レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

小説『3月15日』

2007-03-15 05:32:53 | ローマ
Thornton Wilder : The Ides of March
 ドイツ語タイトル Die Iden des Maerz

 世界史上の最も劇的な日のひとつ、紀元前44年3月15日。
 ソーントン・ワイルダーといえば日本でもわりに知られた作家のほうだと思うが(少なくともマッシーやマクロウよりは)、これは未邦訳。私は独訳で読んだ。解読不完全。
 カエサル暗殺までの約半年の間を舞台にした書簡体小説である。しかし、カトーやら、カエサルのおばユリア(マリウスの妻)、クロディアがまだ生きていて、とうに離婚しているはずの2度目の妻ポンペイアが登場している。ふつうは史実と変えた部分は後書きで述べるのだが、ここでは前書きで明かしている。誤解を避けるためというよりは、読者はもちろんわかっているだろうからつっこまれる前に、という感じを受ける。そして、明らかにフィクションが混じっているけどそれなりのリアリティを感じさせてみせるという語り手としての自信があり、読者に大人の態度を要求しているのではなかろうか。
 作者はポンペイアに結構興味を持っているのだろうか、離婚が史実よりもかなり遅いし、カエサルとの交流も描かれている。暗殺直前の時期、カルプルニアとはほんとーに新婚さんで、仲睦まじい様がかえって痛々しい。


17.10.05付記。
邦訳が近日発売!
「三月十五日」

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする