またある日、別の湾。
流木(とペットボトル)が大量に積み重なっているので歩きにくい。
そこをばりばりと乗り越えていくと、おばあちゃんがひとり、
ちんまりと座って焚火の番をしていた。
すこし曇り。きょうは風も穏やか。
かぼちゃ級の石、おにぎりみたいな石、粒の大きい砂利、小さい砂利。
水際に近づくにつれてだんだんこまかくなる。
どの石もすべすべしていて、手にとると気持ちがいい。
自然にできたものには、すべてこの気持ちよさがあると思う。
眺めてうれしい、さわって楽しい、飽きのこないかたち。
ヒトがあれこれ考えてデザインしても、なかなかこうはいかない。
これまでにないものを、誰も思いついていないものをと、
新奇さを追求すればするほど、本来の必然から遠ざかっていく。
無理して作ることないんじゃないか。
ほんものの「オリジナリティ」は、たとえばこんな浜辺にある。
おばあちゃんが火にくべている流木や、波に磨かれた貝殻。
こうなるべくしてこうなったかたち。
この岩が、どれだけたったら、てのひらに乗る丸石になる?
ピンクのウエットスーツの海女さんがゆっくり戻ってくる。
トコブシを採っているのだそうだ。
波が寄せてくるところには、こまかい貝殻が帯状にある。
巻貝、ときどき宝貝、砕けたきれいな破片もたくさん。
ここは小さくて静かな湾で、座るのにいいような岩もあるし、
半日くらい腰を据えてじっくり貝拾いをしたい感じだけれど、
このあとまだ行くところがあるので、見るだけ、見るだけ。
後篇につづきます。