「ベント逆流、水素爆発か」『1号機 東電側「設計に不備」』
朝日新聞は、4日の朝刊第1面トップでこのニュースを報じています。多分スクープなのでしょう。asahi.comの記事はこちらです。
朝日記事『東電の内部資料などによると、1号機には①原子炉建屋内のガスをフィルターを通じて外に出すための「非常用ガス処理系(SGTS)、②格納容器内のガスを外に出すための「耐圧ベント配管」という二つの非常用排気管が備えられていた。排気管は合流して一つの管となり、建屋外の排気筒につながっている。
1号機でベントが実施された際、①の弁が原子炉の緊急停止で自動的に開いた状態になり、電源喪失で操作できなくなっていた。このため、②を通じて建屋外に出るはずだった水素ガスが、合流点から①に入り、建屋内に逆流していた疑いが強いことが新たに判明した。この水素ガスが爆発を引き起こしたとみられる。』
『86年のチェルノブイリ原発事故の教訓から「過酷事故」に備えた格納容器用の排気設備が99年に設置された。』
このブログでは、xls-hashimotoさんのコメントにより、4月の段階で上記に類似した水素爆発のメカニズムはすでに議論されていました。
4月16日記事「原発事故当初の対応で何が可能だったのか」に対するコメントで、以下の議論がありました。
《ベントすると何故原子炉建屋に漏れるのか (xls-hashimoto)》 2011-04-17 11:11:50
『「アクシデントマネジメント策の有効性評価に係る検討に関する報告書」(平成16年度)、平成18年8月、独立行政法人 原子力安全基盤機構
によると、26ページに「格納容器ベント」が対策として説明されています。
格納容器ベントの概略系統図をみると、電動弁で閉じられていますが原子炉建屋換気系ダクトにつながっています。
問題は、電動弁までのダクトがどこを通っているかと言うことです。
ダクトが原子炉建屋内を通っているとすれば、ブロアは電源喪失で止まっているため、ベントしたガスはダクトの開口部(吸い込み口)から逆流し原子炉建屋内に漏れ出て、建屋内を上昇し5階に溜まることが、容易に想像できます。』
《ベントと水素爆発 (ボンゴレ)》2011-04-17 11:44:00
『つまり、「ベントが遅れたから水素爆発した」のではなく、「ベントの時期にかかわらず、ベントすれば水素爆発は起きる」という状況だったと言うことでしょうか。
圧力容器内燃料棒露出と電源喪失が重なった状況では、ベントするときは閉鎖された建屋の水素爆発は避けられない、という設計だったのですね。』
《水素爆発は、必然です。 (xls-hashimoto) 》2011-04-17 16:59:51
『水素爆発を防ごうと思ったら、ベントする前に原子炉建屋5階(最上階)の天井に穴を開ける必要があったのです。
1号機が爆発して、「3号機でもベントする」と、うつろな目で枝野官房長官が言った時、「3号機でもベントするから、1号機と同じように爆発するかもしれないから、先に言っとくね」としか聞こえなかった時には、復旧のことが頭をよぎり悲しかったです。
テレビを見ながら、「せめて、天井に穴を開けてからベントさせろ」と思いました。
5・6号機はあとで穴を開けました。
原子炉建屋換気系のブロアとフィルタユニットは、原子炉建屋とタービン建屋の間の補助建屋の最上部にありますから、原子炉建屋の3階当たりのレベルになります。
原子炉建屋内の空気(地下2階から5階まで)は、3階から吸い出され、スタック(排気筒・煙突)から放出されます。
電源喪失した原子炉建屋では、軽い物は上に行き・重い物は下に来ます。
ただ、それだけでベントされたガスは軽い物は上に行き・重い物は下に行きました。
結果、水素爆発です。』
xls-hashimotoさんが紹介された「アクシデントマネジメント策の有効性評価に係る検討に関する報告書」の26ページ図面によると、格納容器ベントの系統は、朝日新聞が報じるように非常用ガス処理系(SGTS)とつながっているとともに、xls-hashimotoさんが指摘された原子炉建屋換気系ダクトにもつながっています。
