真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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OL家庭教師 いぢり突く
関根和美
/
2009年06月30日
「
OL家庭教師 いぢり突く
」(2008/製作:関根プロダクション/提供:オーピー映画/監督:関根和美/脚本:関根和美・新居あゆみ/撮影:下元哲/照明:代田橋男/助監督:新居あゆみ/編集:有馬潜/選曲:山田案山子/監督助手:江尻大/撮影助手:浅倉茉里子・塚本宣威/効果:東京スクリーンサービス/出演:沖那志帆・香田麗奈・里見瑤子・なかみつせいじ・天川真澄・牧村耕次)。
大胆にも時間外とはいへ社内で、OLの若宮ちひろ(沖那)が課長の川崎徹(なかみつ)と体を重ねる。いふまでもなく、誠麗しくはない不倫カップルである。事後、妻に勘付かれたとウジウジ困惑する川崎に対し、それならばとちひろは、あつけらかんと別れを告げる。ちひろが同僚兼親友の江藤さくら(香田)宅へ遊びに行くと、同じく同僚で、さくら恋人の宮本一浩(天川)も現れる。そのことはさくらも知つてゐたが、実は宮本は、ちひろの元カレでもあつた。川崎との不倫を清算したといふちひろに対し、宮本は気晴らしがてらに自身も行ふパソコン講師のアルバイトを持ちかける。さういふ話の流れはそれなりに順当として、一回二時間の週二回で、ちひろが手にする報酬が月八万だなどといふのは、東京の物価高を考慮に入れた上でも、些か非常識に過ぎまいか。ともあれ、ちひろは熟年離婚して今は一人暮らしの、父親ほども歳の離れた武藤幸吉(牧村)の家に通ふことになる。武藤はちひろに実際歳の近い娘(全く登場せず)の面影を見、ちひろもちひろで、武藤に父性を感じる。川崎とのことと武藤にパソコンを教へ始めたまでは良かつたものの、翌日以降、差出人不明の、ちひろの不倫を告発する謎の社内メールが繰り返し送付されるやうになる。衝撃を受けつつ、ちひろは送信者を探し始める。果たして一体、犯人は誰なのか・・・・?
里見瑤子は、川崎の妻・美也子。ワン・シーンにのみ登場の殆ど純然たる濡れ場要員ながら、里見瑤子が何時の間にか手に入れた、今やなかみつせいじをも自在に手玉に取ることに何の不足も感じさせない、女優としての貫禄は光る。更にその他、ちひろ隣席の女性社員(これ新居あゆみか?)と、斜向かひに若い男性社員が一名見切れる、こちらは江尻大。
社内不倫告発メールの犯人探し、といふと。「
妻の母 媚臭の甘い罠
」(2007)と、又似たやうなことを仕出かすのかよ!といふ落胆がひとまづは強い。ピンクの安普請で犯人探しのサスペンスは無謀だと、関根和美は同じ過ちを何度繰り返せば気付いて呉れるのか。といふか、ここは、あるいはこここそ、オーピーに横槍の一本も出して欲しい。とも一旦は思つたところが、外堀の埋め方と、小ネタ―武藤からの感謝メールの中では、フォトショのことが“ホットショップ”に―も有効に、謎解きが、粒の小ささは差し引けば思ひのほか、といふか直截には珍しく満足に形になる。主演女優の芝居の弱さはどうしても苦しく、最終的には、関根和美と牧村耕次との組み合はせだと、コッテコテのコメディの方がより強い力を得るやうな気もしないではないが。牧村耕次(御歳五十二歳)自身は未ださういふ歳では必ずしもないにも関らず、巧みな老けメイクで化けた年寄りが、親子ほども歳の離れた娘とイイ仲になる。ピンク主要客層の心の琴線を激弾きする濡れ場を、悪びれることもなく妄想オチで片付けてみせる辺りは矢張り流石関根和美だとも思つたが、そこからラスト・シーンとの間を繋ぐ、伝線の件はさりげなくも抜群に素晴らしい。ほんの短いカットで、後ろを向き閉ざされた主人公の心を前に向かせ、娯楽映画を綺麗に締め括る。長いキャリアは伊達ではない関根和美の、基本的には終始秘められてゐることも多い地力が、地味ながら詰めの一手に鮮やかに発揮された、鑑賞後の心持ちも爽やかな一本である。
ところで。真相はそれはそれとしても、あの動画は一体どうやつて撮影したのよ、といふ巨大なツッコミ処に関しては、この際幕引きの決まり具合に免じてさて措くべきだ。絡みに際しては下元哲の嗜好あるいは志向に違ひないが、堂々としたスローモーションが随所で火を噴く。
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