香りに気づいて、振り返ると、ヒイラギの花が咲いていた。
キンモクセイから甘さを減らして清楚にしたような良い香り。
こうしてみるとキンモクセイの花のつきかたに似ている。
咲き始めの数日だけ匂うのだろうか。
雨のあとに行ったら、まだ咲いているのに香りはもうなくなっていた。
初夏の頃に、陰陽師のまねごと(?)をして、
このヒイラギに長年とりついていた妖怪「葛の木」を退治し、
窮屈になっていた枝を解放してやった。
このような作業は報われないことのほうが圧倒的に多い。
切っても切っても切っても、妖怪だから、じきに復活してしまう。
それでも日があたるようになった部分はやはり花つきが良い。
何よりも、見た目にせいせいする。
あの香りは、ヒイラギの「お礼」だったかもしれない。
よーし、またがんばりましょう。
(反対側に手ごわい奴が残っている・・)
ちなみに、妖怪葛を、たかが植物とあなどってはいけない。
ほうっておくと根元のほうはほんとの木のようにがっちり太くなり、
強力な除草剤を使っても完全駆除には10年かかるそうだ。
アメリカ南部では「窓をあけて寝ると夜中に入ってくる」という伝説もあるとか。
英語でもKuzuというらしい。
駆除をかねてKuzuのつるでカゴを編みましょう、というサイトを見かけたが、
クズのつるは意外とコシがなく、太いのは曲げにくいし、細いのは折れやすい。
それに腐りやすいので、たいして上等なものはつくれないんじゃないかなあ。
せいぜいクズカゴ・・?
クロガネモチ。びっしりと赤い実たくさん。
ヒサカキの黒い実。これもたくさん。
どちらも冬場の小鳥の餌となるはず。
ニガイチゴの紅葉。
光と影、光と影。
沢の奥の、植林したまま放置されたスギ・ヒノキ林。
間伐も枝打ちもおこなわれていないところに、
藤や雑木、さらに竹の根も入りこみ、ジャングル気分が味わえる。
ここに立っていると、6~7種類の鳥の声が聞こえてくる。
上を向いても、ときどき影が横切るだけで、ほとんど姿は見えない。
ヒヨドリ、カケス、エナガは確実。
あとは何だろう。
キュルル・・という声。ホゥ・・という声。
ときどきコンコンと何か叩くような音。
ゴールド水玉・・ではありません。これは杉の樹脂。
これからゆっくり琥珀になるところ。
(えらく気の長い話である)