行するには、16Pの成人マンガならば兎も角、六十分の劇映画としては些かならず展開の手数が薄い。そのため最終的には石部金吉(a.k.a.清水大敬)の偏執的な突破力頼りになりかねないとすると、これが満更でもない以上形になりはしなささうで、案外さうでもない一筋縄では行かぬ一作。ただひとつ確実にいへることは、ルミと薫はアクティブに性を謳歌するにしても、所詮は金で女を買ふ男にとつて都合のいい対象でしかない。陽子に至つては、レイプ願望を膨らませすらする。浜野佐知といへば自動的に想起される頑強にして苛烈な女性主義は、今回寡黙に影を潜める。


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