格納容器ベントで放出された水素ガスが、そのどちらかから原子炉建屋に入り込み、水素は軽いので建屋の最上階に上昇していった、という構図になるのでしょう。報告書の図面も朝日新聞の図面もデフォルメ図であり、配管がどのように上昇・下降する経路になっているのかについては情報がありません。上昇・下降経路がわかるような図面を見ながら議論したいものです。
ところで、朝日新聞の1面記事は署名記事となっており、記者は板橋洋佳記者です。あの、大阪地検特捜部証拠FD改竄事件をスクープした記者です(朝日新聞・板橋洋佳記者)。現在は原発事故も担当しており、今回はまたスクープをものにした、ということでしょうか。
記事では、ベントに関する格納容器用の排気設備が、チェルノブイリ原発事故の教訓から「過酷事故」に備えた設備として99年に設置されたことも報じています。後から設置するに際し、「全電源喪失」を想定した安全性までは考慮されずに設置されていた、ということになります。
さらに6月4日の夜、以下のニュースが流れました。
「ベントで水素逆流」否定=配管弁、電源喪失で閉まる設計―東電
時事通信 6月4日(土)20時3分配信
『福島第1原発事故で、東京電力は4日、東日本大震災の発生翌日に1号機原子炉格納容器の圧力を低下させるため、蒸気弁を開く「ベント」を行った際、蒸気に含まれる水素が別の配管を通じて原子炉建屋内に逆流して水素爆発に至った可能性は極めて小さいと発表した。
配管に直列に並んでいる二つの弁のうち、一つが電源喪失すると閉まる設計であることが最新の点検記録で確認されたという。』
東電も、ニュースで記述された内容にただ反論するだけでなく、図面を示した上で、水素爆発に至る水素ガスの経路としてどのような経路が考えられるか、少しでも可能性がある仮説をすべて明らかにするような反論をして欲しいものです。
朝日新聞説よりも、xls-hashimoto説の方が可能性が高くなったということでしょうか。
朝日新聞は、4日の朝刊第1面トップでこのニュースを報じています。多分スクープなのでしょう。asahi.comの記事はこちらです。
朝日記事『東電の内部資料などによると、1号機には①原子炉建屋内のガスをフィルターを通じて外に出すための「非常用ガス処理系(SGTS)、②格納容器内のガスを外に出すための「耐圧ベント配管」という二つの非常用排気管が備えられていた。排気管は合流して一つの管となり、建屋外の排気筒につながっている。
1号機でベントが実施された際、①の弁が原子炉の緊急停止で自動的に開いた状態になり、電源喪失で操作できなくなっていた。このため、②を通じて建屋外に出るはずだった水素ガスが、合流点から①に入り、建屋内に逆流していた疑いが強いことが新たに判明した。この水素ガスが爆発を引き起こしたとみられる。』
『86年のチェルノブイリ原発事故の教訓から「過酷事故」に備えた格納容器用の排気設備が99年に設置された。』
このブログでは、xls-hashimotoさんのコメントにより、4月の段階で上記に類似した水素爆発のメカニズムはすでに議論されていました。
4月16日記事「原発事故当初の対応で何が可能だったのか」に対するコメントで、以下の議論がありました。
《ベントすると何故原子炉建屋に漏れるのか (xls-hashimoto)》 2011-04-17 11:11:50
『「アクシデントマネジメント策の有効性評価に係る検討に関する報告書」(平成16年度)、平成18年8月、独立行政法人 原子力安全基盤機構
によると、26ページに「格納容器ベント」が対策として説明されています。
格納容器ベントの概略系統図をみると、電動弁で閉じられていますが原子炉建屋換気系ダクトにつながっています。
問題は、電動弁までのダクトがどこを通っているかと言うことです。
