真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「吉村すもも 奴隷人形」(2001/製作:フリーク・アウト/提供:オーピー映画/監督:国沢☆実/脚本:樫原辰郎/撮影:鍋島淳裕/ネガ編集:フィルムクラフト/助監督:城定秀夫/監督助手:伊藤一平/撮影助手:澤井貴善・鶴崎直樹/ドラッグメイク:新井純子/スチール:佐藤初太郎/録音:シネキャビン/効果:東京スクリーンサービス/現像:東映化学/出演:吉村すもも・黒木利徳・石阪稔朗・中山嵐々)。
 机下の足元から舐めて、ブスッとした主演女優がトーストを摘む。主演女優といつて、主演に間違ひはないが助演のゐない一人きりの女優部ではある。忙しく出支度を済ませた夫の甲斐トシロー(石阪)は、妻・秋(吉村)の帰りを訊ねる問ひかけにもそこそこに出撃。浴室での無駄毛の処理で裸を一頻り見せ、風呂上りの牛乳。秋がコップの底を覗いてみると、長いことしてないねと甲斐が現れる。夫婦生活に突入しかけたのは、秋の他愛ない白日夢、秋はコップを投げつける。ポロンポロン秋がシンセを叩いてゐると、酔つた甲斐が帰宅、バタバタ寝室に直行する。秋の弾く曲が猫踏んぢやつたに移行してタイトル・イン、アバンは物憂げな日常に十全に尺を割く。
 ほかにすることがないのか、相変らず秋がテレンテレン鍵盤を触つてゐると、貴女の体をオークションにかけてみませんか?なるビーナスクラブとやらからの謎メールを着弾する。この件、動画再生を一時停止した上でガン見して漸く判読した―秋は読み上げない―次第なのだが、液晶画面が結構暗く、これで小屋で見えたのか疑問が残らぬでもない。電話をかけてみた秋があちこち電話越しに連れ回された挙句辿り着いた先は、廃墟?のHOTEL石川。バッキバキのメイクを決めたドラッグクイーン(中山)が秋を出迎へ、ザクザク競売開始。国沢実らが暗がりの向かうでガヤる競りを経て、秋は半年五千万の高値で、Kとしか名乗らない男に落札される。因みにオークションだ落札だといつて、ビーナス個人のそれまでの生活は、あくまで壊さないシステム。
 配役残り、劇団主宰であつたりベテランエキストラであつたりするらしい黒木利徳は、終始映像と音声を通したプレイのみで奴隷人形と接するKが、秋に差し向けるいはく“忠実な部下”。ファースト・カットでは、そこに居る黒木利徳と黒木利徳を秋に紹介するKの天の声とが、確かに並行してゐる。
 最低二度は観てゐる筈が、中身がサッパリ思ひだせなかつた国沢実2001年第三作。因みにこの時前作の「三浦あいか 痴漢電車エクスタシー」と、二作主演女優の冠公開題が続いてゐるのは非常に珍しいケース。m@stervision大哥はケチョンケチョンだが、そこまで木端微塵といふ訳でもない。小生の目が馬鹿になつてゐる可能性も、勿論否定しない。吉村すももは首から上は顎周りのラインに難があるゆゑ、顎は引き気味に上から捉へる―ただし意識的に追及されはしない―奇跡のアングル頼みのきらひは否めないものの、首から下が幼児体型といふのは明らかに言ひ過ぎ。手足は十分に長く、そこそこ以上に綺麗な体をしてゐる、オッパイのタトゥーは要らんけど。尤も、決戦兵器たるべきモノローグを豆鉄砲と化す、たどたどしい口跡は日本語を解さない人間に聞かせない限り、どうスッ転んだところで壊滅的。何時もかういふ時に思ふのが、潔くアテレコを乞ふ選択は採れなかつたものであらうか。
 ミニマムを更に抉り込んだ俳優部の布陣と、ビーナスクラブにその身を投じた所以を“夫を愛してゐることを確かめたかつただけかも知れない”だなどとヌカす秋の方便は心許なくしかない割に、何となく見させる不思議な始終は、最終的には流石に力尽きる。締めの一言が気が利いてゐなくもないKの正体に関しては脆弱な男優部に足を引かれ、結局夜の営み込みで秋と甲斐の関係自体は一欠片たりとて微動だにしないまゝに、勝手にクレジットが流れ始めるラストには軽く吃驚した。倦怠の本丸は何ら解決されずとも、半年間の火遊びと五千万を得たヒロインは、何となく御機嫌。人間の姿としてはある意味リアルなのかも知れないが、一時間とはいへ客に付き合はせた、劇映画の結末にしては随分だらう。


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