真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢海水浴 ビキニ泥棒」(1999/製作・配給:大蔵映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治・波路遥/撮影:飯岡聖英/照明:守利賢一/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/監督助手:森角威之/撮影助手:新原敬之/スチール:佐藤初太郎/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:黒田詩織・神崎優・十日市秀悦・山信・佐々木共輔・西藤尚)。照明の守利賢一は、ガッツの本名。守利賢一でクレジットされてるのは初めて見た。
 実は風俗嬢の宗方由希子(黒田)が仲間の青山美千代(神崎)を伴ひ、郷里の海町にプラッと帰つて来る。二人が向かふ先は民宿「汐風荘」、六年前に病死した亡夫・セイジの遺影(熊谷孝文)を抜いて、セイジが遺した汐風荘を一人で切り盛りするも、過労で倒れたいさ子(西藤)を町医者の沢村(十日市)が往診する。新田栄ばりのへべれけ診察を経て、バイブ注射を巡る攻防戦の最中にいさ子の妹である由希子が到着、黒田詩織の綺麗に目を丸くするメソッドが出色。由希子と美千代は男漁りにビーチに出撃、由希子はアイスキャンディーを売り歩く、幼馴染の武史(佐々木)と再会する。佐々木共輔のキャラクターに、夏の海が感動的に似合はない。プリップリ色気を振り撒く由希子と美千代を、ライフガードの松宮(山)がロック・オン。まづは由希子が一人で浮き輪に揺られる海、汚いビデオ撮りながらまさかの水中撮影を敢行して由希子に接近した松宮は、ビキニを泥棒しておいてマッチポンプ式に救助、何だかんだと砂浜で開放的に事に及ぶ。返す刀で、松宮は美千代も矢張り言葉巧みに―でもなく―攻略する。一方、その夜久々の姉妹風呂。“思ひ出の中の男は抱いて呉れない”と姉に再婚を促す由希子の言葉に風呂場を覗いてゐた、いさ子のことが好きな沢村は明々後日に発奮する。
 “痴漢海水浴”なる機軸がありさうで案外珍しい、渡邊元嗣1999年最終第五作。前半は、痴漢海水浴を司る松宮がビリング頭二人をともに充実した二戦を通して連破する、安定した裸映画。後半は亡夫の思ひ出に安住するいさ子に沢村がかう見えて―どう見えてだ―ナイーブな片想ひを拗らせる、大定番のダメ人間恋物語。に本腰を入れて移行するでもなく、相変らず安定した裸映画。その癖グッと来なくもない今作の決戦兵器は、ナベがノリノリで撮つてゐたであらう節もキラキラと輝いて透けて見える、磐石の三本柱。ではなく、ここは敢て―といふのも何だが―十日市秀悦を推したい。好色漢のポップなアイコンのやうな面相なれど、この人が繰り出す不器用な純情には胸を打つサムシングがある、と思ふ。捻じ込まれた浜辺の告白シーンは、いい感じのロングの力も借り、全体的な構成でいふと木に竹を接ぎ気味なことは忘れ何故だか藪から棒にエモーショナル。してやられたならばそれもまたよし、ここは騙した方も騙された方も双方ウィン・ウィンだ。目出度い成就を、火花を盛大に噴く花火を背に由希子と美千代がバンザイを乱舞して祝福するのも、馬鹿馬鹿しいほど古臭い画の筈なのに、清々しい素晴らしさが堪らない。紋切型が紋切型であるだけで軽んじるやうな浅墓な態度は決して採らない、強い信頼と信念とに基いた実に渡邊元嗣らしい名ショット。展開を頁単位でスッ飛ばしお話を進行させた弊害で、武史が実のところは単なる盗撮野郎に過ぎないツッコミ処のことなど忘れてしまへ。照れ隠しの如き底の抜けたラストが、穏やかにナベシネマを締め括る。

 ピンク映画にしては結構珍しく、タイトル・インはクレジットを抜けたエンド・マークの手前。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 巨乳奥様 エ... 痴漢覗き魔 ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。