ダクトが原子炉建屋内を通っているとすれば、ブロアは電源喪失で止まっているため、ベントしたガスはダクトの開口部(吸い込み口)から逆流し原子炉建屋内に漏れ出て、建屋内を上昇し5階に溜まることが、容易に想像できます。』
《ベントと水素爆発 (ボンゴレ)》2011-04-17 11:44:00
『つまり、「ベントが遅れたから水素爆発した」のではなく、「ベントの時期にかかわらず、ベントすれば水素爆発は起きる」という状況だったと言うことでしょうか。
圧力容器内燃料棒露出と電源喪失が重なった状況では、ベントするときは閉鎖された建屋の水素爆発は避けられない、という設計だったのですね。』
《水素爆発は、必然です。 (xls-hashimoto) 》2011-04-17 16:59:51
『水素爆発を防ごうと思ったら、ベントする前に原子炉建屋5階(最上階)の天井に穴を開ける必要があったのです。
1号機が爆発して、「3号機でもベントする」と、うつろな目で枝野官房長官が言った時、「3号機でもベントするから、1号機と同じように爆発するかもしれないから、先に言っとくね」としか聞こえなかった時には、復旧のことが頭をよぎり悲しかったです。
テレビを見ながら、「せめて、天井に穴を開けてからベントさせろ」と思いました。
5・6号機はあとで穴を開けました。
原子炉建屋換気系のブロアとフィルタユニットは、原子炉建屋とタービン建屋の間の補助建屋の最上部にありますから、原子炉建屋の3階当たりのレベルになります。
原子炉建屋内の空気(地下2階から5階まで)は、3階から吸い出され、スタック(排気筒・煙突)から放出されます。
電源喪失した原子炉建屋では、軽い物は上に行き・重い物は下に来ます。
ただ、それだけでベントされたガスは軽い物は上に行き・重い物は下に行きました。
結果、水素爆発です。』
xls-hashimotoさんが紹介された「アクシデントマネジメント策の有効性評価に係る検討に関する報告書」の26ページ図面によると、格納容器ベントの系統は、朝日新聞が報じるように非常用ガス処理系(SGTS)とつながっているとともに、xls-hashimotoさんが指摘された原子炉建屋換気系ダクトにもつながっています。
格納容器ベントで放出された水素ガスが、そのどちらかから原子炉建屋に入り込み、水素は軽いので建屋の最上階に上昇していった、という構図になるのでしょう。報告書の図面も朝日新聞の図面もデフォルメ図であり、配管がどのように上昇・下降する経路になっているのかについては情報がありません。上昇・下降経路がわかるような図面を見ながら議論したいものです。
ところで、朝日新聞の1面記事は署名記事となっており、記者は板橋洋佳記者です。あの、大阪地検特捜部証拠FD改竄事件をスクープした記者です(朝日新聞・板橋洋佳記者)。現在は原発事故も担当しており、今回はまたスクープをものにした、ということでしょうか。
記事では、ベントに関する格納容器用の排気設備が、チェルノブイリ原発事故の教訓から「過酷事故」に備えた設備として99年に設置されたことも報じています。後から設置するに際し、「全電源喪失」を想定した安全性までは考慮されずに設置されていた、ということになります。
さらに6月4日の夜、以下のニュースが流れました。
「ベントで水素逆流」否定=配管弁、電源喪失で閉まる設計―東電
時事通信 6月4日(土)20時3分配信
『福島第1原発事故で、東京電力は4日、東日本大震災の発生翌日に1号機原子炉格納容器の圧力を低下させるため、蒸気弁を開く「ベント」を行った際、蒸気に含まれる水素が別の配管を通じて原子炉建屋内に逆流して水素爆発に至った可能性は極めて小さいと発表した。
配管に直列に並んでいる二つの弁のうち、一つが電源喪失すると閉まる設計であることが最新の点検記録で確認されたという。』
東電も、ニュースで記述された内容にただ反論するだけでなく、図面を示した上で、水素爆発に至る水素ガスの経路としてどのような経路が考えられるか、少しでも可能性がある仮説をすべて明らかにするような反論をして欲しいものです。
