真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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自己紹介
福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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新妻真昼の暴行/ex.DMM戦
あ行
/
2020年02月09日
「
新妻真昼の暴行
」(昭和58/製作・配給:新東宝映画/監督:梅沢薫/脚本:片岡修二/企画:伊能竜/撮影:志村敏夫/照明:斉藤正明/スチール:田中欽一/編集:酒井正次/音楽:恵応泉/助監督:滝田洋二郎/監督助手:房洲雅一/撮影助手:渋田健二・乙村隆男/照明助手:佐久間一・上林明/録音:銀座サウンド/現像:東映化工/出演:風かおる・青木マリ・織本かおる・神原明彦・北村大造・太田仁・中西明・大杉漣・下元史朗)。スチールの欣一でなく田中欽一は、本篇クレジットまゝ。出演者中太田仁は、本篇クレジットのみ。
赤と青の風船越しに、下元史朗がマンターゲットを撃つ。傍らには咥へ煙草でエプロンの、如何にも店主然とした多分中西明が。ルポライターの佐伯(下元)―と来ればまづ下の名前は恭司にさうゐない―が、検索してみても出て来ない、ローガンMk-3マグナムとかいふ銃を買ふ。店主いはく、素人には勧められないが狼の目をした佐伯ならば使へるとのこと。もう一発撃つ佐伯の鋭い目のアップから、普段着なのか江藤明子(風)が浴衣で洗濯物を干す。江藤にしては、倫子でない。兎も、角。明子がお手洗ひに入つた隙に、鍵のかゝつてゐない玄関―後々、日頃の不用心を埋める段取りあり―から野沢と来ると、こちらも当然の如く恐らく俊介(大杉)が侵入。用を足した明子が、野沢に漸く気づいてタイトル・イン。手篭めにしかけるまでに、カメラがグイングイン動いて何気に二分回すのと、断じて看過能はざるのが、浴衣を乱暴に剝かれる際、豊かに波打つ風かおるのオッパイがジャスティス。
佐伯がくつろぐ部屋に明子の夫で、佐伯にとつては義弟にあたる郁夫から妻の誘拐を告げる急報が入る。輪転機が高速で稼働する今や懐かしのイメージに、“東京医療社長 殺される”と、“犯人の商社マン 飛び降り自殺”の見出しが躍る。郁夫がスーサイドした現場を訪れた佐伯は、郁夫の勤務先であつた紅屋か紅谷商事重役・黒岩(北村)を訪ねる。正式社名東京医療機器と城南医大への高額機器納入で争つた紅屋には、贈賄の噂が囁かれてゐた。
配役残り織本かおるは、黒岩の秘書・セガワナミ。神原明彦と、最初セーラー服を着てゐるのはさういふプレイに違ひないと思ひたい青木マリは、東京医療専務のウエハラとその愛人・ユミコ。映り込む程度の郁夫の遺影が、本クレのみ推定で太田仁か。それ以外に、往来の通行人以上の人影も見切れない。
国映大戦
するつもりが偶然見つけた、タグなし「Viva Pinks!」レーベル(日本ビデオ販売)作。梅沢薫昭和58年第十四作で、殲滅戦
再起動第十五戦
。梅沢薫は、改めて調べてみると昭和54年の日本シネマ作なんてクラシックまでex.DMMで見られるゆゑ、近々見る。案外、底がない。それと今作、一昨年急逝した大杉漣の追悼でも上映されてゐた模様。
最初に紅屋の銘板なり、交換した名刺を抜く一手間で簡易に回避可能な障壁にも素人考へでは思へつつ、当初黒岩の所属が判り辛い点が無駄に錯綜させる因縁を整理すると、社長の座に座りたいウエハラと、東京医療を傘下に収めたい紅屋の合致した思惑で、東京医療社長が始末され、郁夫も巻き添へを喰ふ。明子の誘拐は、東京医療社長殺害に二の足を踏む、郁夫を脅迫するとかいふ方便。仮か実際には野沢が手を下したスケープゴートにせよ、如何せん決して小さくはない飛躍に関しては、だからブルンブルン悩ましく波打つオッパイのエターナルなエモーションに免じて、その手の微に入り細を穿つ野暮は控へるべきだ。さて、措き。妹夫婦を喪つた佐伯が、復讐の狼と化すシンプルな寸法。
女の裸を質的にも量的にも断じて疎かにはしないまゝに、込み入つたサスペンスを大胆な省略も駆使するシャープな作劇で展開する、裸と映画の二兎を得た正攻法のハードボイルド。逐一画角に凝るキメッキメの画面も、一歩間違へば煩はしさすら感じさせかねないほど。風かおるはまだしも、絡み要員にしか過ぎない青木マリが、何故か織本かおるより高い謎ビリング―ポスターでは織本かおるが先頭―くらゐしか、目立つた疵瑕も見当たらない高質にして硬質の一作。店主と、厳密な去就は不明な実質三番手を除けば全員死んで行く無体な死屍累々をも、不思議な充実感でサクッと清々しく見させる。
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