弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

米国特許法が先願主義に!?

2011-09-09 14:10:51 | 知的財産権
パテントサロンに『米特許法改正案、上院で可決--先発明制度から先願制度へ 』という記事が紹介されました。
Josh Lowensohn (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル 2011/09/09 12:20
『最新の米特許法改正案である「リーヒ・スミス米国発明法案」(Leahy-Smith America Invents Act)が米国時間9月8日、米上院において89対9で可決された。・・・・・下院では2011年6月に可決されていた。
この法案による米国特許制度の変更点の1つは、先発明制度から先願制度への変更だ。現在、米特許商標庁(USPTO)は、出願の時期にかかわらず最初の発明に特許を付与しているが、先願制度では最初に出願した人物に特許が付与されることになる。』

もう何年も前から、「米国特許法が先発明主義から先願主義に改正になる」と言われ続け、しかし実現せずに来ました。ですから、最初の反応は「またか」というものでした。
本当に法案は成立したのでしょうか。

記事の元ネタPatent reform bill gets Senate approvalには、
"The Leahy-Smith America Invents Act, also known as the latest version of the patent reform bill, was approved by the U.S. Senate today. The legislation now heads to President Barack Obama for his signature."
とありますから、本当に成立したのかもしれません。

他の記事も当たってみました。
今年になってから上院と下院に別々の法案が提出され、上院は3月に可決、下院は6月に可決し、両院で調整が行われている、という記事は見つかりました。そのうちで、下院で6月に可決された法案が今回上院でも可決された、ということになるようで、そうであれば本当に可決されたということですね。
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6 コメント

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米国 上院senateのHP (TB)
2011-09-10 04:13:57
 上院のHP”www.senate.gov”に掲載されています。
voteのところ等に詳細があります。 
 下院の「H.R.1249」の方を採用し、 without amendment で可決したので、次は大統領のサインを待つだけ、になったようですね。

H.R.1249
Latest Title: Leahy-Smith America Invents Act
Latest Major Action: 9/8/2011 Passed/agreed to in Senate. Status: Passed Senate without amendment by Yea-Nay Vote. 89 - 9.
Record Vote Number: 129.
以上
返信する
米国特許法改正 (snaito)
2011-09-10 11:17:21
TBさん、コメントありがとうございます。

オバマ大統領は特許法改正に賛成しているようなので、当然署名するでしょうね。ということで、米国特許制度が先発明主義から先願主義に改正になることが決定したということですか。
今まで世界先進国の中で米国のみが異なった制度を採用していることで困惑することが多かったですが、いざ終焉するとなると何だか寂しいですね。
返信する
Unknown (マーキュリー)
2011-09-11 00:38:11
ボンゴレ様
久しぶりのコメントです。
金曜日に急に部長から週明けに常務に報告するので法改正のサマリーを作成してと依頼されてしまいました。サラリーマンはつらいです・・。

これで米国も先願主義に移行するということですが、本条項のeffective dateについては改正法の発効後18ヶ月以降の出願について適用となっているようですので寂しさを感じるのはまだ早いようですよ。
また、自己および共同発明者による公表、出願による出願前1年間の公知についてはprior artとはならないようです(102(b)(1),(2))。
今回の102条関連の改正で重要な点はInterferenceの廃止、Hilmer Doctrineの廃止、公用、販売の基準を国内公知から世界公知へ修正といったところでしょうか?
その他の主要な改正としては以下のものが挙げられます。
・Best mode requirement(282条)
 明細書の記載要件としては残るものの、特許無効の抗弁としては使えなくなる
・Pre-issuance Submissions by third parties
 いわゆる第三者情報提供制度の新設
・Post-grant Reviewの新設(31章)
 いわゆる付与後異議申立制度で、特許付与後9ヶ月以内に請求できる制度の新設。通常のreexaminationとは異なりほぼ全ての拒絶理由に基づき請求可能。
・Supplemental examination(257条)
 登録後に、特許性に影響のある情報を特許庁に再検討させることにより、その後の訴訟においてその再検討した情報をinequitable conductの主張の基礎とはさせなくすることが可能となる。
返信する
米国特許法改正 (snaito)
2011-09-11 10:44:00
マーキュリーさん、貴重な情報をありがとうございました。米国特許法がどのように改正になるのか、概要をつかむことができました。

ベストモードが特許無効の抗弁ではなくなる、というのはうれしいですね。
米国以外の国では、先願主義であるために明細書作成を急ぐ必要があり、先発明主義のように明細書をじっくり吟味する時間がとりづらいです。
また、出願公開制度のもとでは、たとえ最終的には特許にならない場合でも明細書が公開されるので、なかなかベストモードを記載しづらいところがあります。それに対して米国のみに出願する発明者にとって、特許にならなければ明細書は公開にならないのでベストモードを記載することにあまり躊躇はありません。

今回の法改正で、海外から米国への出願人と、米国のみに出願する出願人との間の不公平がだいぶ改善されるようですね。

出願前1年間の公知の扱いは、日本の新規性喪失例外と思想的には同一になり、期間が1年間であることと出願時の提出義務がない点でのみ相違することになります。
思想的に同一になるとは、現行法では公開から1年以降が例外であったのに対し、改正法では公開から1年以内が例外になる、という点です。

IDSは継続なのですね。
返信する
Unknown (マーキュリー)
2011-09-14 00:12:45
ボンゴレ様
ベストモードは審査段階で問われることはありませんので、実務上は特に気にする必要はないと思われます。あまりに不十分な記載であればどうせ他の記載要件違反に該当することでしょうし。ということで、米国を意識して必要以上に馬鹿正直に書きすぎて後々自身の出願の際に首を絞めるというケースは減ってくるものと思われます。
IDSの義務に関しては変更はありません。しかし、Supplemental examinationを請求した際にIDSの出し忘れた情報を審査官に考慮させることにより出し忘れによるinequitable conductについては治癒することになり、特許権者にとってはメリットのある制度が導入となっております。
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IDS (snaito)
2011-09-14 22:41:50
マーキュリーさん、IDSについての情報ありがとうございます。

その制度はありがたいですね。
例えば、「日本出願で拒絶理由通知が来たが、引用文献はmaterialなものではないので油断し3ヶ月が経過した。そしたら突然米国のファーストアクションが特許査定だった」というような場合でも、焦らないで済みます。
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