レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

義経と頼朝

2007-03-19 06:06:50 | 歴史
私の立てた物好きな投票
「マニアの選ぶ歴史美男」(2018.6.8 リンク切れを発見したので削除)
この投票は、史的根拠のある人を選ぼうという趣旨である。
源氏兄弟は共に名が挙がっている。
しかし正直私は義経が出てきたことに抵抗を感じている。

 大塚ひかり『美男の立身 ブ男の逆襲』(文春新書。日本の文学・歴史の中での美男・ブ男観の変遷。お勧めである)によると、『保元物語』において、義経は、美男の父には似ていないけどみめよい若者、と記されているという。
 しかし、『平家物語』では、--これは割合知られているだろうーー色白の小男、出っ歯、との記述がある。両方をすり合わせるならば、出っ歯だけど全体としてはそれがそう致命的欠点には見えず、好感の持てる容貌だったということなのだろうか? それにしても、出っ歯記述のインパクトは大きい・・・。
『源平盛衰記』では「容貌優美」が加わり、室町時代の『義経記』では、楊貴妃に例えられるまでに美少年設定がエスカレートしてしまったということだ。(※)
 まぁつまり、義経美男説は、根拠がゼロとまではいかないが、それを否定する材料もまた存在するし、後世の誇張も激しいということか。
 なお頼朝は、『平家物語』で、背は低いが容貌優美、と描かれているという。おお、まるで某初代皇帝尊厳者のようだ。有名な「肖像」は実は違うという説が大きいが、美男と思われていたからこそあの絵が頼朝だと思われてきたのだろうな。

 モンクつけてるけど、義経を出っ歯の男優に演らせたいと言いたいのではない。まあそこそこではあったほうがよかろう。でも、あんまり「貴公子」然としてるのは違うんじゃないかと思う。

※ そして、この義経美少年化には、「大男の弁慶とのカップリング」が影響したとこの本は説く。華奢な美少年とそれに仕える逞しい大男ーーというと、オクタヴィアヌスとアグリッパが私の念頭に浮かばずにはいない。
 同じ本に、ヤマトタケルとクマソタケルを例に挙げて、ひ弱げな美少年には雄々しいライバルがいて、その間にはホモ的な香りが漂う、--とも書いてある。これはマッシー描くところの、オクタヴィアヌスとアントニウスにもろにあてはまっている。
 しかし、「女とみまごう」なんてのも若いうちしか通用しないので、このテの英雄は必然的に短命だという。・・・その点、元々、腕力体力がダメなオクタヴィアヌスは、頭脳勝負で長生きしたなぁ、と、私の発想はやはりこの方向に行くのであった。
コメント (2)
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