朝日新聞説よりも、xls-hashimoto説の方が可能性が高くなったということでしょうか。
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/index10-j.html
4.運転日誌等
1・2号機
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/plant-data/f1_4_Nisshi1_2.pdf
の26ページの右下隅に室内のレイアウト図面が記されてあります。
1号機の原紙補助建屋3階にある換気空調設備の設置してある部屋のレイアウトです。
左下と右上にそれぞれ←北/→北と書かれているので、その時現場は大変だったんでしょうね。
壁側の真ん中にハシゴがあり、
左側にはR/B HVS(Heat Ventilating System:原子炉建屋換気空調系)のフィルターユニットと排気ファンがあります。
右側にはSGTS(Standby Gas Treatment System:非常用ガス処理系)があります。
真ん中にパージFAN(パージ排気ファン)があります。
「配管に直列に並んでいる二つの弁」は、パージFANの前後についており、R/B HVSとSGTSをつないでいます。
このようなレイアウトが記されてあるということは、この部屋で何かしようとしたんでしょうね。
型式は違いますが「上間原子力発電所全体系統構成概要図」
http://www.nisa.meti.go.jp/shingikai/800/4/3/001/1-1-4.pdf
の真ん中上部に、格納容器(PCVとS/C)から出たガスは、「非常用ガス処理系(SGTS)」を通って排気口へ行くラインと、入口側の「一つの弁」と通って「パージ用排風機」で排気され「原子炉・タービン建屋換気空調系へ」行くラインが記されています。
「パージ用排風機」を出たあとに、もう「一つの弁」があります。
1号機~4号機も基本は同じようになっています。
東京電力は、「二つの弁のうち、一つが電源喪失すると閉まる設計であることが最新の点検記録で確認されたので、原子炉建屋内に逆流して水素爆発に至った可能性は極めて小さい」と発表しました。
私は、弁は閉まりきらず、そこから水素ガスが原子炉建屋側に漏れ出し、原子炉建屋内の排気ダクトを通って、建屋内(3・4・5階)の各小部屋にまんべんなく拡散していって、あのように(壁が外側に吹き飛ぶように)爆発したものと考えています。
建屋内の排気ダクトのルートを見直す必要があります。
※参考:非常用ガス処理系乾燥装置およびフィルター装置のメーカーカタログ
http://www.shinwatec.co.jp/products/detail/168/
http://www.youtube.com/watch?v=ZIwTSN8f8P0&feature=player_embedded
この質疑応答を聞くと、班目春樹委員長は、逃がし弁が開いて格納容器内まで水素ガスが出ていることは理解していたみたいです。
しかし、電源喪失した原子力発電所でベントするとどうなるかまでは理解していなかったみたいです。
ベントは、格納容器内からいきなり原子炉建屋外にガスを出せると思っていたみたいです。
ベントは、配管で原子炉補助建屋3階(原子炉建屋とタービン建屋の間にある建屋)にあるSGTS(非常用ガス処理系)に導き、フィルターを通し排気ファンがスタック(排気筒)から放出します。
しかし、電源喪失では、排気ファンが動かず排気出来ません。
菅総理と班目委員長のコンビでは、水素爆発は避けられませんでした。
総理大臣と東京大学大学院教授の原子力安全委員長がやらかした事ですから、財界・学会何も言わないですね・・・・・?
委員長は、「わたくしと意見を交換している原子力の専門家の大多数の意見を総合して申し上げた」と言っていますが、どこの誰ですか?
いっぱい気をつかいますね。
※※以下 参議院 予算委員会でのやりとり18分18秒から始まります ※※
福島瑞穂:18:18「班目原子力安全委員長にお聞きします。12日の朝、総理と一緒にヘリコプターで行き、『大丈夫だ』と、『水素爆発はない』というふうにおっしゃったのは事実でしょうか?」
班目春樹:18:33「はい、総理と現地に視察に参りましたあいだ、総理に対して原子炉のしくみがどうなっているか説明させていただきました。その段階において、『水素が発生している恐れがあるが、格納容器まで出ても、そこは窒素しかないので、爆発の恐れはない』というふうに申し上げました」
福島:18:59「水素爆発起きたじゃないですか。『大丈夫だ大丈夫だ水素爆発はない』と、12日の朝、総理にあなたが言ったことで、楽観的な見通しになったのではないですか。責任があると考えますが、いかがですか?」
班目:19:17「わたしが申し上げたのは、あくまでも格納容器の中の話でございまして、建屋での爆発については言及してございません」
福島:19:28「水素が出るというのは格納容器から出てるわけじゃないんですか。班目さん、2007年、平成19年2月16日、浜岡原子力発電所の裁判の証言で、非常用ディーゼル発電機が2個とも起動しない場合に大変なことになるのではないかと質問を受け、『そのような事態は想定しない。そのような想定をしたのでは原発はつくれない。だから割り切らなければ設計なんてできませんね』と言っていますね。割り切った結果が今回の事故ではないですか?」
班目:20:03「たしかに、割り切らなければ設計はできないというのは事実でございます。その割り切った、割り切り方が、正しくなかったということも、我々十分反省してございます」
福島:20:18「反省とはどういうことですか?」
班目:20:23「今後の原子力安全規制行政においては、原子力安全委員会というところは、いろいろと意見を申し上げるところでございますけれども、抜本的な見直しがなされなければならない、というふうに我々感じております」
福島:20:40「裁判でいつも、非常用電気ディーゼルが、作動しない、地震のときに。これ争われてきたんですよ。あなたは、そんなことを想定してたら原発はできないと言ってるんですね、その責任はどうなるんですか?」
班目:20:58「責任という意味がよくわからないんですが。今回の事象というのが、決して言ってはいけないことなんですけど、想定を超えたものであった。想定を超えた想定を誰がしたかというと、ある意味では…(野次)あ、そのとおりでございます、想定が悪かった。その想定について、世界的に見直しがなされなければならないものと考えております」
福島:21:30「裁判で、こういうことが想定されると言われ、あなたは原子力安全委員長として、『そんなこと想定されたらつくれないよ』と言ってきたわけです。その責任はどうなんですか?」
班目:21:47「わたくしとしても、またわたくしだけでなく、わたくしと意見を交換している原子力の専門家の大多数の意見を総合して申し上げたわけでございますので、わたくし個人の責任というのは別に取りようがあるのかもしれませんが、これはある意味では原子力をやってきたもの全体として考えなおさなきゃいけない問題だというふうに考えているということでございます」
福島:22:22「驚きです。裁判でこれは争点だったんですよ。指摘されてるんですよ。想定されていたんですよ。それに対して、そんなことはないとあなたは言って、原子力安全委員長としてやってきたんですよ。その責任があるじゃないですか。あなたが言っていたことが、あなたが大丈夫だと言ったことが起きたんですよ」
班目:22:44「あの、わたし個人としてもそう申し上げましたし、わたくしは当然、ある意味では原子力をやっている者全体の専門家の意見を、まあ代表して申し上げたというつもりでございますので、その点ご理解いただければと思います」
福島:23:03「委員長は責任をとるべきです。またそう言ってきた人たちが、きちっとこのことについて反省あるいは謝罪をすべきです。班目さん、謝罪をする気はありますか?」
班目:23:16「原子力を推進してきた者のひとりとして、わたくし個人としては、もちろん謝罪する気はございます」
福島:23:24「12日の朝、あなたが総理に楽観的な見通し、水素爆発はない、大丈夫だと言ったことが、見通しを狂わせたんじゃないですか?」
班目:23:37「この説明は、あくまでも、水素は発生しますとまで申し上げました。
それがもうすでに圧力逃し弁というので格納容器に出ておりますという説明をしました。しかしながら、格納容器まで出ても大丈夫でございます、なぜならばそこには酸素はございません、という形でご説明申し上げたわけでございまして、総理の判断がそれで甘くなったとか、そのようなことはないというふうにわたしは理解してございます」
中略
中山経済産業政務官25:35「・・・・・12日朝『ペントをしろ』と言ったのは6時50分でございます。12日の3時に水素爆発がございました。・・・・・」
しかしここまで問題意識を持っている方が素人でありながら存在しているということはすごいことだと思いました。マスコミや大学教授や原子力安全委員会のトンチンカンな解説を見るにつけ、頭が下がります。
4号機の水素爆発メカニズムと1、3号機水素爆発との関係については、このブログでもxls-hashimotoさんが何回かコメントされています。
「3月11日の1号機」でのコメント
http://blog.goo.ne.jp/bongore789/e/36ca4d9d1956103e251c4af15b761181
「5月23日東電報告書(5)3号機」でのコメント
http://blog.goo.ne.jp/bongore789/e/d7eb9365da7b154389dd692dd2bc0e31
がそれです。
マスコミでは今でも、「ベントの遅れ」と「水素爆発」をリンクして考えているようですが、私は、あの設備でベントすれば、遅かれ早かれ水素爆発せざるを得なかった、と考えているものです。
むしろ、ベント必須となる前に、十分な注入量で海水を注入することが唯一重要なポイントであったのではないか、と考えています。
もうひとつわからないのですが、ベント前に消火系のディーゼルポンプが起動していて炉内注水を行っていたがタンクがカラになって注水ができなくなったとあります。しかし後になってMUWやCSTのタンクに数千トン以上の純水があったと報じられています。これらのタンクのドレンラインからホースを引いて消火系ポンプに接続できていれば炉心溶融を防げたのではないかと思います。海水を注入するという決断は、廃炉を前提とするため社長不在の状態で決断できなかったのだと思います。同じ理由でホウ酸水注入系も使えなかったのだと思います。核反応は停止していたので、ホウ酸の必要性はないのですが、水の冷却機能だけでも時間稼ぎにはなったと思います。某大学教授の水素爆発を爆破弁を作動させたとの珍解説がありましたが、電源喪失後の早い時期に爆破弁を操作しておくべきだったと思います。これらの経緯も吉田所長が語り始めているようなのでそのうちはっきりするかもしれませんね。
3月11~12日に1号機でどのような事象が発生していたのか、という点について、このブログでは例えば
6月18日東電報告書(2)1号機
http://blog.goo.ne.jp/bongore789/e/5c1772120427fe50922dad9aa323ba02
で解析しています。
11日17時12分には、発電所長が消火系ラインと消防車を使用した原子炉への注水方法の検討開始を指示しました。
ディーゼル駆動消火ポンプは17時30分に起動しました。しかし、翌12日1時48分にディーゼル駆動消防ポンプ停止を確認。修理を試みましたが再起動できませんでした。
次は淡水を消防車で注入する準備です。
水源としてのろ過水は、消火栓から水が噴き出して使用できない状況でした。他の水源として防火水槽を見つけました。
12日5時46分、原子炉内に消火系ラインから消防車による淡水注入を開始しました。
14時53分に累計80トンの淡水注入を完了しました。
14時54分に原子炉への海水注入を実施するよう発電所長指示がありました。引き続き淡水を注入し続けながら、海水注入の準備を進め、15時30分頃、消防車を3台直列につなぐ注水ラインが完了しました。
その直後、15時36分、1号機原子炉建屋で水素爆発です。準備していた海水注入のためのホースが損傷しました。
19時4分、消火系ラインと消防車を用いた原子炉への海水注入を開始したのです。
東電報告書の文脈からいくと、ディーゼルポンプでの淡水注入は行われておらず、そのうちに故障して修理不能に陥ったものと考えられます。淡水注入は消防車によるものが最初と思われます。
>ベント前に消火系のディーゼルポンプが起動していて炉内注水を行っていたがタンクがカラになって注水ができなくなったとあります。
というsuperdojiさんのコメントは、報道情報が出典と思いますが、その出典を教えていただけないでしょうか。
>海水を注入するという決断は、廃炉を前提とするため社長不在の状態で決断できなかったのだと思います。
東電報告書によると、淡水が枯渇すると同時に海水注入を開始する意図が現場にはあったと思われます。
東電報告書では、1号機については津波来襲以降、非常用復水器が動作しておらず、地震後15時間後には圧力容器が損傷していたとしています。つまり、海水注入開始時どころか、淡水注入開始時にすでに圧力容器が破損していたというのです。
現場が、非常用復水器が動作していないことに気づけなかった点が最大のポイントではなかったかと思います。
>同じ理由でホウ酸水注入系も使えなかったのだと思います。核反応は停止していたので、ホウ酸の必要性はないのですが、水の冷却機能だけでも時間稼ぎにはなったと思います。
について
6月18日東電報告書(4)2号機
http://blog.goo.ne.jp/bongore789/e/93fa21879fbecc41ac8480423ef14fca
に書いたように、2号機ではホウ酸水注入系を動作させようとしていました。
それによると、ホウ酸水注入系を動作させるためには、電源が必要なようです。12日15時30分には2号機のパワーセンターに電源車つなぎ込みが完了したのですが、その直後に1号機水素爆発でケーブルが破損し、その後はとうとう復旧しませんでした。そのため、圧力容器高圧のままで冷却水を注入する手段が絶たれました。
そこで、2号機では自動車用バッテリーを集めて主蒸気逃がし弁を開放として圧力容器圧力を下げ、消防車による海水注入をはじめて開始することができました。この時間ロスで海水注入開始が遅れました。
なお、1号機は自然に圧力容器圧力が下がっていたので、主蒸気逃がし弁を開放にするまでもなく、消防車による注入が可能でした。
2011年8月3日 福島第一原子力発電所1号機タービン建屋2階 高線量検出箇所(295KB)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_110803_01-j.pdf
部屋に入ってすぐの縦に2本並んでいる細長い箱がSGTSです。
細長い箱の入口側か出口側かは不明ですが、ここでダクトは90度曲がるのは明らかです。
そんな場所では、ガスの流れはダクト内面から剥がれ淀み点ができます。
放射性物質がいっぱい溜まります。結果その線量です。
SGTSから流れ出ていった物の極一部は、その先の淀み点(剥離点)で線源を作りました。
2011年8月2日 10Sv/h超の高線量線源の現場写真・γカメラ画像(193KB)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_110802_01-j.pdf
2011年8月5日 福島第一原子力発電所1・2号機主排気筒 スタックドレン配管(56.5KB)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_110805_02-j.pdf
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_110827_02-j.pdf
資料によると「非常用ガス処理系放射能除去フィルタ」の線量が、
A系統 6.7mSv/h→0.5mSv/h→0.1mSv/h
B系統 5.5mSv/h→0.5mSv/h→0.1mSv/h
両系統とも排気筒側から原子炉建屋側に順に低くなっています。
これは、放射性物質を含んだガスが排気筒側から原子炉建屋側に逆流し、順にフィルタにより沪過されていったことを示しています。
これを「逆流の可能性あり」と表記しています。
1号機は、このフィルタの遙か前(この部屋の入口前)で5,000mSv/h以上となっています。