閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

花かげ

2012-04-08 16:17:43 | 日々

山の桜は、すうすうとほうきのように立つ樹形が多いが、
この木は太い枝が横に張り出して、道にかぶさっている。
大島桜との交雑種なのかもしれない。
つぼみが混じるころはこのように桜色に見え、
咲ききってしまうと真っ白に変わる。
傾斜地に生えているため、ちょっと坂をのぼれば、
咲いている花のすぐそばまで行くことができる。
手の届く枝をひきよせれば、飛行機で雲の上に出たように、
たくさんの花を見下ろすこともできて、とても気分が良い。

気分が良いので、歌でもうたいたくなりました。
誰もいないから、うたっちゃおう。

 さくら さくら やよいの そらは みわたすかぎり
 かすみか くもか においぞ いづる
 いざや いざや みにゆかん

日本の旋律は、日本の風景になんて良く合うんだろう。
学校の教室で歌ったときは、それほど良い歌だとは思わなかった。
歌詞がつくられた当時、ソメイヨシノはあったかどうか・・
この「さくら」は、やはり園芸種でなく、古代からある野生の桜だ。
はるばると見渡し、山も空も雲も一緒に視野に入れないと、
こういう歌はできないような気がする。

見渡すついでに、もうひとつ。

 みわたせば あおやなぎ はなざくら こきまぜて
 みやこには みちもせに はるのにしきをぞ
 さおひめの おりなして ふるあめに そめにける

「むすんでひらいて」の歌詞が圧倒的に有名なので、
原曲はフランスのオペラだといわれてもなかなかピンとこない。
装飾音符をたくさんつけるとそれらしくなるかもしれない。
ゆるりと歌えば、意外によい曲ではないか。

で、「かすみかくもか」に戻れば、これもあったと、思い出す。

 かすみか くもか ほのぼのと
 のやまを そめる そのはなざかり
 さくらよ さくら はるのはな

こちらはドイツ民謡だとか。
なぜか子どものころは、この歌がキライであった。
小学校で・・何かつまらぬことでもあったかな。
いまは、せいせいとうたうことができる。
忘れるって、素晴らしい~(笑)

さて、桜の歌、これくらいしか知らないのは、なさけないぞ。
そうそう、これも桜の・・。

 十五夜お月さま ひとりぼち 桜ふぶきの 花かげに
 花嫁すがたの おねえさま くるまにゆられて ゆきました

真昼間からうたう歌ではなかったですね。
満月の夜、桜の下で花嫁衣裳って、妖しすぎる・・(笑)

いや、そうではなくて、これは、月夜にひとり回想する妹、
という設定なのでしょう。
あれ?
そうすると、季節は春ではなく、秋の十五夜なのか。
月あかりに照らされた木が、まるで花をつけているように見え、
春に嫁いでいったお姉さまが恋しく思い出されるという・・
うーん。
桜は桜でも、白い月光のイメージなんだ。
綺麗だけど、難易度の高い連想だなあ。

・・などなど、例によって、とりとめなく勝手に考える閑猫の花見。

(あ、「はるのうららのすみだがわ」を忘れたっ・・)

 

 

本日のにゃんこ。

左マドリ、右すもも。
非常に珍しいツーショット。
この3秒後、すももに叩かれ、マドリ追い出される。
仲良くなったわけではなく、単に「気がつかなかった」だけらしい。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夜桜

2012-04-08 00:20:29 | 日々

月が明るい。
十五夜のころと月の高さが違うのか、とても大きく見える。
もくれんの花が月あかりに浮かんで、白い水鳥のようだ。
桜も白くぼうっとけむっている。
あかりを持たないでも、ずっと歩いて行けそうだ。
夜桜見物、と思ったが、深夜だし、近寄るのはちょっと怖い気がする。
ベランダからのりだして見ていたら、いきなり鹿が鳴いた。
すぐ目の前、30メートルくらい先の山の中だ。
「ピョッ!」とホイッスルのようにみじかく鋭く鳴く。
鹿だ、と思っているけれど、もちろん真っ暗で何も見えない。
でも、むこうはこちらをじっと見ているはず。
(鹿じゃなかったら何なんだろう)
「お花見ですか」と、声に出して言ってみた。
もちろん返事はなく、そのまま気配も消えてしまう。
今夜は枝をゆらす風もない。
雲だけがゆっくりうごいていく。

 

(上の画像は夜ではありません。夕暮れ桜)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする