真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「特務課の女豹 からみつく陰謀」(2014/製作:フリーク・アウト/提供:オーピー映画/監督・脚本:国沢☆実/撮影:下元哲/撮影助手:高田宝重/助監督:田口敬太・菊嶌稔章/録音:シネ・キャビン/現像:東映ラボ・テック/ネガ編集:有馬潜/フィルム:コダック株式会社/スチール:本田あきら/劇中歌:蓮沼ラビィ/協力:虹企画ミニミニシアター・マサトキムラ/出演:伊藤りな・美咲結衣・四ノ宮里莉・奈良京蔵・村田頼俊・三貝豪・前沢健太・世志男・山科薫)。新作のクレジットで高田宝重の名前を見るのは、「夏の愛人 おいしい男の作り方」(2011/監督・脚本:工藤雅典/主演:星野あかり)以来。劇中歌の蓮沼ラビィが、ポスターには蓮沼ラヴィ。
 左頬の赤痣が痛々しい、美咲結衣のアップで開巻。2019年、東京五輪前年。首相暗殺を企てたテロリスト集団統括・景山哲也の同士兼情婦・深町美希(美咲)を、山科薫が取り調べる。取調官は美希を鉄格子つきの窓近くまで引つ立てると、窓から逃走を図つたとガンガン強姦する。出鱈目だが、山科薫歴戦の突進力が少々の無理なら通す。他方、巨漢の刑務官(菊嶌稔章)に伊藤りなが連行されタイトル・イン。三森鏡子(伊藤)が、美希と同じ房に放り込まれる。美希が首に提げたペアリングに注意を留めた鏡子は、男に対する美希の強い絆を嘲笑する。主演女優の第一戦と込み込みで、エクスキューズ色の強い一幕。鏡子は実は公安局特務課の捜査官で、特務課課長の裏越(世志男/綿含んでる?)とは不倫関係にもあつた。一旦検挙後脱獄、但し検問を突破されてはゐない影山の潜伏先を突き止めるべく、鏡子は不倫相手殺害犯を偽装し美希に接触する任務を帯びてゐた。脱走した鏡子と美希の前に、影山(奈良)以下、ナイフ使ひの黒木(三貝)と、三叉の短刀使ひの井川(前沢)が現れる。え、三叉の短刀(´・ω・`)?鏡子の素性を疑ふ景山に対し、気前よく脱いだ鏡子は尺八も吹き、美希はジェラシーなのか落胆なのか複雑な表情を浮かべる。
 出演者残り四ノ宮里莉は、いい歳して―作中三十五、公称に辿り着けん―セーラ服姿でカーセックスに及ぶ人妻・弘美。村田頼俊がそのお相手、話を聞くに娘の担任と思しき村田先生。担当科目も古文と、最早貫禄のヒムセルフ配役。二人は黒木と井川に拉致られ、“こいつらにも餌が必要なんだ”と影山は黙認する中、当然の如くといはんばかりの勢ひで弘美は陵辱される。その前段、影山と美希の情事を覗き見た鏡子が手洗ひに入るのは、下元哲の作家性に寄り切られた排泄シークエンスに突入するものかと思ひきや、鏡子は膣の中に忍ばせてゐた、まんまといふか科特隊流星バッジそのものの通信機で裏越に連絡をとる。弘美を救はうとした鏡子は代りに井川に手篭めにされかけ、流星バッジを発見される。ピンバッチか何かの公式グッズかと思はれるが、そんなものそんなところに裸で入れたりして痛いだろといふ以前に、円谷に怒られても知らんからな。
 前作に引き続き自脚本で挑んだ、国沢実2014年第二作。女囚映画的な導入から、“負け犬”だ“捨て石”だと如何にも国沢実らしい自虐的なヒロイズムで彩ると同時に加速した上で、非現実的方面に越境しない場合日本映画史上最大級の大風呂敷を奥歯に物を挟みつつも―後述する―拡げてみせる、革命映画に展開する果敢な構成は案外形になつてゐる。とはいへ如何ともし難いのは、冒頭房の中での伊藤りなと美咲結衣の遣り取りから順調に頭を抱へた、それはそれとしてそれなりにキャリアを積んだ村田頼俊が格が違つてさへ見える、脆弱極まりない俳優部。ビリング頭二人は脱げばサマになる分まだしも、影山一派の全滅ぶりは最早グルッと一周して清々しいほど。タッパがヒョロッと高く、台詞回しは幾分達者とはいへ如何せん面構へが貧相な奈良京蔵はカリスマ性にもレンジャー部隊出身といふ設定に説得力を与へるに足る凄味にも完全に無縁、国沢実が自分で初老のテロリストにでも扮した方が絶対に画になる。三貝豪はゾンビみたいなヒャッハー造形が逆の意味で見事に空回り、前沢健太はその点散発的に三貝豪に引き摺られる中途半端さ以前に、ここは演出部の責やも知れぬが、わざわざ満足に扱へもしない三叉の短刀なんて頓珍漢な武器を持ち出すセンスから致命傷。鏡子の通信で官憲に潜伏先の位置情報が洩れてゐるにも関らず、影山は逃げるでも慌てるでもなく文字通り動じない。そもそも鏡子が美希に接近するミッションの意義に後足で砂をかける、どんでんを返すためだけのどんでん返しも果てしなく類型的。ついでに、絡みの最中で起動しては正直水を差す劇中歌は、出て来はしないけれど見た目はイルカで、音楽的には加藤登紀子の他愛ないエピゴーネン。但し、革命の機運にもテロルの季節にも全く遠い目下の状況下にあつて、斯様な、直截にいへば貧しい革命映画は逆説的なリアリティを有するに至らぬでもなく、何よりかうした一作が堂々と商業ベースで、加へて国沢実のフィルモグラフィーに於いて恐らく、といふかほぼ確実に最後のフィルム作として世に出た物の弾みか何かの間違ひにも似たラックには、形容のしやうのないエモーションを覚えた。面白い詰まらないの最も単純な二者択一を迫られるならば、少なくとも別の意味では面白い。
 裸映画的には、ザックリ三分割した終盤全ての長尺を、自慢の砲弾型オッパイを放り出すどころか、全裸で戦ひ抜いた伊藤りなの熱演は大称賛に値する。尤も、締めを濡れ場で振り抜く選択も酌めるものの、結局終始影山の潜伏先こと、小劇場である虹企画ミニミニシアターより半歩たりとて外に出でない出不精には、安普請に火に油を注いだ感を禁じ得ない。鏡子と美希が逃走する、異常に屋根の低いガード下なのか何なのかよく判らない通路や、二人が影山一派と合流する深い森の中。ロケーションには所々貪欲さを窺はせただけに、スカッと開けたラスト・ショットのひとつも設けてあれば、また全然印象が変つてゐたやうにも素人考へる。

 劇中、自衛隊ではなく“国防軍”だなどと奥歯に物が挟まつたやうな用語で茶を濁すのは、国沢実がかつての所属組織を慮つたか、怖気づいたか事なかれなオーピーの横槍が入つたのか。何れにせよ、小賢しくすらないことはいふまでもなからう。右傾化がエクスプロードした近未来を描いた、ディストピア描写といふ訳でもあるまい。


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